国の借金も、もともと日銀や銀行が刷ったお金・・・原資は無尽蔵(No.25)
国の借金が908兆円だと、国民は脅されている。国民一人あたりにすると750万円だと言う。しかし、それの何が問題なのだろう。借金の額が多いか少ないかを判断したいなら、借入限度額を問題にしなくては意味がない。この借金はどこから来るのか考えると良い。結論から言うと、もともとは日銀が刷ったお金であり、銀行等の金融機関でそれが更に増刷された結果、国は908兆円を調達できたということだ。無尽蔵に刷れるお金なのだから借入限度額は無限大だ。
お金を刷れる(つくれる)のは日銀だが、それは日銀が国債を買ったりお金を貸し付けたりすることによって行われる。2010年12月現在、その総額(日銀の資産)は129兆円である。どうやってこの資産を獲得したかと言えば、お金を発行して買ったということだ。だから、国の借金の908兆円には遠く及ばない。しかし、日銀で発行されたお金が銀行に行くと、それが国や民間への貸出に回される。借りたお金を現金で金庫に寝かしておく人(あるいは国)は少なく、大部分は銀行に預金としておいておき、そこから口座振り込みが行われる。つまり大部分のお金は銀行に留まり、そのお金は何重にも貸し出される。
今年、国は44兆円の新規国債を発行する。これを買った金融機関が現金で支払いをしたとすると、1万円札にして数百kmの高さにもなり、取り扱いが大変だからほとんどすべての支払いは銀行振り込みだ。つまり銀行から銀行にお金が移動するだけ。金融機関にとって見れば44兆円の国債を手に入れたのだから44兆円の資産が増えたことになる。国はその44兆円を、医療・福祉・防衛・教育・公共投資・公務員の給与等に使う。ほとんどすべて銀行振り込みで支払われるから、44兆円のお金は再び銀行に戻るだけだ。事実上これは銀行で刷ったお金ということになる。銀行にお金が足りなくなればいつでも日銀が補充することになっているから銀行からお金が消えることはない。
これを毎年繰り返すとやがて借りられなくなるかというと、それはあり得ない。銀行にも日銀にも貸出に上限が無い(つまりいくら刷っても良い)からだ。例えば我々が主張するように、通常の予算に追加して50兆円の景気対策を行ったとしよう。減税でもよいが福祉・医療・介護・環境エネルギー・公共投資・教育等、使うところはいくらでもある。この50兆円のお金は、様々な経路をたどり、大部分が国民の預金口座に収まる。50兆円の国債の消化が金融機関で間に合わなければ、日銀が市場から国債を50兆円だけ買って援護射撃をすればよいだけだ。50兆円の資金が国の口座に移り、それがまた金融機関の口座に戻るだけである。単に循環しているだけで、何回繰り返しても問題が起きるわけではない。しかし一人あたり40万円以上のお金が様々な経路で国民に渡るわけだからインパクトは大きい。
もちろん、国の借金がギリシャのように外国からの借入金の場合は、返却を求められて、それに応じられなくなれば破綻するが、日本の場合は外国に貸している立場なので状況は全く異なる。外国相手の場合、ドルを日銀が刷るわけにはいかないからだ。
家計金融資産が現在1400兆円であり、国が借金できるのはここまでだという意見がある。それは経済成長にストップを掛けたままにしていた場合だ。以下のサイトで我々は日経の経済モデルを使い、50兆円の景気対策を5年間続けると日本経済は一気に拡大することを確認した。
http://ajer.cocolog-nifty.com/blog/2010/10/post-bd0c.html
日経平均は3万円を越し、雇用者報酬は20%以上上昇する。
このように経済が拡大に転じると、家計金融資産も当然増加し始める。次の図において分かるように過去においても経済が拡大しているときは、家計金融資産は急速に増加していた。なぜ増えるのかと言えば、日銀や銀行がお金を刷っているからだ。当然のことながら、刷る前はそんなにお金は無かった。大規模景気対策で経済が再び発展し始めると、日銀や銀行がお金を刷り始めるから急速に家計金融資産は増え始めるし、政府が借り入れに困ることは永遠に無い。
出所:日銀
もう一つ、注意しておきたいのは、政府が十分な景気対策を怠り、デフレ経済にしたために、税収が異常に減ってしまっているという現状を理解すべきだということ。例えばEUでは法人税率を下げたら(青線)、名目GDPに対する法人税収の割合(茶色)が増えてきた。
次の図のように、先程述べた日経の経済モデルによる試算でも同様な結果が出ている。税率を思い切って下げると、最初の3年間は税収が減るが4年目からは景気が回復し、税収は増え始めることが分かる。税収が増えた結果数年後には赤字国債を出さずに済む。
以上、国の借金と言っても、もともと刷ったお金であり、いくらでも刷れるからいくら増やしても問題ないと結論される。「借金」という言葉は、印象が悪いので、英国で検討している改革案のように、どうせ刷ったお金なのだから政府に貸与するのでなく賞与でよい。返済義務のない資金を日銀から供給すれば、国民は国の借金に悩まされることは無くなり、国の経済は安定し、国民も安心して生活することができるのは明らかである。英国の改革案は次のサイトを参照して頂きたい。
http://ajer.cocolog-nifty.com/blog/2010/11/post-a945.html
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コメント
日銀理事のみならず財務次官・主計局長・主計官も対象に加えてインフレ率が一定値を超える(+-問わず)クビの法体系に変更しては?
投稿: 特亜消尽 | 2010年12月22日 (水) 20時17分
日銀対象に国は紙幣発行税を当面定額100兆円定額課税する。日銀は紙幣印刷かコンピュータークリックで電子納税する。お金を創造供給できる中央銀行課税
投稿: 志士 | 2011年7月 9日 (土) 08時42分