2018年11月18日 (日)

外国人労働者を大量に入れると将来世代へのツケを残す(No. 324)

外国人労働者の受け入れを拡大する入管難民法改正案の審議が行われている。政府は移民ではないと言うが、実質移民受け入れ拡大である。日本は犯罪の少ない平和な国であることは広く知られている。外国人が入ってくれば犯罪が増える。治安悪化を望む人は誰もいない。しかし政府は反論するだろう。外国人が増えても犯罪の件数は増えていないと。しかしこの説明で騙されてはいけない。警視庁によると日本人の犯罪率を100%とした時、2000年の統計では来日中国人243%、来日ブラジル人250%、来日米国人4%となっている。国籍によって犯罪率が60倍も違うとなると、犯罪とは無縁な国の人が多く入ってきて、犯罪を多くする外国人の犯罪が薄められ平均では外国人が増えても犯罪は増えてないように見える。しかも日本で爆買いをする裕福な中国人は殺人とか窃盗とかの犯罪に手を貸すことは希である。しかし、政府が目指す低賃金で単純労働を行う労働者となると、貧しい人が多く、過去の統計では出てこなかったような高い犯罪率を想定しなければならない。劣悪な労働条件で失踪が相次ぐ技能実習生は危険極まりない。

そもそも民族間の争いは世界各地で行われており、紛争が絶えない。それを日本に持ち込むことは止めて欲しい。今回の徴用工問題も70年以上前の朝鮮人を働かせたために大変な国家間の問題になっている。韓国の反日感情もやはり民族対立の一つであり、生活に困窮した外国人を大量に入れて低賃金で働かせるということは新たな徴用工を発生させ深刻な民族対立問題を発生させかねない。

人手不足が深刻で産業界から外国人労働者を入れるよう強い要望があるという。しかし、低賃金の労働者に働いて貰わなければ成り立たないような業種は撤退してもらい、業界再編を促すのが政府の仕事のはずだ。値上げしても売れる商品は残る。これは消費者の選択だ。低賃金を維持し、非正規社員を多数抱えなければ維持できないような会社を政府が支援するということはデフレ脱却を遅らせる経済を弱体化させるということだ。外国人労働者を入れなければ、企業としてはAI/ロボットなどを入れ自動化を進めるか賃金を上げて人を確保するかのどちらかを選ぶしか無い。賃金が上げれば需要も増えるからデフレ脱却へと向かう。賃上げをすれば赤字になるのであれば製品を値上げするし、値上げで売上げが落ちて赤字になる会社は淘汰される。業界再編で日本企業が国際競争力を増す。これはかつて日本が成長していた頃の姿である。政府は転職を強いられた弱者に対しては手厚い保護をする必要がある。単純労働を行う外国人労働者を入れて弱い企業を助けるより、業界再編を促し企業の国際競争力を高めた方が日本の将来を明るくする。日本企業の新陳代謝が必要である。

外国人労働者でもAIの専門家や大学研究者など日本経済を牽引してくれる人たちを高給で招聘するのは大歓迎でありこちらは大いに力を入れてほしい。

外国人労働者を入れないとして、評判の余り良くないレストランやホテルが廃業したとしても我慢できるのではないか。低賃金の外国人を雇ってかろうじて存続させる必要があるのだろうか。介護の人手不足は深刻だとのこと。給料が安すぎて人が集まらない。外国人を安く雇わなくても介護職員の給料を上げれば人は集まる。その場合、介護保険料の値上げを直ぐにしようと言い出す人がいる。しかし給料上昇分は財政でバックアップすればよい。介護従事者100万人の年収を20万円上げるには2000億円必要になる。その程度財政赤字を増やす余裕はある。デフレ脱却には財政赤字の拡大が特効薬である。その他AI/ロボット等を使った労働環境の改善も行うべきだ。

人手不足と言うが、随分無駄なところにエネルギー(人手)を使っている。毎日郵便ポストに入ってくる関係無いチラシ、無駄なメールも山ほど入ってくる。テレビドラマもあんなに沢山作る必要があるのだろうか。デパートに行くと無数の商品が並んでいるが本当に全部必要か、商品の種類が2~3割減っても困る人はほとんどいないだろう。7軒に1軒は空き家だと言われているのにどんどん新しい家を建て続けるしかないのか。また、新築住宅は僅か20年で価値がゼロになると主張し、国も建築業者も中古住宅の取引がわざと成り立たないようにして不必要に建て替えをさせようとするからますます人手不足になる。中古住宅が売買されると消費税も入らないから国はいやがる。建設業者も中古住宅を壊して新築住宅をどんどん建てて欲しいのだ。住宅の平均耐用年数はイギリスで141年、アメリカは103年、ドイツは79年と週刊誌に書かれたことがあった。日本も実際は、それほど頻繁に新築住宅を建設する必要が無いし中古住宅活用で建築現場の人手不足も解消する。要するに人的資源の無駄遣いが横行している。無駄遣いを止めれば外国人労働者の大量受け入れなど不要である。

農家も低賃金の外国人労働者が入って来なければ農業を辞める人も多いだろうし、その場合他の農家が農地を引き取り大規模化が進み生産性が向上する。大規模化すればドローンやAIを使った農耕機械が導入でき米国の数十分の1と言われる農業の生産性を上げるのに役立つ。

