2020年11月15日 (日)

マネーの量と経済成長(No.433)

バブル崩壊の前は日本経済は成長していた。その頃はマネーの増加率は年率10%前後だった。バブル崩壊後は増加率は3%程度に落ち、経済の成長は止まった。つまり日本経済が成長するにはマネーを年率10%程度増やす必要がある。
下図はマネー(2004年3月以前はマネーサプライ、それ以降はマネーストック)の増加率を示した。

1_20201115214701

アベノミクスでもマネーは増えているが、この程度の増加では経済成長に繋がらない。2020年は大きく伸びているが、コロナ禍で自粛生活をしたため逆にマイナス成長になった。
2_20201115214701
マネーの量は国によって違う。日本人は倹約の傾向が強いから日本経済のためには諸外国より多くのマネーが必要になる。
3_20201115214701
中国は製造業を急激に伸ばして発展してきた。1995年頃は日本の製造業はGDPにおいてほとんど米国に並んで世界一であった。しかしマネーが十分供給されなかったことも原因の一つとなり、中国などにシェアを奪われてしまった。
4_20201115214701
消費に関しては中国はまだ水準は低く伸びる余地が大きい。14億人の国民が本格的に消費を始めたらGDPを大きく伸ばすに違いない。

5_20201115214701

次の図は消費減税を行った場合どの程度マネー(マネーストック)が増えるかを示している。マネーの増加は限定的だが、消費税減税により物価が下がることによりマネーの価値が上昇するから消費刺激効果はこのグラフで示すより大きい。

1_20201116181801
次の図は公共投資を行った場合のマネーの増加である。消費減税の場合より大きい。

7_20201115214701

次の図は現金給付を行った場合のマネーの増加である。直接マネーを国民に渡すのだからマネーの増加は大きくなるし大きなGDP押し上げ効果になることが理解できる。

8_20201115214701

マネーと言っても様々な種類がある。
(1)マネタリーベース:日銀券発行高と貨幣流通高と日銀当座預金の合計
   日本銀行が世の中に直接的に供給するお金の合計
(2)M2:現金、要求払預金など銀行が扱うお金
(3)M3:M2にゆうちょ銀行が扱うお金なども加わった
マネーストックとは日銀、銀行、ゆうちょ銀行全体から、経済全体に供給されるお金の全体を示す。
9_20201115214701

日銀券ルール:
日銀が保有する長期国債の残高を日本銀行券(お札)の流通残高以下に収める。

2001年に設定された。日銀がお金を刷って国債を買うとハイパーインフレになると言われ、禁じ手だとされ「劇薬」だと思われていた。しかし景気低迷が続いたので、アベノミクスで方針転換され日銀による国債の大規模な買い入れが始まった。これによりすぐに景気が回復しインフレ率も上がると一部の人は信じていたようだが、全くそのようにはならなかった。上図のようにマネタリーベースが増えてもそれに並行してM2やM3が増えるわけではなかった。
日銀がお金を刷って国債を買っても、そのお金は日銀当座預金に入るだけで貸出に回らなかったからマネーストックは増えなかった。企業の将来不安が強く、投資意欲が低いので貸出が伸びないのが原因である。消費増税、歳出削減の政策が状況を悪化させた。

| | コメント (0)

2020年11月13日 (金)

法人税減税の経済効果を日経のモデルで調べた(No.432)

