2019年1月16日 (水)

日本の「無税国家」化は既に可能である(No.331)

    ーーー これは池戸万作氏による投稿です ---

 本レポートは、日本の「無税国家」化の可能性について、内閣府の計量分析室が発表した経済財政モデル(2018年度)に基づいて分析したものである。表題は、無税国家は可能であるとしたが、しばし、無税国家などと言うと「そんなことするとハイパーインフレになる!」といった批判がなされるが、果たして、そこまでインフレ率は上昇するものなのだろうか。そうしたことについても、この内閣府のレポートは示唆しているのである。その前提条件としては、

①減税の効果は比例的に考える。(倍の減税をすれば、ちょうど倍の効果があるものとする。)
②増税は減税に置き換え、符号を逆転させる。(増税と減税を逆転させると同じ効果とする。)

この条件の下で、内閣府の試算を用いて、無税国家は可能であるか、その懸念材料であるインフレ率に焦点を当てて、述べていくことにする。なお、無税国家にするための財源は、国債発行(ないし政府貨幣発行)で賄えば良いだけである。

1 所得税無税国家
 これについては、11ページの④を参照にして考えてみたい。④の計量分析した条件は下記の通りである。

④個人所得税について名目GDPの1%相当を増税し、そのGDP対比で見た税収の水準を継続させる場合

 この条件においては増税となっているので、インフレ率はGDPデフレーターも消費者物価もマイナスの値で算出されている。増税するとデフレ圧力が働くという試算である。逆に言えば、減税するとインフレ圧力が働くということになる。
 それで、日本の名目GDPは約550兆円であるからして、その1%相当を増税となると、5.5兆円の増税となる。その増税額を5年間続けた場合の推計がレポートで示されている。さて、現在の日本の所得税収はどれほどであろうか。これは財務省が発表している一般会計税収の推移 にて示されている。確定した平成28年度(2016年度)のデータを見ると、17.6兆円となっている。この金額をレポートのケースで示された5.5兆円で割ってみると、ちょうど3.2となる。つまりは、レポートのモデルで示された数値の-3.2倍(減税なので符号を逆転させる)をしてやれば、所得税無税国家が実現した場合の推計値を算出することが可能なのである。では、その場合のインフレ率はどうなるのだろうか。

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 上記の表が所得税を5.5兆円した場合と、所得税収17.6兆円を無税にした場合のインフレ率を示したものである。この表によれば、所得税収を無税にしても、1年目にはわずか0.1~0.2%程度にしかインフレにならない。5年経っても、GDPデフレーターで、ようやく1%に届こうかとするレベルのインフレ率である。直近のGDPデフレーターが0.0%であることを踏まえると、例え所得税を無税にしても、日本銀行のインフレ率2%目標の達成には、5年間続けてもまだ半分にも届かないのである。2%インフレ目標の達成には、所得税無税国家だけでは全く足りず、さらなる無税化が必要なのである。

2 法人税無税国家
 次に、法人税の無税国家化を検討してみよう。そんなことをしたら、諸外国からクレームが舞い込んで来そうだが、それはさておき、これは③の条件から導ける。

③法人税について名目GDPの1%相当を増税し、そのGDP対比で見た税収の水準を継続させる場合

 先ほどと同様に名目GDPの1%、すなわち5.5兆円分、法人税を増税した場合のケースが示されている。次に、財務省の一般会計税収によれば、平成28年度(2016年度)の法人税収は10.3兆円となっている。これを5.5兆円で割ると、約1.87となるので、次は内閣府の試算から-1.87倍した場合のインフレ率を示しておく。

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 法人税の減税によるインフレ率の上昇率は、所得税と比較しても乏しく、その上、減税規模も10兆円程度と少ないため、ほとんど物価は上昇しないようである。法人税無税国家から5年後のデフレーターでも、ようやく0.4%を少し超える程度と、ほとんどインフレになる気配がない。先ほどの所得税無税国家と合わせても、インフレ率は5年後で1.4%に留まるのである。所得税と法人税をダブルで廃止してもこのインフレ率であるから、もはや、日本銀行の2%インフレ目標とは、果てしなく困難な目標のように思えてくる。

3 消費税無税国家
 3番目には消費税無税国家について考えてみたい。消費税無税国家と聞けば、平成末期の世では突拍子もないように思えるが、何てことはない、昭和の税制に戻るだけの話である。昭和は消費税無税国家だったのだから、平成の終わりと共に消費税も終わらせ、平成の次の時代も消費税無税国家になれば良いだけの話である。消費税の推計条件については以下のように書かれている。
 
⑤消費税率を1%ポイント引き上げ、その税率を継続させる場合

ということなので、消費税廃止だと、消費税8%分の減税になるので、ここでの推計に-8倍した場合のインフレ率を表にまとめておく。
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 表の通り、GDPデフレーターと消費者物価で開きがあるものの、消費税増税をすると、その分、見た目の物価が引き上げられるので、インフレ率が高まる。逆に、消費税廃止には大幅なデフレ圧力が働くことになる。これを持って、デフレ効果があるので、無税国家化が促進されると見込みたいところではあるが、年を追うごとに徐々に物価が上昇していることが分かる。なので、1年目のインフレ率を基準(0.0%)と置いて、その後の変動についても、表にまとめておくこことする。

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 表の通り、消費税を8%分減税(廃止)すると、1年目と比較して、5年目ではGDPデフレーターで0.8%、消費者物価では0.56%、インフレ率が上昇することになる。これが国税(6.3%)で17.2兆円分、地方税(1.7%)も含めると、約21.8兆円分(17.2×8.0/6.3≒21.8)の消費税廃止に伴うインフレ上昇率だと、ここでは記しておくことにする。これで主要3税廃止によって、ようやく5年目にインフレ率2%目標に達することが出来た。

4 その他の税の無税国家
 最後にその他の税金額についても見ていくこととする。平成28年度(2016年度)の一般会計税収計は55.5兆円となっている。ここから、所得税収17.6兆円、法人税収10.3兆円、消費税収17.2兆円を差し引くと、その他の税収は10.4兆円となる。その他の税の無税国家化については、先ほどの所得税の推計結果を援用することにする。

