2019年5月20日 (月)

MMT理論の正しさは、マクロ計量モデルで証明できる(No.350)

米中貿易戦争で米国も中国も経済的に大きなダメージを受けている。それによりGDPはアメリカで0.3%、中国で1.2%押し下げられる。アメリカは2017年12月に169兆円もの大型減税を実施し、中国は2019年1月15日と25日に預金準備率を0.5%ポイントずつ引き下げ、約2兆元(32兆円)の減税をした。イタリアは金融緩和、フランスは家計に対する減税政策を発表している。

日本の経済成長率は世界最低レベルであり政府の景気判断は6年ぶりに「悪化」に転じた。このような時に政府は10月に消費増税を実施しようとしている。本当に消費増税が予定通り実施されたら世界の笑いものになるのではないか。それに対し最近MMT(現代金融理論)が話題になっている。これは通貨発行権を持つ政府は財政赤字を増やしても財政破綻はあり得ない。だから不況時に増税も不要であり、財政を拡大して景気を回復させるべきだというものである。

日本経済復活の会の主張は捕捉した2002年以来、MMTを更に強化したものであり、マクロ計量モデルを使い経済への影響を確認しながら経済運営をせよというもの。我々は日経の日本経済モデルを使用し財政を拡大した場合の経済への影響を詳しく調べ、その結果は
http://ajer.cocolog-nifty.com/blog/2012/03/post-8c6d.html
http://ajer.cocolog-nifty.com/blog/2012/03/no115-e161.html
に公表している。結果は名目GDP,実質GDP、雇用者報酬は上昇し、物価も穏やかに上昇するのでデフレから脱却できる。金利は暴騰することはない。国の借金は増えるが、名目GDPはもっと増えるので、結果として国の借金のGDP比は減っていくので問題ない。この試算は完璧にMMT理論の正当性を証明するものである。金利やインフレ率の暴騰を予測し、MMTを否定する人がいる。しかしそんな話は1982年の鈴木善幸内閣の時代から繰り返し出てきている。何と37年間もの間ずっとウソを言い続けているのである。これだけ予言が当たらなければその論理はウソだったことぐらい馬鹿でもわかる。オオカミ少年ですら3回目のウソには誰も信用しなくなっている。

確かに物不足の時代には国の借金残高が増えれば金利もインフレ率も上がった。しかし、今は物余りの時代だ。政府が財政支出を増やしたからと言って急に深刻な物不足になる可能性はゼロである。そもそも世界は複雑なサプライチェーンでつながっており、日本が物不足になれば、これがチャンスとばかり、外国から商品がどっと入ってくる。それにロボットによる大量生産が可能な時代、生産はいくらでも拡大でき、大量に注文が来ればむしろ値段を下げることも可能だ。

我々は日経のモデルだけに頼るわけではない。「今増税などせずに減税・財政拡大をすべき」ということは日本の運命を決する大切な結論なのだから日本中のシンクタンクが持つマクロモデルを総動員して財政を拡大したら日本経済はどのような影響を受けるのかを検討すべきである。もし財政拡大でハイパーインフレになったり金利暴騰したりするという結論が導けたりしたら、過去の景気対策でなぜそうならなかったかも説明しなければならない。一度超インフレになると止められなくなるという珍説もあるが、第1次世界大戦後のドイツやオーストリアのハイパーインフレや終戦直後の日本のインフレも為政者の決断でピタリと止まっていることを忘れるなと言いたい。

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2019年5月13日 (月)

富の集中は如何にして防ぐことができるか(No.349)

AI/ロボットが人間の仕事を奪うにつれ労働者の立場は弱くなり資本家に富が集中するのは避けられない。IT大手企業ではGAFAなどの米国勢やBATなどの中国勢などが時価総額ランキングの上位を占めるのだが従業員数は比較的少ない。米アマゾンの創業者ジェフ・ベゾスら米長者番付上位3位の資産総額は約38兆円でアメリカの下位50%の人々の資産総額約28兆円を上回る。このまま放置すれば、最悪の場合ほんの数人の資本家に大部分の富が集中し、その他の国民は奴隷のような扱いをされる可能性がある。莫大な富を持つと彼らは政府との蜜月関係に陥る可能性があり、非常に危険である。