国はもっと国民の幸福を考えて欲しい。日本の生活困窮者にもっと支援をすべきだし、日本の経済を牽引し世界をリードする企業を育ててほしい。特にGAFAと呼ばれる超巨大IT企業に対抗できる企業を育ててほしい。生活苦の外国人労働者を大量に入れて治安を悪化させる前に一度立ち止まって考える時だと思う。彼らは日本で稼ぎ本国に送金する。富を日本から吸い上げて外国へ流してしまうから国内の需要拡大にはマイナスだ。企業は低賃金で働かせて暴利をむさぼり、稼いだカネは内部留保として積み上がる。もし外国人労働者を入れないなら、人手不足の企業は給料を上げてでも人を集めるしかなく、そのときはカネは日本人労働者の手に渡り、確実に消費に回る。企業が内部留保を取り崩したカネが結果として内需拡大を導きそれが経済を拡大させるから企業にとってもプラスになる。当然AI/ロボットなどの投資も進みそれも経済の活性化にはプラスだ。

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2018年11月12日 (月)

上院でトランプは勝ったとは言えない(No.323)

中間選挙で下院で大敗し、共和党が過半数を失ったにも拘わらずトランプ氏は大勝利を宣言した。11月11日現在で分かっていることは
上院  民主党  46   共和党 51   残 3
下院  民主党 231   共和党 204
である。上院は共和党、下院は民主党が過半数を握った。選挙前には両院とも共和党が過半数を持っていた。これでトランプは勝ったと言えるのか。下院は全議席が改選されたのだが、上院は改選されたのは100議席のうち35議席のみだった。今回勝ったか負けたかの判断には、改選された議員だけで比べるべきだろう。上院の改選議員だけに限ると
民主党 23
共和党  9
残    3
となり、民主党の大勝、共和党の大敗ということになる。共和党は大敗したが、非改選の議員が多数いたために、なんとか過半数を維持できたということだ。上院の議会選挙は2年ごとに3分の1ずつ改選される。民主党は6年前大勝したが、今回そのときほど議席は取れなかったが、それでも圧勝したということだ。

中間選挙での上院の改選議席数は
2018年  民主党 26, 共和党  9
2020年  民主党 12、 共和党 21
2022年  民主党 12、 共和党 22
つまり2018年は民主党が勝ちすぎた後の選挙だから議席を減らしてあたりまえ、逆に2020年と2022年は負けすぎた後だから、議席を増やしやすい。ということは2020年、2022年の選挙では民主党が挽回する可能性があり、共和党議員にはプレッシャーが強まるに違いない。

トランプ氏は今後難しい政権運営に苦しむこととなる。下院で与党が過半数を失ったから、予算案が思い通りに通らない。公約にしていたメキシコ国境に壁を造る構想もオバマケア撤廃も無理だし、環境を破壊する規制緩和もストップが掛かる。その代わりに下院で多数派となった民主党は議会の調査権を駆使し、ロシア疑惑の追及を加速する可能性もある。親から相続した460億円で相続税の脱税疑惑の追及も受け、しかも納税申告書の開示も求められる。頭を民主党に押さえられた独裁者トランプの姿は哀れに見え支持率は落ちるのか。それとも決められない政治は民主党のせいだとして民主党を非難して逆に支持率を高めるのか。

ワシントン・ポスト紙などが8月末に発表した世論調査によると、72%が民主党が下院の多数派を制すればトランプ氏の弾劾に進むとみる。下院で過半数の賛成で訴追できるが、上院出席議員の2/3以上の賛成がなければ弾劾は決定できない。ロシア疑惑が深まりトランプの支持率が更に下がるようなことがあれば、次回の議会選挙で危機感を感じた上院議員がトランプを見捨てる可能性があるから弾劾の可能性は否定できない。

トランプが支持率アップのためにできるとすれば北朝鮮問題だろう。北朝鮮は核放棄するのかどうか、世界はまだ疑心暗鬼だ。11月2日北朝鮮が核開発の再開を示唆した。今こそトランプ氏は北朝鮮を「核を放棄しなければ武力攻撃をしかける」と脅すべきである。韓国と北朝鮮は9月19日、平壌で開かれた南北首脳会談で採択した「板門店宣言の履行に向けた軍事分野合意書」で、「いかなる場合でも」武力を使用しないことで合意した。つまり北朝鮮は「ソウルを火の海にする」と脅せなくなっており米国からの武力攻撃に反撃する手段を放棄している。つまりトランプに脅されれば核を放棄するしかない。

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2018年11月 4日 (日)

ベーシックインカムと不都合な事実(No.322)

(1)今すぐベーシックインカムを始めるとどうなるか

ベーシックインカムは多くの人により研究されており、条件付きだが筆者も反対はしていない。しかし、そこには不都合な事実もあることを忘れてはいけない。例えば毎月一人当たり10万円を配ろうとしたら年間140兆円の財源が必要となり、そういう提案に今の財務省や政治家が耳を貸すとは到底思えない。そもそも税率というもの高くすればいくらでも税収は増えるというわけでもなく、ある限度を超えると逆に税収は減少し始める。これはラッファーカーブという名前で知られている。

例えば凄まじい大増税をして毎月10万円を全ての国民に配ることができたとしてみる。最も得をするのは田舎でほぼ自給自足をしている小規模農家だ。小さな畑を持ち自分で食べるものは自分で育てれば良い。近くに親戚等が住んでいれば、分業で様々な農作物を育て分け合えばよい。あるいはこっそり露店で売っても税務署にはほとんど補足されないだろう。通常の流通ルートを使えば重税が課せられほとんど利益にならないが、露店で売れば自分の収入が大幅に増えるのだからそうする人が増えるに違いない。露店で買った方がスーパーで買うより安くて品質もよいなら誰もが露店で買う。ガレージセールも盛んになるかもしれない。もちろん正確に税務申告するなら合法だが、ごまかせば違法になる。だが税務署がすべての取引を補足するのは無理だ。サラリーマンが脱サラして大量に農村に住むようになるだろう。地方の活性化に役立つかもしれないが、貴重な都会の労働力が失われる。制度として適材適所でその国の労働力が使えないのは致命的な欠陥となる。

