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2010年12月23日 (木)

ルーズベルトとヒットラーの景気対策の比較【2】(No.27)

 No28においては、ヒットラーの強力な景気対策によって、ドイツ経済は完璧に立ち直ったが、ルーズベルトの景気対策は不十分であったことを述べた。

http://ajer.cocolog-nifty.com/blog/2010/12/index.html

それでは、ヒットラーの過激な景気対策によってドイツはインフレにならなかったのだろうかという疑問がわくが価格統制により安定していた。ドイツインフレ率を次に示す。

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 1933年から1939年までにGNPは1.86倍になったが、消費者物価は1.07倍にしか増えていない。次のグラフでこの頃の賃金はどうだったかを示す。

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時間当たりの名目賃金は更に安定していた。消費者物価がゆるやかな上昇を示していることを考えれば、実質賃金はゆるやかに下がっていた。しかし失業率が大幅に減少していったことを考えれば、労働者全体の賃金の合計は上昇していった。

 GNPを押し上げたのは消費ではなく、政府支出である。次に軍事費まで含む公共投資のGNP比を示す。明らかに大きな政府に移っていることが分かる。

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 ナチスの公共投資としてよく知られているのはアウトーバーンの建設である。1933年~1944年で4000kmのアウトーバーンを建設した。日本は1963年~2009年で6000kmの高速道路を建設しただけであることを考えれば、大変なスピードである。政府が軍事費だけにお金を使っただけなら、GNP増大で国民が受けた恩恵は失業率の低下によるものだけかと思うかも知れないが、アウトーバーンをはじめ、住宅建設、都市再開発など様々な政策で国民を豊かにした。1951年に西ドイツで行なわれた世論調査では、半数以上の人が1933年から1939年までがもっともいい時代だったと答えている。
 
 しかしながらヒットラーはやがて悲惨な最期を迎える。ゲルマン民族さえよければ他はどうなってもいという自己中心的な考えのナチスが最終的に敗北したことは世界にとっては幸運なことだった。ナチスはユダヤ人の富を収奪し、ユダヤ人を大量虐殺までおこなった「ならず者」政権だが、最初から無謀な経済発展だと言うこともできる。

 他国を敵に回してでも自国を発展させようという利己的な考え自身が無謀な試みだった。決定的なのは資源の不足だ。1934年鉄の国内での使用量は1670万トンで、そのうち自給できたのは600万トンにすぎない。軍拡に必要な鉄の確保に失敗した。また石油の不足も致命的だった。ヒットラーは石炭から人口石油を作ろうとした。しかし天然の石油の4~5倍の値段になった。石油の利権はアメリカと英国が握っていて、石油を売るときに様々な条件をつけたため十分な石油の確保は困難だった。経済発展と共に金の保有量も激減し、輸入が困難になってきた。

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 資源が不足してきたとき、他国を占領して強奪すればよいというのが、余りにも無謀で利己的な考えだったわけで、当然の事ながら長期的な国の発展を考えれば、他国と協力して発展するしか無かったのだ。ユダヤ等、他民族との共存も経済発展には必要不可欠だ。独裁政権は短期的にはうまくいくことがあるかもしれない。ナチス政権の前半がそうだと言えるかもしれないが、後半では破綻した。ドイツが民主主義国であったなら、ユダヤ虐殺も無かっただろうし、無謀な戦争も避けられたのではないだろうか。アメリカは民主主義で無駄な議論を繰り返し、景気対策は短期的には中途半端ではあったが、資源を持ち金を持っていて、戦争に勝利し、最終的には恐慌からは脱却することに成功し繁栄した。

 その意味で、ヒットラーの経済政策が成功で、ルーズベルトの経済政策が失敗だと単純に結論づけるべきではない。

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