④個人所得税について名目GDPの1%相当を増税し、そのGDP対比で見た税収の水準を継続させる場合

 改めて言うと、名目GDPは550兆円なので、その名目GDP1%相当は5.5兆円になる。先ほどのその他の税収10.4兆円を5.5兆円で割ると、約1.89となるので、今度は所得税増税の推計に、-1.89倍したインフレ率の値を算出してみる。
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 表の通り、その他の税収についても、その廃止に伴うインフレ率を算出した。10.4兆円分の減税によって、5年目で0.5~0.6%程度、インフレ率が上昇することになる。

5 無税国家化に伴うインフレ上昇率
 こうして無税国家化するに当たっての各税収のインフレ率の上昇率について、算出することが出来た。最後にこれらを合わせると、インフレ率がどれほど上昇するのか、表にまとめてみる。果たして、無税国家を行うと、日本はハイパーインフレになるのだろうか。
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 これが内閣府の経済財政モデルから導き出される無税国家にした場合のインフレ率の推計である。平成28年度(2016年度)の一般会計税収計の55.5兆円に、消費税1.7%分の地方税約4.6兆円を加えた、合計60.1兆円分減税した結果のインフレ率がこれである。
 端的に結論を言うと、無税国家を行っても、ほとんどインフレにはならないのである。1年目では、ほとんど物価上昇は起こらず、2年目で1%程度、4~5年経って、ようやくインフレ率2%目標に達するほどである。無税国家にすることで初めて、「ちょうど良いインフレ率」を実現出来るのである。「そんなバカな!」と思える推計結果ではあるが、内閣府の試算結果がそのように示されているのだから仕方がない。
 ちなみに、他の項目についても算出してみると、以下のような推移となった。
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 GDPは年を実質・名目ともに追うごとに落ちていくようである。なお、名目値より実質値の方が大きいのは、消費税廃止によって物価が下がるためである。可処分所得が大幅に伸びるのは所得税廃止の影響である。長期金利は物価上昇に並行する形で上昇して、5年後には3%台に突入するようである。
以上のように、5年目にGDPデフレーターで約2.8%、消費者物価で約2.3%程度のインフレ率を容認してしまえば、日本は無税国家を実現出来るのである。この程度のインフレ率は、諸外国では当たり前で、韓国など近隣のアジア諸国がこのレベルのインフレ率であるからして、近隣諸国とインフレ率を並べる意味合いでも、日本は無税国家にすべきなのである。
 一見、夢のように思える、無税国家論であったが、約60兆円程度を減税しても、懸念材料であるインフレ率は2~3%程度しか上昇しないことが導き出された。このことから、もはや、無税国家は夢ではなく、インフレ2%目標達成のためにも、現実として行わなければならない必須政策とも言えよう。
日本の0.0%という極めて低いインフレ率によって、今や無税国家は政治家の胆力一つで、十分実現可能な現実的な経済政策にまでなったのである。異次元の金融緩和の次は、異次元の減税策を政府に期待したいものである。

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2019年1月14日 (月)

教育のAI化は如何に進めるべきか(No.330)

筆者は平成元年に教育ソフトの会社を立ち上げ、昨年まで教育のIT化、AI化を目指して頑張ってきた。残念ながらこの分野では日本は諸外国に大きく遅れをとっている。その理由の一つは政府の予算が少なすぎるということだし、もう一つは予算の使い方が間違えているということだ。例えば橋や道路であれば、使う人が余りにも少なすぎればこんなところに道路をつくったのは間違いだったということは誰でも分かる。しかし役人がカネを出して民間に作らせたソフトウエアやシステムが失敗作だったとしても一般の人も政治家もほとんど気づかない。実際は大失敗の連続なのだ。失敗の原因は、役人が将来どのように発展させていくかを考慮せず開発させるから、開発したものが1~ 2年後には使えなくなるものが多い。言っておくが筆者の開発したPC教育シリーズや写真素材集は30年後でも立派に使える。

どうすればよいのかだが、一つのヒントとなるのはインドで急成長しているオンライン教育アプリ「バイジューズ」である。11年に会社を設立し、15年から動画アプリを投入、今では社員3200人、企業価値が4000億円の未上場会社「ユニコーン」にまで成長した。バイジューズの動画は1本3 ~ 5分で図形やアニメーションも組み合わせてあり飽きさせない。このように短い動画がたくさんあると、AIを活用して受講者ごとに最適な教材を提示できる。

日本ではこのように急拡大する教育関連会社は見たことがないのだが、教育の、あるいは学習のAI化を考えればビッグデータの蓄積が欠かせない。AIを使った教育システムを開発したと宣伝する会社もあるが、ビッグデータを使わないAIもどきのものも多い。OECD加盟国の中でのPISA学力調査では日本はトップレベルにあるのだが、学校におけるICT教育は世界最低レベルである。一方では学校の先生の残業時間が長すぎることが問題になっている。例えば中学教員の8割が月100時間(過労死ライン)を超えて残業している。

未来社会は個に応じた教育をAIが行うようになる。そのような教育システムを構築するための近道は国がベースとなるコンテンツを無料で提供し、それを民間企業が自由に使ってAIを駆使した本格的な教育システムを構築できるようにすることだ。まずNHKやその他の民間企業が開発した教育用動画、静止画、音声等を高価で買い取りそれらのコンテンツを民間企業が無料で無制限に使ってシステムをつくってもらう。民業圧迫にならないようにするには、それらのコンテンツを提供してくれた民間企業に対し開発を会社が納得できる条件で委託し、更に動画を各教科、各単元用にきめ細かく追加していくとよい。国から依頼されて制作されたコンテンツは完全に著作権フリーとし、企業はそれらのコンテンツをベースに有料の教育システムを制作して稼ぐ。動画制作には日本中から優れた教師を抜擢し、最高水準の授業をしてもらう。生徒ごとに最適な教材をAIが提示し、どれだけ理解できたかの確認テストを行う。データが蓄積すると、どの先生がどういう教え方をした場合が最も理解度が上がるかがわかるようになり更なる改良の糸口が分かってくる。この方法で授業の質が上がっていけば、やがて先生がいちいち授業をするよりこのAI主導の動画システムで教育したほうが学力が向上すると分かるようになり残業が厳しい学校の先生の仕事が軽減される。しかも個人ごとの履歴よりAIはどの生徒はどの分野に進むべきだというアドバイスも的確にしてくれる。そのためのその生徒の長所を伸ばす特訓もしてくれるだろう。