農家に限らない。例えば家庭教師を個人的に行っている人は税務署に報告しない可能性がある。自分は政府からの給付金で暮らしていけますから働いていませんと言えば良いだけだ。税務署が補足するには探偵事務所にお願いするしか無いが、そんなことはとてもやっていられない。お店であろうと工場であろうと小規模であるほど節税の工夫はやりやすくなる。例えば事業所を帳簿上だけは複数に分割する。それぞれ税務署の管轄が異なるようにしておけば、税務署が調べようにも部分的にしか調べられず、利益を移動させることにより合法的に利益が見えなくできる。

今は税率が低いからそんな手間を掛け税理士を雇っても得にはならないのだが、大増税をするなら、それが採算に合うこととなる。しかもその方法が一般に広く使われるようになれば、税収が落ち込むわけだから、税収確保のためには取れるところからもっと取るしか無く、税率は更に上がることとなる。もしかしたら、大企業も悲鳴を上げ、従業員をすべて外注に切り替えるかもしれない。例えばAさんを営業マンとして雇う代わりにAさんに外注専門の個人事業者として形の上で独立してもらうわけだ。実質的には社員と変わらないが、帳簿上は独立して事業所に営業を委託した形になる。Aさんは頑張って様々な領収書を集め、営業経費として計上し節税をする。税率が低い現在では得にはならないが、税率がはね上がると節税効果が大きくなる。重要なのは、税務署が全従業員の確定申告を詳しく調査する暇がないことだ。ほとんどが黙認され節税は成功する。今でも商売は利益を出すのは大変厳しいのだが、大増税後にまともに税金を払って採算が取れる会社などほとんど無くなる。

政府が節税・脱税の抜け穴を封じたとすれば、大企業は重い税負担を補うため従業員の給料を低く抑えるしかない。そうなると大企業で働くより田舎で小規模な農家をやっていたほうが収入が増えるということになり、大企業が衰退していき、国際競争力も失われていく。

確定申告の数は毎年6000万件になるだろうし、税務署が税務調査をできるのはそのうち10万件にすぎない。つまり税務調査を受ける確率は600年に1回ということになるから、ほぼ一生の間税務調査は受けないと思って良い。ということなら脱税し放題になる可能性がある。心配なら僅かな保険金を払って「税務調査保険」に加入すればよい。万一税務調査を受けた場合でも、その年の税金を重加算税まで含め全額払ってくれるものである。

本来課税対象とされるべき所得の内、税務署がどの程度の割合を把握しているかを示す数値を捕捉率と呼ぶ。この捕捉率は業種によって異なり、給与所得者は約9割、自営業者は約6割、農業、林業、水産業従事者は約4割であると言われこのことを指して「クロヨン」と言われている。税率が低い現在はクロヨンで収まっているのだが、税率がはね上がると人は更に巧妙な節税・脱税方法を発見するに違いない。悪くすると「正直者は馬鹿を見る」ということでモラルハザードに陥った世界が実現する可能性がある。そのとき日本はデフレスパイラルに陥りGDPは減少し、大企業は没落し、平均所得も下がり、税収も減ってきて毎月行う給付金も下げざるを得なくなる。つまり日本全体が貧乏になってくる。

ベーシックインカムを払えば年金を払わなくて済むから財源の一部になると考えることができるだろうか。しかし、定年まで多額の年金積立金を払ってきた人と全く払ってこなかった人が同額のベーシックインカムを受け取り、年金をゼロにすることはできない。年金を払った人には約束通り一生の間年金を払うしか無い。ベーシックインカムがあるのだからもう年金は要らないだろうという論理は通らない。

結論から言えば「増税の前にやることがある」である。今すぐにベーシックインカムを導入するのは時期尚早ということだ。今は人手不足が深刻な時期であり、ベーシックインカムを導入して大量の労働力を失う余裕はない。AIが大量の雇用を奪い、失業率が激増するような時代が来させるまで、やらなければならないことがあるのだが、そこには不都合な事実が待っている。

(2)ベーシックインカムの前にやるべき事

10月23日、パーソル総合研究所と中央大学の調査「労働市場の未来推計2030」が発表された。それによると日本の人手不足が2030年には644万人に達するとしている。これは国が調査した就業者数や完全失業率、経済成長率などのデータを基に試算を行った結果である。これに同調するかのように海老原嗣生氏が『「AIで仕事がなくなる」論のウソ』という本で、AIが導入されても15年でなくなる雇用はせいぜい9%だという調査結果を示している。

他方では、AIが雇用を奪い失業者だらけになるという正反対の予測もある。両者の考えは一定の仮定の基で正しいのだが、両者の決定的な違いは未来社会がAIを受け入れられる社会なのかどうかということだ。そこで不都合な真実が浮かんでくる。AIを受け入れられる社会に移行するには、日本人が大嫌いな改革を大胆に行う必要があることだ。