そうならないように、真剣に打開策を考えるべきだ。第一の方法は税金で彼らの富の一部を奪って他の国民に分配することだ。しかしカネは国際間を動き回り税金の高い国から低い国へとカネは流れる。巨大企業は税金の安い国へ本店を移す。しかも増税は企業活動を難しくし、その国の経済にダメージを与える。第二の方法は通貨発行権を利用する。現在日銀は、日本株に投資する上場投資信託(ETF)を年間約6兆円購入している。日銀の保有残高(時価ベース)は3月末時点で28兆円強となった。東証1部の時価総額の4.7%に相当する。同じペースで買い続けると20年11月末には約40兆円になり、最大の株主である年金積立金(GPIF)を上回り日本株最大の株主になる。GPIFも国に属するのだから、国は日本株を合計12%以上保有することとなる。

日銀が株を買いすぎると株が下落したとき円の信認が失われると主張する人がいるが、日銀やGPIFが株を大量に買い続けると絶対に下がらないし、逆にどんどん上昇し続ける。日銀が日本株を大量に買い続けることのメリットは大きい。平成元年の世界時価総額ランキングで日本企業が上位を独占していた。日本企業は上位10位内に7社、上位50社以内に32社も入っていた。平成31年では50位以内に入っているのはトヨタだけでそれもやっと45位である。現在の日経平均は最高値の56%にまで下がっているし、この間米国のダウ平均は約10倍に上昇している。つまり現在日本株は異常に低い水準にあり、日銀が日本株を買えば正常な水準に近づけることができる。株が上がれば企業も投資しやすくなるし、投資信託を持つ国民も利益が出れば消費を拡大する。GPIFも含み益が増えればより年金財政が安定する。

それ以上に重要なことは富の一部が資本家から国に移ることだ。労働の大部分がAI/ロボットに代替された未来世界では、企業は労働者を雇わない。収入はごっそり資本家の懐に入り、資本家はそのカネをどう使えばよいのか分からなくなり、大多数の国民は失業し飢えに苦しむ。しかしAI/ロボットだけがいて労働者がいないような企業は民間経営である必要はなく、国有企業にしてもよい。国が徐々に株を買い進めていたら国有化は自然に進む。必要なら日銀が保有する株は政府が永久国債を発行して買い取っても良い。国有化が進めば企業の規模を大きくしAI/ロボット化が進めやすくなる。国有化すれば人は働かなくなるという意見もあるだろう。ある意味人はやりたいことを自由にやれて、あくせく生活のために働かなくてもよくするのが究極的な未来社会である。富が国に移れば国はそれを国民に分配することができる。

銀行の国有化が進めば通貨発行権を行使しやすくなるし、国債の暴落の危険も去り、金融恐慌など起こりえない。AI/ロボット化を進めるには大規模投資が必要であり、そのためには企業の大規模化が不可欠である。国有化して企業統合していけばそれが可能となる。農業の大規模化、AI/ロボット化を進めるためには、農業の国有化も考えるべきだ。

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2019年5月 6日 (月)

日本国の借金は完済された、今は貯めたカネを使うとき(No.348)

国の借金が1000兆円を超えたと言われることがあるのだが、これは本当の意味の国の借金ではない。これは日銀が刷ったカネで買い取れば簡単に返済可能であり、実際すでにその多くは日銀が買い取って返済している。外国から借りたカネはそう簡単ではない。なぜなら日本はドルなどの外国のカネを刷ることはできないから。

日清・日露戦争の頃は日本は外貨不足に苦しんでいた。日清戦争での勝利で賠償金3億円を得たが、それに続く日露戦争では多額の外貨を必要とし外国から借りるしかなかった。そのため1904年から1907年にかけて、借換債調達まで含め約13億円弱の外債公債を発行した。1903年の一般会計歳入が2.6億円であったのを考えると、この借金がいかに巨額であったか分かる。日本は勝利に次ぐ勝利でロシアを土壇場まで追い詰めたものの、19か月の戦争期間中に巨額の出費があり国力の消耗が激しかったので、賠償金なしの講和の提案を受け入れるしかなかった。このため巨額の借金が残り、多額の金利を含む借金返済に追われることになった。更に重工業製品鵜入を通じた大幅な貿易収支赤字もあり、デフォルトの危機に瀕していた。

