2016年8月29日 (月)

日本人が楽観的になるだけで、デフレ脱却・経済成長・財政健全化は実現する(No.210)

奇跡の経済成長を実現した日本だが、根拠のない悲観論が一気に経済を悪化させてしまった。2014年度の消費増税のお陰で消費が落ち込み、賃金の伸びはイマイチだ。社会保障負担は増えるが、社会保障制度に信頼できず、将来に備え今は節約しなければならないと国民は考える。2019年度には消費増税が待っているから尚更である。節約志向が続けば、企業は売上げが伸びないから設備投資など増やさないし、賃金を積極的に上げることもない。それが需要を冷やし、ますます景気が悪化するという悪循環である。

ヘリコプターマネー(ヘリマネ)なら、需要を増やし国の借金も増やさないということで、日本にとっての希望の光と思え、脚光を浴びたが、悲観論者が次々と反論する。

【法政大学の小峰隆夫教授】
そんなうまい話があるなら、世界中の国が既に実行しているはず。
【反論】
世界中の国の経済は穏やかなインフレであり経済は拡大している。そのような国でヘリマネをやれば、単にインフレ率が上乗せされるだけで、実質GDP成長率は上がらない。日本のように20年間需要不足・デフレで経済が停滞している国では経済立て直しの特効薬になる。

【翁邦雄京大教授】
ヘリマネならデフレから脱却できる。そのとき金利は上昇、国民はタンス預金を銀行預金に、銀行はそれを日銀に預ける。日銀は利払いが大変になる。
【反論】
日銀は損失を出しても潰れない。日銀の損失が気になるなら、国債を発行して得た資金で日銀を「救済」すればよい。ヘリマネでなくても、景気が回復してくれば必ず金利が上昇する。このとき日銀の損失をどうするかという問題は必ず出口戦略で検討しなければならない。問題を深刻化させないためには、一刻も早く景気を回復させる必要がある。

【年金運用5兆円の赤字だから年金が心配?】
年金積立金の運用で2016年4~6月期の運用収益は5。2342兆円の赤字だったので、我々の年金は果たして大丈夫かという報道があった。実は2001年からの累積収益は40.1898兆円の黒字なので、むしろ逆に年金は多くもらえるのかと期待する報道があってもよさそうなものだ。年金の一部は海外の株式や債券で運用されている。それ以外にも日本の外貨準備は126兆円、海外純資産は339兆円ある。例えば10%円高になれば、これらの資産価値は数十兆円目減りし、10%円安になれば10%増える。もちろんドルに換算すれば為替の変動があっても変化しない。

このように、日本には誤った悲観論が蔓延している。財政を拡大すれば、再び経済は成長を始め悲観論は吹っ飛んでしまうだろう。それを阻んでいるのが時代遅れのハイパーインフレのトラウマだ。1931年に始まった国債の増発と1945年の終戦直後から始まったインフレを結びつけようとする。当時は国民の6割もの農民が、やっと米を供給できていたが、今は農民の数は国民の僅か3%以下で、余るほど米をつくっている。米の爆撃で焼け野原になり極度の物不足になった当時と、物余りの現在では状況が違いすぎる。

物余りの時代にハイパーインフレなど来るわけがない。だったら、思い切った積極財政でデフレから脱却し、経済を成長軌道に乗せれば良い。それにより、国民は将来を楽観視するようになり、消費は拡大する。経営者も楽観的になり、設備投資が始まる。デフレから脱却し、経済成長で税収も伸び財政も健全化する。要するに日本人が楽観的になるだけですべてが解決するのだ。

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2016年8月16日 (火)

「ヘリコプターマネーならハイパーインフレ」は時代錯誤(No.209)

最近はヘリコプターマネー(ヘリマネ)の議論が盛んに行われるようになった。ヘリマネは政府が通貨を発行して国民に配ることを意味する。ヘリマネを推奨している前FRB議長のバーナンキが7月12日に安倍首相と面談した後、ヘリマネが実行されるのではないかと期待する市場関係者が多くなった。円は一時1ドル107円まで急落、株も上昇した。これは、ヘリマネによって日本がデフレから脱却するのではないかという期待の表れである。

