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2010年10月30日 (土)

終戦直後のインフレは国債乱発でなく物不足が原因(No.9)

終戦直後のインフレは大量の国債を発行したのが原因とされている。本当にそうなのか、実際のデータを示す。図1が消費者物価指数(東京小売物価指数)である。1946年には500%を越すインフレ率となっている。
図1           出所 明治以降本邦主要経済統計(日銀統計局)
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図2            出所 明治以降本邦主要経済統計(日銀統計局) 
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図2は、新規国債発行額のGNP比である。比較のため最近の消費者物価指数を図3で示す。
図3                       出所:総務省
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2008年に原油高等で若干のインフレになったが、その反動で2009年には上がった分だけ下がって元に戻った。全体的にゆるやかなデフレである。新規国債発行額を図4に示した。
図4                     出所:財務省
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図2と図4を比べて分かることは、現在の政府の国債発行額はすでに終戦直後のレベルと大差ないということだ。これから分かることは、終戦直後のインフレは国による国債発行が原因というよりも物不足が原因であるということだ。終戦直後の1946年は国債をGNPの約13%増発しただけなのに、物価は6倍になった。鉄鋼の生産量は戦前の7%にまで落ち、食料が足りず飢餓に苦しんでいた。生きるためには、いくら高くても食料を買いたいという気持ち、また、インフレだから今日買っておかねば、明日には買えなくなるかも知れないという気持ちで、人々はお金を使いまくったために、お金の流通速度が激増し、激しいインフレとなった。現在は、明日になればもっと安くなるかも知れないので今日は買わない。将来不安があるので貯金をしておきたいと思っているからお金が動かない。
現在は何か不足すると、すぐに輸入品が入ってくるから値上がりしにくい。その一方で1946年の輸入は戦前の10分の1にまで落ち込んでいたから、物不足に拍車がかかった。生産が落ち込んだ最大の原因は設備の不足でも、労働力の不足でもなく、原料及び石炭、電力の不足に基づくものだった。そのボトルネックを解消するために「傾斜生産方式」、つまり限られた資源を石炭・鉄鋼生産に集中し、増産された石炭を鉄鋼生産に、逆に増産された鋼材を石炭生産に投入し、両セクターを経済全体の牽引役にした。
図5           出所 明治以降本邦主要経済統計(日銀統計局)           
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 なお、現在国の債務のGDP比が約200%になって、これが将来世代へのツケになると政府は脅す。終戦直後はどうだったのだろうか。これを図5で示したが、債務のGNP比は戦後のインフレで急減している。国債を増発してもインフレで将来へのツケは消える。現在は、当時より生産力が桁違いに大きいために、大規模経済対策を行ってもインフレはずっとゆるやかであり、国の借金のGDP比も緩やかな減少となる。逆にデフレを続ければいつまでも借金のGDP比は増えていく。
 これらのことから言えることは、現在の日本は物余りの時代であり、終戦直後と全く経済状況が異なる。国債残高が増えたからインフレになりそうだと結論する根拠は全くない。景気を良くしてお金を流れるようにすれば、GDPが拡大し、債務のGDP比は減ってくる。国債を大規模に発行すればそれが将来世代へのツケになるなど、あり得ないことだ。

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コメント

・インフレは 買えるモノ不足
    (モノやサービスの供給量が、需要に対して不足。
     よって、モノやサービスを供給するための人が足りないのも インフレ方向に働く。)
・ デフレは 使えるカネ不足
    (お金があれば使いたい人たちの手元に お金がなく、
     モノやサービスの供給準備が十分でも モノやサービスが買われない状態。)
ということですね。

*第1次世界大戦で敗戦した後のドイツのハイパーインフレも、
*第2次世界大戦で敗戦した後の日本の高インフレも、
*ソ連崩壊直後のロシアの高インフレも、
*最近のジンバブエのハイパーインフレも、
買えるモノ不足 が根本原因ですね。

最近、ようやく分かってきました。

投稿: | 2016年7月 2日 (土) 23時57分

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