法人税を上げて消費税を下げるという提案がされることがある。その方が庶民にはメリットがあると思われているのかもしれない。しかし筆者の計算ではコロナ禍による大きな経済の落ち込みから立ち直るには消費税率を0%にしてもまだ足りない。そうであれば、消費税と法人税を同時に下げる可能性も考えるべきだが、ここでは法人税減税を単独で行った場合どの程度景気押し上げ効果があるのかを考える。法人税を下げることは単に景気押し上げ効果があるだけでなく、外国資本を日本に呼び込む助けになる。もちろんやり過ぎるとタックス・ヘイブンとして外国企業に税逃れのために利用され国際的な非難を浴びる可能性がある。ここでは法人税率の減税幅を0%、5%、10%、15%の4通りを計算する。減税は2020年Q4から行うとする。まず名目GDPから示す。法人税減税による押し上げ効果は小さい。名目GDPは2020Q1では547兆円であるのに対し、減税無しだと2023Q1には546兆円なのでまだ戻っていない。15%減税の場合は2023Q1には553兆円となりなんとか2020Q1のレベルと超えるのだが、僅か6兆円超えるだけだから景気対策としては不十分である。2002年にも法人税減税の計算を試みたが、当時は法人税減税の景気の押し上げ効果は遥かに大きかった。
1_20201113141401  
このように法人税減税によるGDP押し上げ効果はかなり小さくインフレ率の押し上げも限定的であるから、次の図で示すように実質GDPも似たようなものになる。
2_20201113141401

民間最終消費はほとんど増えない。増加幅は消費減税の場合よりはるかに小さい。

3_20201113141401
それに比べれば住宅投資の伸びは大きい。

4_20201113141401

法人税減税で株価は上昇する。
5_20201113141401
法人税減税で若干の消費の伸びや住宅投資の伸びがあり、それにより企業の経常利益を押し上げる。
6_20201113115001  
下図のように消費者物価への影響はごく僅かであることが分かる。
7_20201113141401

下図のように失業率の押し上げ効果も小さい。
8_20201113141401

| | コメント (0)

法人税減税の経済効果を日経のモデルで調べた(No.432)

法人税を上げて消費税を下げるという提案がされることがある。その方が庶民にはメリットがあると思われているのかもしれない。しかし筆者の計算ではコロナ禍による大きな経済の落ち込みから立ち直るには消費税率を0%にしてもまだ足りない。そうであれば、消費税と法人税を同時に下げる可能性も考えるべきだが、ここでは法人税減税を単独で行った場合どの程度景気押し上げ効果があるのかを考える。法人税を下げることは単に景気押し上げ効果があるだけでなく、外国資本を日本に呼び込む助けになる。もちろんやり過ぎるとタックス・ヘイブンとして外国企業に税逃れのために利用され国際的な非難を浴びる可能性がある。ここでは法人税率の減税幅を0%、5%、10%、15%の4通りを計算する。減税は2020年Q4から行うとする。まず名目GDPから示す。法人税減税による押し上げ効果は小さい。名目GDPは2020Q1では547兆円であるのに対し、減税無しだと2023Q1には546兆円なのでまだ戻っていない。15%減税の場合は2023Q1には553兆円となりなんとか2020Q1のレベルと超えるのだが、僅か6兆円こえるだけだから景気対策としては不十分である。2002年にも法人税減税の計算を試みたが、当時は法人税減税の景気の押し上げ効果は遥かに大きかった。
1_20201113115001
このように法人税減税によるGDP押し上げ効果はかなり小さくインフレ率の押し上げも限定的であるから、次の図で示すように実質GDPも似たようなものになる。
2_20201113115001

民間最終消費はほとんど増えない。増加幅は消費減税の場合よりはるかに小さい。

3_20201113115001
それに比べれば住宅投資の伸びは大きい。

4_20201113115001

法人税減税で株価は上昇する。
5_20201113115001
法人税減税で若干の消費の伸びや住宅投資の伸びがあり、それにより企業の経常利益を押し上げる。
6_20201113115001
下図のように消費者物価への影響はごく僅かであることが分かる。
7_20201113115001

下図のように失業率の押し上げ効果も小さい。
8_20201113115001

| | コメント (0)

所得税減税の経済効果を日経のモデルで調べた(No.431)

所得税減税だけでコロナ禍で落ち込んだ経済を建て直すのは荷が重すぎる。最大限所得税減税を行ってもまだ景気の押し上げ効果は小さすぎる。ここでは所得税の減税幅を15兆円、10兆円、5兆円、0兆円の4通りの計算を行う。次の図は名目GDPである。2020Q4から減税が始まる。2020Q3から2021Q1までの間名目GDPが下がっているが、これはコロナ禍で窮地に追い込まれた企業を救うために出されていた支援金が打ち切られるためだと推測される。雇用・所得環境の悪化が足を引っ張り、消費は伸び悩む。2023Q1で名目GDPを比較すると15兆円減税のほうが減税しない場合より9兆円大きい。
1_20201113105001
物価の影響を除いたのが次に示す実質GDPである。
2_20201113105001