第一の改革は規模の拡大だ。AI導入にはお金が掛かり、小規模事業者では導入は無理だ。例えば農業だとAIに小さな農地の農作業をさせるのは非効率だが、大規模農業であれば、AIを使った無人の農業機械が活躍できるし、農家の収入も拡大できる。外国から農産物が入ってきても対抗できる。漁業でも同様で、小型漁船にAIを導入するのは非効率だが、大規模漁船で漁業資源の管理もしながらAIを導入すれば漁民の収入も増え漁業の発展も見込める。小売りも同様で、小規模小売店が乱立し、各店舗に対しメーカーの営業マンが商品の売り込みに行くやり方は非効率であり、アマゾンのような大規模ネット販売が浸食してくるのではないか。自動運転車やドローンによる無人の配達が可能になれば、圧倒的な競争力を持つようになると考えられる。弱者切り捨てという批判が出るだろうが、大規模な補助金を使い、切り捨てられる人が出ないように労働者のスムーズに移動をさせることが出来るかどうかで日本の運命が決まる。

第二の改革は許認可の問題だ。例えば自動運転技術の開発のためには公道を自動運転車が走ることを許可してもらわなければならない。また自動運転車が完成しても、それを公道で走らせるための許可が必要となる。過去の事例から推測すれば、日本は諸外国より遅れるのではないかと危惧する。それが人手不足に拍車を掛けるのではないか。医療もAIが入りやすい分野だ。国が有効性を認め保険が適用される禁煙アプリが第一弾として2019年にも登場する見込みである。いちいち病院に行かなくても、スマホのアプリとの対話によって治療ができる。有効性の確認が必要となるが、徐々にAIがカバーする病気の範囲が拡大してくるに違いない。現代医学の粋を集めれば相当の範囲の治療が病院に行かなくても出来るようになるのではないか。一定の範囲で薬の処方箋を出すこともできるようになるだろうし、医師不足の解消や無医村地区でも医療に貢献する。教師不足への対応も可能だ。授業の内容にもよるが、多くの授業はビデオで置き換え可能でビデオの質を高めれば先生の授業以上の成果は出る。生徒のレベルに応じたビデオを見せることも可能だ。生徒との質疑応答も本気で開発すれば人間よりAIのほうが、質を高められる。重要な事はAIなら全生徒に個別対応できることだ。人間が教えるよりAIのほうが教育効果が高いことが高められるのであれば導入してもよいという国の許可が必要だ。

以上述べてきたように、AIを導入するための改革を行えるかどうかで、天と地の差が出る。これは不都合な真実だ。改革をしなければ、人は貧しいまま、苦しい労働を続けなければならないし、そんな低賃金では人は集まらないから人手不足は深刻化する。改革すればバラ色の未来が開けるが、そこにたどり着くには各分野からの猛烈な反対を押し切る必要が出る。世界は間違いなくAI導入を積極的に行うが日本もそれができるのか決断の時が迫っている。

第一と第二の改革ができたとして、残るは研究開発への大規模投資だ。世界を見渡せば、時価総額ランキングで上位はすべてIT大手である。日本トップのトヨタは42位であり、韓国のサムスンの16位よりはるか下である。これは日本経済の没落を象徴するようなものであり、一刻も早く周回遅れとなったAI開発を挽回する必要がある。これには政府による大規模投資が必要となるが、この分野であればどんなに投資しても投資し過ぎることはない。ここで必要になるのはベーシックインカムで必要とされる100兆円規模の財源ではない。僅か数兆円であってもAI開発にとっては途方も無い巨額の投資だ。人材不足でAIに強い人集めに苦労するに違いない。ここは国の内外から優秀な人材を異例の高給で引き抜くとよい。日本は産業用ロボットを得意とするのだから、AIで強化した産業用ロボットの開発を強化する事は極めて大きな意義を持つ。国債発行で数兆円程度を確保するのであれば、不況の続く日本経済にとって益あっても害はない。

(3)今すぐ生活困窮者を救う方法
筆者の拙書
『労働はロボットに、人間は貴族に ロボット ウィズ アス』(2005)
で、労働をAI/ロボットが行うようになったときの社会・経済を詳しく説明し増税ではうまくいかないことも説明した。その段階に到る前、生活困窮者に対して何ができるだろうか。一部のベーシックインカムを主張する人たちは、ベーシックインカム自体が生活困窮者を救う道だと考えているようだが、(1)で述べたように、行き過ぎた増税が経済システムを壊してしまい、決して望むような結果を生まない。大部分の労働をAI/ロボットが行うようになった事が確認できるまで労働の量と質に応じて収入が決まるという現在のシステムを崩すべきではない。

現在の生活困窮者を救う日本の制度はうまく機能していない。生活に困っている人であっても貯金があったり家や車を持っていたりローンがあったり家族や親族から援助が見込めたり働けるのに働いてなかったりしたら生活保護は受けられない。受給ができるのは生活困窮者の中のごく一部だと言われている。そこで少ない予算で多くの生活困窮者を救う方法として次のような提案を行った。
http://ajer.cocolog-nifty.com/blog/2017/12/no280-cfbf.html
これを筆者はミニマムサプライと名付けた。

物余りの時代、日本に関して言えば、本来食べられたはずの、いわゆる「食品ロス」は500万~800万トンである。これは、わが国のコメの年間収穫量(平成25年約860万トン)に近い。食べられるのに捨てている食糧を提供してもらったり、企業から寄付を受けたり、大量につくった極めて低価格の食料品や日用品(品数は限定する)を買い取ったりして、それを国営商店で無料で配布する。この商店には使えるけど使わなくなった衣服とか本とか日用品とか家具とか何でも持ってきてもらい、無料で配る。現代ではたくさんの無駄がある。まだ十分食べられるのに見栄えが悪くなり売り物にならないとして捨ててしまう食品、使えるのに傷物として処分する製品、引っ越しでいらなくなった物等も国が集めて国営商店で無料で配布する。ただしこの無料の商店に入れるのは事前登録した生活困窮者に限る。顔認証を行い、限られた人のみ限られた量の商品を無料で入手可能とする。生活保護に比べ、効率的に支援できるので広い範囲の生活困窮者を救うことが出来る。更に詳しくは上記のサイトを見て頂きたい。