これに反して一部の識者はヘリマネが実施されれば、通貨の信認が失われハイパーインフレになると主張する。そこで決まって引用されるのは昭和恐慌の際の高橋是清による日銀の国債引受だ。一方でこれは世界大恐慌に巻き込まれ昭和恐慌に陥った日本経済を世界でいち早く立ち直らせたとして世界的にも極めて評価が高い。これを一種のヘリマネと呼んでもよいのかもしれないが、今、高橋是清流の日銀国債引受を行ったとしたらでデフレから脱却でき景気が回復するだろうという予測に関しては多くの識者が同意する。意見が分かれるのは景気が回復した後に何が起きるかという点だ。

高橋是清は、景気が回復した後、これ以上の国債の大量発行はインフレを招くだけで経済はよくならないとし健全財政を守ろうとした。しかしこれが軍事費拡大を要求していた軍の反発を招き、1936年高橋是清は2・26事件で陸軍青年将校に暗殺されてしまった。その後大蔵大臣に就任した馬場鍈一は軍事費が大膨張する政策へ大転換を行っていった。一部の識者は、もし現在ヘリマネなどの通貨増発策を行えば、この例のように、際限なくヘリマネを利用するようになりハイパーインフレになると主張する。だからヘリマネは良くないというわけだ。

しかし、以下の理由によりこの主張は誤解に基づいている。

①当時は日清・日露・第一次世界大戦と3回連続で戦争に勝利しており、占領地を広げつつあった。欧米諸国(特に大英帝国・アメリカ合衆国)の植民地支配から東アジア・東南アジアを解放し、東アジア・東南アジアに日本を盟主とする共存共栄の新たな国際秩序を建設しようという大東亜共栄圏構想があった。1937年に日中戦争、1939年からは第二次世界大戦が始まり「欲しがりません勝つまでは」というスローガンの下で、国民合意の上で国民生活を一時的に犠牲にしても軍事中心の財政政策を行うことになったのであり財政拡大に国民の支持があった。このように生活を犠牲にしてでも戦争を推進する考えを持つ国民は現在いない。

②それに軍の暴走は誰にも止められない状況だった。彼らは、東京の陸軍参謀本部の賛同者たちと連携をとりながら1931年9月に満州鉄道を爆破し、それを中国軍の仕業であるとして軍事行動を開始したのが満州事変である。軍は占領した現地で勝手に通貨を発行した。朝鮮銀行は朝鮮銀行券を、満州中央銀行は満州中央銀行券を、台湾銀行は台湾銀行券を発行し、軍は自ら戦費をまかなった。この軍の暴走を日本の国民は拍手喝采をおくったのだが、これも現在ではあり得ない。だからこそ国民は通貨発行で財源を得て軍事費に使うことを許したわけである。戦争で果てしなく領土を拡大できるという誘惑に駆られて財政をどんどん拡大していった。

③現在の日本はこれとは余りにも違う。平和憲法を持ち、戦争を強く否定する人ばかりである。そもそも、軍拡をして近隣諸国の占領などできるわけがない。例えば徴兵制を敷いて兵力を増強し他国を侵略し始めようと誰かが言い出したとしよう。しかし、たった2発の原爆を落とされただけで無条件降伏をしなければならなかった過去を考えれば、勝つ見込みはゼロで、意味の無い戦争には、ほぼ全員が反対するだろう。我々には平和に生きるしか道は無い。

では、戦争以外で果てしなく通貨発行をしたくなるような状況は訪れるのだろうか。公共事業も働き手に限界があり、世界大戦にための財政拡大ほどの規模で予算を拡大しようとは誰も考えない。福祉、医療、介護、教育、農業、研究開発など考えても、予算拡大には限度があり、人手不足が深刻化しインフレ率が高すぎるようになったら、それ以上の通貨発行に政治家や国民の支持は得られるわけがない。

