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2010年10月

2010年10月31日 (日)

戦後の混乱期を財政破綻も制御不可能なインフレも起こさず乗り切った歴史に学べ(No.10)

本屋に行くと、財政破綻とか預金封鎖とか、人を恐怖に陥れて本を売ろうとしている悪質な連中が書いた本が並んでいる。これは悪徳業者と言うしかない。戦後の混乱期と現代を重ね合わせて恐怖を起こさせる卑劣な手法に怒りを覚える。我々は、終戦直後の混乱期を当時の政治家がどのように乗り越えて、世界を驚かす奇跡の経済成長に導いたかをもっと勉強すべきだと思う。

現在、財政危機だと言われているが、終戦直後の財政は現在と比較にならないほどの危機に直面していた。国が10年物国債が1%を切る金利で売れる現代とは比較にならない。1945年の財政規模は約215億円だったが、戦時中に政府が民間(企業・個人)に支払いを約束した戦時補償(戦時保険支払いの政府保障、工場・設備・船舶などの戦時動員にともなう損失補償)だけで、総額565億円にのぼっていた。結局GHQに従ってこの補償は事実上打ち切るしかなかったし、それが企業の財務内容を悪化させ、緊急支援を行わざるを得なくなった。

戦費捻出のために発行された戦時国債の償還、軍需物資に対する支払い、復員兵の帰還費用の捻出等、政府には巨額の出費が迫られた。財政破綻だ、財源はあるのかなどとのんきなことを言っている時ではなかったのであり、お金を刷って支払うしかなかった。

図1

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 刷ったお金が出回り、需要が増えそれに耐えられる生産設備があったならインフレにならなかっただろうが、戦争で焼け野原になった日本に残された生産設備は僅かで鉱工業生産は戦前水準の27.8%しかなかった。農業でも、戦時動員による人手不足で作付面積が減少したところに冷害などの災害が加わり、1945年の米作は、587万トンという記録的な凶作となった。ちなみに1940~44年度の平均は911万トンだった。人々は生きるためにモノを求めて買いあさったために、終戦4ヶ月後の1945年12月には月間のインフレ率が66.4%となり、このまま1年間続いたら1年で物価は451倍になるところだった。日銀券発行額とは桁違いの物価上昇は、需要が供給をはるかに上回り通貨の流通速度が激増した結果である。

しかし、日本人はインフレが制御不能になるのを防ぐ知恵を持っていた。預金封鎖である。1946年2月、当時の幣原内閣は既存の日銀券の日銀券を失効させ、日銀券を強制的に預金させ、その預金を封鎖した。そして封鎖預金の引き出しは毎月一定額に制限した。世帯主300円、その他一人あたり100円とし、この額で生活しなさいというわけだ。これがインフレ抑制に劇的な効果をもたらした。

図2

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 もちろん、現代は預金封鎖など全く必要はない。モノ余りでデフレの時代に終戦直後のモノ不足の時代の真似をしなければならない理由は全くない。預金封鎖で恐怖を煽っている人を見つけたら金儲けしか考えない『悪党業者』だと思えばよい。預金封鎖は過度な需要を抑えるのが目的であり、デフレの時代は逆にどうやって需要を伸ばすかを考えなければならないのだ。

このようにして刷ったお金で見事に日本経済を奇跡の復興へと導いた。インフレは制御が可能であり、生産力が回復した後は財政を健全化し(ドッジ・ライン)インフレも抑えることができた。歴史から学ぶべき教訓は、必要なときには必要なだけお金を刷って、経済を立て直しなさいということだ。それが、我々の次の世代のために我々がやらなければならぬことだろう。インフレを恐れることはない。終戦直後よりはるかに経済状況はよいし、当時でも経済を奇跡の復興にまで持って行けたのだから、今やれないわけがない。お金を刷って、第二の奇跡の経済復興を目指そうではないか。

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2010年10月30日 (土)

終戦直後のインフレは国債乱発でなく物不足が原因(No.9)

