2017年12月11日 (月)

無料低額宿泊所とミニマムサプライ(No.277)

物が溢れている時代に我々はいるのにも拘わらず、一方で生活困窮者がいる。溢れた物を集めて国営商店を通じて生活困窮者に配布するシステムが筆者が提案するミニマムサプライだ。このことはすでに以下で説明した。

http://ajer.cocolog-nifty.com/blog/2017/07/post-240c.html

http://ajer.cocolog-nifty.com/blog/2017/08/no262-a489.html

生活困窮者に対する支援は生活保護やフードバンクなど様々な形で行われているが、これらを統合しシステマティックに効率的に行うべきだというのがミニマムサプライの考え方だ。

 

食糧や生活必需品に加え考えなければならないのが住居である。これに関して無料低額宿泊所というものがある。これは1951年に受け入れ開始し生活困窮者のために無料、または低額で住む場所を提供する社会福祉事業である。個室の床面積は7.43㎡以上、使用料は月5.37万円以下と定められている。しかし現実は生活保護費のピンハネが横行、劣悪な居住環境になっている場合が多くある。現在首都圏を中心に全国537カ所、入所者1.56万人、生活保護受給者 1.41万人となっている。国が定めた基準を満たさず、生活保護費をピンハネするケースがあり問題になっている。

男性Aの宿泊所の例:

木造階建ての空き家をベニヤ板で区切り30人が暮らす

月額約13万円の生活保護費の9割を居住費と食費として徴収される。

 

一方で、うまくいっている例もある。例えばさいたま市のNPO法人「ほっとポット」である。空き家の戸建て民家16軒を使った施設を運営している。計69人の高齢者らがグループホームの形態で生活し、全部屋個室である。社会福祉士が継続的に訪問し、専門性のある生活支援も行い、個々の能力に応じた生活安定を目標に生活支援もする。

 

このような成功例をベースにして、国が空き家を買い取って、無料宿泊所を提供するとする。食糧や生活必需品等は無料の国営商店から調達する。このようなシステムを最初は小規模につくり成功実績ができれば全国に広めることにより、生活保護費に多少プラスした程度の費用で多くの生活困窮者が救えるのではないだろうか。

 

2017年2月現在、生活保護を受けているのは163万世帯、214万人であり全体の1.69%である。生活保護費は総額3.7兆円でその約半分は医療費となっている。ベーシックインカムとして一人当たり毎月1万円配るとすると、年間14.4兆円が必要となるが1万円では暮らせない。生活困窮者にはあまり助けにはならない。中流階級の人には少し助けにはなるのだが、財源が税金だとすればプラスマイナスゼロだ。いや税金で徴収する費用と1万円を配布するために莫大な費用がかかることを考えればトータルでは大きなマイナスだ。

 

食糧配布、生活用品配布、住居提供を生活保護費を活用しながら効率的なシステムを確立すれば、生活困窮者を救う強力な手段となるし、増え続ける社会保障費の効率的な運用にも繋がる。これをベースに「労働はロボットに、人間は貴族に」という社会を構築していけばよい。

 

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2017年12月 4日 (月)

税収がバブル期並になっても全然駄目な理由(No.276)

来年度(2018年度)の税収は27年前のバブル期並だとマスコミは言う。あたかも今はバブル期並の好景気だと言いたいのだろう。OECDのデータを使って各国の歳入の比較をしてみた。
          出所:OECD Economic Outlook
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グラフから分かるように、27年前と比べれば歳入は途上国なら約10倍、先進国でも3倍前後になっていて、27年前と余り変わらないのは日本だけだ。これは名目GDPの伸びと密接に関係がある。

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この図で分かるように、諸外国では名目GDPは急速に拡大しているのに対し、日本だけは停滞したままだ。バブルの時代、日本は豊かさを実感した。やがて日本が世界一になるという期待から資金が世界中から流入し、株も土地も値上がりした。しかし、株も土地も持たない人のねたみからか、バブル=悪という論調がマスコミを支配した。持てる者と持たざる者の争いに見えた。バブルを潰せば持てる者から持たざる者へカネが流れるとでも思ったのだろうか。残念ながらバブル潰しは持てる者も持たざる者も同時に貧乏にしてしまった。世界中から集まったカネは蜘蛛の子を散らすように逃げてしまった。

バブルが崩壊し一気に貧乏になってしまった日本に、カネは戻って来なかった。これが日本だけが発展しない理由だ。しかしカネは自国で刷ればよく、それにより海外へ逃げ出したカネの穴埋めをすることはできる。その意味でお金を刷る政策であるアベノミクスは正しいのだが、増税と歳出削減による財政健全化目標がアベノミクスを台無しにした。

そもそも財政健全化目標はEUの目標を真似たものだった。EUのように独自通貨を持たない国々がそれぞれカネを刷っていくらでも使ってよいわけがないのは当然なのだが、それを独自通貨を持つ日本が真似てはいけないのは自明だ。そのEUだがグラメーニャ財務相は、ユーロ圏改革の最重要課題として、EUの財務協定(財政健全化)を成長重視の内容に改めるべきだとの見解を明かにしている(12月2日の日経新聞)。成長を生み、技術革新を後押しする公共投資は一般の歳出と分けて扱い、成長にもっと焦点を当てると述べている。

