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2010年12月13日 (月)

政府紙幣・政府貨幣も実は「国の借金」(No.24)

国債は国の借金で、将来返さなければならないが、政府紙幣なら借金ではないと思っている人がいるが実はそうでもない。例えば政府紙幣を刷って、そのお金で公務員の給料を払うとしよう。今どき、公務員の給料を現金で渡すのはどうかという問題があるが百歩譲って政府紙幣で払ったとしよう。政府紙幣は自動販売機には対応していないし、不便だから受け取ったら大部分の人は銀行に預金するだろう。その後で、必要なら銀行で日銀券を受け取ることができる。銀行に入った政府紙幣は銀行の金庫に眠ることはあり得ない。利子の付かない現金を長期に保管すると銀行の経営を圧迫するので、銀行はすぐに日銀に政府紙幣を持って行く。

つまりほとんどの政府紙幣は日銀に集まる。例えば10兆円分の政府紙幣を1万円札で作り積み上げると約100kmにもなる。それ故に、日銀に巨大な金庫が必要になる。この政府紙幣を次に公務員の給料に使おうと思えば、政府は日銀からこの紙幣を買い取らなければならないので、結局10兆円の発行益を全部使ってしまい政府の利益にはならない。紙幣の印刷代を損するだけだ。こう考えると、政府紙幣はいつか政府に戻ってきて、政府はそれを買い取らなければならないので、実質的に「国の借金」と考えるべきだ。

政府は政府紙幣を発行するだけで、買い取りはしないとしよう。そうすると流通しているうちに印刷された文字も読めなくなって、そのうち受け取りを拒否されるようになる。最後に受け取った人が損をする。そんな「返品補償」の無い紙幣は誰も受け取らないだろう。つまり紙幣として受け入れられない。ということで受け入れられる政府紙幣は国の借金である。それも長期国債よりずっと早く政府に帰ってくる。

ということは政府紙幣を印刷しても、ほとんど国の財源確保にはならないことが分かる。財源確保するのであれば、スティグリッツの主張するように法律を改正して例えば政府が例えば1兆円の政府紙幣を発行し、それを日銀が保管し、それと同時にその金額を国庫に振り込み、景気がよくなれば、政府がそれを買い戻すようにすればよい。これが我々の勧める政府紙幣発行の意味だ。これなら公務員の給料だけでなく、何にでも使える。実質的に日銀による国債引き受けと全く同じだ。利子が付かないところが違うと思うかも知れないが、日銀に引き受けられた国債の利子は国庫に返って来る仕組みになっているので利子も意味がない。国債は償還期限がある。しかし政府紙幣も、景気が良くなって政府の税収が増えれば、政府が日銀から買い戻すこともできるわけだから、実質的に国債の償還と同じだ。

これとよく似ているのが、ヴェルナー等英国のグループが提案しているような日銀が政府に「給付金」を振り込む方法だ。これは借金ではなく給付金であり、返さなくても良い。お金を刷るとインフレになると考えている心配症の人に配慮して、給付金の額を決める人は、財政・金融の専門家の作るグループにし、インフレ率が一定の範囲内に収まらなかったら直ちに解雇されるようにすればよいだけだ。詳しくは以下を参照。

http://ajer.cocolog-nifty.com/blog/2010/11/post-a945.html

日銀券は借金だが政府紙幣は借金ではないと説明されることがある。正確に言うと日銀券は日銀の借金だが、政府紙幣は政府の借金であり日銀の借金ではないということだ。政府も日銀も『国』と言うことにすると両方とも国の借金ということになる。政府貨幣を日銀を通じて流通させるときは、政府貨幣を一旦日銀で預かり、そのうちの市場に流通したもののうち95%だけの金額が政府に支払われる(国庫に入る)ことになっている。言ってみれば、日銀が政府貨幣を「販売」し、その販売代金の95%だけを政府に支払うということだ。しかし、これは売り切りではなく、古くなったら返品を受け付ける補償がついており、返品の際には販売価格で買い取る(あるいは新品と取り替える)ことになる。

ということで、政府は現在の法律の下では、政府貨幣、政府紙幣の発行(販売?)ではそれほど儲からないことが分かる。景気対策とするには、政府が売り出した「政府紙幣」を誰も買わなくても、定価で日銀が買い取らなければならないという法律改正が絶対条件だ。この法律改正の実現は大変難しいし、どうせ同じ事なら、日銀に市場から国債を買わせる方法で十分のように思える。

現行法では、政府貨幣は国債と違って利子は付かないと思うかもしれないが、古くなったら新品と取り替えるということは、取り替え作業の人件費や新品を作る費用等を考えれば利子を払っているのと同じだ。