終戦直後のインフレは大量の国債を発行したのが原因とされている。本当にそうなのか、実際のデータを示す。図1が消費者物価指数(東京小売物価指数)である。1946年には500%を越すインフレ率となっている。
図1           出所 明治以降本邦主要経済統計(日銀統計局)
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図2            出所 明治以降本邦主要経済統計(日銀統計局) 
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図2は、新規国債発行額のGNP比である。比較のため最近の消費者物価指数を図3で示す。
図3                       出所:総務省
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2008年に原油高等で若干のインフレになったが、その反動で2009年には上がった分だけ下がって元に戻った。全体的にゆるやかなデフレである。新規国債発行額を図4に示した。
図4                     出所:財務省
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図2と図4を比べて分かることは、現在の政府の国債発行額はすでに終戦直後のレベルと大差ないということだ。これから分かることは、終戦直後のインフレは国による国債発行が原因というよりも物不足が原因であるということだ。終戦直後の1946年は国債をGNPの約13%増発しただけなのに、物価は6倍になった。鉄鋼の生産量は戦前の7%にまで落ち、食料が足りず飢餓に苦しんでいた。生きるためには、いくら高くても食料を買いたいという気持ち、また、インフレだから今日買っておかねば、明日には買えなくなるかも知れないという気持ちで、人々はお金を使いまくったために、お金の流通速度が激増し、激しいインフレとなった。現在は、明日になればもっと安くなるかも知れないので今日は買わない。将来不安があるので貯金をしておきたいと思っているからお金が動かない。
現在は何か不足すると、すぐに輸入品が入ってくるから値上がりしにくい。その一方で1946年の輸入は戦前の10分の1にまで落ち込んでいたから、物不足に拍車がかかった。生産が落ち込んだ最大の原因は設備の不足でも、労働力の不足でもなく、原料及び石炭、電力の不足に基づくものだった。そのボトルネックを解消するために「傾斜生産方式」、つまり限られた資源を石炭・鉄鋼生産に集中し、増産された石炭を鉄鋼生産に、逆に増産された鋼材を石炭生産に投入し、両セクターを経済全体の牽引役にした。
図5           出所 明治以降本邦主要経済統計(日銀統計局)           
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 なお、現在国の債務のGDP比が約200%になって、これが将来世代へのツケになると政府は脅す。終戦直後はどうだったのだろうか。これを図5で示したが、債務のGNP比は戦後のインフレで急減している。国債を増発してもインフレで将来へのツケは消える。現在は、当時より生産力が桁違いに大きいために、大規模経済対策を行ってもインフレはずっとゆるやかであり、国の借金のGDP比も緩やかな減少となる。逆にデフレを続ければいつまでも借金のGDP比は増えていく。
 これらのことから言えることは、現在の日本は物余りの時代であり、終戦直後と全く経済状況が異なる。国債残高が増えたからインフレになりそうだと結論する根拠は全くない。景気を良くしてお金を流れるようにすれば、GDPが拡大し、債務のGDP比は減ってくる。国債を大規模に発行すればそれが将来世代へのツケになるなど、あり得ないことだ。

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2010年10月28日 (木)

自民党は骨太方針2006の失敗を「財政健全化法案」で繰り返すのか。(No.8

自民党は今国会で「財政健全化法案」の成立を目指すという。補正予算に協力する引き替えだそうだ。日本が不況でこれだけ苦しんでいるときに野党第一党の自民党が補正を「人質」にして、このような法案を出してきたことに怒りを覚える。

自民党政権時代に骨太方針2006の中に「2011年度に基礎的財政収支を黒字化させる」という政府目標が盛り込まれ、それに基づいて最大限の歳出削減が行われた。不況下でこのような政策は害あって益なしということは歴史的にも証明されている。基礎的財政収支は改善するどころか悪化の一歩をたどり、失業率も増加、平均給与も減少するばかりであり、予想通り害あって益なしだった。