(4)AI/ロボットに雇用を奪われたら

次第にAI/ロボットが本格的に雇用を奪う時代が来る。それが2040年なのか更に後なのか分からないが確実にその時代はやってくる。AI/ロボットを使って財・サービスを提供するのは超巨大IT企業である。お金を使うとお金は国民からこの企業に流れるが、そういった企業はAI/ロボットに働かせるわけだから、労働者はほとんどおらず、企業から国民へのお金の流れは少ない。労働者がほとんどいないということは所得税収は極めて少ないということだ。何らかの方法で企業から国民へというお金の流れをつくらないと国民はお金を使えないので経済は破綻する。これを大増税という形でお金の流れをつくろうとすると(1)で述べたように失敗する。

筆者の提案は、労働者を雇わなくなった超巨大IT企業の株を政府が買い占めて国有化することである。
http://ajer.cocolog-nifty.com/blog/2015/05/no178-f971.html
国は物言わぬ株主として通常経営に口出しはしないが、多額の利益が上がったときは、多額の配当を促すことにより国の財源とする。この頃の企業は労働者に賃金を払わなくても良いので、利潤が極めて大きく配当も巨額になる。最終的には経営もAIに任せた方がよくなるので、完全国営化する。今でも日銀はETFという形で企業の株を買っている。これを更に買い進めるということである。国営化された独占企業だと競争が無くなり進歩が止まると考えるかもしれない。しかし、この時代での進歩とは労働生産性の向上である。人手を借りずに生産できるということは労働者一人当たりの生産高で計算される労働生産性はすでに無限大である。無限大からいくら増大しても無限大に変わりは無いが国営企業内にいる研究員と極度に発達したAIが競い合って更なる改良・改革を行っていく。

このような方法で政府が十分な財源を確保したらベーシックインカムが可能となる。ただしベーシックインカムでお金をもらっただけでは国民は何をすれば良いのか路頭に迷うし、何かやろうにも受け皿が整備されていない。人にはそれぞれ夢がある。サッカーや野球の選手、医師、プログラマー、学者、エンジニア、看護師、歌手、画家、カウンセラー、デザイナーなど様々な夢があるだろう。政府に十分な財源があるならできるだけ多くの人の夢を叶えてやるように支援をするとよい。筆者はこのような支援をJOD(Job on Demand)と呼んだ。
http://ajer.cocolog-nifty.com/blog/2018/09/job-on-demand-2.html

例えば野球選手になりたい人がたくさんいたとする。今は1チームあたり1軍でプレイできる選手の人数は最大28名、各チームの支配下登録選手は70名までである。高給を稼げるのはごく僅かな人だけだが、JODでは1チーム当たりの人数を増やす。活躍できる人ほど給料が高くなるのは今と変わらないが最悪の成績でも生活ができるだけの収入は保障する。チーム数も増やし球場の数も練習場も増やす。多くの人に野球を楽しんでもらうよう、国が援助して入場料を安くする。

歌手などの音楽家の活動も国が援助する。コンサートホールもたくさん建設し、音楽会も支援し安く頻繁に開く。音楽家も今は音楽家として生活費が稼げる人はごく僅かだし音楽会も結構チケットが高いから頻繁には行けないが、この時代には多くの音楽家が生活できるよう支援をする。また多くの国民に音楽を親しんでもらうために、音楽会の入場料をごく安くしてもやっていけるよう国が支援をする。

医者になりたいという希望者が多いかもしれない。この時代医者が金持ちとは限らない。人間の医者よりAI/ロボットの方が正確な診断が可能になっている可能性があるからだ。医学の研究で膨大な論文が発表されており、人間は最新の研究論文まで含めて全部読んで理解するのは無理だ。しかも個人カルテが電子化されその人の病歴、検査結果、治療履歴、個々の薬の効き具合、アレルギー反応等膨大な情報が記録されており、それらをすべて考慮に入れて治療方針を決定するとなると、人間の医者よりAI/ロボットの方が誤診が少なくずっと優れているということになっているだろう。そうであればAIの補助としての医者は、それほどの高給が稼げる職業ではなくなっている可能性がある。人の命を預かる責任の重い仕事だし、高度なAIよりもミスが多いし、病状が急変したら深夜でも起こされるのだが、給料が安くても希望者が多いのかどうか分からない。

JODでは、希望者全員を公務員として雇い生活できる最低限の給料は払うのだからベーシックインカムの拡張版と思って頂いてよい。更に詳しくは上記サイトか上記拙書を参照して頂きたい。

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2018年10月22日 (月)

いくら消費増税をしても国の借金は増え続ける。何を間違えたのか。(No.321)

10月15日に安倍首相が来年10月からの消費増税を表明してから、やっと消費増税に関連したマスコミ報道が増えてきた。その多くは消費増税の前後の駆け込み需要と反動減の事とか軽減税率の扱いの煩雑さを指摘するものだ。前回2014年の5%から8%への引き上げの際に消費が大きく落ち込んだが、その時のトラウマが消えていない。再びそのような落ち込みがないよう、財政拡大で落ち込みを防ごうとしている。

消費増税で国の借金を減らしたいのかもしれないが実際は借金は決して減らず、逆に増えてしまう。言うまでもなく消費増税は消費に悪影響を及ぼし経済成長を低下させる。デフレ脱却の時期も遅らせる。二十数年前日本の一人当たりの名目GDPは世界トップレベルだった。今は二十位以下に落ち込み先進国では最低、韓国にすら抜かれそうである。これはデフレ下で十分な経済対策が行われず、世界の中で際立って低い経済成長を続けているからであり、その成長率を更に下げようとする消費増税が良いわけが無い。