例えば、安倍首相が一度ヘリマネを実施したとしよう。ああ、こんないい方法があるのなら何度でもやろうと思うようになり、果てしなく繰り返すようになるだろうか。実は現在でも国債を発行すれば、異常なほど低い金利で、いくらでも市場で売却することができ財源はいくらでも確保できる。2016年7月末で日銀の国債保有残高は373兆円であり毎年80兆円だけ保有残高を増やしている。政府が国債を増発すれば、事実上ヘリマネと同じことを行っていることになる。つまり今でも国債を増発して財政支出を果てしなく拡大できる。それを安倍首相はできるのにしないのは国民の理解が得られていないと判断しているからだ。ということは、ヘリマネに味を占めたとしても、国民の理解が得られない限り果てしなく財政を拡大することはないということを意味している。

そもそも高橋是清はヘリマネに味を占め、ヘリマネを果てしなく繰り返そうとしたわけではない。景気が回復しインフレ気味になった後は、財政拡大を抑えようとしている。更に日銀保有の国債を市場で売却している。麻薬患者が麻薬を止められないようにヘリマネが止められなくなったわけではない。高橋是清が暗殺された後に大蔵大臣になった馬場鍈一は軍の要請で国債を増発したが増税も行っているのだから馬場もヘリマネ中毒になったわけではない。軍が国債を増発させて軍事費をまかなったのは何も高橋是清の国債日銀引受に味を占めてそれを繰り返したということでも無い。軍はその前から朝鮮や満州等で通貨を発行し戦費を確保している。それと同じことを本土でも行っただけだ。

江戸時代、明治時代等、ヘリマネに相当する通貨発行は繰り返し行われていたのであり、高橋是清が最初ではないし、単にそれに味を占めて国債発行が繰り返されたわけでは無い。

戦後インフレになったのは、高橋是清のせいではなくて、米国軍の爆撃で日本が焼け野原になり、生産設備が破壊され極度の物不足になったのが原因である。食糧不足で餓死者まで出るようになったとき、人は闇市でわずかな食料を奪い合った。その結果当然物価が上がった。復興債の日銀引受が更にインフレを加速させた。これは傾斜生産方式と言われ、日本経済を復活させるために基礎となる石炭・電力・鉄鋼・海運などを中心に基幹産業の復興を最優先した。その結果、生産は急回復し、みるみる生活は豊かになり、驚異的な経済成長へとつながっていくのである。インフレになれば生活は破壊されるという主張は間違いである。戦後間もない頃インフレはすすんだがその間も生産は急回復し、みるみる生活は豊かになっていった。

物余りの現代、ハイパーインフレになるほどの深刻な物不足になるのだろうか。100円ショップや大型スーパーに行ってみればよい。おびただしい商品が並んでいるし、どの棚も空になるほどの、つまり終戦直後のような深刻な物不足が将来訪れるわけがないことは理解できるだろう。

つまり「ヘリマネならハイパーインフレ」は時代錯誤の考えであり終戦直後のインフレはもう来ないのである。

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2016年8月 8日 (月)

内閣府がまた消費増税の経済への影響は軽微だと言い始めた(No.208)

7月26日に内閣府より「中長期の経済財政に関する試算」が発表された。例年通り、この試算は国民を欺くものであり、オオカミ少年の名にふさわしい内容のものである。同様な試算は毎年発表されており、その一覧は以下のサイトで見ることが出来る。
http://www5.cao.go.jp/keizai3/econome.html
これは日本経済の中長期展望を示すために内閣府計量分析室が行った試算だが、国が様々な分野で将来展望を示すための試算を行う際にはこの試算がベースになっているから非常に大切な試算だ。マスコミもこの試算が絶対的に正しいものと信じており(騙されているのだが)それ以外は一切引用しない。こんな欺瞞的な試算に簡単に騙されてしまう人は余程経済音痴な人だ。

消費税が5%から8%に増税される前に内閣府は消費増税が経済に与える影響は軽微だと主張していた。
http://www5.cao.go.jp/keizai3/econome/h24chuuchouki.pdf