2011年度に基礎的財政収支を黒字化させるという目標と現実との比較に関しては、毎年内閣府により発表され、そのたびに実現見通しは下方修正された。

①2006年1月  黒字化可能と発表。

②2007年1月  黒字化は不可能、しかし14.3兆円の歳出削減を行えば0.2%の黒字にできる。

③2008年1月  14.3兆円の歳出削減を行っても、0.1%の赤字になる。

④2009年1月  2011年度の基礎的財政収支は2.9%の赤字。

            消費税を12%にすれば、2020年度に黒字になる。

このように、3年連続で予測がはずれ大幅下方修正となった。要するに、もともと試算は全く正しく予測できなかったということだ。それだけでなく、例えば名目成長率やGDPデフレーターは、2002年度の発表以来、毎年大幅な下方修正を続けており、内閣府の試算は全く予測能力を持たないことが完璧に証明されている。このような劣悪なモデルの予測に従って2020年まで、日本経済を破壊し続けてもよいのだろうか。

そもそも、このような馬鹿げた目標を小泉首相が掲げるに至ったのは、2006年1月に内閣府により発表された試算「改革と展望」に基づくものだったと推測される。そこには、「今の政策を続けていけば2011年には基礎的財政収支が黒字化(正確には赤字がゼロ)する」という試算がでていた。しかし、この試算で使われた経済モデルは『大本営発表』をするためのモデルであり、正しくない経済見通しであり、毎年下方修正を行っている。上記4回の発表を見ても毎回大きく下方修正を行っているということが分かるだろう。このモデルに政治家もマスコミも騙されて、もっと歳出削減をやり、もっと増税をやらねばならないのだという気分にさせられている。

しかし、本当はこの経済モデルはオオカミ少年であるということだ。なぜ我々はこんな単純な嘘に騙され続けなければならないのだろう。このモデルはデフレーターの予測でも全く現実離れの予測を出し続けていることはすでに述べた。

http://ajer.cocolog-nifty.com/blog/2010/10/no6-b9d6.html

つまり、2002年以降毎年、政府の政策を続ければ1~2年の内にデフレは脱却できるとの予測を続けているのだが、それが全部間違いで結局デフレ脱却は一度もできていない。発表が『大本営発表』であることは誰でも分かる。この経済モデルが、如何に国民を騙そうとしているかを客観的に見るには決定係数を見れば良く、それは以下で述べた。

http://ajer.cocolog-nifty.com/blog/2010/10/no5-34a0.html

 大本営発表のために作られた経済モデルで予測された見通しを元に作られた財政健全化法案だが、この通りに緊縮財政を実行すると過去の失敗を繰り返すだけだ。つまり経済はどんどん悪化し、基礎的財政収支はさっぱり改善しない。財政健全化を実現するには、大規模な景気対策をし、GDPを拡大し、税収を増やせばよい。

http://ajer.cocolog-nifty.com/blog/2010/10/post-bd0c.html

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日経のモデルによる経済予測 (No.7)

 国債をもっと発行して景気対策をやるとどうなるかについて、日経新聞社の日本経済モデル(日経NEEDS)を使って計算をしてみた。これは日経新聞社が経済予測を新聞紙上で発表するときにいつも使っている経済モデルであり我が国で最も信頼できる経済モデルの1つである。様々な試算を行ったが、その詳細は

『これでいける日本経済復活論』小野盛司著、ナビ出版

http://tek.learning.jp/book/

に示されている。

ここではその1つを紹介する。景気対策の規模としては10兆円、20兆円、30兆円、40兆円、50兆円の5種類の計算を行った。これは毎年この規模の景気対策を5年間続けたときの経済効果であり、現状維持のものと比べてある。示したのは法人税減税と公共投資を組み合わせたものだけだが、その以外の結果は『これでいける日本経済復活論』を参照して頂きたい。

図1

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 ここに示されたように劇的な経済成長が見込まれる。デフレギャップを利用して最初は10%程度の成長さえ可能である。ただし、長く続けていると、だんだんインフレ率が高まり、実質成長率は頭打ちになってくる。

