2017年1月16日 (月)

トランプさん、大統領を本当にやる気あるの?(No.232)

1月20日に大統領に就任するトランプ氏だが、彼は本当に大統領をやる気があるのだろうか。1月11日の記者会見も醜聞・罵倒の大統領らしくない最悪のものだった。大統領就任前から不支持率が支持率を上回っているという惨状だ。大統領職のための勉強をしているとは思えない。大統領は自らのビジネスから完全に撤退することが必要になるが、それを拒否し経営権を2人の息子に託した。こんな状態であれば、例えば海外の要人がトランプ氏の心証を良くするために彼のホテルに泊りその宿泊費を払えば、憲法が禁じる海外からの贈与や報酬に当たるから憲法違反になる。スキだらけだ。いつでも大統領を辞めて自分のビジネスに戻ろうとしているとしか考えられない。

親族を政府機関の職に採用してはならないという反縁故法に抵触すると言われているのにも拘わらず、トランプ氏の長女のイバンカさんの夫のクシュナー氏を次期大統領上級顧問に起用した。また新政権の閣僚候補を見ても、ビジネス界からの登用が目立つ。利益相反で将来追求を受ける可能性が極めて高いように思える。本当に大統領を真面目にやる気があったら、こんな人たちでなく、政治経験の豊かな人を選ぶだろう。トランプ氏は大統領より自分のビジネスのほうが重要なのではないか。

トランプ氏の選んだ次期閣僚は、次々と彼と正反対の主張をしている。彼が本気で大統領をやる気があるなら、自分と同じ主張をする人を閣僚に選ばなければ、自分の公約が実現できない。正反対の主張をする人を閣僚に選んだということは、自分の公約を実現する気はないと言っているようなものだ。例えばトランプ氏はロシアと良好な関係をもつのは良いことだと主張していたが、次期国防長官のマティス氏はロシアは第一の脅威だと言っている。トランプ氏は「米国第一主義」を掲げ「同盟軽視」とも取れる発言を繰り返してきたが、ティラーソン次期国務長官は「同盟国との関与を強める」ことを強調している。トランプ氏はテロ容疑者の尋問手段で現在は禁止されている「水攻め」などの拷問の復活を主張したが、ティラーソン氏や国土安全保障長官候補のケリー氏はそれを否定している。またCIA長官候補のポンペオ氏は「絶対にやらない」と断言した。その他、イランの核合意、TPP,対メキシコ政策、一つの中国に対する考え方など、トランプ氏と閣僚候補者とは大きく意見が対立している。

要するに彼らはトランプ氏に従わない。従うと言えば閣僚には不適切と言われ議会で承認を得られない。ということは、トランプ氏は公約を守るだけの気力はなく、公約違反を追及されれば途中で投げ出すつもりではないか。

トランプ氏の経済政策に関して言えば、積極財政という点ではアメリカに繁栄をもたらすのだが、保護主義的な政策に関しては、数限りないほどの人がやってはいけないと言っているのに馬耳東風だ。日本総合研修所の試算では、アメリカの17年度後半の経済成長率は政策によって大きく変わる。積極財政だけなら成長率は3%台半ばだが、保護政策が加わると1%台に落ちる。つまり保護政策の効果はマイナス2%だ。しかも保護主義が第二次世界大戦に発展した歴史も忘れてはならない。

トランプ氏には理解不能なのだろうが、米国が海外からの輸入を制限すれば、生産コストが上昇し、ものづくりの効率は悪くなり、価値の低い製品しかできなくなるので、国際競争力を失う。圧力をかけてアマゾンに1年半で10万人の雇用を増やすと言わせたが、その雇用によって小規模小売業が次々倒産し、それ以上の雇用が失われる可能性があることを忘れてはならない。確実に雇用を増やしたければお金を刷るとよい。そのお金で生み出された雇用ならば、確実にアメリカを豊かにするのだから。

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2017年1月 9日 (月)

トランプノミクスで経済はどうなるか(No.231)

トランプ次期米大統領がどのような政策を打ち出すのか世界が固唾を呑んで見守っている。円安・株高で、一見望ましい方向に進んでいるようにも見える。10年間で6兆ドル(約700兆円)の減税を行い、法人税は35%から15%に下げ、所得税も下げるという。  日本は法人税を37%から29.97%に下げたばかりだ。10年で1兆ドル(117兆円)のインフラ投資をすると言い、民間投資も活用するのだそうだ。