2081



ここには一体改革を行った場合(つまり消費増税を行った場合)と行わない場合(増税なしの場合)の比較がしてある。それによると増税ありの場合2012年から2016年までの4年間の実質GDPの成長率は合計で7.6%、増税なしの場合は7.7%であって、4年間の合計で僅か0.1%の差しかないと予想した。しかし実際は2013年度から2014年度の1年間だけでその30倍の3.0%の落ち込みがあった。その後も消費が落ち込み経済に深刻な打撃を与えたことは皆さんご存じの通りである。

このように国民を欺き、経済に大打撃を与えたことに反省したかと思ったら、そうではなかった。2019年10月に延期された8%から10%への消費増税の再引き上げへの予測が7月26日の試算に入っていた。
http://www5.cao.go.jp/keizai3/econome/h28chuuchouki7.pdf
次のグラフは内閣府が予測した実質成長率の推移である。
2082



IMFの予測もプロットしておいた。相変わらずオオカミ少年ぶりを発揮し、IMFよりはるかに高い成長率を予測している。それだけでなく懲りもせずまたこの消費増税の引き上げの影響も「軽微」と主張している。事実上影響は全く無いと言いたいようだ。実際実質GDP成長率は2018年度が1.8%、19年度が1.9%、20年度が2.0%なのだそうだ。そんなわけないだろと電話したら、増税時期が年度が始まる4月ではなく、年度の真ん中の10月だから駆け込み需要とその反動が丁度打ち消し合って全く見えなくなるのだそうだ。しかし可処分所得が下がることによる落ち込みがあるはずだと私は食い下がったが、その所得効果は入っているとの返事。このグラフから5%から8%への消費増税による2014年度の景気の落ち込みが極めて深刻だったことが分かるが、それに対して2019年度の消費再増税の影響は皆無だと主張する内閣府の主張を誰が信じますか。

要するに、内閣府は政府が希望する成長率を「鉛筆なめなめ」で書き写しているだけなのだ。とても試算と言えるものではないし、信頼に値するものでもない。現在のような経済運営では、2019年になっても、まだ経済は低迷している可能性がある。そのとき再び政府は消費増税をするのかしないのかの決断を迫られる。この内閣府の試算に騙されるなと言いたい。

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2016年7月31日 (日)

内閣府計量分析室がオオカミ少年であることが一目で分かるグラフ(No.207)

7月26日、内閣府は「中長期の経済財政に関する試算」を発表した。同様な試算は毎年発表されており、その一覧は以下のサイトで見ることが出来る。
http://www5.cao.go.jp/keizai3/econome.html
これは日本経済の中長期展望を示すために内閣府計量分析室が行った試算だが、国が様々な分野で将来展望を示すための試算を行う際にはこの試算がベースになっているから非常に大切な試算だ。マスコミもこの試算が絶対的に正しいものと信じており(騙されているのだが)それ以外は一切引用しない。しかし、次のグラフを見れば、この試算は全くデタラメであり内閣府計量分析室はオオカミ少年であるということがすぐ分かる。

2071


これは長期金利の予測で、この図で黒い右下がりの線が実際の長期金利の推移である。それに対して右上がりの15本の線は内閣府の予測であり、そこに書いてある数字が予測した年である。例えば今年2016年の予測は一番右にあり、今後長期金利は急上昇して数年もすれば4%を超える金利上昇となると予測する。もちろんこんな金利の急上昇(国債価格の急落)を予想する人などどこにもいないし、もし予想していたら国債を保有している人達が一斉に国債の投げ売りを始めるし、10年物国債がマイナス金利になるわけがない。実際は国債保有者は国債を売りたがらないので、現在国債市場では国債が品薄状態になっている。

1回だけの予想なら間違えるのも仕方がないかもしれない。しかし15回連続で急激な金利上昇を予想しており、それが全部はずれ、実際はむしろ金利はジリジリ下がり続けているのである。まともな感覚の持ち主であれば、金利は当分下がり続けるか、少なくとも低いままであり続けると予想するだろうし、その予想は内閣府の予想よりはるかに現実に近いに違いない。

