2022年6月 6日 (月)

基礎的財政収支黒字化目標を撤回し積極財政政策に転換せよ(No.469)

財政施策の指針を決める2022骨太方針が明日6月7日に決定しようとしている。これまで骨太方針には、いつまでに基礎的財政収支(PB)を黒字化すると明記してあった。今回はこのことに関して自民党の中で紛糾している。自民党の財政政策に関する二つの本部が出来上がっている。
① 財政健全化推進本部
  岸田首相の直属の組織であり麻生副総裁、額賀福志郎氏などが入っており財政再建の
旗を降ろさない
② 財政政策検討本部
  安倍晋三元首相や西田昌司参議院議員などが属しており積極財政を求めている。

5月19日 財務省の小野平八郎総括審議官(緊縮派)は6月上旬に閣議決定される「骨太の方針」について自民党との調整に追われていた。その夜、小野平八郎氏は酔って電車内で乗客を殴ったとして警視庁に逮捕された。以前には財務省では森友学園案件に関わる決裁文書が改竄された。自殺者も出た。このように財務省の権威が失墜してきているのは明かだ。日本経済が30年間停滞したのは財政健全化を重視し緊縮財政を続けたから。財務省がそれを牽引してきた。そろそろそれが変わる時が来たのかもしれない。

例えば2021年の骨太方針では2025年度のPB黒字化目標を堅持し債務残高のGDP比を安定的に引き下げると明記されていた。ところが2022年の骨太方針では「2025年度のPB黒字化目標は本文中には明記せず、小さな文字で脚注に付記する。目標は維持するが検証する。」とする案が出され、新聞各紙は「収支黒字化「堅持」から後退」という見出しが躍った。しかし緊縮派がその後巻き返し「令和5年度予算において、本方針及び骨太方針2021に基づき、経済・財政一体改革を着実に推進する」と書き加えるよう主張した。これでは元に戻ってしまうと西田昌司議員は激怒した。

PB黒字化目標が決まってしまうと、目標達成のため最大限歳出を削減し増税を行わなくてはならなくなる。要するに国民からお金を取り上げ、国民を貧乏にすることだ。PB黒字化目標を放棄すると激しいインフレになると緊縮派は言う。激しいインフレになるということは需要が爆発的に増加し、供給がそれに追いつかなくなり、極度の物不足になるということだ。IMFによれば日本のPBは1993年以降、一度も黒字化したことはない。そうであればもうとっくに激しいインフレになってなければおかしい。むしろPB黒字化目標があるために、歳出削減、増税などを行って国民からお金を取り上げるために、消費が落ち込み景気が落ち込み税収が増えないからPBが黒字化しないということだろう。

IMFによればPBが黒字なのは183カ国中30カ国だけであり黒字国は資源産出国が多い。だから日本もPB黒字化をしなければならないという理由はない。

そもそも内閣府試算を信頼してそれを国の目標にするのは危険過ぎる。次のグラフはPBの対GDP比と内閣府の予測との比較である。黒い線が実績であり、それ以外の線は内閣府が各年度に予測したものである。

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2008、2009年度の落ち込みはリーマンショックによるもの、2022年と2023年の落ち込みはコロナ禍によるものである。実際は1993年以降PB黒字化になることはなかったのだが、内閣府は毎年のように「あと数年すれば黒字化するからもっと緊縮財政を続けよ」と主張しているのである。デフレ脱却ができていないのに緊縮を続けたために世界に例がないほどの低成長に陥り、実質賃金は下がり続けるという悲惨な結果となっている。そもそもこのグラフは予測ではなく、政府の願望であり自作自演である。このシミュレーションの担当者がそのことを明言している。なぜこのような馬鹿げたグラフを内閣府の予測にしたのかと言えば、それはデフレでも緊縮をやりたくてたまらない財務省の意向を受けたものだからである。