このように勇ましい積極財政であれば、デフレ気味の世界経済に好影響をもたらしそうだが、財政赤字を拡大して(つまりお金を刷って)行う積極財政ではなく均衡財政を保ちながら行うという。財源を彼が見いだせるとは思えない。米企業が海外にためた300兆円弱もの資金を米国に還流させ、国内投資を増やすのだそうだ。このお金は彼が自由にできるお金ではない。ドルを一気に米国に還流されればインフレとドル高で米企業が競争力を失う。企業の収支とは全く異なる。それよりFRBがドルを刷ったほうがずっとよい。それならドル安が進みアメリカ企業は競争力を増す。米国政府が自由になるお金なので、IT,AI,IoT等、アメリカの将来を見据えて投資すればよい。

刷ったドルで海外の資産を買いまくることもでき、アメリカが世界の警察官を続けることができる。アメリカの若者を送り出すのが嫌なら傭兵でも構わない。経常赤字・財政赤字・貿易赤字になるだろうが、それが世界経済に成長通貨を提供しデフレ気味の世界経済を活性化する。「お金がなければ刷りなさい」とトランプ氏に教えればよい。

彼は雇用創出にやけに熱心だ。2500万人の雇用を創出するという。800万人しか失業者がいないので、本当にそうなれば労働者と取り合いでインフレになり米企業が競争力を失う。条件の悪い雇用を増やすことになり労働者にとっては悪い政策だ。しかも200万~300万人の犯罪歴のある不法移民を追放するのだという。支離滅裂で国民のためになるとは思えない。

フォードが計画していたメキシコでの自動車工場建設を取りやめさせ、GMがメキシコで小型車を生産して米国に逆輸入していると批判、35%の多額の国境税を課すと警告した。トヨタに対しても脅しをかけている。これはNAFTAに違反するから、NAFTAを脱退するのか。そうしてもWTO違反になりWTOまで脱退するとアメリカは完全に世界から孤立する。イギリスもEUは離脱するが、自由貿易は死守したいと必死だ。保護貿易によるダメージがどれだけ甚大か彼は分かっていない。

メキシコの労働者の時給は米国の10分の1程度であり、メキシコの代わりに米国で車を生産すると1台あたり14万円程度高くなる。つまり車のコストに占める人件費の割合は5~10%程度だということで、メキシコでつくれば人件費の割合は1%程度ということになる。すなわち99%はロボットがつくっている。将来は100%ロボットがつくるようになるし、その時はメキシコでつくってもコストは同じだ。ラストベルトと呼ばれる地区で次々工場が閉鎖されたのはNAFTAのせいではなく、ロボットが人間に替わって仕事をするようになったお陰だ。技術革新で暮らしが豊かになっていく移行期間だ。「労働はロボットに、人間は貴族に」という考えで労働者を更に労働条件のよい職場へ移動させるのが大統領の役目だ。

メキシコから条件の悪い雇用を米国に持ち込むのではなく、刷ったお金でもっと条件の良い米国の発展を促進してくれる雇用を作り出せばよいだけだ。

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2017年1月 4日 (水)

デフレなのにハイパーインフレを恐れる政府(No.230)

この20年間、政府はデフレを恐れなければならなかったのに、なんとハーパーインフレを恐れたため、結局デフレが続いてしまったという笑い話のような悲劇が続いている。

2016年1月3日のTBSの時事放談で石破茂地方創生担当大臣は「財政規律が緩んでしまったらハイパーインフレしかないと強く認識している」と発言した。その事に対し、政府は本当にハイパーインフレになると考えているのかと質問主意書で聞くと、安倍総理からの答弁書では「ハイパーインフレは極端な物不足の時に起こるもので、現在の我が国の経済状態では発生するとは考えていない」と答えた。

日銀保有の国債を無利子・無期限のものに替えたらどうかと質問すると、答弁書では「それは通貨の信認が失われ激しいインフレを引き起こす」と答えた。つまりハイパーインフレということだから前述の答弁と矛盾する。次回の質問主意書でこの点を徹底追求する。ところでハイパーインフレはどのようなときにおきるのだろうか。