しかし、その後第一次世界大戦が勃発し欧州諸国の企業がアジア市場での活動が難しくなり、その代わりに日本の商品輸出が急増し、空前の好景気となり、巨大な貿易黒字で外国からの借金返済がでたばかりでなく27.7億円以上の対外債権を有する債権国となった。しかしこの景気が永遠に続くと信じた政府はインフレになったにも拘わらず金融緩和と積極財政を続けたため、景気は過熱し投機が過熱し貿易収支は悪化した。それに欧米諸国は戦争終結で喪失したアジア市場を日本から取り戻し日本の輸出は停滞した。経済成長が輸入超過を生み、外貨は一気に失われた。

その後、日中戦争で最大100万もの兵力を中国大陸に送り、さらにアメリカ・イギリスとの全面戦争に突入し、8年間で7558億円もの戦費がかかった。この戦費は「戦争を以って戦争を養う」という考えで占領した朝鮮、台湾、満州などで現地で発券銀行をつくり通貨を発行することで、戦費を賄った。発行された通貨の信認を高めるために日本円を担保にした。ある意味で日本は借金をしたことになる。

1945年、第2次世界大戦で敗れアメリカの占領政策は懲罰的であり日本の生産設備の一部をフィリッピンに移そうとした。しかし1948年に始まった「冷戦」と1949年の中国における共産党政権の誕生を受けて、日本を共産主義の砦と位置づけた。その結果アメリカはガリオアエロア資金で日本を援助し、また発行された通貨で復興に必要な産業の育成が進み焼け野原だった日本が徐々に復活し始めた。1949年2月1日にアメリカからドッジ氏が来日した。彼は「日本経済は2本の竹馬に乗っている。1つはアメリカの援助、もう一つは補助金。竹馬の足は徐々に縮めるべきだ」と主張した。その結果財政赤字を大幅に縮小させた。日本はデフレ経済に陥り中小企業の倒産、労働者の解雇、賃金ストップなどが相次ぎ失業者は1948年19万人、1950年46万人にのぼった。

アメリカからの援助資金(ガリオアエロア)や世界銀行からの借り入れで借金まみれになった日本だが、1952~56の朝鮮戦争による特需景気になった。その後の日本経済は奇跡の経済復興と言われるほどの高成長が持続した。1960年代後半から貿易収支が黒字基調になり長い間、外国からの借金に苦しんでいた日本だが、逆に日本の対外純資産は2017年末で328兆円で世界一になった。現在日本円はハードカレンシー(国際決済通貨)と認められている。つまり額面価額通りの価値を広く認められ国際市場で、他国の通貨と容易に交換が可能な通貨とされており日本円以外は米ドル、ユーロ、英ポンド、スイスフランである。日本のように多額のカネを諸外国に貸している国の義務は、もっとカネを使って世界経済の発展に貢献する義務がある。そのためには減税と財政を拡大し経済を活性化することだ。

世界に十分な貨幣を供給しなかったために引き起こされたのが1929年から始まる世界大恐慌であった。1929年10月24日 ニューヨーク株式が大暴落し、1週間で株式時価総額で300億ドルを失なった。これは当時の米国連邦年間予算の10倍に相当し、アメリカが第一次世界大戦に費やした総戦費をも遥かに上回った。1933年までに9000の銀行が倒産し失業者は1300万人、全労働者の25%に達した。名目GDPは1929年から45%減少、元の水準に戻るのに12年かかった。株価は80%以上下落し、こちらは元の水準に戻るのに25年かかった。

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1930年 スムート・ホーリー法を定め、保護貿易政策を採り関税を大幅に引き上げたがただちにヨーロッパ諸国からの報復措置があり世界貿易は縮小していった。当時は金本位制を採っていたために、中央銀行は保有する金の量に見合った通貨発行しかできなかった。金は、アメリカに集まっていたのに、アメリカはインフレを恐れ通貨発行をしなかった。つまりアメリカが基軸通貨の役割を果たしていなかった。

現在のトランプ大統領は保護貿易の色彩が濃く、やり過ぎると世界大恐慌が再び訪れる。彼に保護貿易を止めさせるべきであるのはもちろんだが、その他の国も積極財政で世界経済が成長するための通貨を供給すべきである。しかし経常赤字が続いている国とか、巨額の債務を抱えている国はそれができない。その意味で日本は最も積極財政が出来る国である。減税と財政拡大をやれば、デフレから脱却し経済は成長し、世界経済の牽引役になれる。しかも経済が拡大すれば、将来の社会保障の安定財源も確保できるのである。