内閣府の試算が欺瞞的であるのは、名目GDPの予測でも明確に理解できる。
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黒い線が実績であり、それ以外はそれぞれの年に発表された内閣府の予測だ。実績ではほとんどゼロ成長が続いているのに、内閣府の予測はいつも3%成長である。モデルの担当者に聞くと、自分たちは政府に雇われた身分なので、政府の命令どおり3%成長のグラフを描くしかないのだという。PBにせよ、成長率にせよ、ふざけた田舎芝居にすぎない。こんなものに振り回されるのは一刻も早く辞めるべきだ。つまりPB黒字化目標は撤回すべきだ。

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2022年5月28日 (土)

第158回日本経済復活の会の定例会(No.468)

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講師  ①阿蘇 伸生先生 株式会社トリウムテックソリューション取締役
    1981年 3月早稲田大学大学院理工学専攻科博士課程前期修了
    1995年 6月衆議院議員佐藤静雄の政策担当秘書に就任、その後計4名の国会議員の政策担当秘書を務める
    2019年 4月株式会社トリウムテックソリューションの取締役に就任し,現在に至る
    演題:「日本の真の自立と経済復活の切り札〜トリウム溶融塩炉」
    要旨:
    福島原発事故災害以降、日本は有効なエネルギー政策を取ることができず、今や電力供給逼迫のためいつブラックアウトが発生してもおかしくない状況にあります。
台湾有事や尖閣有事において、日本はシーレーンを確保できず、経済活動はおろか国民生活の維持さえままならない状況にあります。
トリウム溶融塩炉は、日本が抱えるエネルギー問題を解決するのみならず、日本のエネルギーの自立を実現します。また、トリウム溶融塩炉は、エネルギー不足に悩む世界各国の経済発展に貢献し、莫大な外貨を稼ぐ輸出品となりえます。
トリウム溶融塩炉が実現できれば、まさに、20年以上に及ぶ日本経済の長期低迷を一挙に解決し、日本は本当の意味で自立することができます。
冒頭で、以下の動画を見ていただき、後半で上記の趣旨を説明致します。
トリウム溶融塩炉とは
https://www.youtube.com/watch?v=jvxqwvHz4Ww
ホルムズ海峡封鎖に備えて日本が取るべき選択肢
https://www.youtube.com/watch?v=U5xllglbZmI

②小野 盛司 日本経済復活の会会長 
会の活動報告、『日本経済復活への道』
国債発行を財源とした景気刺激策①現金給付②消費減税③公共投資増額などが日本経済に与える影響については日経新聞社のNEEDS日本経済モデルを使って計算したものを拙書『これでいける日本経済復活論』(2003)で発表した。ベーシックインカムの結果は国民にお金が行き渡るので、消費が増大し、経済は著しく改善しデフレからの脱却がすみやかに可能となり、景気がよくなるので給料も上がっていくはずだったが、政府はそれを行わなかった。その結果このモデルが予想したとおり、経済成長率は世界最低レベルで、2十数年間実質賃金が下がり続けているという悲惨な状況になっている。
我々は日経モデルで再計算を行い、前回と同様な結果を得て次の2冊の本にまとめた。
『毎年120万円を配れば日本が幸せになる』(2021)『ベーシックインカムで日本経済が蘇る』(2022)
積極財政を行えば日本経済は復活するという結論はこの20年間、変わっていない。政府がこの計算の意味を理解し、積極財政政策に舵を切れば日本経済は再び成長を始める。

○ 日時 2022年6月19日(日)午後3時~午後7時
         7時以降も有志の方々が議論を続ける可能性はあります。
○ Zoom ミーティングですので、次のサイトから入って下さい。
https://us02web.zoom.us/j/81335414575?pwd=UVY3SkVUcXd6YUZwbm1DMHA3Rkxtdz09
ミーティングID: 813 3541 4575
パスコード: 185594

○ 参加費 無料 
〇 当会合に関する問い合わせ先:小野(03-3823-5233)、須田(090-2170-3971)

 

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2022年5月23日 (月)