次の図で示すようにこの程度の減税では物価に及ぼす影響は非常に小さい。

3_20201113105001

失業者も減税による影響は小さい。
4_20201113105001  

次の図のように所得税減税により消費は押し上げられる。

5_20201113105001
 
住宅投資の押し上げ効果は比較的大きい。

6_20201113105001


消費の拡大により企業の経常利益が拡大する。

7_20201113105001
企業の利益が拡大すると株価も上昇する。ただし2020年11月12日現在の株価は25520円であり、下図の予想よりかなり高い。これはコロナワクチンの開発成功のニュースで押し上げられたことも影響した結果である。

 

| | コメント (0)

2020年10月10日 (土)

公共投資の経済効果を日経のモデルで調べた(No.430)

景気対策の定番は公共事業なので、公共事業費を増額したときにどのような影響がでるかを日経NEEDS日本経済モデル MACRO80を使い、2020年9月に日経が発表したデータを使って計算した。公共投資と言っても何をするかによって技術者や業者が対応できるかどうか分からないのだが、ここはそれが対応できたと仮定し、2020Q4(10月~12月)から予算を通常の予算より一定額増加させて計算した。その増加額は0兆円、10兆円、20兆円、30兆円の4種類とした。

まず名目GDPを図1で示す。

図1
 1_20201010113001
2020年のQ2(4月~6月)にはコロナ禍で名目GDPが約40兆円押し下げられている。図1と前々論文(No.428))の図2を比較すると、国民全員に約20万円を給付するのと公共投資を10兆円増額するのとで、ほぼGDP押し上げ効果は同じということとなる。つまり効率だけ考えると公共投資のほうが約2倍効率がよい。しかし公共投資増額による雇用者報酬の増加率は僅かであり、国民の収入増を考えれば現金給付のほうがはるかによい。次に実質GDPを考える。

図2
2_20201010113001

前論文(No.429)と前々論文(No.428)の実質GDPを比べるとそれぞれの押し上げ効果を比較できる。2023Q1で実質GDPが540~550兆円にあるのは、
①一人当たり20万円を国民全員に給付
②消費税率を5%にする
③公共投資を10兆円増額
となる。政府の年間の負担額は①が25兆円、②が11兆円、③が10兆円であるから、一見すると公共投資が最も効率的にGDPを押し上げることができるように見える。それでは一人当たりの雇用者報酬を比べてみる。2021Q1~2021Q4の合計を比べる。
①471万円
②472万円
③473万円
やはり公共投資が最も給料を押し上げることが分かる。しかし例えば父親だけ働いている親子4人家族を考えれば、現金給付金を80万円もらっているわけで、①は551万円となるから断トツでトップとなる。日本は長期にわたって実質賃金は下がり続けている一方で企業収益は伸びている。つまり企業にお金は溜まるが国民にはお金は行かない。AI/ロボットが労働を代替するようになれば、ますますその傾向が強まり、何らかの対策が必要となる。その意味では現金給付は重要さを増す。このことに関しては小野盛司(2019)を参照して頂きたい。次に民間最終消費のグラフを示す。


図3
3_20201010113001
公共投資を増やしても消費はあまり伸びない。賃金の上昇が僅かだからだ。前論文(No429)で示したように消費減税でジワジワ消費は伸びるがそれも限定的だ。何しろコロナ禍による消費減少が余りにも大きかったために、元の水準に戻るのは時間がかかる。それに比べ論文No.428で示したように現金給付は消費を力強く押し上げる。ただし、これはコロナが収束して人々が自由に娯楽を楽しめる状態になることが大前提だ。いくら現金給付をしても、家に閉じこもっているだけではやれることは限られているから。