内閣府計量分析室にどうしてこんな馬鹿な予測しかできないのかと電話で聞いてみると、「政府は実質2%、名目3%の成長と目標としている。このような高成長なら金利は高くならざるを得ない。だから内閣府としては立場上このような予測しかできない」という回答だった。要するに「お前達、首になりたくなかったら高成長の試算結果をだせ」と脅されているのであり、彼らは自分たちの意に反して間違いと知りながら試算を発表せざるを得ないのだ。一方政府・日銀はこのグラフを見て、「今の政策を続ければ、こんなに成長するのだ」と安心し、小出しの景気対策の逐次投入しかしない。そしてしばらくすると騙されたと気付く。2014年度の消費増税の際も「増税の影響は軽微」と予測した内閣府の試算にすっかり騙されて好調になりかけた経済を急激に悪化させてしまった。いつまでその繰り返しをやるのだろうか。

参考のために名目GDPの内閣府の予想と実際の名目GDPの推移を比較したグラフを次に示す。ここでも低迷するGDPに対して、いつも高成長を予想する内閣府のデータのコントラストが鮮明である。
2072

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2016年7月27日 (水)

内閣府=オオカミ少年のウソにまた騙されるのですか(No.206)

7月26日、内閣府は「中長期の経済財政に関する試算」を発表した。
http://www5.cao.go.jp/keizai-shimon/kaigi/minutes/2016/0726/shiryo_01-1.pdf
新聞各紙は2020年度の基礎的財政収支(PB)の赤字が5.5兆円だから財政健全化が厳しいと報じた。すでに何回も述べたように、内閣府の試算は全く信頼に値しない。過去の発表を見れば、発表がウソであったのは明かだ。もともとは2011年度には基礎的財政収支が黒字化するという予測であった。それが間違いだったという発表を行い、発表内容を次々変えていく。
第1回目のウソ 2006年7月 小泉政権末期に2011年度PBの黒字化を宣言
第2回目のウソ 2007年1月 第1回の宣言はウソでした。 14.3兆円削減なら0.2%黒字 になります。
第3回目のウソ 2008年1月 第2回も宣言もウソでした。 14.3兆円の削減を行っても0.1%赤字になります。
第4回目のウソ 2008年7月 第3回の宣言もウソでした。  14.3兆円の削減を行っても0.7%赤字になります。
第5回目のウソ 2009年1月 第4回の宣言もウソでした。 2011年度黒字化はできません。
ここで2011年度の黒字化を完全に放棄したが、なんと次は2020年度の黒字化にターゲットをすり替えた。
第6回目のウソ 2009年6月 第5回の宣言もウソでした。 2020年に黒字化す
るには消費税を13%にしなければなりません。
第7回目のウソ 2010年6月 2020年に黒字化する。 
第8回目のウソ 2011年1月 第7回の宣言もウソでした。2020年に黒字化する
にはGDP比で4.6ポイント(約22兆円)程度収支の改善が必要となります。
第9回目のウソ 2012年1月 第8回の宣言もウソでした。 2020年にPBを黒
字化するには消費税は17%にしなければなりません。
あきれて物が言えないのだが今回は2020年度はPB赤字5.5兆円というもの。マスコミはこのウソにすっかり騙されている。

今回の発表もウソの羅列に間違いない。こんなウソの中に何か役立つ情報はないだろうか。半年前の発表と今回の発表のデータを比較するのは面白い。それは前回の発表は消費増税時期が17年4月としての試算だったが、今回は19年10月へ延期した場合の試算だから。2年半延期したことで財政は悪化したのだろうか。発表された試算を見ると逆に財政は改善したことが分かる。まず2020年度のPBだが、6.5兆円の赤字だったが、今回のPBは5.5兆円の赤字だから1兆円の改善だ。では債務残高はどうなったかと言えば、例えば18年度で比べると、前回は1054.5兆円、今回は1051.8兆円だから2.7兆円だけ債務は減っている。つまり、増税を2年半延期したことで、財政は悪化でなく改善している。そうであれば、19年10月に予定されている消費増税も無期延期すると更に財政は改善する。それだけでなく、17年度は消費増税を延期したほうが、しないほうより消費が伸びてGDPが拡大、国が豊かになるというメリットもある。