積極財政が日本国民を救う(No.467)

現状では消費者物価は上がるが賃金は上がらない。実質賃金の下落で国民は貧乏になる。
図のように実質賃金は30年近く下がり続けている。

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科学的に経済予測をする方法がある。それはマクロ計量経済モデルでありローレンス・クライン(ノーベル経済学賞受賞者)などが始めた。その一つの例が日経新聞社のNEEDS日本経済モデルである。1974年から予測を開始し予測を行い日経新聞に発表している。日経は日本最大の経済データを保有しており、それを駆使している。以下で示す計算結果に関する説明は次のサイトで詳しく述べられている。
http://ajer.cocolog-nifty.com/blog/2021/03/post-a5b8c7.html
以下のグラフは、①~③の経済対策の押し上げ効果または押し下げ効果のみを示したものである。

ここでは次の4種類の場合を計算する。
①現金給付
年間80万円(3ヶ月ごとに20万円)を国民全員に給付する。
②消費税減税
消費税率を0%に下げる。
③公共投資の増額
公共投資を年間20兆円増額する。
④現状維持
我々の計算を2人のノーベル経済学者Paul A. SamuelsonとLawrence R. Kleinが高く評価して下さった。

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2022年5月18日 (水)

PB黒字化目標の欺瞞

 

 

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2022年5月 9日 (月)

日本の国際貢献と日本の発展について(No.466)

ウクライナは「感謝動画」を公開したが、その中で支援31カ国に日本の名前は無かった。折角、3億ドルの支援を行ったのにそれは考慮されなかった。ウクライナが最も欲しがっていたのは武器であり、日本は武器を送らなかったのが印象に残らなかったのだろう。その後新しい動画が流され、そこには日本の名前があり日本語で「ありがとうございました」と述べてあった。湾岸戦争の際、イラクから解放されたクウェート政府が米国の主要な新聞に感謝広告を掲載したが、「クウェート解放のために努力してくれた国々」の中に日本の名前がなかった。日本は総額1兆5500億円もの資金を多国籍軍に提供していた。

日本には平和憲法があり、軍需産業は育てず、武器の輸出もしない。かつて日本社会党は非武装・中立を唱えていた。しかしそんなことしたら、ロシアが日本を簡単に占領してしまう。占領された国はどれだけ悲惨な状態になるか、ウクライナにおけるロシア軍の虐殺行為を見れば明らかだろう。やはり日本も諸外国並に軍需産業を育て、平和維持軍に兵を送るようにしないと、逆に日本が襲われたとき、防衛を他国の軍隊に任せているだけではダメなのではないか。

ロシアに対する経済制裁でも、日本の対応は十分なのだろうか。英紙ファイナンシャル・
タイムズは「日本が原発を再稼働できたら、天然ガスの輸入を減らすことができ欧州はロシアのガスに依存しないで済むかもしれない」と指摘した。日本はこのような際に臨機応変に原発再稼働ができて、天然ガスの輸入を減らすことができればよいのだが、そのような方針転換が非常に難しい。一度決めたら変えるのが非常に難しいのが日本の特徴であり、かつて奇跡の経済復興として世界中から賞賛されていた日本の経済成長だが、一旦没落を始めるとそれが止められない日本。このままではいけないという自覚はあるのだろうか。

脱炭素と脱原発を目指すのであれば巨額投資をするしかない。経産省は4月22日、2050年の脱炭素に向けた官民の投資が30年時点で少なくとも年17兆円必要との見通しを示した。現状では5兆~6兆円なので3倍程度増やさなければ達成できない。一見巨額投資に見えるが、日経のNEEDS日本経済モデルを使って計算してみると、国が毎年20兆円公共投資を増額すれば1年後に名目GDPは約15兆円押し上げられるが消費者物価は0.2%押し上げられ金利は0.03%押し上げられるにすぎない。その他の経済データも素晴らしい。詳しくは以下のサイトを参照して下さい。
http://ajer.cocolog-nifty.com/blog/2020/10/post-9e4554.html
この政策によりエネルギー自給率が高まり、脱炭素、脱原発へと進むことができるし日本経済が完全復活できるのである。