日本にも優秀な児童・生徒がいる。例えば小学二年生の高橋洋翔君は数学準一級に合格した。これだけできればすでに大学入試は余裕で突破できる。彼は小学5年で数学一級に合格し、すでに世界的に有名な数学者と共同研究を行っておりすでに研究業績もある。こういった天才的な子供たちには特別な教育をしなければならないのだが、それができていない。例えばアメリカだと飛び級という制度があり、また特別な才能がある子供、つまりギフティッドを発掘し、「ギフティッド教育」という特別な教育を受けさせている。こういった子供たちを適切な教育を行ってこなかった日本だが、今こそAIを使ってそのような教育をすべき時だ。

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2018年12月22日 (土)

内閣府が試算を発表:政府支出を拡大すれば国の借金は実質的に減少する(No329)

12月19日に内閣府は「経済財政モデル(2018年度版)」を発表した。
https://www5.cao.go.jp/keizai3/econome/ef2rrrrr-summary.pdf
このモデルは内閣府が毎年2回公表している「中長期の経済財政に関する試算」を行うために使われている。そして今回の試算は様々な政策を政府が実行した場合に、日本経済にどのような影響が現れるかを詳細に示したものであり、我々は何年もの間このような試算をするように内閣府に求めてきた。これはそれに答えるものであり極めて貴重な資料である。

特に重要なのは②の「政府支出を5年間毎年約5兆円増やしたときどうなるのか」についての分析である。日本においては政府支出を増やす事は将来世代へのツケを増やすから悪いことだとされている。国の借金が今の10分の1であり財政は全く健全であった1982年にすでに政府は財政非常事態宣言を出している。
http://ajer.cocolog-nifty.com/blog/2018/12/no327-c485.html
日本は世界一財政を拡大するのを嫌う国であり、緊縮財政を30年以上続けており、その結果需要不足のため急激に衰退している。今回の内閣府の試算は政府支出を毎年5兆円増やしたときどうなるかを示した画期的な試算である。詳しくは上記論文の9頁の②を見て頂きたい。
【政府支出を毎年5兆円増加させる場合1年後はどうなるか】
可処分所得は0.60%増加
消費は0.26%増加
設備投資は0.19%増加
名目GDPは1.16%増加
財政赤字は4.733兆円増加
税収は1.257兆円増加
その結果国の借金のGDP比は1.62%pt減少する。

つまり将来世代へのツケは実質的に減るのである。
え!っと驚く人がいるかもしれないが、国の借金の増え方よりGDPの増え方の方が早いのだからこれは当然の結果だ。日本以外の多くの国は財政拡大にそれほど抵抗がなくGDPがどんどん増えるので、国の借金が増えても借金のGDP比は大きくならないのである。つまり政府支出を増やすと、通常の日本人が考えるのと逆に将来世代へのツケは実質的に減る。もちろん、インフレ率が高くなりすぎているときは、それ以上歳出は増やすべきでなく、引き締めに転じるべきだが、日本のように非常に長期間デフレ脱却ができていないような国では、歳出拡大が景気をよくし、デフレから脱却でき、しかも債務のGDP比も減らすことができるのである。そして景気がよくなり過ぎて、インフレ率が高過ぎるほどになったときは緊縮財政に転じれば良い。