図4

4_20201010113001
図4で分かるように,公共投資を増やしてもそれほど物価を押し上げない。それは雇用者報酬の増加が限定的だからである。

図5
5_20201010113001

財政支出が拡大すれば、それは国民へと流れる。お金を国民が持てば住宅にも投資する。バブルの後、高騰する地価を下げるため1990年頃からバブル潰しが始まった。「年収の5倍でマイホームが買えるように」という目標で、1990年には公定歩合を6%に上げ土地を買いにくくした。カネが無ければマイホームは買えないから地価は下がりマイホームの値段も下がった。しかし新築住宅着工件数も下がっていった。地価を下げればマイホームが買いやすくなるだろうという政治家の思惑は外れた。むしろ国民の可処分所得を増やした方が、多くの国民がマイホームを買えただろう。

図6
6_20201010113001
この図よりデフレギャップをプラスにしようと思えば10兆円では足りずそれ以上公共投資を増やすことが必要になることが分かる。ここまで3種類の景気刺激策を検討してきたが、明かになったのはデフレ脱却には、すさまじい景気刺激策が必要なことだ。このことはすでに小野盛司(2003)で詳しく説明されていたし、ここでの試算と整合的である。


図7

7_20201010113001
 

これだけ大規模な景気刺激策をするのにも係わらず、長期金利はほとんど上がりそうもない。1990年には長期金利は8%台に達していたが、需要不足とカネあまりの時代の今、金利は上がりそうもない。景気の下支えのため日銀は無制限に国債を買うと言っており、また長期金利は制御可能とも言っているので、金利は簡単には上がらない。つまり国債の暴落はあり得ない。


図8
8_20201010113001

このグラフと前論文(No.429)と前々論文(No.428)を比べると
①一人当たり40万円を国民全員に給付
②消費税率を0%にする
③公共投資を20兆円増額
が似た押し上げ効果を持つことが分かる。

図9
9_20201010113001
このグラフと前論文(No.429)と前々論文(No.428)を比べると消費減税の場合、税率を変えても設備投資はあまり変わらないが、公共投資の場合は投資額を変えるとかなり設備投資額は変わってくることが分かる。ただしこの3つの場合に共通して言えることは、強烈な景気刺激策を行っても、20201Qのレベルに戻るのは2年近く掛かるということ。


図10
10_20201010113001
例えば前論文(No.429)と前々論文(No.428)を単純に比べると、雇用者報酬の増加率は公共投資20兆円増加に相当するのは消費税率0%である。しかしながら消費税率0%だと、物価は消費税分だけ下がっているのだから、消費者はその分は利益を得ている。国民にとっての利益は消費税が無くなった分に賃金の上昇を合わせたものである。一方で公共投資増額はインフラ整備という意味で国民は利益を得る。現金給付であるが、これは受け取った現金に加え賃金も上昇するのだから国民にとっての利益は大きい。企業経営者とそれ以外の国民で、富の分配を考えたとき、現金給付の場合が最もそれ以外の国民が多くの分配を受けるようになる。

図11
11_20201010113001
公共投資の増額は比較的容易に株価を押し上げるように見えるが、消費税減税の場合は例えば税率0%の場合消費税分がすべての物の値段から引かれる。株価も同様であり、本来は「実質」で比べなければならないとうことで、その分プラスして考えなければならない。コロナ禍、米国大統領選、東京オリンピックなどの結果次第で大きく予測から外れる可能性がある。

文献
小野盛司(2019)『資本主義から解放主義へ』三省堂書店
小野盛司(2003)『これでいける日本経済復活論 シミュレーションで明らかになった驚きの事実』 ナビ出版

この試算に協力して下さいました荒井潤氏と山下元氏に感謝いたします。
本試算では日経新聞社の承認を得てNEEDS日本経済モデルMACROQ79を使用しましたが、その推計結果に関しては日本経済新聞社が承認したものではありません。

 

| | コメント (0)

2020年10月 7日 (水)

消費減税の効果を日経NEEDS日本経済モデルを使って調べた(No.429)