図2

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  図2は、インフレ率を考慮する前の名目GDPである。これは景気対策を行えば確実にどこまでも拡大する。政府が本気で名目GDPを拡大する気なら10倍でも100倍でも可能だ。これは人口減少とも生産性とも全く関係ない。景気刺激が行き過ぎるとインフレ率が高くなり、その分を引いておかねばどれだけ国が豊かになったか分からない。インフレ率を次のグラフに示す。

図3

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景気対策をしてもすぐにはデフレ脱却はできない。需要が伸び、企業が設備投資をし、人員を拡充しているうちに失業者が少なくなる。失業率が2%に近づくと、企業間で人の取り合いとなり、給料を上げないと人を集められなくなる。これが需要牽引型の緩やかな物価上昇で、デフレ脱却も可能になってくる。デフレ脱却は数十兆円の景気対策を複数年間続けないと無理だと分かる。

図4

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 景気がよくなれば失業率は大幅に減る。

図5

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 このようにして、景気回復と共に次第に給料も上昇する。政府が何もしないと、どんどん給料は下がっていくことが予測されている。

図6

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 GDPが大幅に上昇し、税収が増えてくると国の借金のGDP比は減少してきて、財政は健全化する。単に節約するだけで、財政が健全化すると考えるのは、間違いだと計量経済学は教えてくれる。逆に大規模な景気対策を複数年続けると、経済のパイも大きくなり、税収も増え、GDPが拡大する。GDPの増加率の方が、国の債務の増加率の増加率より大きいために国の債務のGDP比は減ってくる。それがこのグラフの示すものである。

図7

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 こんなに、財政赤字が大きいのにもっと国債を発行せよと言うのかとお叱りをうけるかもしれない。しかし実際は財政赤字を減らすために、一時的に財政を拡大し、経済のパイを大きくし景気をよくし、税収を増やそうというものである。現在の政府のように、デフレなのに十分な経済対策を行わないと、デフレは脱却できず、税収は伸びないので財政赤字は膨らむ一方だが。ここで示すのは、毎年50兆円の景気対策を行った場合である。最初の3年間は赤字幅は拡大するが、それ以後はどんどん回復し5年目では赤字幅は10兆円にまで縮小している。景気が十分良くなれば財政が黒字化することも考えられ、そのために景気対策をやらねばならないのだ。

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内閣府の経済見通しはオオカミ少年 (No.6)

 政府は中長期の「経済見通しを発表しており、内閣府計量分析室が担当している。自民党時代は『改革と展望』とか『進路と戦略』とか呼ばれていて1月の中旬に、その2ヶ月五には乗数や方程式などの詳細な資料が発表されていた。民主党内閣になってからは6月の発表になった。その試算による経済見通しは驚くほど楽観的で、現政権の政策を褒め称える内容となっている。まるでかつての『大本営発表』か北朝鮮の国営放送のようである。

その具体例がデフレ脱却の見通しである。消費者による取引に関係した物価は消費者物価だが、輸入物価や企業間物価などGDPが係わる取引すべてに関係する物価はGDPデフレーターと呼ばれる。GDPデフレーターがプラスになるとデフレ脱却と考えている識者が多い。そのデフレ脱却の政府の見通しがおかしいのだ。次の図を見ていただきたい。

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 例えば左端の2002と書いてある右肩上がりの青いグラフは2002年に発表したGDPデフレーターの予測だ。1~2年でデフレ脱却を予測している。しかし、翌年の2003年になると実際はデフレが悪化しているから、「予測できなかった経済情勢の変化」のために予測を間違えたと、いいわけを言って下方修正し、再び右肩上がりの2003年と書かれた茶色い銭のグラフを発表した。実際のデフレーターは下の黒くて太い線のように現在に至るまでマイナスが続いている。内閣府はこのように毎年「デフレはすぐに脱却できる」という発表を、今年て9回連続して行っている。そしてデフレは現在なお脱却できていないわけだから、9回連続で嘘を言っていることになる。これではオオカミ少年と言われてもしかたがない。