上記の内閣府の試算だが、債務のGDP比が減少するのは最初の3年間で、それ以降は増加に転じるとある。これは景気上昇で金利が上がることが仮定されているからであり、日銀が強力な金融緩和を続けゼロ金利を続けるなら4年目以降も債務のGDP比は減少を続ける。今回の内閣府の試算は大変興味深いものであり、更に詳しくモデルの内容を電話で質問した。それに対して内閣府の方は丁寧に答えて下さった。その会話で内閣府と我々とでは考えの違いはほとんどないと感じた。以下はその質問の内容と内閣府の回答を示す。
――――――――――――――――――――――
Q 12月19日に発表された経済財政モデル(2018年度版)についてお聞きします。
2010年から2018年まで発表がなかったのはなぜですか。
A この間東日本大震災もありモデルを出す機会が無く、経済の状況が変わり続けていたから。
Q 今回は政府支出を実質GDP1%増やす場合の乗数を出している。2010年度版は公共投資の場合を考えていた。どうして変えたのか。
A モデル上では政府支出も公共投資も同じような効果を持つようなモデルができています。特段予断を与えないというかモデル上ではどちらを増やしても同じ軌道を示すものでしてそこは分かりやすいように政府支出をまとめたという形です。
Q 政府支出と言っても色んなものがあって公共投資も含まれているのですよね。
A はい。
Q それぞれで乗数が違うと思うのですが。公共投資以外は乗数が落ちるとかということはありますか。
A 確かにどの項目を増やしたら乗数が変わるということはあるとは思いますがこのモデル上ではそういった細かい点は反映してなくて、例えば公共投資を増やしたら生産性が上がるといったようなことは織り込んでおらず、単純に実質GDPの構成項目が増える事により乗数効果が発生するというようになっていまして、その点ではこのモデルは単純化しています。
Q 前回は公共投資に限っていましたね。
A 前回も同じで政府消費でも公共投資でもモデル上では同じ効果になります。公共投資だと言って生産性に与える違いは考慮してない。つまり公務員給料で払っても公共投資に使っても同じということにモデル上ではなっています。
Q 実際は違いますね。
A はい。厳密に見れば違います。
Q 平均したような感じで入っているのですか。
A そうですね。
Q ということは、内容は今回と前回とで変わっていないのですか。
A そうですね。大きな変化はないと考えています。
Q 実質GDPの1%増やすということは5兆円くらい増やすのですか。
 政府支出は100兆円くらいですか。
A 政府支出は130兆円くらいありますから5兆円は4%くらいです。
Q 5年間続けると金利が上がってくるのですか。
A そうですね。クラウドアウトしている。
Q 5兆円くらいを政府が使うから民間が使えなくなるという感じですか。
A そうですね。
Q 政府が国債を発行すれば民間の資金を取り上げることになるということですが、今マネタリ-ベースが500兆円くらいありますね。
A そうです。
Q 5兆円くらい使ってもとてもクラウディングアウトなど起こらない気がするのですが。
企業の内部留保も300兆円くらいあるし、5兆円など取るに足りない気がするのですが。日銀が国債を買っていますね。もともと年間80兆円日銀の保有残高が増えるように買っていたが、もうそんなに買えなくなりました。
A この乗数分析上はゼロ金利は外しています。
Q ゼロ金利ではないんですか。
A はい。だから金利が上がっています。今のゼロ金利を維持するための国債の買い入れ額をそのまま維持するという形ですね。
Q 経済財政の中長期試算も出していますね。
A はい。
Q その試算だとゼロ金利は暫く続けるとなっていますね。
A はい。
Q このようにトントン金利が上がっていくようにはなってないですね。
A はい、なってないです。
Q それと整合性はどうなっていますか。
A 乗数の考え方は、今のゼロ金利をするために日銀が手を打っている内容をそのまま続けます。ただしこの乗数のショックを与えたときには、この場合だと資金需要が高まったので国債を売りますという新たな経済の動きに対応して日銀が対応することは無いということです。今の買い入れ額をそのまま維持するということです。
Q 買い入れ額は年によって随分変わっていますね。年間80兆円と言っていたのがどんどん下がっていますね。もう買えないから下がっているのであって、財務省がもっと国債を出してくれれば買えるようになる。これを見ると物価の値上がりも僅かです。もともと2%のインフレ目標ですから、その目標に達するまで国債を買うと思います。もしも経常赤字が続いていてもうカネがないという小さな国であれば資金を民間と政府で取り合いにあって、国が多く使うと民間が使えなくなるという状況になるのですが、日本はそういう状況にはありません。
A そうですね。
Q 現実離れというか、日本の経済を表しているように見えず、これはどこの国の経済だろうと思ってしまいます。日本経済に即した計算をしたほうが良いのではないですか。日銀も長期金利の誘導目標を2016年に0±0.1%、2018年に0±0.2%としましたが、現在は長期金利0.03%くらいでしょうか。非常に低いですね。日銀のホームページにも書いてありますが、マイナス金利と大規模な国債買い入れが長期金利全体に影響を与える上で有効と、つまり長期金利はコントロールできると日銀も宣言している。だからこと長期金利の誘導目標を0%と高らかに宣言した。日銀はやりますと決意を言っている。金利が上がってきたら下げる。ずっと下げるわけでもないでしょうが景気が回復するまで下げると言っているわけですから、それに即したモデルにしなければまずいと思います。
A 実際に金利が上がってきたときは対応するでしょうが、モデルでは日銀の主体的な行動といったものは織り込んでおらず、単純にモデルの動きを示しています。
Q 日銀がゼロ金利を続ける場合と続けない場合との両方を出した方が良いと思います。かなり影響があるでしょう。金利が経済に影響するしGDPにも影響します。
A そうですね。
Q 金利が上がったらどうなるかも8番目に計算してあります。
A はい。
Q 金利が上がれば経済が減速するが、経済を減速させなければならない状況かということです。消費者物価が少ししか上がってないのでこのくらいの景気対策ではまだまだでしょうから金利を上げる必要はありません。短期金利も長期金利も0%にしておくと状況はかなり変わってくるでしょう。
A そうですね。この乗数表自体はモデルの挙動を単純に見ることが主旨です。
Q 現在の日本経済の実態を表していないと思うのですが。
A 8番の乗数で金利を上げたときの影響が示してありますから、それと合わせて見て頂けるとよいかと思います。
Q ですから金利が上げなければもっと経済がよくなっていただろうというのは分かりますね。
A そうですね。2と8の乗数を組み合わせれば分かります。
Q 金利が上がれば円高になりますね。
A そうです。
Q 金利を抑え続ければ、円高は阻止できる。つまり金利を抑えた方が経済にとってはよいですね。
A そうです。
Q デフレ脱却が大きな目標ですから。
  2010年の試算では輸出が大きく増えている。今回の試算では輸出はほとんど変わらない。
A そうですね。輸出の周りは若干モデルが変わっていて、昔のモデルは輸出を考える時に為替の他に輸出余力というのか、GDPギャップがあって生産過剰のときに輸出に回すといったことにしていた。今回のモデルはそれは考えてない。
Q 両方のモデルともGDPギャップは下がって行きますね。
A じつは、2010年度版はGDPギャップの符号が逆になっています(定義がマイナス1倍という意味)。つまりプラスが供給超過を表している。今回はプラスが需要超過になるようにした。
Q 前回のものは長期金利は5年間ほぼコンスタントだったが、今回はどんどん増えていく。だから前回に比べクラウディングアウトが強く効くということですか。前回は日銀は異次元の量的緩和してなかったし、今回はしてますからその意味では今回のほうがクラウディングアウトは起きにくいと思うのですが。
A そのへんの日銀の努力は考慮に入っていなくて物価とGDPギャップの関係を捉えていて、金利が上がり続けるのは物価の動きを反映しています。物価が高くなるのでそれに引きずられて金利も高くなる。ただGDPギャップが修復に向かっているので、これをもっと伸ばした場合は徐々に戻っていくと考えられます。
Q 可処分所得は最初の年が0.60%で5年目は1.03%となっている。つまり可処分所得は増える。ところが消費は減っていって、4年目、5年目はマイナスになっています。これはどうしてですか。
A これは物価が高くなっているので消費性向が下がっているからです。
Q 物価が上がれば可処分所得が増えても消費が減るのですか。
A 物価が上がれば消費の意欲が減っていくということ。