例えば戦後の賠償金の支払いなどに伴う財政赤字の急膨張で紙幣を大量発行したときなどに起きるが、紙幣発行を止めればハイパーインフレは止まる。紙幣が大量発行され、それが流通し始めると需要が急拡大し、その需要に供給が追いつかなくなればそのバランスが取れるようになるまで値上がりする。紙幣発行が止まれば、インフレも止まる。日銀保有の国債を無利子・無期限のものに交換しただけでは、国民の可処分所得は増えないわけで需要の急増は考えられない。石破氏の発言も、「財政規律が緩んだ」というのが何を意味するかはっきりしないが、「少しでも財政を拡大した場合」と言いたいのではないか。

そんなに簡単にインフレにすることができるなら、なぜ20年間もデフレを続けなければならなかったのだろう。もし日銀保有の国債を100%交換すると100%のインフレ率になるのなら、2%だけ交換すれば2%のインフレ目標は達成されるわけだろう。インフレ率2%になれば、名目GDP成長率は通常4~5%程度になるし、それによって国の借金のGDP比は4~5%減少する。失われた20年に完全に終止符を打つことができ、歴史的な大偉業になる。

しかし、国債の交換が経済に対してそのような絶大な効果を生み出すものなのだろうか。日銀保有の国債の利子は日銀納付金として国庫に返される借換債の発行により繰り延べも自由自在にできるので、無利子・無期限のものと実質変わりはない。交換によって一部の馬鹿なマスコミが騒いだとしてもそれが自分の生活には関係ないとほとんどの人は考えるだろう。それによって需要と供給のバランスが大きく崩れで深刻な物不足になるとは考えられない。可処分所得は増加しないのに、米やテレビや車の消費量が一気に何倍にもなるわけもない。あるいは、これらの生産量が一気に何分の一に落ち込んで深刻な物不足になることもあり得ない。消費者に、あるいは企業に聞いてみれば良い。全く影響がないと答えるに違いない。つまりハイパーインフレになるというのは、インフレ恐怖症と呼ぶべきで、どこかで治療をしてもらう必要があるのではないか。その恐怖症によって日本が20年に及ぶ深刻な経済低迷に落ち込んでしまっているのだから。

この恐怖症を克服し日銀保有の国債を無利子・無期限のものに交換すれば、日本国民は一人当たり1千万円に近づこうという国の借金の重圧から逃れることができ、一気に経済が息を吹き返すのである。

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2016年12月19日 (月)

家計の借金と国の借金の比較に意味がありますか(No.229)

財務省のホームページには、「国の借金を家計に例えると月収30万円で支出が53万円だから毎月23万円の赤字、その結果ローン残高は5143万円になった」という例え示しています。これって、意味がありますか。
(1)常識的に考えれば、この家庭はとっくに破綻しています。こんな家庭には誰もお金を貸しませんからすぐに破綻し、借金は踏み倒されるでしょう。これを国の借金に例えるなら国債が間もなく紙くずになるということです。国はそれは絶対にあり得ないと言います。だったら、国の借金を家計に例えることはできないのではないでしょうか。
(2)現在、日銀は大量にお金を刷って国債を買い上げることによって借金返済を行っています。自宅の離れでお金を刷って借金返済をしている家庭なんてありますか。
(3)国債を買い上げて支払った代金の多くは日銀当座預金に溜まっています。つまりこの家庭で刷ったお金で銀行から借りたお金を返済したのですが、そのお金を銀行はこの家庭に預けているのです。普通の家庭と銀行の関係と違いすぎないですか。
(4)この家庭は銀行がこの家庭にお金を預ける(日銀当座預金)ことを快く思っておらず、銀行から預かったお金の一部に金利をかける(マイナス金利)と言っています。そんな強気の家庭って聞いたことありますか。
(5)この家庭の借金の金利は自分で決められるのですね。最近は金利をマイナスにすると言い出しました。借金をしてほしければ、金利ゼロどころか手数料を払えと言っているのです。一般家庭でそんなことが言える家庭って聞いたことありますか。
(6)銀行はこの家庭に貸したことによる金利が重要な収入源になっているので、むしろ借金を急いで返して欲しくないと考えています。1つの家庭で、ここまで銀行を支配している例がありますか。
(7)この家庭は、銀行を潰そうと思えば潰せるのですね。そんな家庭ってありますか。
(8)果たして、本当にこの家庭はお金に困っているように見えますか。政府は財政が厳しいと言ってますが、この家庭はお金の調達に困っているようには思えません。

国の借金と家計の借金はあまりにも違いすぎて、例えは全く不適当だと思うのですが如何ですか。

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2016年12月18日 (日)

日銀の国債を無利子・無期限の国債に置き換えたらどうなるか(No.228)

