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2010年11月26日 (金)

半身不随の政府を持つ日本の悲劇(No.19)

6月8日に菅内閣が発足して4ヶ月半が過ぎた。この間、この内閣は何をやったのだろう。成立した法律は、「独立行政法人年金・健康保険福祉施設整理機構法の一部を改正する法律案」と「国会議員の歳費、旅費及び手当等に関する法律の一部を改正する法律案」の僅か2つである。

 菅内閣は5兆円の補正予算の早期成立を目指している。国民生活に重大な影響を与える法案なのだそうだが、内閣府によれば、この補正のGDP押し上げ効果は0.3%、つまりたった3兆円ということだ。GDPは、この3年間で40兆円も減ってしまったのに、僅か3兆円を取り戻すだけでよいのだろうか。失った40兆円よりも、この3兆円の方が重大だとでも言いたいのか。

 昨年12月に閣議決定した民主党の2020年までの目標は平均で名目3%の成長ということだった。0.3%ではない。このままだと、いつまでも名目GDPはほとんど増えない。世界中捜しても、これだけGDPが増えない国はどこにもない。民主党が自ら設定した目標は、0.3%の10倍の3%成長なのだから、必要とされているのは、5兆円の10倍の50兆円の補正予算だ。

 他の予算を削って捻出したのであれば、削ったためにGDPは減少し、補正でGDPが拡大するから、全体ではGDPの増減は無い(又は、ほとんど無い)。民主党はもともと207兆円の予算を組み替えれば16.8兆円の財源が捻出できると言っていた。単なる組み替えであれば、GDP押し上げ効果は無い。しかし、埋蔵金等、眠っている金を使うのなら押し上げ効果はある。実際は、そんな財源は捻出できなかった。民主党の目玉政策である子供手当、高速無料化、農家の個別所得補償、高校無償化に期待して民主党に投票した人にとっては騙されたと思っているだろう。

 ありもしない財源をちらつかせて政権交代を実現するやりかたに憤りを覚える。眠っているお金を使うというのであれば、なぜ日銀埋蔵金を使わないのか。日銀には巨大な資金が眠っており、これを使えば100%間違いなくデフレ脱却も可能となるし、デフレギャップを埋めることが出来る。

 残念ながら、現政権には没落する日本経済を救うための手段を持っていない。どんな提案をしても野党もマスコミも受け入れないだろう。言ってみれば反対のための反対、政権交代を勝ち取るための反対を続けるだろう。間もなく仙石・馬淵両氏の問責決議案も参議院で可決されようとしている。過半数を持たない与党にとって、今後何ができるというのだろう。「国民生活を重視すれば、こんなことをやってる時ではない」などと民主党が反論できるだろうか。民主党が野党だったときにやった戦術で、現在の野党がお返ししてるだけだから、反論はほぼ不可能だろう。

 もともと、現在の内閣は参議院で過半数を持っていないのだから、存続のための唯一の命綱は国民の支持だったが、それも失われたら何も出来ない内閣になってしまう。来年度予算の問題がある中、衆議院の解散総選挙か党分裂による政界再編のどちらかしか選択肢は無いような思われる。しかし、谷垣氏が代表の自民党が中心の内閣が政権を取ったとしても、待ち受けるのは消費税増税の悲劇だ。菅首相が消費税増税を言ったために参議院選に大敗したのを自民党は忘れたのか。

2009年度の税務申告で黒字申告をした法人は史上最低の25.5%しかいなかった。企業の4分の3が赤字であるときに、大増税をしたら、破綻企業が続出し、我々が経験したこともないような大不況に陥ることは避けられない。国を貧乏にしGDPを縮小して、国の巨大な借金を返せるとでも思っているのだろうか。法人税減税と言うのかもしれないが、赤字企業には法人税を納めていないから恩恵は無い。一方で消費税増税は大打撃となる。 
余り知られていないが、消費税は輸出企業への実質的な補助金になっている。輸出品に対しては消費税はかからないという名目で輸出企業に対して輸出戻し税が支払われている。消費税収の23%もが輸出戻し税として輸出企業に支払われている。輸出企業10社だけで1兆円もの戻し税を支払っているという。消費税を全く払わないどころか、還付を受けているのだ。消費税率を2倍にすれば還付金も2倍になる。輸出企業にとっては消費税増税大賛成だ。

現政権も末期状態だが、政権交代をしても経済は良くなりそうもない。今こそ国民が立ち上がる時だ。世界中緊縮財政への不満が鬱積して政府への抗議デモが相次いでいる。それを最もやらなければならないのは日本だ。デフレという大不況が十年以上いているのだから、直ちにデフレ脱却予算を組めと要求すべき時である。国会へ10万人がデモをすれば馬鹿な緊縮財政を止められる。国会議員も内心国民世論の変化を望んでいるのだ。

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