Q 実質の可処分所得が増えれば消費は増えるのではないですか。
A 実質が減るのもありますし、消費者が消費をしようという動機も減る。
Q 動機までがモデルに入っているのですか。
A 消費者物価が期待物価より上がってしまうと今買うのを止めようということになります。
Q 心理的なものまでモデルに入っているのですか。
A そうです。
Q 設備投資も同様ですか。
A これは金利が上がった影響ですね。金利が上がって借りられなくなる。
Q 借りられなくなると言っても内部留保が300兆円もあるのですよ。借りなくてもいいじゃないですか。銀行は貸さないかというと今は融資先を見つけるのが大変な状態です。国が僅か5兆円の国債発行をしたところで、日銀が毎年何十兆円も円国債を買っています。それを考えたら5兆円など雀の涙で、ここに考慮すべきでは無いと思いますが。
A 直近まで回帰した結果こうなりました。
Q これは小さな国で、経常赤字が続いていてお金を出せないというような国で、民間と国がカネの取り合いをしているというようなモデルですね。
A 2016年まで回帰しています。80年代から2016年まで回帰していますから。昔の影響も多少捉えています。
Q 昔の状況は参考にならないと思います。状況は違うでしょう。マネタリ-ベースが500兆円というのは大きいでしょう。日銀当座に400兆円も入っています。それを使おうと思えばいくらでも使えるわけで、それに比べ5兆円というのは取るに足りないと思います。国債の品不足というか取り合いになっていて資金不足どころか資金がもの凄くだぶついています。もともとこんなマネタリーベースは要らないですね。昔はマネタリーベースは全然少なかった。数十兆円で十分だった。それで足りるのだけど、異常な異次元金融緩和をやっていて大変なカネ余りになっている。
A モデルに反映しているのはフローなので、ストックは反映されていない。そういうところもあるかもしれない。
Q 現在の実情にあってないですね。
  公債等残高ですが、政府支出を増やしたら、普通の人は借金が増えるだろうと思うのですが、この計算ではGDPのほうがもっと増えるから、債務のGDP比は1年目は1.62%減少、2年目は1.11%減少、3年目も0.35%減少です。4年目、5年目は増加になってますね。
A そうですね。
Q だんだん借金が積み上がってGDPの増加ではまかないきれなくなってくる。これが金利上昇がかなり効いていて、金利上昇で名目GDPも押さえられているし、税収の増加も抑えられている。もし金利上昇が無かったらもっと物価も上がるだろうし名目GDPも増えます。この場合4年目、5年目もマイナスが続くと思います。
A そうですね。分母が大きくなるので改善しますね。
Q ですから政府支出を増やす事が果たして将来世代へのツケを増やす事になるのかという事ですね。むしろ減らすのではないかと想います。
A はい。
Q 乗数そのものがこのモデルでは小さすぎる気がします。他のモデルでは乗数はもっと大きく、名目GDPももっと増える。日経NEEDSなどで計算してももっと大きな乗数になり、GDPがそれだけ伸びると公債等残高のGDP比がもっと大きく減っていく。
A はい。
Q であれば、政府支出を増やせば将来世代へのツケは実質的に減っていくと思うのですが。
A このシミュレーションだと実質GDPがだんだんショックを与える前の値に収束していく。長い目でみると、つまり20年、30年というような先を見ると同じような水準になって・・・
Q どうしてそうなるかと言えば、民間と政府で資金の取り合いを行い資金が足りなくなる。政府が資金を使いすぎると民間は使えなくなるから結局政府がやってもやらなくても同じになるという考えですが、実は資金はマネタリーベースを見れば500兆円もある。だから5兆円を政府が使っても民間の資金を取り上げているということにはならない。政府も使うが民間も使ってくれと言っているのです。国は異次元緩和で資金を供給しているし、まだまだいくらでも資金を供給できると言ってなんとか2%のインフレ目標を達成しようとしているわけです。民間がなかなか使わないので政府が率先して使うとGDPが増える。限界はありません。
A いずれにせよ、需給はだんだん収束していくように調整されていくので名目GDPが増えても潜在GDPが上がらないとだんだん潜在GDPに収束していきます。
Q でも、潜在GDPがなんであれ、物価が上がれば、名目GDPが増え、債務のGDP比は減ってきますね。
A そうですね。
Q 実際、もっともっとインフレ率の高い国だと債務のGDP比は日本のように200%などではなく30%、40%程度に収まっています。どうして収まっているかといえばそれはインフレのお陰ですね。だからインフレが進めば債務のGDP比はあっという間に下がってしまう。今、債務のGDP比が200%くらいだけど、これが300%、400%というように上がっていくかというとインフレが進めば絶対にそんなにならない。インフレ目標2%に達することができれば1000兆円の2%は20兆円ですから、2%のインフレ率なら何もしなくてもその程度借金を減らしたことになる。
A そうですね。
Q だからインフレが進めば、公債等残高のGDP比は減っていく。だから景気対策として政府支出を増やした方がいいという結論になりますよね。
A ちょっと、バランスの問題ですね。公債を減らすだけのインフレができるのであれば・・・
Q 借金を返すと言っても今財政黒字にはできないですよ。黒字にすればもの凄いデフレになります。公務員の給料も払えなくなります。ワニの口と言っていますが、財政黒字になるほど歳出削減をするのは無理でしょう。
A 歳出削減だけでは無理ですね。
Q 歳出削減と増税をやっても借金を返せないです。この試算の結果によれば10兆円の歳出削減をするとGDPが大きく下がりますから借金のGDP比は増えますよね。
A はい。政府支出を減らすのですから債務のGDP比は増えます。
Q 1年目が終わりまた2年目も同じようにやればまたGDPが減り債務のGDP比は更に増え、悪循環でデフレはどんどん進むだけで結局債務のGDP比は減ることはないですね。
A そうですね。下手するとそうなることもあり得るということです。
Q この計算では債務のGDP比が4年目、5年目にはプラスになるとありますが、例えば3年目になったときに、また乗数を計算してみるとやはり同じような乗数が得られると思いますよ。そこで政府支出を増やすのがよいのか、減らすのがよいのかと考えると、やはり増やした方が債務のGDP比を減らすにはよいということになると思います。4年目、5年目がプラスになっているというのがミスリーディングで、クラウディングアウトというトリックを使ってわざと景気を悪くしている。そのトリックは通用しない。日銀はいくらでも国債を買えるので少しでも金利が上がってくれば国債を買い増せば良いだけです。財政出動を拡大していけば景気は良くなる。ある程度景気がよくなると、日銀当座に400兆円を貯めていくのが馬鹿馬鹿しくなってお金を使い始める。そうすると景気が加速度的に上昇する。
A モデルはプレーンな状態でやっているので、実際の経済はいろんな制約とかある。
Q 将来への期待を入れる。例えば物価が上がってきたとする。その時マネタリーベース500兆円がそのまま塩漬けにしておくわけないし、皆さんほぼゼロ金利で銀行に預けたままにしておくわけない。何か運用しようとする。景気が良くなってきたら株も上がる。その時お金が動き出す。ある程度のところに行けば皆さん将来に期待してお金を動かし始める。
A どういう支出をするのかという問題になってきますね。
Q モデルも考えなくてはいけないのではないか。
A 恒に改善は行っているところであります。
Q 日銀はゼロ金利を維持するが、ある程度景気がよくなって物価が上がってきたらゼロ金利をいつまでも続けるわけにもいかないでしょうから、それも考慮しなければいけないでしょうね。中長期試算は来月あたりに出ますか。
A そうですね。今のところは今までと同じような形で、
Q 毎年毎年名目成長率などは下方修正をずっと続けていますが。
A はい。
Q もっと実際に即した試算を出して頂ければ政府もいろいろ考えるのではないかと思うのですが。この試算を見て政府が今の政策で良いのだと思ってしまう。ちょっと成長率が上振れしすぎていて、これはまずいのではないかと思います。もっと実情を反映したもっと厳しい現状を説明し安倍さんを説得して頂いた方がよいのかと思います。2番の乗数を見て頂いて歳出を拡大した方が良いのでは無いかと気付いてもらいたい。消費増税をやるような時じゃないでしょ。財政拡大で将来世代へのツケはむしろ下がるということを安倍さんが知ればやるきになるのではないかと思います。乗数を出して頂いたことはよかったと思います。2010年からずっと出ていませんでした。
A そうですね。
Q これから毎年乗数を出しますか。
A ちょっとそれは分かりません。
Q 有り難うございました。今後も頑張って下さい。