以前に同様のタイトルで掲載した。

http://ajer.cocolog-nifty.com/blog/2020/06/post-350bb1.html

今回はデータを新しくし、大幅に内容を充実させた。

 

ここでは消費税減税が経済に及ぼす影響を日経新聞社のNEEDS日本経済モデルMACROQ80を使って2020年9月に発表されたデータを使って計算してみた。ただし税率変更は2020Q4からとする。

 

図1

1_20201007213201

消費減税をすると消費税でかさ上げされていた分がなくなり、その分が名目GDPを落ち込ませる。更にコロナ禍による経済の落ち込みが加わるので図のような急激な名目GDPの落ち込みがある。しかし消費減税は可処分所得を増やし消費を増大させ名目GDPを押し上げる。

図2

2_20201007213201

これで分かるように実質GDPは税率が10%のままだと2年後になっても2年前の水準に戻らない。税率を8%にまで下げるとやっと2年前の水準を超え、税率0%にすると2年後の実質GDPはやっと560兆円に届くだけである。図2と前の論文(No.428)の図1を比べれば、消費税率を0%にすることは、全国民に40万円を毎年給付することに相当することが分かる。コロナショックから立ち直るには最低限この程度の刺激策は必須となる。

消費の伸びが景気を回復させる。図3に実質民間最終消費を示した。これを前の論文(No.428)の図3と比べると、消費税率を0%にすることは、全国民に40万円を毎年給付することに相当することが確かめられる。

図3

3_20201007213201

図4

1_20201007215801

図4で分かるように消費税率を下げると、景気は押し上げられるが必ず物価は下がり、デフレとなる。安倍政権では消費増税に随分熱心だったが、消費税によって名目GDPをかさ上げし、これは経済を犠牲にしてでもデフレから脱却しようとしていたということか。図4より消費税率を3年間0%にしてもまだ完全にデフレ脱却ができたとは言えない。このことは消費減税でデフレ脱却は無理だということだ。図5で示したように消費減税で住宅投資は伸びる。

図5

5_20201007213201

図5と前の論文(No.428)の図5を比較すれば、やはり消費税率を0%にすることは全国民に毎年40万円の給付をすることに相当することが分かる。

図6

6_20201007213201

図7

7_20201007213201

図7で示されたように、消費減税で景気刺激をすれば金利は僅かに上昇するが、心配しなければならないほど上昇することはない。

図8

8_20201007213201

図8で示されたように、例えば消費税率を0%にすると企業に大きな利益をもたらす。

図9

9_20201007213201

図9で示されたように実質民間設備投資はコロナショックで大きく落ち込む。消費減税はあまり大きな押し上げ効果は持たない。図34で雇用者報酬がどれだけ消費減税で押し上げられるかを示した。押し上げ率は小さいし、献金給付の図17と比べても更に小さい。もちろん、国民にとっては少ない賃金上昇率であっても、消費減税による物価の下落というメリットはある。失われた20年で続いた悪夢のデフレが更に続くという面では、消費マインドに悪い影響があるかもしれない。

図10

10_20201007213201

雇用者報酬の増加率は大きくない。ここでは税率が10%のままだった場合に比べどれだけ増加するかを示した。

図11

11_20201007213301

図11で示したように株価は上昇し、株を保有する人にはメリットはある。しかし現金配布(前論文No.428)の図11に比べれば株価上昇は限定的である。

図12

12

税率が10%のままだと2021年のQ2には失業率は3.88%まで増加する。2023Q1になっても3.4%までしか改善しない。税率を0%にすれば、2023年Q1の失業率は2.69%まで下がる。

