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2010年11月10日 (水)

制度の欠陥が不況を引き起こす(No.14)

 バブル崩壊の後、失われた20年と言われた不毛の時代ののち、景気回復の展望は全く見えていない。景気対策をやりたいがお金が無い。お金さえあれば、減税なり財政拡大なりで景気を良くして国を豊かにできることは知っている。お金は刷ればいくらでも作れることも知っているが、お金を刷ることは悪いことではないかと思ってしまう。政治家は平時においては、恐くて誰も大量にお金を刷ったりしない。つまり国債の大量発行を避けようとする。そうすると景気は悪化し、税収は減り、国の借金のGDP比は増える一方だ。
しかし、戦争となれば話しは別だ。チビチビ国債を発行していては戦費は賄えず、戦争には勝てないから、仕方なく国債を大量増発する。皮肉にもそうするとインフレとなり、借金のGDP比は激減する。そのような事が繰り返されてきたことが次のグラフで分かる。

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 借金を「返す」には国債を大量発行してインフレを起こすしかないのだろうか。しかし、返すと言っても激しいインフレを起こし、事実上、国債を紙くずにしてしまったのだから乱暴なやり方というしかない。現在、増加した国の借金のGDP比だが、次の戦争まで待っているわけにいかない。実際全面戦争となれば、我々は生き残れる可能性は少ないからだ。
このような欠陥だらけの制度が最悪であるとイングランド銀行総裁が発言し、英国では制度改革の議論が熱を帯びていると前回紹介した。
http://ajer.cocolog-nifty.com/blog/2010/11/post-6622.html
彼らの改革案は、中央銀行から政府に、経済発展のために最適な規模の資金を直接流せるようにするというもの。この資金は成長資金だ。経済が成長するためには、当然市中に出回るお金を増やす必要がある。お金が増えなければ経済規模の拡大はない。中央銀行の金融政策委員会が責任を持ってその額を決定し、インフレターゲット内に収めるようにし、政府等からの圧力は一切排除する。
 もしこの改革案が採用されたとすれば、国債の乱発も必要無いし、国債がインフレで紙くずになって政府の信用が失われることもなくなる。経済を発展させるための成長通貨は中央銀行から政府に直接供給されるのだから。
 このように改革された新制度の下では、デフレも恐慌もあり得ない。不況になれば、それを脱却するために十分な資金が中央銀行から供給されるからである。これは返済不要な資金だから、利払いもなく、誰も不安に思わない。すべての国でこの制度が採用されれば、通貨の信認に関しては何の問題もなくなる。将来再度必要になれば必要なだけ追加でいくらでも供給を受けることができる。現行制度では、国の借金を増やすのが恐くて、十分な経済対策が打ち出されず、大量の失業者を生み、自殺に追い込まれる人が後を絶たない。
 現在の日本のデフレの前にはバブルがあったのだが、このように改革された新制度の下ではこのようなバブルは発生しなかっただろう。バブルはアメリカから内需拡大を求められ、それを強引な金融緩和で行おうとしたことで発生した。貿易の不均衡是正のため、内需拡大を求められたのと、急激な円高不況に対応するため金融緩和策が取られた。これは金利を下げて貸出を増やして景気を回復しようというものだ。つまり国民の借金を増やし使ってもらうことによる景気刺激だ。財政支出を増やすには国債を発行なければならず自分で借金を増やすことになる。それよりは国民に借金を押しつけた方が「安全」だと思ったのだろうか。
 国民の側も、低金利で金を借りてくれと言われても使い道がない。それなら株や土地などに投資買っておけば、何もしなくても値上がりして儲かる。その方が真面目に商売して儲けるよりずっと楽だと人は考えた。しかし、やがてバブルは崩壊し、優秀な経営者ですら投機に失敗し人は破産し自殺に追い込まれる人も続出した。無理な融資をした銀行も巨額の不良債権を抱え、正常な貸出ができなくなり機能不全に陥った。これにより日本は「失われた20年」に突入するのである。
 何が悪かったのかと言えば、制度が悪かったのだ。借金に頼らなければ景気回復のための財政出動ができないという現在の制度は最悪だ。提案されている新制度であれば、借金に頼らなくても財政出動ができる。それならば、国民が本当に求めている減税を行い医療・教育・福祉・年金・環境エネルギーなどの社会基盤整備にも、必要なだけ資金を振り向けることが出来る。その方が、国民に借金を押しつけてバブルを引き起こすより余程健全だ。
 一般的に言えば、借金というものは返さなければならない。そうでなければ現在の経済システムは成り立たない。しかし、政府の借金は返そうと思うと大恐慌を招くことがある。フーバー大統領が行った緊縮財政で世界大恐慌が起きたのはよく知られている。橋本内閣も国の借金を返そうとして不況を招き、後でその失敗を認めた。今、日本の政府の借金は904兆円で、これを本気で返そうとすれば大恐慌になるのは間違いない。このように借金返済という社会常識からして当然のことを行えば大惨事になるような制度は良いわけがない。言ってみれば、日常歩く道路に地雷が仕掛けてあるようなもの。制度を改正し地雷を取り除かなければならない。
 お金とは、財・サービスを分配するための手段にすぎない。デフレとは、国民に十分にお金が渡されていない状態である。現在の制度では、政府がお金を国民に渡そうと思うとその手段は金融と財政の2つである。金融では、融資という形で国民に借金を押しつける。財政は国債発行という形で政府自ら借金をして、そのお金を国民に渡す。デフレという将来が不安な大不況の時代に国民も政府も借金をするのをいやがるから、いつまで経ってもデフレは解消されず財・サービスは国民に十分分配されず、結果として国民はどんどん貧乏になる。このような馬鹿な制度を変えることこそが構造改革だ。

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