そもそも世界的な不況に対しては世界が協力して克服する努力をするべきだ。リーマショックの際には中国だけで57兆円もの景気対策を行い世界を救った。今回の不況でも中国は40兆円超の減税・インフラ投資を行う。アメリカのトランプ大統領は2017年12月、169兆円もの大型減税を実施した。それにより国民は年85万円を得た。それに加え大型法人税減税も行っている。今度は日本が大規模景気対策をする時だ。

 

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2019年4月29日 (月)

平成時代に没落した日本経済、どうやれば没落を防げたか(No.347)

平成時代は世界経済の中で日本が大きく没落した時代であった。平成元年の世界時価総額ランキングで日本企業が上位を独占していた。日本企業は上位10位内に7社、上位50社以内に32社も入っていた。平成31年では50位以内に入っているのはトヨタだけでそれもやっと45位である。現在の日経平均は最高値の56%にまで下がっているし、この間米国のダウ平均は約10倍に上昇している。この間、ドル換算でみた名目GDPは日本は1.6倍にしかなっていないが、米国は3.7倍、中国は27倍となっている。

日本を没落させたのは無理なバブル潰しであり絶対にやるべきではなかった。1990年9月、NHK5夜連続の土地問題の特集番組を放映、「地価は下げられる」で日本の地価を半分に引き下げることを提言した。1990年4月から1992年1月の間総量規制を行い、融資に枠をかけた。宮沢内閣は、年収の5年分で住宅確保できるまで地価を下げることを目標とした。地価を下げれば国民はもっと広い土地を安く買えるようになるのだろうか。日本の土地は37万平方キロメートルであって、一人当たりだとそれを人口で割ったものであり地価とは関係ない。国民を貧乏にすれば地価は下がる。実際政府は国民を貧乏にし、地価を下げた。それによって逆に住宅は建てられなくなった。バブルを潰そうとせず、土地の急騰を防ぐ対策だけにしておけば、日本は現在まで豊かなまま続いていただろうし、人はそれをバブルと呼ばなかっただろう。バブル崩壊の後始末も不要だった。

結果として1990年、株安、債券安、円安のトリプル安となり、成長を期待して世界中から集まっていた資金が一斉に国外へ逃避し逆にフランクフルト市場はトリプル高となった。結果として巨額の不良債権が発生し銀行も企業も家計もカネ不足に陥り日本経済の没落が続くこととなった。カネ不足は通貨発行権を有する政府が補えば簡単に解消できたが、政府は逆に増税・歳出削減を行った。カネ不足で成長しない日本に投資しようとする人は減り日本の没落が続いた。

例えば1995年、住専問題が注目を浴びた。これは住宅ローン専門の貸付業者がバブル崩壊で不良債権処理に苦しみ、その処理に6850億円の公的資金を投入するという閣議決定が騒動の始まりとなった。その処理に手間取る間に不良債権は増え続け、1997年には北海道拓殖銀行が経営破綻、山一証券が自主廃業を決定、1998年には長銀を一時国有化し、日債銀の破綻を認定した。1997年半ばをピークに景気は下降局面に入った。公的資金投入のタイミングが遅れたことが致命傷となった。米国が2008年リーマンショック後の世界金融危機で米国が対応したように、バブル崩壊後、速やかに銀行に資本注入すべきだった。できればこの機会に多くの銀行を国有化し統合しておけばよかった。

戦前にも1927年3月の国会審議で、当時の蔵相がある民間銀行について、営業を続けているにもかかわらず破綻したと不用意な答弁をしたことで金融不安が広がり、多くの銀行が取り付け騒ぎに遭った。その後当時の大手商社、鈴木商店が倒産した。2008年のリーマンショックも国際的な金融危機であった。このように民間銀行がネックとなって大不況が起こされている。もし政府がすみやかにカネを注入していたら、金融危機は簡単に防げた。

2018年11月日銀は資産が553兆円でGDPを上回ったと発表した。これは刷ったお金(通貨発行権を行使してつくり出されたお金)で様々な資産を買い取った結果であり、その額は住専で問題になった6850億円の約1000倍だ。国は通貨発行権を行使すればいくらでもお金はつくれる。たったこれだけで住専問題は簡単に片付いていた。1997年の金融危機などの処理も刷ったカネを使えば簡単だった。実際スティグリッツも榊原英輔もそれを推奨した。銀行に資本注入するタイミングで銀行を国有化していれば、それ以後金融不安は起こりえず、政府は何の不安もなく、財政を拡大でき、デフレ脱却、日本経済の復活ができたはずだ。そもそもバブルの発生自体、無理に金融だけで景気刺激を行おうとしたのが原因であり、金融緩和だけでなく財政拡大を行っていたら、あのようなバブルの発生もなかった。