このように言うと内閣府の担当者は「様々なファクターがありますから一概にそうとは言えません」と答えた。そうであれば、増税を延期するかしないかだけを変えて2つのケースを比較して発表して下さいとお願いしておいた。とくに19年度の増税を再延期するかどうかを判断するために内閣府の試算を出してもらいたい。筆者と内閣府との電話でのやり取りを以下に書く。

Q:増税を延期する場合と延期しない場合の比較を計算すべきではないのか。
A:増税は閣議決定されていたことで、閣議決定されたことに反する試算はできなかった。
Q:しかし、リーマンショック級のショックがあれば増税を延期すると安倍総理も言っていた。しかも国際金融会合に増税反対派のスティグリッツやクルーグマンを招いて話を聞いていた。両方の選択肢を検討するのは当然であり、それをやらない限り、このような試算は価値がない。
A:そうですか。
Q:今回(7月)の試算と前回(1月)の発表を比べてみる。今回は増税延期、前回は増税延期しないケースである。比較すると2020年度の基礎的財政収支は延期の場合が1兆円改善、しかも国の債務残高も減っている。このことから、増税は延期したほうが財政健全化に資するのではないか。
A:様々なファクターがあり、一概にそうは言えません。
Q:だから言っているのでしょう。他のファクターは全部同じにして、増税延期ケースと延期しないケースの比較を発表せよと。
A:すいません。
Q:2019年10月にも増税するかしないかを決めなければならなくなる。今回の試算を見れば、増税しないほうが、財政健全化に資するという結果だから、2019年10月も同様でしょう。その比較を出して下さい。
A:また再び国際金融会合のような会合が開かれて検討することになるかもしれません。
Q:試算が毎年ひどく上振れしていて、毎年下方修正している。もっとまともな予測はできないのか。
A:短期の予測は経済見通し担当に聞いて下さい。

次に経済見通し担当に電話して質問
Q:名目GDP、物価、長期金利等毎年の予測が上振れしており、毎年下方修正している。もってお信頼できる経済見通しを出して欲しい。
A:今回の発表で2016年度、17年度に関してはこちらで担当したが、18年度以降に関しては、こちらは関与していない。名目GDP,実質GDP,設備投資、個人消費、などはこちらで数字を出すが、長期金利などは出していない。
Q:実質GDP成長率では16年度が0.9%、17年度が1.2%となっている。IMFの予測は日本が先進国の中で際立って低い成長率となっていて16年度が0.3%、17年度が0.1%と低い成長率を予測している。

もう一度計量分析室に戻って質問
Q:17年度の消費増税が19年10月に延期された。その効果が今回の試算に入っていれば19年度からの数字に効いてくるはずだがそれが見られない。
A:19年10月は丁度年度の中間点なので、年度の前半は駆け込み需要が発生し、後半はその反動がある。だかれ19年度のデータは駆け込みと反動が打ち消し合って、何も無かったように見える。
Q:しかし、消費増税は可処分所得を減らし、消費を減らす。駆け込みとその反動では説明できない効果があるはず。
A:それは入っている。4頁の物価のグラフを見て欲しい。
Q:長期金利に関しては経済見通し担当では計算しないと言った。計量分析室でどのように計算したのか。
A:名目GDP成長率や物価などから推測した。物価が上がって金利が上がらないのはおかしい。
Q:そもそも名目GDP成長率の予測が完全に間違っているから、試算のすべてが間違った結果を出している。