民間の日本経済フォーキャスター39人(機関)による予測の平均(ESPフォーキャスト調査)によれば日本の実質GDP成長率は2018年度が1.18%、2019年度が0.78%、2020年度が0.70%であり、消費増税で減速する。豊かだった日本を貧しくしてしまったのに、更に貧しくしようとしてよいのだろうか。貧しくしてしまったら少子高齢化対策に悪影響なのは明かだ。国の借金を返したいということでどんどん消費増税を行っているのだが、国の借金は減るどころかどんどん増えている。何かおかしいと思う人は誰もいないのか。ちなみに国の借金が増える事はお構いなしに、更に借金を増やした国はインフレでGDPも増えるために借金の対GDP比は日本よりはるかに低い。その理由は簡単だ。借金を減らそうとして緊縮財政・増税を行うとGDPが増えなくなるが国の借金というもの増え続ける性質があるのだから、借金のGDP比は増え続ける。逆に諸外国のように借金が増える事は気にせず、経済成長第一に考え財政拡大・減税を行うとGDPが増え始めるので借金のGDP比は減少してくる。

日本の国の借金は130年間で500万倍になっており、どう頑張っても一定の割合で増え続ける運命にある。
http://ajer.cocolog-nifty.com/blog/2018/05/no301-a00c.html
諸外国のように国の借金は気にせず適切な経済対策を行って経済成長を第一に考える政策に変更したらどうか。国は通貨発行権を持っており、今経済対策を行ったからと言って将来世代が経済対策を行えなくなるということはない。これは家計とは全く違う。

政府がどんどんお金を使うと借金のGDP比は減るという話を信じない人は借金のGDP比のランキングを見て欲しい。
https://www.globalnote.jp/post-12146.html
日本が世界で最悪の237%だが、政府がカネを使いすぎた国は次のようにずっと低くなっている。
ブラジル       83%
ジンバブエ     82%
アルゼンチン   57%
ベネズエラ     38%
トルコ         28%
減税・歳出拡大を行えばGDPが増加し借金の対GDP比が下がることを分かって頂いたであろうか。

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2018年9月21日 (金)

ベーシックインカムより優れたJOD(Job-on-Demand)(No.320)

最近ベーシックインカムの議論が頻繁に交わされるようになった。AI/ロボットが雇用を奪ったときの経済システムについて検討しなければならない時期が来たと感じているからであろう。しかし、ベーシックインカムには様々な問題がある。第1は巨額の財源が必要となることだ。例えば国民全員に毎月1万円を配るだけで、年間14.4兆円の財源が必要となる。これを増税で賄うとすれば、例えば消費税率を数%も上げる大増税となる。生活困窮者にとっては月1万円では生活できないし、富裕層にとっては、そんなカネはもらっても余り意味が無いと感じるだろう。例えば消費増税で賄った場合、貧困層からカネを巻き上げ、富裕層にばらまく形となり批判は免れない。もし生活するに十分なカネを全員に配ることができたとしても、国民が労働意欲を失うのではないか、あるいは暇をもてあますのではないか。働くことに生き甲斐を見出していた人たちを失望させるのではないかなど、様々な問題が発生してくる。

この代替案として筆者はJOD(Job-on-Demand)を提案している。これは以下の拙書で紹介した。
『労働はロボットに、人間は貴族に ロボット ウイズ アス』小野盛司(2005)
筆者が提案するのは、国民全員に同額のカネを配るのでなく、各人がどのような仕事に生きがいを感じるのかを調べ、それが実現できるように国が後押しをするということだ。もちろん「いっぱいカネを稼ぎたいから医者になりたい」という人も多い。国民全員を金持ちにするのは無理だ。なぜなら金持ちか金持ちでないかは相対的なものであるのだから。未来社会では供給力は格段に拡大していると考えられるから、それなりに誰もが今より金持ちになっており、価値観は現在よりかなり変わっていると思われる。生活に必要なものの大部分は誰でも入手可能になっているはずだから。

未来社会で人はどのような職業を選びたがるだろうか。例えば
作家、タレント、小説家、俳優、評論家、記者、料理人、デザイナー、科学者、研究者、発明家、歌手、カメラマン、芸術家、陶芸家、園芸家、棋士、落語家、野球やサッカーの選手
などがあるかもしれない。例えば歌手になりたいという人が多数いたとしよう。現在では歌手で生計を立てることが出来る人はほんの一握りしかいないが、JODでは国が強くサポートする。余程歌が上手くないと、リサイタルでも聴衆が来てくれないだろうが、それでもうまくアレンジして歌う場所を提供する。採算を度外視すれば結構できるだろう。下手でも公務員として雇ってやり生活に困らないほどの給料を出してやればよい。そしてヒット曲を連発する歌手には給料を高くするとか、スポンサー契約等様々な副収入を許す。公務員であっても副業禁止などの制限は一切かけないので、天井知らずの収入が許される。

筆者は半世紀近く前になるのだが西ドイツに暮らしていた。当時多くの日本人音楽家と西ドイツで出会った。日本と違い、西ドイツでは音楽家に対する国の支援があり生計を立てていけるのだと言っていた。オペラなど入場料も随分安かった。JODでは様々な分野で国が支援をしていけばよいのだ。国民の人生を充実したものにするにはそれがなにより大切だ。