お金を刷って歳出を増やせばどうなるのか。マクロ計量モデルを使ったシミュレーションでも明かなのだが、歳出を拡大すれば経済は拡大し、歳入も増えてくる。

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この図でも日本だけが歳出を増やしていないことが分かる。結論は簡単だ。歳出を増やせば、デフレから脱却でき、GDPが増え、それに比例して税収が増え財政が健全化する。財政拡大の「実験」をして財政が健全化しなかったらどうするのかという質問が必ず出てくると思う。デフレ下で緊縮財政を行うという経済理論に反する「実験」を行って、国を貧乏にしてしまった。次は、その失敗を反省し、積極財政に転換してはどうだろう。

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2017年12月 2日 (土)

税収がバブル期並になっても全然駄目な理由(No.276)

OECDのデータを使って各国の歳入の比較をしてみよう。

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どこの国でも歳入はこの27年間で劇的に増えている。27年前の水準程度であるのは日本だけだ。これは名目GDPの伸びと密接に関係がある。

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名目GDPを伸ばしたければ歳出を増やすしかない。

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2017年11月28日 (火)

減税すればレーガノミクスの「失敗」の再現となるのか(No.275)

デフレ脱却には減税と財政出動が最適であるのは明かだ。トランプ氏による減税・財政出動は景気がかなり良い中で行われようとしている。それはレーガノミクスの「失敗」の再現になると主張する人がいる。つまり成長は加速するが、金利が急騰し投資が鈍り景気が後退するとの主張だ。しかし当時と現在とでは経済状況は余りにも違う。ましてや日本が今景気対策をすれば金利が急上昇するだろうと予測するのは見当違いだ。

レーガノミクスの理論的支柱の一つになったのが、経済学者ラッファー氏の説である。税率が100%(つまり利益又は売上げの全部を取り上げる)なら利益が全く出ないので全企業は廃業し、税収もゼロになる。そこから徐々に成立を下げていくと企業は活動を始めだんだん税収が上がってくるという説である。だから税率を下げても税収は増えるというラッファー氏の説だったが、レーガノミクスでは、減税したが税収は思うように上がらず財政赤字は拡大した。

今の日本でも減税すると税収は減るかもしれないが可処分所得の増大し消費が伸び間違いなくGDPは増加する。これに関して内閣府の試算がある。
http://www5.cao.go.jp/keizai3/econome/ef2rrrr-summary.pdf
個人所得税を5兆円減税すると名目GDPは0.54%増大し、その結果、国の借金のGDP比は0.21%PT減少する。つまり経済が活性化し国の借金は実質的に減るのだ。

レーガノミクスでは金利が高騰し景気は悪化したとされている。しかしレーガン大統領が就任した1981年のアメリカのインフレ率は11.1%であり、これを下げるために金融引き締めをせざるを得なかったのである。今の日本のインフレ率はほぼ0%でありインフレ率を上げたいのだから金融引き締め、つまり金利引き上げの必要は全く無い。少しでも金利が上がりそうになったら日銀が国債を買い増すことにより金利は押し下げることが出来る。

インフレ率も1980年頃と今では全然違う。カラーTV、ビデオ、車など普及しつつあったあの頃だが、今はかなりの物は普及してしまい物余りの時代に入っている。むしろ買う前に将来に備え貯金しておこうという気持ちが先に立つ。つまり少々の減税では買う気になれない。だからといって減税に意味がないわけではない。減税をどんどん進めると、個人の蓄えが増え、「こんなに増えたらもういいだろう」と感じるようになったら人は使い始めるし、そこまでやるしかない。1977年から1978年まで筆者はカリフォルニア大学で教えていた。私の学生の一人はトレーラーハウスを買って住んでいた。インフレ率が高いから、借金して大きな買い物をしても借金は目減りする。いくらでも簡単にお金を借りることができ、消費がどんどん拡大する社会のようだった。現在の日本とはまるで違う。

今の日本は政府やマスコミが将来不安を煽る。次々増税プランが出てきて、今貯金をしておかねば大変なことになると誰もが思っている。これは個人も企業も同じだ。こういう状況では消費の停滞が企業に新たな投資を躊躇させ経済は停滞する。これを打破できるのは、政府による思い切った減税、財政拡大だ。確かにパート・バイトの時給は上がったかもしれないが、パートには103万円や106万円といった「年収の壁」がある。それを超えると逆に収入が減ってしまうので時給が増えると逆に働く時間を減らしてこの壁を越えないようにする。だから人手不足に拍車がかかる。政府は国の発展には何が必要か真剣に考えるべきだ。

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2017年11月20日 (月)

デフレから脱却できないのに増税をする日本と、好況でも減税するアメリカ(No.274)

2019年の10%への消費増税、2013年から25年間続く復興増税に加え、年収1000万円超の会社員に対し、給与所得控除を縮小することによる増税を政府は検討している。更に年収800万円超の子どもなし世帯にも増税することや森林環境税導入という案もあるし出国税を新たに課すことが提言されている。このように次々と出てくる増税はデフレ脱却を難しくし、経済を停滞させ、財政健全化を遅らせる。世界的に見て、日本は成長率が際立って低く、増税は成長率を更に低くする。