内閣府試算の致命的な欠点は、実質2%、名目3%成長を、何の根拠もなく仮定してしまう事だ。政府がそれを目標としているからそうするのだと言う。でも1997年度に521兆円であった名目GDPが2015年度には500兆円にまで下がっている。18年かけて21兆円下がった。それなのに毎年3%成長を仮定して計算してたら、間違った結果が出るのは当たり前だ。3%成長と言えばGDPが15兆円増えるということ。普通の国であれば、3%成長くらい当たり前だ。しかしデフレが続く日本では当たり前ではない。3%成長のためにはどの程度の財政出動が必要かを試算で示して欲しいものだ。

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2016年7月24日 (日)

中学の教科書で緊縮財政を教える馬鹿な日本の教育(No.205)

現在使われている中学公民の教科書には次のように書いてある(例えば東京書籍149頁)。「公債(国債)は借金ですから、政府は公債を買った人に利子を支払い、元金を返済しなければなりません。安易に公債を発行すると、利子の支払いや元金の返済がたいへんですし、将来の世代に負担を先送りすることにもなります。そのため、公債の発行は慎重に行わなければなりません。」つまり今の教育制度だと中学生にまで緊縮財政が正しいのだと教えている。

しかし、もしヘリコプターマネー(ヘリマネ)を認めるなら、このように教科書に書くことは間違いだということになる。ヘリマネなら無利子無期限の国債を日銀に引受させるのだから利払いも元金返済もないからだ。

第二次安倍内閣が発足する前、安倍氏は「日本銀行(日銀)の輪転機をぐるぐる回して無制限にお札を刷る」というヘリマネを思わせる発言をしていたが、首相になってからは財務省の圧力からか、そのような発言は影を潜めた。しかし7月12日にバーナンキ前米FRB議長を官邸で会談してから、政府がヘリマネを検討しているのでは無いかとの憶測が流れた。バーナンキ氏は2002年来日しヘリマネを日本に推奨している。政府・日銀によるヘリマネの期待が高まって一時円安株高が進んだが、黒田日銀総裁がヘリマネの実施を否定する発言が英BBCラジオで流れると一転円高株安になった。市場関係者はヘリマネは日本経済にとってプラスと認識していて、ヘリマネでハイパーインフレになることもないし、円の信認が失われることもないと信じている証拠だ。

しかし、ヘリマネの実現にはたくさんの壁がある。第一は財政規律という壁だ。これは日本経済の発展を阻害している最大の規制だ。江戸時代の為政者は賢かったから、通貨の適度の増発で巧みに経済を発展させることができたが、平成の為政者はそれができない。この財政に関する規制を緩和することこそ、日本経済を発展させるための最重要課題となる。第二は「60年償還ルール」。国債は60年で「完済」することになっている。ただし、新たに借換債を発行して発行残高は増え続けるのだからこのルールは何の意味もないのだが、借りたカネはきっちり返さなければいけないと言うだろうし、ヘリマネのように無利子無期限の国債は想定外だと主張するのだろう。第三の壁は日銀による国債の直接引き受けが財政法で禁じられていることだ。しかし、自民党は衆参で単独過半数を持っているのだからその気になれば、議会で承認してヘリマネも可能となる。

IMFは7月19日世界の経済成長率の見通しを発表した。それによると世界全体では2016年が3.1%、2017年が3.4%の成長と予測した。日本の成長率は世界中で際立って低く、16年が0.3%、17年が0.1%と予測されている。例えば米国は16年が2.2%、17年が2.5%、ユーロ圏は16年が1.6%、17年が1.4%となっており、先進国の中でも成長率の低さが際立っている。このままデフレ脱却ができなかったら、かつて世界一豊かであった国がいずれ貧乏な国の仲間入りをしてしまう。我々の子孫に、そのような惨めな国に住まわせたいだろうか。

江戸時代の為政者は賢かった。改鋳など行い、国民が使えるお金を徐々に増やしていき経済を発展させ国民の生活を豊かにしていった。通貨増発だが、現代風に言えばヘリマネを繰り返して活用したわけだ。通貨増発の速度も節度をもって行われたため、ハイパーインフレも通貨の信認が失われることもなかった。ヘリマネが無理でも思い切った大規模補正予算を期待したい。同様な効果は期待できるのだから。

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