医者になりたいという希望者が多いかもしれない。この時代医者が金持ちとは限らない。人間の医者よりAI/ロボットの方が正確な診断が可能になっている可能性があるからだ。医学の研究で膨大な論文が発表されており、人間は最新の研究論文まで含めて全部読んで理解するのは無理だ。しかも個人カルテが電子化されその人の病歴、検査結果、治療履歴、個々の薬の効き具合、アレルギー反応等膨大な情報が記録されており、それらをすべて考慮に入れて治療方針を決定するとなると、人間の医者よりAI/ロボットの方がずっと優れているということになっているだろう。そうであれば医者とて、それほどの高給が稼げる職業ではなくなっている可能性がある。今だと大病院では長時間待たされた後、診察で医師と話せるのはほんの短い時間で誤診も多い。未来の医療では、人工知能がまず自宅で詳しい説明を聞く。簡単な検査も自宅でできるようになる。そこで薬を処方して終わる場合もあれば、その診察を踏まえて病院で診察を受けることもある。医師は補助的な役割の事が多くなるからそれほど金持ちにならないのではないか。

JODが優れているのは、最初は小規模にスタートし、次第に規模を拡大することが可能なことだ。ベーシックインカムの場合は少額の配布でも巨額の財源が必要となる。それは貧乏な人も裕福な人も全員にそして一律にお金を配ろうとするからである。JODの場合は失業者が増えてきたらその人達がどんな職業に就きたいかを聞いて対応すればよく、はるかに少ない人数を相手にした対策なのではるかに少ない財源で大きな効果がある。そして段階的に適用範囲を拡大して行けば良い。                                                                                                                                                                                                                                                                                            

特にやりたい仕事はないような人、何をすればよいのか自分では分からない人は国で仕事を提案すればよい。未来社会ではAIの進歩が決定的に重要になるし、そのためにはビッグデータが欠かせない。そのための生活モニターになってもらい生活を快適にするためのあらゆる種類のアンケートに答えてもらえばよい。政府の政策に対する意見、各テレビ番組の感想、日常使っている器具、自宅の住み心地等あらゆる質問をネット経由で答えてもらう。このような人に対して公務員として給料を払う。これなら寝たきり老人でも仕事ができる。公務員として雇うのはどこまでかと言えば必要に応じてということでそれがJODの意味である。AI/ロボットがどこまで人の雇用を奪うのかに応じてその規模を決めれば良い。

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2018年9月19日 (水)

生物学を基に考える国民を幸福にする方法(No.319)

2015年12月に発表された野村総合研究所のレポートによれば15~20年以内に日本で働いている人の49%の仕事が人工知能(AI)やロボットで代替可能になるとのことである。これは英オックスフォード大学のマイケル・オズボーン准教授らとの共同研究として行われた。今から約140年前には農業人口比率は約8割だった。

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国民の大部分が一生懸命農作業をしてやっと十分な食糧を確保できた。しかし今はその比率は3%台にまで落ち込んだ。農業の機械化、肥料農薬の改良、品種改良等があって農業という雇用が大部分失われたが、その間農民が揃って失業したわけではなく、第二次、第三次産業へと移っていった。同様な事がAI/ロボットに雇用を奪われていく段階にも起こる。このときどうすれば人を幸せにすることができる社会をつくれるかは生物学を基にすれば正しい結論が得られる。

そもそも自然界におけるすべての生物は、食う食われるの関係(食物連鎖)で鎖状につながっている。その生物にとっての食糧となる生物が増えるとその生物は増える。天敵が増えるとその生物は減る。人間は食糧となる生物を増やし、天敵を減らした。その結果人口が増加したのだが、人口増加の速度以上に食糧生産が伸びた。ほんの少しの時間働けば、食糧は十分確保可能になった。このような環境では、普通の生物であれば食べる事と子育て以外ほとんど何もしない。その例がサル山のサルである。一方、人間は食べる事以外に実に多くの事を行っているのだが、一体何のためにそのような事をしているのか誰も理解していない。その証拠に誰も人間が何のために生きているのか理解していない。

人間は何のために生きているのかというとその答えはある意味「子孫を残すため」である。子孫を残す能力が高い生物のみが生き残った。「種の保存のため」とか「自分の遺伝子を残すため」とか、よく似た表現でもほぼ正解である。生物学用語で多レベル淘汰(multilevel selection)に関係している。「人間は子孫を残すために生きている」というと言うと、これには関係しないように見える行動をどう説明するのかという質問が出てくる。

【例1】金持ちは庭付きの大きな家に住む。庭には池があり綺麗な水の中にコイが泳いでいる。
なぜ人はこんな所に住みたがるのだろうか。太古の昔、人は狩りをして食糧を確保していた。その頃このような池を見つけたら嬉しかったに違いない。綺麗な水は飲むことができるし、その中の魚は食べることができる。今となっては水は水道の水かミネラルウオーターで十分だ。魚はスーパーでいくらでも買える。しかし、人間の心は太古の昔から変わっていないから現代でもこのような池を見ると心が和む。

【例2】野球はなぜ面白いのだろうか。
バットでボールを打つのだが、太古の昔、人はこん棒で獲物を殴り殺して食糧にしていた。ボールを投げる行為だが、太古の昔には石を投げて獲物を殺したり、あるいは天敵を追い払ったりしていた。その名残があり、野球が楽しめる。

【例3】例えばミロのビーナスがなぜ美しいと感じるのか。
これは女性の裸体であるし、生殖に関係しているのは明かである。しかしミロのビーナスは石であり、これを見ても種の保存・子孫保存には直接的には無関係でありこれは何のための行動かと疑問に思うかもしれない。ここで次のような仮説を立てる。