表1 2020年2月のデータで試算

13

 これは2020年の1月から消費税率を変えた場合の試算である。この時期の日経データにはコロナ禍対策の自粛・休業要請で発生する消費の落ち込みは考慮に入っていない。消費税率0%の場合と5%の場合を計算し、10%の場合と比べた。2020年(年度ではなく暦年である)を考えて見ると名目GDPは消費税率が10%のままだと556兆円、5%に下げた場合は552兆円、0%に下げると547兆円にまで下がる。消費減税をすると消費が伸びて経済が活性化しGDPが伸びると普通の人は考える。しかし消費税というもの、例えば10%の税率だと物の値段が10%上乗せされ見かけの取引額は増える。だから見かけのGDPは増える。安倍前首相は経済発展させることに失敗した。本当の経済規模を見るには実質GDPに注目しなければならずそれを見ればGDPはちゃんと拡大しているかどうか確認できる。消費税率0%にしたとき実質GDPの押し上げ効果は初年度で2.84%、2年目は2年間の累積の押し上げ効果は5.16%となる。

 税率を0%にしてしまうと、元に戻すときに10%もの税率アップになるので大変だという意見がある。しかし消費税率0%はずっと続けて良い。このまま続けたらハイパーインフレになるという人がるかもしれない。とんでもない誤解である。0%にした後2年後でもまだ物価水準は5.57%PT押し下げられたままである。つまり消費税を廃止したら消費は拡大するが、物価にはほとんど影響がない。国債利回りは2年後にやっと0.2%にまで上昇しマイナス金利からの脱却に成功する。ただし金融機関の経営を立て直す目的にはまだまだ金利は低すぎる。

 2年後民間企業経常利益は55%も増加するが一人当たりの雇用者報酬は2.7%増加するだけだ。つまり利益が出ても企業は賃金を上昇させず、内部留保にしておくのである。このため国民を豊かにするためには国が直接国民に現金を配るのが良い。

 消費税減税を行うと代替財源は何かと質問される。国債を発行すれば十分だ。後で日銀がお金を刷って買い上げればよいだけであり、刷ったお金を使えば将来世代へのツケにはならない。そんな上手い話があるものかと疑う人もいる。しかし経済を拡大させるためには通貨を増やす必要があり、それを成長通貨という。今まで政府は成長通貨の供給を怠ったため日本経済が発展しなくなった。今後は適切なレベルの通貨発行を継続的に行うべきである。

 表2 2020年4月のデータで試算

14

 表3 2020年6月のデータで試算

15_20201007213301

 ただし、表3では税率変更は2020Q2から行って計算している。名目GDP(暦年)は2020年2月の日経の予測に比べて4月は3.8%.6月には6.8%落ち込んでいる。これは消費税率を0%に下げて景気を下支えしてもまだ足りないほどの大きな落ち込みであり余程思い切った景気刺激策でないと乗り切れない。特に観光がどの程度復活するのかで状況は変わってくるが観光が盛んになると感染を広げることとなる。輸出入は大きく落ち込んでおり、消費税減税をしても取り戻せない。コロナ禍により法人企業経常利益は30%以上下落する。例えば消費税率を0%に下げたらこの落ち込みは1年余りで取り返すことができる。

 4月発表のデータでは1年目で考えると消費税率10%のときは消費税収は24.8兆円で、消費税率を0%にすると税収合計では23.0兆円の減収となる。2年目には10%のとき消費税収は26.6兆円だが、消費税率0%にしたら税収合計は19.7兆円の減収になるだけだ。つまり消費税率を下げると法人税や消費税等が伸びるのである程度挽回できることを示している。

 コロナ禍対策で巨額の財政出動が行われているが、それによりハイパーインフレも、国債暴落も、円の暴落も起こらないし、そのようなことを心配する人もいない。ハイパーインフレや国債暴落、円暴落などの言葉を使って、積極財政に猛反対していた人達は完全に沈黙した。彼らはオオカミ少年であったことが証明されたのだから今こそ自らの間違いを認め謝罪をすべきである。日本よりケタ違いに巨額の財政出動を行っている米国も同様だ。

  

この試算に協力して下さいました荒井潤氏と山下元氏に感謝いたします。

本試算では日経新聞社の承認を得てNEEDS日本経済モデルMACROQ79を使用しましたが、その推計結果に関しては日本経済新聞社が承認したものではありません。

| | コメント (0)

«【改訂版】政府がお金を刷って国民に配った時の経済を日経のモデルで調べた(No.428)