 オオカミ少年は3回目で誰も信用しなくなった。日本の政治家もマスコミも日本人全体が9回連続で騙されてもまだ政府発表を疑わない。それどころか、このモデルを武器に増税・歳出削減を迫る。現実の日本経済はこのモデルで予測されるものよりはるかに厳しい。政府の政策がこのまま続くと、デフレが果てしなく続き、国はどんどん貧しくなり、企業の没落が続く。かつての豊かな日本を取り戻すには大規模財政出動を行ってデフレを脱却するしかない。日本人は内閣府のモデルに、いつまで騙され続け、いつ目を覚ますのだろうか。

 なお、内閣府の経済モデルの更なる重大な問題点に関しては以下を参照して下さい。

http://ajer.cocolog-nifty.com/blog/2010/10/no5-34a0.html

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内閣府の発表する試算は、信頼性に重大な疑問がある。(No.5)

  例えば、内閣府(2005b)で発表されたシミュレーションは極めてお粗末なものと言わざるを得ない。例えば住宅投資の方程式を見るとRCの値は僅か0.068014である。R2Cの値は1に近ければ近いほど信頼度が増すのであり、このようなシミュレーションで使うには0.8以上であるべきであるとされている。0.06という途方もなく信頼度の低い方程式を使ったシミュレーションを発表することは、内閣府の信用を著しく落とす。ちなみに経済企画庁(1995)では住宅投資の方程式のR2Cは0.926となっている。住宅投資以外の方程式も実にお粗末だ。各方程式のR2Cの値の分布図を図2で示した。0.1以下という無茶苦茶な方程式が3つもあり、それがしかも住宅投資や消費関数など極めて重要な方程式であるというのだから、このシミュレーションは重大な欠陥を持っている。

図1

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         比較のために図2で経済企画庁(1995)のシミュレーションで使われた方程式のR2Cの分布を図2で示す。大部分の方程式のR2Cは0.9以上であり、最低でも0.5以上だから、その差は歴然である。内閣府(2005b)のシミュレーションがこれだけお粗末な結果であったということは、その職員の怠慢さを示しているというわけではなく、根本の仮説が間違えていたということである。つまり、内閣府(2005b)のシミュレーションが失敗した原因は『1%需要が伸びると、生産部門の多くで供給が追いつかなくなる。』という仮説が間違えていたということにある。これは潜在GDPを低く見積もりすぎたということである。1%注文が多く入るようになったとき、生産が追いつかないという会社がどれだけ現在の日本にあるだろうか。ほぼ皆無だろう。このシミュレーションで使われた方程式のR2Cの値が極めて低かったことは、「日本21世紀ビジョン」で使われた低い潜在GDPの仮説が正しくないということを意味している。日本の経済状況を説明できるモデルではないということが確認されたわけである。

図2

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 その後、毎年出されている経済予測だが、使われている方程式のお粗末さには変化は内容だ。新政権になっても全く変わらない。「民主党よ、お前もか」とため息が出る。これを図3で示した。内閣に都合のよい試算を出そうと、方程式を歪めてしまう結果R2Cの値が大きく下がってしまう。政府のやるべきことは、大本営発表で経済見通しを歪めるのでなく、純粋にR2Cを最小にするような経済モデルを立て、そのモデルを使って、どの程度の財政規模にすれば最小不幸社会が実現するか、国の債務のGDP比が最小になるかを徹底的に分析し、国民に示すことだ。

図3  R2Cの分布            出所:内閣府

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内閣府(2005a) 経済財政モデル(第一次改訂版)資料集 平成17年4月内閣府計量分析室

内閣府(2005b) 日本経済中長期展望モデル(日本21世紀ビジョン版)資料集 平成17年4月内閣府計量分析室

堀雅博・青木大樹(2003)内閣府経済社会総合研究所ESRI Discussion Paper Series No.121

経済企画庁(1995) 第5次版EPA世界経済モデル-基本構造と乗数分析-

内閣府(2010) 経済財政の中期計画 平成22年6月22日

         http://www5.cao.go.jp/keizai3/econome/ef2rrrr-equ.pdf

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2010年10月25日 (月)