【仮説】
人間を子孫保存に適した行動を取らせるための判定装置を持っている。これをディスクリミネーターと呼ぶ。ディスクリミネーターは種の保存・子孫保存にプラスになるならプラスになる。このとき快感、幸福が感じられ、行動は促進される。逆に種の保存・子孫保存にマイナスになるならマイナスになる。このとき不快、不幸が感じられ行動を制止方向にはたらく。

ミロのビーナスでディスクリミネーターがプラスになるのは、誤作動に相当する。ディスクリミネーターの作動状況は次のように分類される。
①正常作動: 種の保存・子孫保存にプラスかマイナスかを正しく判定
②異常作動: 種の保存・子孫保存にプラスかマイナスかを逆に判定
           例えば注射や歯の治療、麻薬
③空作動(からさどう)
 : 種の保存・子孫保存にはプラスにもマイナスにもならないがプラスと判定         
           例えば芸術、娯楽
ディスクリミネーターが異常作動を起こす原因は、太古の時代と変わっていないからである。太古の時代には注射も歯医者も無く、淘汰によりこれらに対応するようにディスクリミネーターが進化しなかったからである。

ディスクリミネーターの空作動が、AI/ロボットが雇用を奪った際に非常に重要な役割を果たす。先程述べた例でミロのビーナスを見たとき美しいと思うのは、人の生殖に関係しているからであると述べた。しかし実際は石を見ているだけなので、これはディスクリミネーターの空作動(誤作動)と言うことができる。子孫保存・種の保存が余裕で達成できるようになると、人は種の保存・子孫保存に無関係であっても人為的にディスクリミネーターをプラスにしようとし、マイナスにならないようにするようになる。これをディスクリミネーターの解放と呼ぶ。例としては奴隷解放、女性解放、人身売買の禁止、人種差別禁止、男女平等、性解放、セクハラ・パワハラの禁止などである。

善悪の通常の基準は子孫保存・種の保存・自己保存にとってプラスなら善でありマイナスなら悪となるのだが、子孫保存・種の保存・自己保存が余裕で達成できる世界ではディスクリミネーターをプラスにできるなら善、マイナスなら悪となる。つまり環境により善悪の基準が変わってくる。このことは多くの人は理解していない。例えば、食糧が極度に不足していたころ、働けなくなった老婆は村では邪魔だった。老婆にまで食糧を与えていたら、村が全滅してしまう。だったら老婆を山に捨てに行くことを善としようということになるわけだ。もちろん、食糧の豊富な現代ではそんなことをすれば殺人だから悪である。

今から約140年前に比べて農業人口比率は激減した。この間農民は失業したわけではなく第2次、第3次産業へと移っていった。今後AI/ロボットが次々と人の雇用を奪っていく。この時多くの人が転職を迫られるのであり、人類が経験したことがない世界に突入する。この時重要になってくるのは「人は何のために生きるのか」ということである。進化論からの結論は「人はすべての生物と同じく、子孫を残すため生きている」ということだ。ただし子孫を残すための財・サービスをAI/ロボットが完璧に提供できるようになれば、そのとき人間はディスクリミネーターをプラスにすること(生活を楽しむこと)そのものが仕事となる。

ここで出てくるのはベーシックインカムという考えで国民全員に等しい金額のお金を配るというもの。この場合は必ずしも国民すべてが好きなことができるとは限らない。時間だけをもてあまし、生きる目的を見失ってしまうかもしれない。筆者の提案は国が国民が希望する職場を積極的に提供することである。これをJOD(Job-on-Demand)と呼ぶことにしよう。つまり職にありつけない人たちに何になりたいのかを国が聞く。野球選手とか、歌手とか、バイオリニストとか、ダンサーとか、棋士とか、研究者とか、庭師とかプログラマーとか様々な要望が上がってくるだろう。それに応じて国がその人達を公務員として雇い、彼らの希望する職に就かせてやる。もちろん、歌手になっても実力によってはリサイタルに誰も来てくれないかもしれない。それでも生活できるだけの給料は与える。もしその歌手が大ヒットするならそれに比例して給料を上げればよい。

もちろん、これは雇用の大部分がAI/ロボットに奪われた後の時代の事であり、そうなる前にはもっと有効な人の使い方をしなければならない。今、米中貿易戦争が始まっている。中国は「中国製造2025」として自動運転車やAIなど、未来の産業をリードする企業を育成している。世界経済で最も利益を生み出す産業で覇権を握る目標だ。トランプはそれを阻止するために米中貿易戦争を仕掛けた。世界時価総額ランキングを見れば
1.アップル           1兆994億ドル  米国
2.アマゾン           9816億ドル  米国
3.マイクロソフト        8613億ドル  米国
4.アルファベット        8521億ドル  米国
5.バークシャー・ハサウェイ   5170億ドル  米国
6.フェイスブック        5073億ドル  米国   
7.アリババ           4501億ドル  中国
8.テンセント          4251億ドル  中国
16.サムスン電子         2828億ドル   韓国
26.台湾セミコンダクター     2261億ドル  台湾
43.トヨタ自動車         1805億ドル  日本
となっている。なぜ日本は将来最も利益を生み出す産業で企業を育成しないのか。このままでは日本は貧乏になる一方だ。政府も努力していると思っているのだろうが、予算のケタが違う。不作為は将来世代へのツケを残す事になる。GAFA(グーグル、アップル、フェイスブック、アマゾン)の時価総額の合計は約380兆円であり、日本のGDPに迫っている。どんなにカネを使っても良い。国を挙げて、GAFAに追いつけ追い越せという目標を掲げ日本にIT企業を育てるべきである。それが日本の次世代の人々を豊かにする。

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