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2018年12月 9日 (日)

AIが人類を生活のための労働からの解放する【解放主義社会】(No.328)

AIの進歩は著しい。数十年後には雇用はほぼすべてAI/ロボットに奪われていると予想される。ロボットばかりの巨大な独占企業は労働者を雇わなくても良く、莫大な利益を上げ続け規模が拡大し続け、国への影響力もつけてくる。一方で労働者は不要となり、失業者が激増する。そこでは人間はAI/ロボットではできないような仕事を探さなければならないのだろうか。AI/ロボットが究極まで進化した場合、一般人がそのような仕事を見つけるのはほぼ不可能である。そうであれば、多くの人は失業し「働かざる者食うべからず」ということなら、大部分の人は飢え死にしなければならない。小さな政府が良いのだと決めつけ、市場を神の見えざる手に任せておけば良いと考えていたら、人類の未来は地獄だ。しかしながら、国が何らかの方法で国民にお金を配ることさえできれば誰もが安心して生活できる。だから国民全員一律に一定額を配布するというベーシックインカムという方法が提案されている。しかしそれには労働意欲が失われ、巨額の財源を確保するのが難しいというような様々な欠点があり、その対案として筆者は別な社会制度(解放主義社会)を提案する。

 

 

解決策はAI/ロボットばかりいて人を雇わない巨大企業を国有化して、その利益は国民に還元すればよい。労働はすべてAI/ロボットに任せ、人間は各人がやりたくなる仕事ができるようなシステムを政府がつくり公務員として雇えば良い。例えば作家、タレント、小説家、俳優、評論家、記者、料理人、デザイナー、科学者、研究者、発明家、音楽家、カメラマン、芸術家、陶芸家、園芸家、棋士、落語家、プロスポーツ、教師、等がある。現代では、このような職に就こうと思えば競争に勝たなければならないが解放主義社会では競争に勝てなくても自分が好きな職業に就けるようにする。社会主義あるいは共産主義社会では平等を重んじ、弱い立場の労働者の権利を守ろうとした。その結果頑張る人も頑張らない人も平等に扱われだ。それなら頑張らなくてもいいいと人は考え生産性が落ちて国全体が貧乏になった。解放主義では頑張る人の報われる社会である。必要に応じ国が国民のために雇用をつくる。このことをJOD(Job-on-Demand)と呼ぶことにする。

 

ベーシックインカムという方法では、国民全員に同じ金額を毎月支給するので、行政コストが安いというのがメリットとされる。しかし、未来社会では行政もAI化され、コストはかからない。各人の仕事ぶりがデータ化されそれをAIが評価し、給料を決める。最低の給料でも十分暮らしていける。例えば多くのファンを持つ歌手であれば、収入は多いのは現在と変わらない。コンサートで入場料を取り、その一部が歌手の収入となる。ヒット曲の出ない歌手であっても、暮らしていけるし時々国主催のコンサートを開いて貰える。人間そっくりのロボットが歌手としてデビューするからプロ歌手のライバルとなる。国は豊富な財源を持つので、様々な分野の研究を大々的に行うようになる。ただし研究においてもAI/ロボットが人間を上回るようになる可能性はある。