OKWaveというサイトでこの質問をしたら、素晴らしい回答が返ってきた。これは質問主意書や予算委員会などのやり取りよりはるかにハイレベルなやり取りになったので是非紹介したいので以下に書きます。

【質問者】
衆議院議員の質問主意書で、日銀の国債を無利子・無期限の国債に置き換えたらどうかと質問したのに対し政府の答弁は「それをやると通貨の信認が失われる」というものでした。それに対し、「通貨の信認が失われると、日本国内で日本円が使えなくなり、物々交換以外の経済活動が全部ストップするということか」と再質問すると、政府答弁は「日本円が使えなくなるとは考えていない。通貨の信認が失われると激しいインフレが起きる」というものでした。つまりハイパーインフレになるだろうと言うのです。しかし過去の答弁書(内閣衆質190第39号において「ハイパーインフレ-ションは、戦争等を背景とした極端な物不足や、財政運営及び通貨に対する信認が完全に失われるなど、極めて特殊な状況下において発生するものであり、現在の我が国の経済・財政の状況において発生するとは考えていない。」と答えていますので明らかに矛盾しています。ということは、日銀の国債を無利子、無期限のものに置き換えても、何も困ったことは起きないということではないですか。

無利子・無期限の国債はもはや国の借金ではありませんから、置き換えにより国の借金は一気に半分近くに減少することになると考えますが如何でしょう。

【回答者】
『無利子・無期限の国債』を質問者さんは持ちたいでしょうか。

 「無期懲役」というのは、期限の定めがないということだそうで、囚人は十数年で刑務所から解放されたりするようですが、本件の場合の「無期限」ということは「期限が来ない、永久に」という意味でお使いですよね?

 ということは永遠に「円」に変わらないということですから、誰も持ちたがりません。税務署や自治体だけが、誰も欲しがらないような物品でも「100万円の価値あり」とか言って課税してきますが、「じゃあ税務署や市にタダで寄付する」と言っても受け取りません。

 「現金ではなくその国債で納税する」と言ったら税務署は拒否するでしょう。

 税務署もふくめ誰も買わない国債は、紙切れ(最近は紙切れも発行しないが)・数字にすぎません。そんなものを大量に抱えても、お金の代わりにはなりません。

 つまり、市中銀行が「緊急事態だ!カネを貸してくれ」と日銀に頼んでも日銀には「お金がない」という事態に陥るわけです。

 お金がなければ、取り付け騒ぎなどになっても援助ができないから、市中銀行の倒産も現実になりますし、助けてくれない日銀など市中銀行には無価値。「A銀行はB銀行を救済合併しないさい」なんて日銀が言ったって誰が従うか!、という話。

 結局、日銀は日本銀行券を印刷してお金を用意するしかないのです(インフレ要因)。

 また逆に、「インフレ傾向が出たから市中のお金を吸い上げたい」と思って、日銀が売りオペレーションをやろうとしても、銀行は「誰も買わない・利息も付かない国債」など受け取りません。

 市中銀行は「営利団体」ですから、そんなものを受け取る経営者は背任罪ですし、利益度外視で受け取らせても、銀行の金庫がカラになって取り付け騒ぎに応じられなくなります。お金を引き出しに来た人に、「代わりに無利息で永遠に円にならない国債を渡します」なんて言ったって、誰がOKするでしょう。

 ふつうは、市中銀行が押しつけられた国債を一般企業・個人に売って、銀行の金庫をお金で満たす(市中のお金が回収されてインフレが止まる)のですが、そんな紙切れは誰も買わないから、銀行にお金が戻ってくる(出回っているお金が回収される)こともない。

 かくして、日銀はインフレを事前に阻止するなど、景気のコントロールできなくなるのです(インフレ加速要因)。

 弊害はもっとたくさんあります。止めた方がいい政策です。

【質問者による反論】
江戸時代は改鋳を繰り返し通貨の量を増やして経済を拡大してきました。無利子無期限の国債を日銀に保有させることは、市場に成長通貨を供給し停滞する日本経済を蘇させる手段なのです。実際、日本銀行は大量の国債を保有しており、その利子は日銀納付金として国庫に返しています。さらに、借換債を発行しいくらでも繰り延べできますから事実上無利子・無期限の国債を持っていることと同じです。つまりこの置き換えによって何も変わることはありません。しかし、変わるのは国民の意識です。もうこれは国の借金ではなくなったと国民が考えるようになったら日本人に希望を与えるのは間違いありません。今のままだと、日本人全員が一生の間苦痛に耐えて一生懸命返済したとしても決して返せません。大増税をして恐慌に耐えたとしても返せません。そんな絶望から、この置き換えで抜け出すことができる素晴らしい政策なわけで、江戸時代の経済を発展させた政策なのです。