それとは対照的に米国やEUはリーマンショックから立ち直り、金利は日本よりずっと高くなっている。それでも米国は次々と減税を行おうとしている。
①連邦法人税率を35%から20%に引き下げる。
②米企業が海外子会社の利益を米国に送る時の課税を軽減
③所得税の基礎控除を拡大
④相続税を将来的に廃止

日本は増税が好きでそれが経済を停滞させ、アメリカは減税が好きでそれが経済を活性化する。財政赤字を拡大させると日本では「将来世代へのツケ」を残すと言われ悪いことだと決めつけるがアメリカではそういった意見は聞かれないようだ。経済を活性化させ国を豊かにすることが我々が将来世代に対し行わなければならない唯一の義務だ。将来世代へのツケなど通貨発行権の行使をすれば瞬時に消える。景気はよいのだからもう景気対策としての減税は必要ないなどとアメリカでは言わない。

財政拡大はGDPの拡大に直結し、それが国の借金のGDP比を下げる。このことは内閣府の試算でもはっきり示されている。
http://www5.cao.go.jp/keizai3/econome/ef2rrrr-summary.pdf
例えば公共投資を5兆円増やしたら国の借金のGDP比は1.65%PT下がるという試算を内閣府は出している。これは公共投資でなくてもその他の政府支出の増加でも同様だ。つまり国の借金を減らしたければ、財政支出を拡大し経済を活性化するしかない。それが分かっていて減税を進めるアメリカに対し、経済を理解していない日本は緊縮財政で経済を沈滞させているため、国の借金は増える一方だ。日本人は頭がおかしいと思われても仕方が無い。

どうしても納得できない人は次のサイトで確かめると良い。
http://www.tek.jp/p/
景気対策を行った場合と行わなかった場合の比較が示してある。景気対策を行えば、借金は増えるが、増加率はそれほどでもない。一方でGDPも増えるのだが、増加率は借金の増加率を超える。だから借金のGDP比を見れば減少していく。つまり国の借金は減るのだ。国が豊かになり、国民も豊かになり、経済が活性化し、企業の国際競争力も回復しデフレから脱却できる。それに加え将来世代へのツケも減る。こんなに良い政策は他にないのだから、全国民は減税・積極財政を求め声を上げるべきだ。

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2017年11月14日 (火)

AIで周回遅れになった日本を救うための議論をせよ。(No.273)

マスコミも国会もまだ家計学園問題を議論しているが、そんな問題より遥かに重要な問題がある事を忘れている。AIで日本が周回遅れになっており。これが将来日本の発展にとって致命的な問題になりそうなことだ。

日経新聞と学術出版大手エルゼビア(オランダ)が分析した結果では、人工知能研究の論文で引用が多い機関別順位は次の通り。
1 マイクロソフト               米国       6528
2 南洋工科大学           シンガポール      6015
3 中国科学院                中国       4999
4 フランス国立科学研究センター     フランス    4492
5 カーネギーメロン大学           米国      4389  
61  東京大学                日本     1393
262  東工大                  日本      520
日本がAIの分野で大きく遅れているのは明かである。

未来社会では製造業は廃れ、ハイテク企業が世界を席巻する。世界時価総額ランキングでは1位のアップルが8731億ドル、2位のアルファベット(グーグル)が7120億ドル、3位のマイクロソフトが6417億ドル、4位のアマゾンが5326億ドルでいずれもアメリカである。中国も進出が目覚ましく6位のアリババが4676億ドル、8位がテンセントの4216億ドルでアメリカ勢を激しく追い上げている。日本の最高位は39位トヨタの1844億ドルであった。1989年、時価総額ランキング20位までに日本企業は14社入っていた事を考えれば、積極財政でデフレ脱却をせず日本経済を衰退させてしまった政治家の責任は重い。

AIを駆使した自動運転技術は社会を大きく変えようとしている。先頭を走るグーグル系のウェイモは0.36平方kmという広大な走行試験用につくられた「架空の町」で自動運転技術の開発を進めている。ここでは公道ではできない走行試験を行っている。公道ではすでに560万kmの走行試験を終えている。自動運転車の開発では日本は大きく遅れており、やがてトヨタがグーグルの下請けになるのではないかという心配の声が上がっている。

2017年度補正予算の編成作業が始まると、マスコミは財政規律・財政健全化の話を持ち出し、財政拡大を阻止しようとする。今は財政出動の必要な経済状況ではないと主張する。しかし、約20年間デフレ脱却ができず、世界の中で際立って成長率が低い日本で、なぜ財政拡大が必要ないと言えるのか。財政破綻の可能性を取り上げたがるのだが、金利がほぼゼロに貼り付いている今、何を根拠で財政破綻を恐れるのか。最近20年間財政が破綻すると脅し続けた人たちは今こそ主張が間違いであったことを認めるべきだ。そしてデフレ脱却と財政健全化につながり没落する日本を救う財政拡大を主張すべきである。

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