国の借金はそれほど増えていない (No.4)

 国の借金が増えたことを日本中が嘆き、それが日本人の自信を失わせている。日本は外国に金を貸している立場なのだからおかしな話しだ。しかし、実際は次のグラフで分かるように、借金はそれほど増えてはいない。

図1               出所:OECD Economic Outlook 87, 2010

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 このグラフから分かることは、日本が飛び抜けて借金を増やしているわけではなく、増加率から言うと諸外国と比べて、平均的な伸び率だ。では、よく見せられる借金のGDP比のグラフと比べてみよう。

図2            出所:OECD Economic Outlook 87, 2010

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借金のGDP比で見ると日本だけが激増している。図1と図2のグラフだが、通常国の借金と言うとき、99%の人は両方のグラフを混同して話している。全く別物なのに、違いを理解していないと言ったほうがよいかもしれない。ここに日本の悲劇があった。両者がしっかり区別できていたら、つまり分数の意味が日本人にちゃんと理解されていたら、日本経済はここまで落ち込まなかったと思われるからだ。

図1は借金、図2は借金のGDPに対する比率(以下『比率』という)だが、

借金

―― = 比率

 GDP

という関係である。日本以外の国は、比率はほぼ一定ということは、借金はほぼGDPに比例しているということであり、借金が増えることを問題にしていない。借金が増えても次世代に負担になるとは考えていないし、考える必要もない。「日本人よ、しっかりせよ!借金はそんなに増えてないぞ!!」と言いたい。

日本も借金の増加率は諸外国並なので、増えても問題はないはずだが、なぜこのように騒ぐのだろう。この式を

借金=比率×GDP

という形に変形してみよう。借金の伸びは諸外国並なのだが、実はGDPの伸びが諸外国並でない。諸外国よりはるかに伸びが低い。図3は2000年~2010年の名目成長率の伸びである。日本だけがマイナスになっている。際だって低い事が分かる。

図3            出所:OECD Economic Outlook 87, 2010

43

 図4でも名目GDPの推移の国際比較を行った。ここでも日本だけが際だって低いことが分かる。これらの図で分かるように、比率が日本だけが群を抜いて増加率が高くなっているのは借金の増加というよりも、むしろGDPの伸びの低さが原因であると言うことができる。しかし大多数の日本人は分数が理解できないために、借金が増えすぎたと誤解している。比率は分子だけで決まるのでなく、分母も重要であることに誰も気付かない。どうも日本人は分数は分子だけ注目して、分母には目もくれない習性があるようだ。それならば、図2の分子と分母を逆にして、GDP/借金をグラフにしてみよう。それが図5である。

図4

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図5

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 これを見れば明らかだろう。借金に対するGDPの割合が下がっている。それが際だっているのがこの図だ。これをみれば、日本はGDPを伸ばす努力が必要だと明らかになる。

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2010年10月24日 (日)

中小企業は海外へ出て行けばよいのか・・・NHKの日曜討論(No.3)