日銀にお金が無くなる話をされましたが、通貨発行権には限度があるのですか。第一次大戦の後のドイツも随分お金を刷りましたが、限度があったわけでなく、インフレを止めたくなったから刷るのをやめただけです。止めた瞬間にインフレは止まりました。日本もインフレ目標に達した瞬間に止めればよいだけでしょう。

インフレ傾向が出たから市中のお金を吸い上げたいと思ったら、政府がその無利子・無期限の国債を買い上げ、増税をすればよいだけです。つまり余った通貨を市場から吸い上げ、そのお金で日銀から国債を買う。つまりお金の流れを逆にすればよいだけです。これでインフレは阻止できます。弊害なんてありません。

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2016年12月15日 (木)

トランプ氏の超積極財政に市場が好意的だったこと事に関する質問主意書と答弁書(No.227)

平成28年12月1日提出

質問第179号

トランプ氏の超積極財政に市場が好意的だったこと事に関する質問主意書

                  提出者 福田昭夫

トランプ氏が次期米国大統領に選出され、超積極財政政策が発表されたことを市場は好意的に受け止めダウ平均株価は史上最高値を更新した。またOECDはトランプ氏の掲げるインフラ投資など、各国の財政政策が世界経済を押し上げると予測している。一方日本においては財政が厳しいとして1982年9月に当時の鈴木善幸首相は「財政非常事態宣言」を出し、1995年11月にも村山富市内閣時代「財政危機宣言」が出されている。国の借金のGDP比は小さかったのに本当に財政は危機的だったのかという疑問が生じるがそれに対し政府は納得できる説明を行っておらず、積極財政は悪、緊縮財政は善と決めつけている。このように政府が財政に対する異常な考えを持つ国は世界的にも例がない。財政が厳しいなどと言って国民を騙し続けた政府はひたすら緊縮財政を続けた。その結果かつて奇跡の経済復興と言われた日本経済だが、一転して失われた20年と言われる深刻なデフレ不況に追い込まれてしまった。このことに関して質問する。

1.1982年9月に当時の鈴木善幸首相により「財政非常事態宣言」が出され、1995年11月に村山富市内閣で「財政危機宣言」が出された。当時本当に財政は危機的だったのか。 

2.アメリカで超積極財政が市場に好意的に受け止められている。アメリカでは積極財政が許されて日本では許されない理由は何か。

3.日本でもアメリカと同様に積極財政に転じれば、株価上昇、デフレ脱却、インフレ目標達成、景気回復が期待できるのではないか。その場合通貨の信認や国債の信認が失われると考えているかもしれないが、アメリカでは通貨の信認や国債の信認が失われていない。

4.もしもこのまま日本が積極財政に転換せず内需拡大を怠り、一方でアメリカが積極財政を行えば、ドル高円安のため貿易不均衡が拡大する。製造業をアメリカに取り戻すと公約したトランプ氏だから、現在の日本の金融政策を円安誘導策と見なし対抗策をとると、日米の通商摩擦が再燃する恐れが出てくるのではないか。

5.アベノミクスは3本の矢ということになっていたが、事実上は金融政策だけで景気を回復しようとしていた。その理論的な支柱であった浜田宏一氏は、その考えが間違いであり金融政策だけでは不十分だったということを11月15日に日経新聞で明かにした。浜田氏の考えに同意するか。

6.ジャクソンホール会合の基調講演でノーベル経済学賞を受賞したクリストファー・シムズ氏(プリンストン大教授)が「金融政策が効果を発揮するには財政政策の裏付けが必要」と主張した。その論文を読んで浜田氏は自分の考えの誤りに気づいたという。「シムズ氏の論文を紹介され、目からウロコが落ちた。金利がゼロに近くては量的緩和は効かなくなるし、マイナス金利を深掘りすると金融機関のバランスシートを損ねる。今後は減税も含めた財政の拡大が必要だ。」というシムズ氏と浜田氏の主張をどのように考えるか。

7.浜田氏は国の借金のGDP比に関して「政府の負債である公債と中央銀行の負債である貨幣は国全体のバランスシートで考えれば民間部門の資産でもある。借金は返さずに将来世代に繰り延べることもできる。」と述べている。この考えに賛成するか。