 

各人の給料は、様々な要素を調べ回帰分析でAIが決定する。給料を決定する要素としては

①労働時間 ②その仕事が社会的にどれだけ必要とされているか ③他の人からどのように評価されているか ④例えばプロ野球の野手なら打率、ホームランの数、盗塁数など

⑤他に収入があるかなどである。最低限の収入を保証するのだからベーシックインカムの考えに近いが頑張れば収入が上がるのでインセンティブになる。自分で十分稼げるなら公務員にならなくてもよい。公務員でありながら別の仕事で稼いでもよいが副業と公務員の収入の合計がいくらになるかはAIが判断する。AIはどのようにすれば国民が最も幸せになるのかを判断し給料を決める。

 

政府のAI化も進めるべきである。現在の日本政府は国の借金を減らすことばかりを考えている。これは政府の重大な判断ミスであり、これが日本経済を衰退させている。実際日本の対外純資産は世界一であり、世界一の金持ちの国なのだから、政府はもっとお金を使っても良い。AIならこのような初歩的なミスはあり得ない。国の借金が今の10分の1であり財政は全く健全であった1982年に政府は財政非常事態宣言を出している。

http://ajer.cocolog-nifty.com/blog/2018/12/no327-c485.html

 

そもそも国の借金というものである。日本の国の借金は過去コンスタントに増え続け、過去130年間で500万倍になっている。

http://ajer.cocolog-nifty.com/blog/2018/05/no301-a00c.html

国は通貨発行権を持っており国は借金をする代わりに通貨を発行して経済活性化を助けることもできた。経済成長には通貨を増やしていくことが必要であり、それは成長通貨と呼ばれる。実際江戸時代には毎年のように通貨増発(改鋳)を行い経済を活性化させていた。

http://ajer.cocolog-nifty.com/blog/2013/12/post-7af5.html

 

通貨増発を始めると止められなくなり、最終的にはハイパーインフレになると言われることがある。これは人間が行った場合であり、AIが経済政策を行う場合は全くその心配はない。日本経済は政府がバブルを崩壊させて以来現在まで経済成長はほぼストップした。これは完全な政策ミスであり、もしAIが経済政策を担当していたら今頃日本のGDPは現在の約2倍になっていたと考えられ、AIに経済政策を任せる意義はきわめて大きい。

 

国民の声を政治に反映させるという意味においても現在はうまくいっていない。国民のごく一部が政治家に陳情し、そのうちのごく一部が行政に反映されるだけで、強力な圧力団体を持つ場合が特に優遇される。

未来における解放主義社会では政府はAI化され、国民全員がネットで陳情できる。膨大な陳情データをAIが分析し、国民の幸福を最大化する予算配分を定める。景気刺激のためには公務員の給料を引き上げれば良く、不況にはならないし、国民に不安を与えない。死ぬまで公務員給与は支払われるから年金も不要となる。

 

社会主義思想では平等な社会を目指し、労働者の権利を守ることに重点が置かれたが、未来の解放主義社会では、AI/ロボットの登場によりつらい労働からの解放、貧困からの解放をする。

 

 

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日本は1982年から財政非常事態だった??(No.327)

―国の借金は僅か96兆円なのに、首相は引責辞任―

 ここに示すのは、1982年の朝日新聞の記事である。これは非常に面白いのでここで紹介する。

結論から言えば、1982年から日本の財政は「非常事態?」であったそうだ。その当時国の借金はたった92兆円。これで非常事態?!と、今なら笑ってしまうだろう。1982年から現在まで、借金が10分の1の頃から毎年財政危機を言い続けてきた政府・財務省。まさにオオカミ少年だ。通貨発行権を持ちお金が無ければいくらでも刷れるのに、財政危機などあるわけがないのに、どうして国民は騙され続けているのだろうか。

「財政非常事態宣言」が出された1982年の新聞を読むと面白い。現在とそっくりで、「財政危機」という存在しない魔物におびえているのだ。魔物は存在しないのだが、それに対する恐怖感が日本経済をじわじわ破壊している。当時(1982年)の新聞の記事を紹介しよう。9月2日の1面には「国債償還政策を転換 大蔵省方針」とある。赤字国債は10年で返す方針だったが、返しきれないので借換債を発行する方針にしたのが、政策転換だった。これを新聞では「財政“サラ金地獄に”」と酷評してある。

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このように朝日新聞は恐怖を煽る表現をとっているが、その後現在まで借金を増やし続け、残高が約10倍になるまで増やしても、利子は下がる一方というのだから、サラ金ならあり得ないことだろう。全く当時から新聞は無責任だったということだ。恐怖を煽ることをせず、経済の健全なる成長を第一に考えて経済財政運営を行っていたら、今頃日本は世界で最も豊かな国であり続けていたことは間違いない。

当時は不況だったようで、9月10日には「景気対策を急げ」と安倍通産大臣と河本経済企画庁長官が迫ったが、鈴木首相や渡辺蔵相は消極的だったとある。二階堂幹事長や公共投資推進議員連盟会長の金丸氏が9月中に景気対策を取りまとめ政府に申し入れたいと言っている。僅か96兆円しか国の借金は無かったのだから、思い切った景気対策をやっておけば、景気は回復し、税収が増えて財政は健全化しただろうが、実在しない魔物への恐怖感がじわじわ影響力を増してくる。

その証拠に9月16日に鈴木善幸首相は、財政危機を国民に訴え、不況にも拘わらず国民に負担増を要請している。新聞には「人事院勧告は凍結の方向を示唆」「厚生・国民年金 物価スライド中止、歳出削減大蔵方針、恩給・共済も凍結へ」と厳しい経済政策の見出しが並ぶ。こんな政策は不況の時にするべきではない。世界経済が世界的高金利のお陰で停滞し、それが日本を襲い歳入欠陥は5~6兆円に及ぶ。景気後退で、自民党の支持率も落ち不支持が支持の2倍になった。