国債の発行残高が増えてきて、日銀の国債やETFの保有残高が巨額になってくると出口戦略を心配する人が多くなってくる。余計な悩みは尽きないようだ。「景気が回復してきて利払いが増えてくると財政が破綻するのではないか。日銀当座預金の金利が上昇し日銀が損失を被るのではないか。日銀の保有する国債の価値が下がり、日銀が過小資本となれば、信用が揺らぎ、政府の支援が必要となるのではないか。銀行が保有する国債の価値が下がり、銀行が破綻するのではないか。」逆に低金利が続けば銀行が破綻するのではないかということも心配する。このような悩みは銀行が国有化されている中国ではあり得ないし、日本も銀行を国有化したら、これらの悩みは一掃するのだ。政府と国有銀行と日銀は一体となって協力し合えるし、国債やカネがこの3者の中でどのように動こうと国民はほとんど気にしなくて良い。つまり金融が極めて安定し、不況に陥る心配が極めて少なくなる。だからこそ思い切った財政政策を断行できる。失われた20年などということはあり得なかったのである。

減税・財政拡大を行えば需要が拡大し制御不能なインフレになると主張する人がいる。しかし平成の30年間で米・ビール・一般家具・背広服・ネクタイ・男性用下着・スカートなど多くの品目で支出額が大きく減少している。これらは供給が追いつかなくなったというより、供給にはまだ余裕があるが、需要が不足していることや生産の効率化や海外からの調達が進み価格が下がったことなどが原因だろう。逆に支出額が大きく伸びているのは通信費だが、これも需要が増えれば価格が暴騰するという性質のものでもない。ということは供給に余裕があり、需要拡大でも制御不能なインフレになるわけがない。その意味で平成時代、財政拡大で需要不足を補うべきだったし、今でもそうすべきだと言える。

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2019年4月22日 (月)

日本の銀行を国有化せよ(No.346)

平成元年には世界時価総額ランキングの上位に日本の銀行がずらり並んでいた。2位が日本興業銀行、3位が住友銀行、4位が富士銀行、5位が第一勧業銀行、7位が三菱銀行であった。それが平成31年になると没落が著しい。合併したにもかかわらず上位50位以内に日本の銀行はいなくなった。バブル崩壊で不良債権処理に苦しみ、株の下落で自己資本比率が下がり、BIS規制のお陰で貸し渋りや貸しはがしをやらざるを得なくなり多くの中小企業が破綻した。銀行は続く低金利で利ざやが取れず利益を出すのに苦しんでいる。

一方中国の国有化された銀行の台頭が目覚ましい。2019年の世界時価総額ランキング14位に中国工商銀行、15位に中国建設銀行、40位に中国農業銀行が入っている。中国経済の発展はこれらの国有銀行が大きな役割をしていると思われる。そうであれば日本も銀行を国有化したらまた日本は成長を始める。日本国内の時価増額ランキング20位以内の銀行の時価総額の合計は約59兆円である。日本銀行がお金を刷って買った国債の額が400兆円であることを考えれば、59兆円は大した額ではないから買ってしまったとしよう。そうなると、国債の保有者は日銀、国有銀行、郵便局、年金基金などとなり大部分が国または国の支配下にある金融機関ということになる。 

これは国債の取引がほぼ国の中だけで行われ、「国」がほぼブラックボックス化してしまうことになる。つまりカネの貸し借り、金利の支払いはほぼブラックボックスの中で行われるので国民には関係なくなる。国民に唯一関係あるのは通貨発行権を持つ国が発行したお金が国民に配られることだけである。国債の暴落はあり得ない。国債の保有者が国であれば投げ売りする必要はないのだ。政府が売り出す国債を国が買うのだから財政の破綻もない。金利の上昇でも困らない。利払いは国に対して行われるのだから。1982年の鈴木善幸内閣時代から常に悩まされていた財政危機への懸念がこれで完全に一掃される。そうであれば、デフレ脱却をしたい日本政府は躊躇なく財政を拡大し経済を活性化できる。

そうすればインフレになるという反論があるかもしれない。デフレ脱却を目指している日本政府だし、それはインフレ経済を目指していることだ。制御不能のインフレの恐れを主張する人がいるかもしれないが、銀行の国有化は中国と同じであり中国でもインフレ率はマイルドである。