8.政府は国民の持つ将来不安の解消のための努力を怠っているのではないかという疑問に関する質問主意書(質問第126号)の答弁書(以下答弁書という)の3及び8についての答弁は間違いである。質問主意書では「この家庭では離れで(つまり日銀が)お札を印刷することが許されていて、そのお金で借金を返している。」と例えた。答弁書では日銀による国債引受は財政法で禁止されていると主張したが、日銀が市場から国債を買うことはもちろん許されているわけであり、この答弁は間違いであると考えるが同意するか。

9.日銀は11月7日、ホームページ上で公表していた金融政策と長期金利の関係に対する見解を修正した。これまでは長期金利について日銀の金融市場調節で誘導することは「容易ではない」としていたが、マイナス金利と大規模な国債買い入れの組み合わせが「長短金利全体に影響を与えるうえで有効」と証明されたということで、長期金利を0%程度に誘導するという目標が可能であるとした。これは国債価格支持政策と呼ばれ、アメリカでもFRBは、国債利回りが上昇することを抑制するために、1942年から1951年まで米国債を買い支えた。これによって米国の長期金利は概ね2.5%以下に抑制された。この国債価格支持政策により、現在政府はほぼ0%の金利で資金を調達することができるのだから、これは財政が厳しくないことを意味しているのではないか。近い将来、金利の誘導目標が0%から引き上げられることがあったとしても、アメリカの例もあり、かなり長期間低金利に抑えられると考えられるので、財政は厳しくないということには変わりはないのではないか。

10.現在0%の金利であっても、将来金利が上がるかも知れないから財政が厳しいという論理は正しくない。将来金利が上がる可能性があるのは世界のすべての国にも言えることであり、世界中すべての国の財政が厳しくて、緊縮財政を行ったら世界大恐慌になる。長期金利が高い国は財政が厳しいが、低い国は財政が厳しくない。長期金利が低い国が率先して積極財政を行い世界経済の牽引役にならないと世界経済の発展はないと考えるが同意するか。

11.国の財政を家計に例える場合、例えば、銀行が家計Aに対し0%で金を貸すと判断し、その銀行が別の家計Bに10%の金利でなければ貸さないと判断した場合、Aの家計は厳しくないがBの家計は厳しいと言えるのではないか。その意味で現在の日本は世界で最も財政が厳しくない国の一つと言えるのではないか。

12.十二 答弁書の「一、二、四から六まで、九、十、及び十三について」で国の財政と家計に関して、それぞれの債務はいずれも期日までに返済する必要があるという共通点があると述べている。共通点はたったこれだけであり、質問主意書の二から八まで、相違点を詳しく説明した。共通点だけをホームページに書き、相違点を隠すということは国民を騙していることにならないか。

13.答弁書の12についてで、「コンバート」を行えば、通貨に対する信認を著しく損なうとある。通貨の信認が失われた場合、日本国内では日本円が全く使えなくなるという意味か。そうなれば、物々交換を除き国内のすべての経済活動が停止すると考えるが、政府はそのような事態が我が国で発生すると考えているのか。

14.答弁書の14についてで、政府の成長戦略において様々な改革を断行しているのは理解できる。ただ、この程度の改革で失われた20年からの脱却はできない。これなら経済が上向くと誰もが考え始めるようなトランプ氏並の大胆な積極財政政策を行わない限り、日本経済の停滞は続くのではないか。

15.積極的な財政政策により、国の借金のGDP比は下がるということは内閣府が平成22年8月に発表した乗数により示されている。類似した見解は2003年5月31日の日本金融学会60周年記念大会でのバーナンキ前FRB議長の講演の中でも述べられているし、二階俊博氏の二階ペーパーにも同様な記述があるが、このことに同意するか。

 

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平成28年12月9日受領

答弁第179号

  内閣衆質192第179号

    平成28年12月9日

                     内閣総理大臣  安倍晋三

   衆議院議長 大島理森殿

衆議院議員福田昭夫君提出トランプ氏の超積極財政に市場が好意的だったこと事に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。

衆議院議員福田昭夫君提出トランプ氏の超積極財政に市場が好意的だったこと事に関する質問に対する答弁書

1について

 ご質問の「財政非常事態宣言」とは、昭和57年9月16日における鈴木内閣総理大臣(当時)の記者会見を、ご指摘の「財政危機宣言」とは、平成7年11月14日における竹村大蔵大臣(当時)の記者会見を指すものと考えるが、これらの記者会見においては、極めて厳しい我が国の財政状況について国民に対し適切にお答えしたものと認識している。