朝日新聞の9月2日の社説には「歳出削減に小細工するな」とある。2年後となる「昭和59年に赤字国債からの脱却」という公約を鈴木首相がしていたわけで、それを達成するには、来年度2兆円の赤字国債の減額をしなければならないとある。財政当局は「ぜい肉はおろか、骨まで削る」ことをスローガンにした。その後、「骨の髄までえぐり出す」とまでエスカレートした。

現在の僅か10分の1程度の国債残高で過剰反応をしているのは滑稽に思える。しかし、このとき政府・財務省が気にしていたのは利払いなどに必要な経費が、この年の予算で7兆8000億円に達していたことだ。これは公共事業費の6兆7000億円を上回っていた。現在は国債費は23兆円、そのうち利払いは10兆円程度なので、借金が少ないわりに、利払いは随分多いことが分かる。それもそのはず、1982年の公定歩合は5.5%、長期金利は8%程度だった。現在長期金利は0.1%程度だから同額の国債でも利払いは数倍にもなったわけだ。現在の国の借金残高で当時の金利なら毎年の利払いだけで50兆円を越し、税収と同額レベルになっただろう。つまり政府は景気が回復し金利が上がっては困ると考えており、これでは日本経済は衰退するばかりだ。

鈴木首相は9月16日の午後「財政非常事態宣言」をした後、記者会見をしている。そこでは来年度予算では聖域を設けず歳出カットをしていく。同時に特別会計から一般会計への繰り入れ、国有財産の売却、特殊法人からの剰余金の繰り入れなど、最近まで政府が言っているようなことをそのまま述べている。そして赤字国債からの脱却という公約が守れそうにもないということで、鈴木首相は10月12日に責任を取って退陣することを表明している。

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「財政危機」という、想像上の魔物に1982年からずっとおびえ続けてきた日本。その間魔物は日本人の心の中に存在し続けたが、誰も見たことがないし、そんなものいるわけないのだ。なにしろお金を刷れば、簡単に魔物は退治できるのだから。しかし、魔物に対する恐怖感で日本経済は確実に衰退の一途を辿っている。1982年には、なんとこの魔物が首相の首さえ奪った。こんなことで、首相の首が飛ぶようでは、首相の首はいくつあっても足りない。当時のレベルでは世界的に見て、この借金のGDP比が決して多いとは言えないし、外国から借りた借金ではないのだから、諸外国同様何の気にする必要は無かったし、もちろん責任を取らなくても良かった。

そろそろ、架空の魔物におびえるのをやめたらどうだろう。国の借金(外国から借りたわけではないのだ)のことは忘れて、むしろ経済を活性化するには、どの程度減税をし財政支出を拡大するのがよいかを、マクロ計量経済モデルで徹底して分析し、その結果に従って経済政策を行う時が来たのだと思う。

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2018年12月 3日 (月)

IMFの「40年後日本のGDPが25%減」という説に反論(No.326)

IMFは11月28日に発表された報告書で「日本は人口減によって今後40年で実質GDPが25%以上減少しかねない」との試算を示した。2058年のGDPを予測したと豪語している。要するに日本の財務省がIMFという名を借りて「移民を大量に入れないと大変なことになるぞ」と脅しているのである。しかし人口が25%減少しGDPも25%減少するのなら一人当たりのGDPは変化しないのだから主張はおかしい。

日本の未来に関しては、専門家の見解は収束しつつある。その代表例として鈴木貴博著『仕事消滅』から引用する。
①2025年には自動運転車の普及によりタクシードライバーや長距離トラックのドライバーの仕事が消滅する。これは123万人の雇用に相当。同じ頃、デイトレーダーの仕事も消滅。
②2030年頃パラリーガルと呼ばれる弁護士の助手の仕事、銀行の融資担当者等の仕事がAIにとって代わられ消滅する。
③2045年から2050年頃には人間と同じ能力を持つロボットが実用化される。そのとき人類の90%の仕事が失われる。

人口問題研究所の予測では2058年の日本の人口は9377万人であり現在より約25%減少する。25%人口が減れば25%GDPが減るというのは単純過ぎる計算だ。人類の90%の仕事をAI/ロボットで代替できるのであれば、少なくとも25%の人口減少は生産には何ら影響しない。それどころか、人が有り余るわけだから、外国人など入れるべきでは無いということになる。90%の仕事がAI/ロボットに奪われた経済はどのようなものかを具体的に仮定しなければGDPは計算できないはずだ。

実質GDPが40年間下がり続けるという国は見たことない。日本も40年前に比べれば実質GDPは約2倍になっているし、60年前に比べれば10倍以上になっている。今後、AI/ロボットが次々と人間の仕事を奪うとなれば、生産性は激増するわけだから実質GDPが上がらないわけがない。日本経済は成熟しているからもう発展の余地はないと言う人がいる。しかし、一人当たりの名目GDPは先進国では最低だからまだまだ成熟していないし、米国など日本よりはるかに成熟している国もずっと高い成長率を続けている。

AI/ロボットで人手が不要になれば、人件費が浮くわけだから財・サービスの値段は下がる。例えば自動運転車によるタクシーなら料金は7分の1になると言われている。例えば物価が平均で50%下がったとし、しかもベーシックインカムなど使い可処分所得は変わらなかったとしよう。消費額も変化しないから名目GDPは変わらないが、物価が2分の1になれば、実質GDPは2倍になる。今月から4K8Kテレビの放映が始まった。NHKの受信料も来年、再来年と4.5%程度値下げをする。携帯料金も下がりつつある。パソコンもデジカメも多くの家電も性能は上がり、その割に値段は上がらない。これらは物価を押し下げ実質GDPを押し上げる。全日本、いや全世界の人々が協力して暮らしを豊かにしようとして絶えず努力しているわけであり、40年間実質GDPが上がり続けることはあっても下がり続けることはあり得ない。もし本当に下がり続けるとしたら、それは実質GDPが暮らしの豊かさを表す指標としては相応しくないということを証明するものとなる。

ここで言いたいのは、財務省はIMFという名を借りて欺瞞的な試算を出すべきでないということだ。

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