内閣府の経済見通しはオオカミ少年 (No.6)
政府は中長期の「経済見通しを発表しており、内閣府計量分析室が担当している。自民党時代は『改革と展望』とか『進路と戦略』とか呼ばれていて1月の中旬に、その2ヶ月五には乗数や方程式などの詳細な資料が発表されていた。民主党内閣になってからは6月の発表になった。その試算による経済見通しは驚くほど楽観的で、現政権の政策を褒め称える内容となっている。まるでかつての『大本営発表』か北朝鮮の国営放送のようである。
その具体例がデフレ脱却の見通しである。消費者による取引に関係した物価は消費者物価だが、輸入物価や企業間物価などGDPが係わる取引すべてに関係する物価はGDPデフレーターと呼ばれる。GDPデフレーターがプラスになるとデフレ脱却と考えている識者が多い。そのデフレ脱却の政府の見通しがおかしいのだ。次の図を見ていただきたい。
例えば左端の2002と書いてある右肩上がりの青いグラフは2002年に発表したGDPデフレーターの予測だ。1~2年でデフレ脱却を予測している。しかし、翌年の2003年になると実際はデフレが悪化しているから、「予測できなかった経済情勢の変化」のために予測を間違えたと、いいわけを言って下方修正し、再び右肩上がりの2003年と書かれた茶色い銭のグラフを発表した。実際のデフレーターは下の黒くて太い線のように現在に至るまでマイナスが続いている。内閣府はこのように毎年「デフレはすぐに脱却できる」という発表を、今年て9回連続して行っている。そしてデフレは現在なお脱却できていないわけだから、9回連続で嘘を言っていることになる。これではオオカミ少年と言われてもしかたがない。
オオカミ少年は3回目で誰も信用しなくなった。日本の政治家もマスコミも日本人全体が9回連続で騙されてもまだ政府発表を疑わない。それどころか、このモデルを武器に増税・歳出削減を迫る。現実の日本経済はこのモデルで予測されるものよりはるかに厳しい。政府の政策がこのまま続くと、デフレが果てしなく続き、国はどんどん貧しくなり、企業の没落が続く。かつての豊かな日本を取り戻すには大規模財政出動を行ってデフレを脱却するしかない。日本人は内閣府のモデルに、いつまで騙され続け、いつ目を覚ますのだろうか。
なお、内閣府の経済モデルの更なる重大な問題点に関しては以下を参照して下さい。
| 固定リンク
「経済・政治・国際」カテゴリの記事
- ChatGPTは人の労働を代替できるか(No.181)(2023.03.16)
- 内閣府計量分析室に電話して内閣府試算について聞きました(No.480)(2023.02.10)
- 岸田首相は日本経済の現状を理解しておられるのだろうか(No.478)(2022.11.10)
- 日本経済復活の会の活動記録(No. 475)(2022.09.23)
- 次世代原発の建設について(No.474)(2022.09.02)
「シミュレーション」カテゴリの記事
- デフレ下で消費税増税をさせてはいけない(No.35)(2011.01.14)
- 計量経済学は「デフレ経済において増税は悪、減税は善」ということを証明(No.34)(2011.01.13)
- 内閣府の経済見通しはオオカミ少年 (No.6)(2010.10.28)
- 内閣府の発表する試算は、信頼性に重大な疑問がある。(No.5)(2010.10.28)
「経済政策」カテゴリの記事
- TPPに参加するかしないか、正しい戦略は何か(No.37)(2011.01.18)
- 計量経済学は「デフレ経済において増税は悪、減税は善」ということを証明(No.34)(2011.01.13)
- ルーズベルトとヒットラーの景気対策の比較【1】(No.28)(2010.12.23)
- ルーズベルトとヒットラーの景気対策の比較【2】(No.27)(2010.12.23)
- 国の借金も、もともと日銀や銀行が刷ったお金・・・原資は無尽蔵(No.25)(2010.12.15)
コメント
2016年7月2日段階でも、まだ騙されてます。
投稿: | 2016年7月 2日 (土) 23時30分