米国では21年11月に総額1兆ドル(約130兆円)超のインフラ投資法が成立した。風力発電の導入量は中国が日本の75倍、米国が日本の30倍である。このまま放置すると日本は脱炭素も脱原発もできず、世界最低の経済成長率が続き、貧困になるばかり。円安で輸入品の価格が上がり、海外旅行も高嶺の花となる。そしてロシアのウクライナ侵攻などで国際社会と歩調を合わせ経済制裁にも加わることもできない。こんな惨めな国を放置しておいてもよいのだろうか。

 

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2022年4月25日 (月)

円安が良いか悪いかをシミュレーションで調べた(No.465)

円安が良いか悪いかは、GDPがどうなるのかで判断するべきだ。安倍元首相のアベノミクスで調べてみよう。
2013年 アベノミクス開始
名目GDP  508.7兆円  1ドル=97.6円だから 5.21兆ドル
2020年 アベノミクス終了
名目GDP  538.2兆円  1ドル=106.8円だから5.04兆ドル
円で表すとアベノミクスで名目GDPは若干伸びたことがわかるが、この間円安が進んでおりドル表示なら名目GDPは下がっていることが分かる。円表示での名目GDPの伸びも、実は2回消費税増税でかさ上げされており、更に2016年のGDP基準改定で19.8兆円もかさ上げされている。この2回のかさ上げは経済成長とは無縁のものであるから、アベノミクスでは円ベースではほぼゼロ成長、ドルベースでは明らかなマイナス成長だと分かる。もちろん、消費増税は消費を減らしGDPを下げるから、消費増税が無かったらある程度経済は成長したと思われる。

2022年4月、1ドルは129円に達し、20年ぶりの円安水準になった。現在米国は景気が過熱しておりインフレ率が高すぎるため、FRBは金利を上げて景気にブレーキを掛けつつある。一方で日本は緊縮財政が続いており景気は最悪だ。こんな時に金利を上げたら大不況に陥るので金利引き上げなどできるわけがない。その結果日米の金利差は開く一方で、当然投資家は金利の低い日本の円を売り、金利の高い米国のドルを買うからドル高・円安になる。円安は良いのか悪いのか、様々なエコノミストがそれぞれ見解を述べている。

我々はその件に関し日経のNEEDS日本経済モデルを使って計算してみた。詳しくは
『ベーシックインカムで日本経済が蘇る』小野盛司他
を参照して頂きたい。

対ドル円相場を10円だけ上昇させたときの影響
計算によれば1年後円表示の名目GDPは0.76%だけ押し上げられる。一方で円は1ドル120円が130円となったのだから円の価値は8.3%も下がる。つまりGDPも賃金も株価も地価も、海外から見れば日本において円で表示されるものすべてが8.3%も下がってしまうということだ。つまり円安はドル表示で見れば日本は貧乏になる。日本のGDPは世界第3位というように、日本を諸外国と比べるときはもちろんドル表示で比べるのだから円安は確実に日本を貧乏にする。

このように円安により日本を豊かにすることはできないことは明かになった。一方で、政府が通貨を発行し、それで国民への現金給付に使ったり、減税をしたり、日本経済を強くするために投資したりすると、劇的なGDP押し上げ効果があることは上述の書籍で示した。今からでも遅くはない。直ちに積極財政を実行すべきだ。日経のNEEDS日本経済モデルを疑う人がいるのだろうか。日経がNEEDSを使って過去40年間日本経済を正しく予測してきたのは疑いもない事実である。だから今回の積極財政の予測だけが間違いだという主張が正当化されるわけがない。筆者は20年間このような主張を続けたが、まともな反論を述べてきた人は一人もいなかった。これは我々の計算が正しい事を示す。

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