2から4まで及び14について

 お尋ねについては、米国の次期政権における積極的な財政政策を前提とする仮定のご質問であることからお答えすることは差し控えたい。政府としては、引き続き、デフレ脱却・経済再生を図りつつ、適切な財政運営を行っていくべく、「経済財政運営と改革の基本方針2015」(平成27年6月30日閣議決定)に盛り込まれた「経済・財政再生計画」(以下「経済・財政再生計画」という。)に沿って、「デフレ脱却・経済再生」、「歳出改革」、「歳入改革」を3本柱として、「経済・財政一体改革」に取り組んでまいりたい。

5及び6について

 政府は、大胆な金融政策、機動的な財政政策、民間投資を喚起する成長戦略を柱とする経済財政政策を一体的に推進してきたところであり、引き続き、金融政策だけではなく、あらゆる政策を総動員していくこととしている。

 また、政府としては、経済と財政双方の一体的な再生を目指しており、我が国の極めて厳しい財政状況を放置すれば、財政の持続可能性に対する疑念の高まりが経済成長自体を阻害するおそれがあるという認識の下に、適切な財政運営を行っていくことが重要であると考えている。

7について

 お尋ねについては、仮定のご質問であることからお答えすることは差し控えたいが、一般論として申し上げれば、公債は、その保有者にかかわらず政府の債務であることに代わりはない。

 我が国の経済財政運営に当たっては、国・地方の債務残高がGDPの2倍程度に膨らみ、なお更なる累増が見込まれるなど、極めて厳しい財政状況にあることを踏まえ、経済と財政双方の一体的な再生を目指す必要があると考えている。

8について

 先の答弁書(平成28年11月18日内閣衆質192号、以下「先の答弁書」という。)3及び8についてでお答えしたとおり、財政法(昭和22年法律第34号)第5条本文においては、「すべて、公債発行については、日本銀行にこれを引き受けさせ、また、借入金の借り入れについては、日本銀行からこれを借り入れてはならない」とされている。

 現在、日本銀行が行っている国債買い入れは、2%の物価安定の目標の実現という金融政策を目的とし、同行が自らの判断で、市場で流通しているものを対象に実施しているものであり、ご指摘の「この家庭は離れで(つまり日銀が)お札を印刷することが許されていて、そのお金で借金を返している」という例えを使用することは不適切である。

9及び10について

 国債金利は、様々な要因を背景に市場において決まるものであり、その動向について言及することは市場に無用の混乱を生じさせかねないことから、御指摘の金利水準の動向を前提としてお尋ねにお答えすることは差し控えたい。

 また、我が国の財政状況は、国・地方の債務残高がGDPの2倍程度に膨らみ、なおも更なる累増が見込まれるなど、極めて厳しい状況にあり、政府としては、経済・財政再生計画に沿って引き続き財政健全化の取り組みを着実に進め、国債に対する信認を確保してまいりたい。

11及び12について

 お尋ねの「国の財政を家計に例える場合、例えば銀行が家計Aに対し0%でお金を貸すと判断し、その銀行が別の家計Bに10%の金利でなければ貸さないと判断した場合、Aの家計は厳しくないが、Bの家計は厳しいといえるのではないか。その意味で現在の日本は世界で最も財政が厳しくない国の一つと言えるのではないか。」については、国債金利は、様々な要因を背景に市場において決まるものであるため、一概にお答えすることは困難である。

 我が国の財政状況は、国・地方の債務残高がGDPの2倍程度に膨らみ、なおも累増が見込まれるなど、極めて厳しい状況にあり、政府としては、経済・財政再生計画に沿って引き続き財政健全化の取り組みを着実に進め、国債に対する信認を確保してまいりたい。

 また、ご指摘のホームページについては、こうした我が国の財政状況について国民の理解を深めることを目的として、我が国の財政を家計に例えた資料を掲載しているものであり、「共通点だけをホームページに書き、相違点を隠すということは国民を騙している」とのご指摘は当たらない。

13について

 先の答弁書12についてでお答えした「通貨に対する信認を著しく損なう」とは、我が国の通貨に対する内外からの信認の低下を通じて激しいインフレが生じるような状況を述べたものであり、ご指摘の「日本国内では日本円が全く使えなくなる」及び「物々交換を除き国内すべての経済活動が停止する」という状況になるとは考えていない。

