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2010年11月 6日 (土)

英国でお金を刷る政策の議論が盛り上がっている(No 13)

日本では、国の借金が増えたから消費税増税が不可欠だとか、事業仕分けをして無駄を省くなどと、景気を悪くして日本を貧乏にしようという議論ばかりで、制度を変えて経済を復活させようという気力は見られない。

イングランド銀行総裁が「現在の世界の金融制度は最悪」と発言した。日銀総裁にも、一向に良くならない経済を根本から立て直すための制度改革に言及して欲しいものだ。英国では様々なサイトで、お金を刷る政策の話題が盛り上がっている。同じ考えの人々が次々とサイトを立ち上げている。その中で「イングランド銀行法改正案」と称した次のサイト(英語)は必見である。

http://www.bankofenglandact.co.uk/

自分たちは、エコノミスト、弁護士、大学関係者、企業人達の集まりであるとしている。通常、「お金を刷る」方法としては次の3つの方法が提唱されている。

①政府貨幣発行

②日銀による国債の引き受け

③日銀が国債を市場から買い入れ

このうち③は、すでに日銀は始めている。この3案共に賛否両論があり、あれこれ議論しているうちに「失われた20年」が過ぎ、恐ろしいほど日本経済は没落してしまった。英国で提案されている改革案は、このいずれでもない。もっとずっと単純明快で、イングランド銀行が直接政府に新しく発行された通貨(と言っても実際はコンピュータに書き込まれている残金の数字を書き替えるだけだが)を供給するというもの。国債も残らないので将来世代への借金ではなく利払いの義務も無いし、国債の暴落等の心配もない。国庫にある残金の書き替えの作業は20分で終わり、たったそれだけで国家の危機が救われるのだからすごい。

必ず問われるのはインフレにならないかということだが、この答えも極めて明快だ。通貨発行はイングランド銀行のMonetary Policy Committee(MPC、金融政策委員会)で、政府等、いかなる圧力からも隔離された状態で、透明性を保って行われる。新しく発行されたお金は減税や公共サービスや政府の借金の返済等に使われる。経済が安定し、政府の借金が軽減されるにつれ、マネーサプライも増加し、生産力も強化され人口も増えてくる。

金融政策委員会がどれだけ通貨を発行すべきかを決定するが、それは政府によって定められたインフレターゲットに従う。政府は通貨発行量について金融政策委員会に圧力を掛けることは許されない。金融政策委員にとっては、通貨発行量を多くし過ぎるとインフレターゲットからはずれてしまい責任問題になり、何のメリットもないから、この仕組みでインフレになるという心配は全くない。その点で政府貨幣発行より優れているし、国の借金やその利払いに対する不安、国債の暴落の心配から解放されるという意味で中央銀行による国債買い入れより優れている。

通貨発行の仕組みだけでなく、銀行制度も変えようというのが、改革案である。その主張は次のサイトにも見られるので紹介する。

http://www.positivemoney.org.uk/

今の制度では、どんどん借金が膨らむばかり。借金を「マイナスのお金」と呼び、その代わりにお金を刷って「プラスのお金positive money」で経済を動かすような制度にしようというもの。このサイトの呼びかけに2033名の人が会に加わった。今日と明日(11月13日と14日)にロンドン大学で彼らは会議を開く。入場券は売り切れだそうで、議論がヒートアップしているのが伝わってくる。

http://www.positivemoney.org.uk/students/conference-november-2010/

銀行制度は、不安定で持続不可能で非生産的でしかも不公平である。

法律では、お金を刷るのはイングランド銀行に限るとされている。しかし、実際には、お金は紙幣や貨幣の形ではなく、銀行の預金通帳に書かれる数の形で増えていく。これを数のお金(number money)と呼ぶことにしよう。お金の97%は数のお金だ。

 数のお金はイングランド銀行ではなく、私企業である銀行で作られる。銀行はお金を預かり、そのお金を融資するとそれは誰かの借金となる。融資されたお金も銀行戻ってきて、そのお金を更に融資する。このようにして数のお金がどんどん作り出されていき借金も増えていく。あなたの銀行預金は、誰か他の人の融資に充てられて借金となっている。言い換えれば借金を基にしてマネーサプライを制御している私企業であり、利益を追求する企業(銀行)である。もし、不況になれば人は借金を返そうし、マネーサプライは減少し不況を加速する。

 これが経済を不安定にする。通貨発行が私企業で働き利益を追求している個人によって行われるのはよくない。それよりは通貨発行の権限を国が取り戻し、専門家が国の利益を考えて通貨発行を行った方がよい。改革案を詳しく説明する雑誌Prosperityのサイトは

http://prosperityuk.com/

である。また貨幣発行特権行使をマニフェストに掲げる政党もある。

http://www.sovereignty.org.uk/features/articles/manifesto07/mreform2.html

 この改革案を日本に適用したらどうだろう。お金を刷るとか通貨発行と言えば、何か悪いことをしているような気持ちになる人でも、「日銀が政府に資金を供給する」と言えば、受け入れられるのではないか。むしろ、政府が困っているのになぜやらないのと思うだろう。資金を供給し過ぎてインフレになると反論されるなら、日銀の理事会で資金の供給量が決定され、例えば1~3%というインフレ目標から外れたら理事は罷免されると決めておけば、日銀の理事達は供給する資金を過度に増やそうとはしない。また供給する資金が少なすぎればインフレ目標は達成されないからデフレはすぐに脱却できる。

 もちろん、インフレ目標から外れると罷免されるとなると、日銀は必死になってマクロモデルでシミュレーションをし、どれだけ資金供給をしなければならぬのか、必要な減税の規模や財政支出の規模を研究するだろう。これにより日本の第二の奇跡の復興が始まる。もし改革が無かったら、デフレ下の消費税増税で中小企業がバタバタ倒れるし、2023年には国債の利払い費等の国債費が、税収を上回ると政府が発表している。何十兆円という恐ろしい額の無駄なお金が金融機関への補助金として流れていき家計を圧迫する。あなたは本当にこんなに悪い制度を改革しないで満足ですか。

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コメント

イギリスでのこれらの話は どうなったのでしょうね。


>①政府貨幣発行
>②日銀による国債の引き受け
>③日銀が国債を市場から買い入れ
>
>このうち③は、すでに日銀は始めている。
>この3案共に賛否両論があり、あれこれ議論しているうちに「失われた20年」が過ぎ、
>恐ろしいほど日本経済は没落してしまった。

③を徹底的に行って、実質②にまで到達した。
それが 2016年7月3日時点の状態ですね。

でも、市場の国債を買い取りまくって 市場へ現金を流しても、
それを借りてまで支出しようという人がいないので、
需要がなかなか伸びず、企業の売上がなかなか伸びず、賃金もなかなか上がりませんね。

②や③は、国債増発を財源とした歳出増とセットで行わなければ 不十分ですね。

投稿: | 2016年7月 3日 (日) 00時36分

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