本日(10月24日)のNHKの日曜討論では、中小企業は海外へ出て行くことが不可欠という結論のようだ。大企業に続いて中小企業まで海外に出て行って、それで一件落着とでも言うのだろうか。それどころか日本経済は、ますます苦境に追い込まれる。 国民まで一緒に海外に出て行くわけに行かないからだ。残された国民は職を失い、景気は更に悪化し、どんどん貧乏になっていく。外国で稼いで日本に送金すればよいのだろうか。外貨を円に換えようとするものなら、ますます円高となり空洞化に拍車がかかる。実際は海外で稼いだ金は海外に投資する傾向が強い。次に日経新聞の記事を引用する。 『国内の投資家による外国債券投資(短期債を除く)が過去最大規模に膨らんでいる。財務省によると、1~9月の買越額は前年同期比6割増の20兆9400億円に上り、年間の過去最高額(2005年の15兆8500億円)を上回った。外債投資の5割超は米国債。日本の10年債利回りが1%を割り込むなか、邦銀が相対的に高利回りの米国債を買っており、日米金利差の縮小を通じて円高要因にもなっている。』 要するに、海外で儲かったお金は米国債など海外に投資する。そうすると、米国の金利を下げ、それにより日米の金利差を縮小させる。もともと円キャリートレードと言って、大きな金利差を利用し、金利の低い日本で金を借り、金利の高い海外で運用するということで海外に大量に流出した日本のお金が、金利差縮小で日本に逆流し円高を引き起こす。日本企業が海外で金を稼ぐと、その金が更に円高に拍車を掛けてしまうという悪循環に陥ってしまう。決して日本の利益にはならない。それでも日本企業に海外に出て行けというのだろうか。 真に求められるのは、大規模な景気対策による内需拡大だ。50兆円の景気対策を5年続けると良い。環境エネルギー政策、ロボットなどITへの投資による生産性の向上、医療、介護、教育等投資先はいくらでもある。内需が拡大すれば企業は海外へ逃避しなくても、国内でしっかり基盤を築いた後、海外へ進出することができる。内需が拡大すれば、輸入も増え、経常収支の黒字も減り、世界経済の安定的な発展に貢献できる。更にGDP拡大と税収の増加が国の借金のGDP比を下げる。 今は政治家の決断の時だ。過去の経済データを正確に再現できる経済モデルを使い、大規模な景気対策で日本経済がどうなるのかを正確に予測した後であれば、必ずその結果に基づく経済対策は国民の理解が得られるであろう。

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2010年10月22日 (金)

デフレで没落する日本 (No.2)

 デフレとは、お金がどんどん消えていく恐ろしい病気である。国民がどんなに一生懸命働いても、企業がどんなに素晴らしい製品を開発しても、政府がどんなに改革を進めても、国はどんどん貧乏になっていく。そんな恐ろしい病気にかからないように、どの国もあらゆる努力をしているのに、なぜ日本だけはその病気を放置しているのだろうか。日本がどれだけ貧乏になったか、次の表を見ればよく分かる。

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2010年10月19日 (火)

大規模財政出動が日本経済を救う (No.1)

1997年度に513兆円だった日本のGDPは、2009年度にはなんと481兆円にまで落ち込む見通しです。小さな政府がよいのだと主張し、デフレを放置した結果、日本はここまで貧乏になりました。自殺者も生活保護世帯も激増し、100年に一度の世界金融危機の中で、国民は不安な生活を強いられています。

デフレ経済においては信用収縮で、市中からお金がどんどん消えていくため、国民は貧乏になっていきます。それに対抗する唯一の手段は、国が通貨発行権を行使し、新しいお金を作り出し、国民に渡すことです。具体的には、国が赤字国債を発行して大規模財政出動をすればよいだけです。それによって将来世代につけが残ると考えている人がいるかもしれませんが、内閣府やシンクタンクの経済モデルによる試算では、財政出動によりGDPが増加し、国の債務のGDP比は減少することが確認されています(詳細はwww.tek.jp/p/参照)。つまり大規模財政出動は、デフレで消えたお金を国が再生し国民に渡していることを意味し、将来世代においても必要に応じ国はお金を作り出すことができます。

積極財政は長期的には金利上昇で財政が悪化すると言う人もいますが、日銀が国債の買い入れを増やせば金利は抑えられ、利払いも国庫に返ってきますから、財政悪化は起きず、財政の改善は続きます。例えば、所得税(相続税も含む)・法人税・消費税等の大規模な減税は、最も成功した経営者から底辺層までの人々に労働の意欲を高めます。発電コストが原発の半分以下といわれる洋上風力発電、近隣諸国に負けないハブ空港の建設、電線の地中化、エコシップ等、日本が緊急に取り組むべき課題も多くあります。

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