銀行の国有化と同時に行うべきなのは銀行の統合である。ドイツ銀行とコメルツ銀行の合併の可能性が検討されている。両行の従業員数の合計は約13万3000人だが合併すれば3万人の削減が可能になるという。つまり銀行の統合で重複する部門を削って収益をアップし、多くの行員を別の仕事に回す事ができる。例えば業務のAI化である。2000年に600人いたゴールドマンサックスのトレーダーはAIに置きかえられ2人になった。これにより2.5億ドル以上の人件費が節約できた。長期に続く低金利のお陰で銀行は経営難に陥っている。過去に安く買った国債を高値で売って利益を出しているが、それも一時的な収入に過ぎず、特に多くの地方銀行は赤字に陥る可能性が増すと日銀は指摘している。不採算の銀行を維持する必要はない。小さな銀行が乱立していては銀行のAI化は進まない。統合してAI化を集中して行うのがよい。トレーディング、不正防止、アンチマネーロンダリング、企業情報の収集、資金運用のアドバイス、融資、接客、コールセンターなどの業務のAI化を進めるとよい。銀行を統合し国有化して信用力を増し、国際競争力を高めれば日本企業を資金的に強力にバックアップでき、日本経済復活に繋がる。

 

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2019年4月10日 (水)

世界を敵に回しても消費増税を強行しますか(No. 345)

4月5日付の米紙ウォールストリート・ジャーナルは、日本で10月に予定される消費税率引き上げについて「安倍晋三首相は増税によって、景気を悪化させようと決心しているように見える」とやゆする社説を掲載し、安倍氏にとって「増税は自傷行為になろう」と皮肉った。社説は、日銀企業短期経済観測調査(短観)など日本の経済指標はさえない内容だと指摘。輸出頼みの日本経済は中国や欧州など世界経済の減速の影響を受けやすいと強調した。

そもそも世界的な不況に対しては世界が協力して克服する努力をするべきだ。リーマショックの際には中国だけで57兆円もの景気対策を行い世界を救った。今回の不況でも中国は40兆円超の減税・インフラ投資を行う。アメリカのトランプ大統領は2017年12月、169兆円もの大型減税を実施した。それにより国民は年85万円を得た。それに加え大型法人税減税も行っている。今度は日本が大規模景気対策をする時だ。

トランプ大統領は、『アメリカが日本に対して貿易赤字を抱えているのは、日本が輸出産業に消費税という補助金を出しているからだ』と言っている。消費増税により国内景気を落ち込ませ、輸入が減り、消費税という補助金により輸出を伸ばすやり方に対し、海外から厳しい批判があるのは避けられない。

日本の経済成長率は世界最低レベルにあり、長期のデフレに苦しみ、政府はデフレ脱却を目標にしている。2019年度予算では増税による需要減少を補うための対策に2兆円が投じられる。増税によるネットの家計負担額2.2兆円が税収増になるが、このほぼすべてが支出されるので財政赤字の削減には回らないのだから増税本来の目的を放棄することになる。しかしプラスマイナスゼロというわけではない。消費者にとってはほとんど意味の無い軽減税率を導入するために、新しいレジの導入で複雑化という大変な負担を国民に強いるし、何か軽減税率が適用され何が適用されないかという無駄な混乱を引き起こす。

時事世論調査「生活のゆとりに関する世論調査」によれば10月の消費増税で家計を見直すと答えた人が57.2%、見直さないと答えた人が37.2%であった。ということは間違いなく消費は落ち込むのである。いくら政府が消費が落ち込まないよう対策を打ったとしても、そんなもの消費者には関係ない。またデフレ脱却を目指す政府だが、景気対策として幼児教育無償化という景気対策は物価を0.3%押し下げてしまいデフレ脱却に逆行するはたらきを持つ。

政府統計の信頼性に関して、実質所得が問題視されたが1990年=100としたときの実質賃金指数は次のようになっている。
スウェーデン  138.4
フランス    126.4
ドイツ     116.3
米国      115.3
日本       89.7

日本だけがマイナスだ。これでは消費が増えるわけがないし、消費増税が消費を更に減らす。消費もGDPも減らし、日本はどんどん貧乏になっていく。貧乏な国に対しては、中国資本が容赦なく入ってきて自分たちのものにしてしまう。2019年度予算が成立した今、もはや増税延期などできないと政府は主張するのだろうが、この時期での消費増税は余りにも大きなリスクのように思われる。

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