我々のキャッチは「お金が無ければ刷りなさい」である。その真の意味は上述の通りだ。「国の借金が大変だから歳出を抑え増税をし、財政を健全化しなければならない」という間違った考えを正すには「お金を刷りなさい」という言葉は強烈だ。国の借金は必要ならいつでも日銀が市場から無制限に買い取ることができる。これは法律の改正をしなくても可能だ。だから心配せずに、国の経済を立て直す事に専念して欲しいとう気持ちから「お金が無ければお金を刷りなさい」と我々は主張している。この内容は「借金はいくらでも日銀に買ってもらいなさい」ということだ。

「国はお金を刷ればいくらでも財源を確保できる。だから心配しなくても良い。」と説明するとき、私は国債を日銀が買うことをイメージしているが、これを聞いた人は印刷機でお札を印刷することをイメージしているかもしれない。特定の個人が特別にお金を刷ることを許されたとしよう。そうすれば、莫大な財産を一夜にして手に入れることができるのは明らかだ。いくら借金があっても、それを返済し、あっという間に世界一の大富豪になれる。このように無限に富みを生み出しそうに思える通貨発行権だが、これは印刷されたお札のアフターサービスをしないという仮定の話であり、国はアフターサービス付きで考えなければならないから、全然話は違う。アフターサービスまで考えるときは、お札を印刷して発行するのは、借金をするのと同じだ。

以上の事情から、「お金を刷りなさい」と言っても、印刷機を回して刷れと言っているのではなく、正確にはお金を作りなさいという内容だ。政府紙幣発行でも国債発行でも「国の借金を増やす」という意味では全く同じだし、お金のまわりをよくして景気をよくし、デフレを脱却し、国民生活を豊かにするという意味だ。いくらでも借金は増やせるのだから、どんどん増やして経済を拡大すればよい。

菅政権が悶え苦しんでいる。「財源が無い」から、マニフェストに書いた約束をことごとく反故にしなくてはならぬ苦しみだ。しかし、この苦しみは日本国民全体に跳ね返る。予算削減、増税、年金減額、保険料値上げ、医療費値上げ・・・。生活苦で結婚も子育てもできず、どんどん子供が減る。結果として茨城県議会選挙も惨敗した。来春の地方議会選でも敗北するのではないか心配だろう。今からでも遅くはない。財源はある。お金はいくらでも作れるのだから、迷わず思い切って景気対策をやり、崩壊を始めた日本経済を復活させなさい。大規模な財政出動で、国民生活を救いなさい。それが政権浮揚の唯一の方法であり、それがなければ政権維持は不可能だ。

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コメント

政府紙幣も日銀の当座預金勘定を担保にして負債として発行されるものだろう。デマを飛ばすな!

投稿: 東郷時元 | 2011年6月 4日 (土) 20時09分

 日銀の無利子国債請負と、政府紙幣の日銀保管も違うぞ!
日銀は通貨の発行者。請負うというのは、負債を請負うという事で、通貨を負債として新たに発行する事だ。
政府紙幣の日銀保管は、政府が既に預金している日銀券と両替をするという事だ。日銀の当座預金勘定の数字は変わらない。そうでないと、政府が紙幣を発行すれば勝手に預金を増やせる事になるではないか。
また、日銀がいつまでも政府紙幣を保管しておくわけにはいかないから、結局政府が政府紙幣を再び日銀券で買い取って償還しなくてはならなくない。結局政府の負債と同じでお金が増えたわけではない!デマを飛ばすな!

投稿: 東郷時元 | 2011年6月 5日 (日) 20時47分

・商店発行の商品券/ポイントカードは、それを発行した商店への請求書。
   (商店のモノやサービスを提供するよう請求できる。)
・社債は、それを発行した会社への請求書。
   (返済期限に、その会社へ貸したお金を返すよう請求できる。)
・株券は、それを発行した会社への請求書。
   (期末に、配当金を出す等のことを請求できる。)
・預金の通帳/カード/口座は、それを発行した銀行への請求書に相当。
   (それを銀行へ示した時に、銀行へ 現金を渡すよう請求できる。)
・借用書は、それを発行した人への請求書。
   (住宅ローンやカーローン等も該当。ちゃんと請求が来る。)
・ある国の特許権の証書は、その国への請求書。
   (法律に定められた権利を保護するよう 国へ請求できる。)
・国公債は、それを発行した公共団体への請求書。
   (返済期限に、貸したお金を返すよう請求できる。)
・ある国の政府紙幣は、それを発行した国の政府への請求書。
   (その国の国内にて 商店へモノやサービスを請求できる権利を、政府へ請求できる。)

これら請求書は、債券と呼ばれる。

債券を持っている人は、債券の発行者に対して債権(=何らかの請求権)を有す。
債券の発行者は、債券の保有者に対して 債務(=約束通り請求に応える責務)を負っている。

債務を負っている債券発行者が、
”債券保有者から請求されても 約束を守らない”ことを、”債務不履行・デフォルト”と呼ぶ。

小野先生は、そう おっしゃりたかったのだと思います。

投稿: hugoniot | 2016年7月 3日 (日) 01時11分

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