15について

 ご指摘の「積極的な財政政策」の意味するところがかならずしも明かではないが、我が国の財政については、極めて厳しい状況にあり、デフレ脱却・経済再生を図りつつ、その持続可能性を確保することが重要である。

 政府としては、平成32年度の財政健全化目標の達成に向けて、引き続き、「経済再生なくして財政健全化なし」との基本方針の下、経済・財政再生計画に沿って、「デフレ脱却・経済再生」、「歳出改革」、「歳入改革」を三本柱として、「経済・財政一体改革」に取り組んでまいりたい。

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コメント 

1について

1982年も1995年も、日本の財政は極めて厳しかったのだそう。つまり34年間ずっと財政は極めて厳しかったのだと主張している。

国の債務のGDP比が1982年は62%、1995年は95%であった。ということは、国の債務のGDP比が62%以上なら、財政は極めて厳しいということになる。諸外国の債務のGDP比を見ると

アメリカ 105%

イタリア 138%

ベルギー 106%

スペイン  99%

フランス  96%

カナダ   91%

イギリス  88%

ドイツ   70%

オランダ  65%

というわけで、先進国は軒並み62%以上なので、財政が極めて厳しいことになる。しかし、財政が極めて厳しいなどと言って緊縮財政を続け、その結果デフレ経済が続いている国は日本だけだ。どんなに頑張っても62%以下になる可能性は無く、頑張る意味がない。62%から200%以上に増えても、国債暴落とかハイパーインフレとか通貨の信認の喪失とかという惨事は起きなかった。財政は厳しいと言ったのはウソだったに違いない。

2から4まで及び14について

トランプの積極財政が市場に好意的に受け止められたということは、「財政が厳しいから積極財政政策を行われれば大変なことになる」ということがウソであることを明確に証明することなので、答えようがなかったということだ。

5及び6について

アベノミクスの教祖が、間違えていたと言ってしまったのでは、反論しようもないですね。

7について

これはアベノミクスの教祖である浜田先生の意見であり、仮定の質問ではない。日銀が保有者の場合、利子は日銀納付金として政府に返してもらうことになっている。さらに借換債を発行しいくらでも繰り延べが可能である。その意味で政府の債務というのは適当ではない。実際家計の債務において、そのようなことはあり得ない。

8について

「この家庭は離れで(つまり日銀が)お札を印刷することが許されていて、そのお金で借金を返している」という例えを使用することは不適切だと主張するのだが、なぜ不適切なのかの説明が一切ない。だったら、適切に例えてみよ。例えられないなら、家計を国の財政に例えるのを止めよ。

9及び10について

国債金利に言及したら、市場に混乱を与える??何を言っているのだろう。日銀がホームページで長期金利の記述を変えたことを聞いているのであり、それが前回の答弁書の記述と矛盾していることを追及しているだけだ。なぜ逃げるのか。

11及び12について

何を馬鹿な事を言っているのだろう。家計Aと家計Bが銀行から借り入れをするときの金利について話しているだけで、ここでは市場に決まる金利とは全く関係ない。中学生でも分かるくらいの易しい質問だ。

13について

日銀保有の国債を無利子無期限の国債に替えてやったらどうかという質問に対し「通貨の信認が失われる」と答弁した。そうなると、日本円が国内で使えなくなり、あらゆる経済活動がストップするということかと質問したら、そうではない。ハイパーインフレになるということだと答えた。しかし内閣衆質190第39号において「 ハイパーインフレ-ションは、戦争等を背景とした極端な物不足や、財政運営及び通貨に対する信認が完全に失われるなど、極めて特殊な状況下において発生するものであり、現在の我が国の経済・財政の状況において発生するとは考えていない。」と答えているので明らかに矛盾している。

15について

質問には答えられないという答弁である。

答弁の中で「我が国の財政状況は、国・地方の債務残高がGDPの2倍程度に膨らみ、なおも累増が見込まれるなど、極めて厳しい状況にあり」という文章が3回出てくる。しかし「1について」で、債務のGDP比は62%でも財政は極めて厳しいのだと言っている。結局日本はどんなに増税をやろうと、どんなに歳出削減をやろうと決して財政が極めて厳しい状況から抜け出すことはあり得ないということを言いたいのだろう。だったら何のための増税・歳出削減か。

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