中小企業は海外へ出て行けばよいのか・・・NHKの日曜討論(No.3)
本日(10月24日)のNHKの日曜討論では、中小企業は海外へ出て行くことが不可欠という結論のようだ。大企業に続いて中小企業まで海外に出て行って、それで一件落着とでも言うのだろうか。それどころか日本経済は、ますます苦境に追い込まれる。
国民まで一緒に海外に出て行くわけに行かないからだ。残された国民は職を失い、景気は更に悪化し、どんどん貧乏になっていく。外国で稼いで日本に送金すればよいのだろうか。外貨を円に換えようとするものなら、ますます円高となり空洞化に拍車がかかる。実際は海外で稼いだ金は海外に投資する傾向が強い。次に日経新聞の記事を引用する。
『国内の投資家による外国債券投資(短期債を除く)が過去最大規模に膨らんでいる。財務省によると、1~9月の買越額は前年同期比6割増の20兆9400億円に上り、年間の過去最高額(2005年の15兆8500億円)を上回った。外債投資の5割超は米国債。日本の10年債利回りが1%を割り込むなか、邦銀が相対的に高利回りの米国債を買っており、日米金利差の縮小を通じて円高要因にもなっている。』
要するに、海外で儲かったお金は米国債など海外に投資する。そうすると、米国の金利を下げ、それにより日米の金利差を縮小させる。もともと円キャリートレードと言って、大きな金利差を利用し、金利の低い日本で金を借り、金利の高い海外で運用するということで海外に大量に流出した日本のお金が、金利差縮小で日本に逆流し円高を引き起こす。日本企業が海外で金を稼ぐと、その金が更に円高に拍車を掛けてしまうという悪循環に陥ってしまう。決して日本の利益にはならない。それでも日本企業に海外に出て行けというのだろうか。
真に求められるのは、大規模な景気対策による内需拡大だ。50兆円の景気対策を5年続けると良い。環境エネルギー政策、ロボットなどITへの投資による生産性の向上、医療、介護、教育等投資先はいくらでもある。内需が拡大すれば企業は海外へ逃避しなくても、国内でしっかり基盤を築いた後、海外へ進出することができる。内需が拡大すれば、輸入も増え、経常収支の黒字も減り、世界経済の安定的な発展に貢献できる。更にGDP拡大と税収の増加が国の借金のGDP比を下げる。
今は政治家の決断の時だ。過去の経済データを正確に再現できる経済モデルを使い、大規模な景気対策で日本経済がどうなるのかを正確に予測した後であれば、必ずその結果に基づく経済対策は国民の理解が得られるであろう。
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コメント
おっしゃるとおり、
「内需はどうしても伸ばせないから、外需に頼るしかない。」
という考えは間違いですね。
投稿: | 2016年7月 2日 (土) 23時20分