自民党は骨太方針2006の失敗を「財政健全化法案」で繰り返すのか。(No.8
自民党は今国会で「財政健全化法案」の成立を目指すという。補正予算に協力する引き替えだそうだ。日本が不況でこれだけ苦しんでいるときに野党第一党の自民党が補正を「人質」にして、このような法案を出してきたことに怒りを覚える。
自民党政権時代に骨太方針2006の中に「2011年度に基礎的財政収支を黒字化させる」という政府目標が盛り込まれ、それに基づいて最大限の歳出削減が行われた。不況下でこのような政策は害あって益なしということは歴史的にも証明されている。基礎的財政収支は改善するどころか悪化の一歩をたどり、失業率も増加、平均給与も減少するばかりであり、予想通り害あって益なしだった。
2011年度に基礎的財政収支を黒字化させるという目標と現実との比較に関しては、毎年内閣府により発表され、そのたびに実現見通しは下方修正された。
①2006年1月 黒字化可能と発表。
②2007年1月 黒字化は不可能、しかし14.3兆円の歳出削減を行えば0.2%の黒字にできる。
③2008年1月 14.3兆円の歳出削減を行っても、0.1%の赤字になる。
④2009年1月 2011年度の基礎的財政収支は2.9%の赤字。
消費税を12%にすれば、2020年度に黒字になる。
このように、3年連続で予測がはずれ大幅下方修正となった。要するに、もともと試算は全く正しく予測できなかったということだ。それだけでなく、例えば名目成長率やGDPデフレーターは、2002年度の発表以来、毎年大幅な下方修正を続けており、内閣府の試算は全く予測能力を持たないことが完璧に証明されている。このような劣悪なモデルの予測に従って2020年まで、日本経済を破壊し続けてもよいのだろうか。
そもそも、このような馬鹿げた目標を小泉首相が掲げるに至ったのは、2006年1月に内閣府により発表された試算「改革と展望」に基づくものだったと推測される。そこには、「今の政策を続けていけば2011年には基礎的財政収支が黒字化(正確には赤字がゼロ)する」という試算がでていた。しかし、この試算で使われた経済モデルは『大本営発表』をするためのモデルであり、正しくない経済見通しであり、毎年下方修正を行っている。上記4回の発表を見ても毎回大きく下方修正を行っているということが分かるだろう。このモデルに政治家もマスコミも騙されて、もっと歳出削減をやり、もっと増税をやらねばならないのだという気分にさせられている。
しかし、本当はこの経済モデルはオオカミ少年であるということだ。なぜ我々はこんな単純な嘘に騙され続けなければならないのだろう。このモデルはデフレーターの予測でも全く現実離れの予測を出し続けていることはすでに述べた。
http://ajer.cocolog-nifty.com/blog/2010/10/no6-b9d6.html
つまり、2002年以降毎年、政府の政策を続ければ1~2年の内にデフレは脱却できるとの予測を続けているのだが、それが全部間違いで結局デフレ脱却は一度もできていない。発表が『大本営発表』であることは誰でも分かる。この経済モデルが、如何に国民を騙そうとしているかを客観的に見るには決定係数を見れば良く、それは以下で述べた。
http://ajer.cocolog-nifty.com/blog/2010/10/no5-34a0.html
大本営発表のために作られた経済モデルで予測された見通しを元に作られた財政健全化法案だが、この通りに緊縮財政を実行すると過去の失敗を繰り返すだけだ。つまり経済はどんどん悪化し、基礎的財政収支はさっぱり改善しない。財政健全化を実現するには、大規模な景気対策をし、GDPを拡大し、税収を増やせばよい。
http://ajer.cocolog-nifty.com/blog/2010/10/post-bd0c.html
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コメント
こんな自民党へ約2年後に政権を与え、さらにもう一度衆議院選挙で勝たせたのだから、
今のようになるのは当たり前。 現状は国民の自業自得だと言わざるをえませんね。
投稿: | 2016年7月 2日 (土) 23時43分