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2011年2月14日 (月)

財政破綻に関する政府の答弁書が出された(No.46)

城内氏による質問主意書、菅直人総理による答弁書、そしてその答弁書に対する筆者のコメントを書きます。これらを読む前にNo.39を読むと分かりやすいと思います。

http://ajer.cocolog-nifty.com/blog/2011/01/no39-8c4b.html

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財政破綻リスクに関する質問主意書
右の質問主意書を提出する。
  平成二十三年二月二日
           提出者  城 内   実

 衆議院議長 横 路 孝 弘 殿

   財政破綻リスクに関する質問主意書
平成二十二年六月二十二日に、平成二十三〜二十五年度の歳入・歳出の骨格を示す「中期財政フレーム」を含む中長期的な財政健全化の道筋を示す「財政運営戦略」が閣議決定され、『財政運営戦略概要』(以下概要という)の中に、以下のように述べられている。

2.財政破綻リスクへの断固たる対応
現状を放置して、ギリシャ等のように財政破綻に陥るようなことがないようにしなければならない。仮に、そのような状態になれば、財政自主権が失われ、社会保障サービス等の水準が大きく低下し、経済や国民生活に多大な悪影響。

また、菅直人総理大臣も平成二十三年一月八日に「このまま赤字国債を発行するような状態は、二年先は無理だ」と発言(以下総理の発言という)している。これらのことに関して、以下質問する。

一 概要の中に財政破綻とある。これは国の借金が返済不能になるということを意味していると考えるが見解如何。

二 企業の破綻と言えば、債権の放棄が発生する。国の財政が破綻すると、国債は紙くずになると考えるが見解如何。

三 国債が財政破綻により将来紙くずになる可能性があるのであれば、国債を売る際に購入者にその危険性を理解してもらう必要があると考えるが見解如何。

四 国が元本保証するから支払いは問題無いとの見解かもしれないが、財政破綻の可能性があるならその保証は信じられない。過去においても、事実上国債が紙くずになった例があると考えるが見解如何。

五 日銀が市場から国債を買うことにより、事実上政府の財政赤字を日銀が引き受けるのと同等の効果を生じさせることができる。実際、アメリカ連邦準備銀行(FRB)は約一.三兆ドルの米国債を購入し、米国政府の財政赤字を事実上引き受けた。日本政府がこのような方法を許すのであれば、日本の財政破綻は起こりえないと考えるが見解如何。

六 日銀が国債を購入すると、過度のインフレになるという説もあるが、アメリカでは過度のインフレの恐れよりも、むしろデフレの恐れがあり、日本のようにならないようにと神経を使っていると言われている。この例を見ても、日銀が国債を購入するだけで、すぐに過度なインフレになるとは言えず、むしろデフレ脱却の期待が膨らむのではないかと考えるが見解如何。

七 前述の概要の中に、「財政自主権が失われ」とある。これは日本がIMFの支配下に入るという意味と考えるが見解如何。

八 IMFは、外国から借金をしている国において借金の返済が不能になっている場合に、自国通貨を発行させ、それをドルや円などの国際通貨と交換することにより返済を助けている。日本は外貨を十分持っており、IMFへの出資金も世界第二位である。しかも円が国際通貨であるために、IMFの行う交換は全く意味をなさない。つまり現在の国の借金を放置すれば、財政自主権が失われるという表現は正しくないと考えるが見解如何。

九 前掲の総理の発言であるが、赤字国債発行が二年先は無理というのであれば、赤字国債に替わる案があるということだと考えるが見解如何。

十 一月二十一日に内閣府から、経済財政の中長期試算が発表されている。そこに示されているのは、二年先には赤字国債の発行を止めるというのでなく、赤字国債は少なくとも平成三十五年度まで出し続けるというシナリオである。このシナリオは総理の発言と矛盾すると考えるが見解如何。

十一 経済財政の中長期試算で例えば成長戦略シナリオによれば、平成三十五年度には国債費が税収を上回る。国民が納める税収のすべてを使っても国債費を払うことができなくなるという経済は、正常ではないと考えるが見解如何。
右質問する。

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内閣衆質一七七第四〇号
 平成二十三年二月十日
内閣総理大臣 菅 直人  
衆議院議長 横路 孝弘 殿

 衆議院議員城内実君提出財政破綻リスクに関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。

 衆議院議員城内実君提出財政破綻リスクに関する質問に対する答弁書

一について
 御指摘の『財政破綻』は、財政状況が著しく悪化し、財政運営が極めて困難となる状況について記述したものである。

二から四までについて
 国債の元金償還及び利子支払については、政府が責任を持って行うこととしている。

五及び六について
 日本銀行は、市場への安定的な資金供給のため長期国債の買入れを行っているが、これは、国債価格の買支えや財政赤字のファイナンスを目的としたものではないと承知している。なお、財政法(昭和二十二年法律第三十四号)第五条は、公債の日本銀行による引受けを原則として禁止している。これは、戦前・戦中に財政需要を満たすために多額の公債を日本銀行による引受けにより発行した結果、急激なインフレが生じたことへの反省に基づき規定されたものである。
 また、政府としては、日本銀行において、我が国経済がデフレから脱却し、物価安定の下での持続的な経済成長経路へ復帰することが重要な課題であると認識し、金融緩和措置を講じているものと承知しており、「包括的な金融緩和政策」(平成二十二年十月五日日本銀行政策委員会・金融政策決定会合決定)の一環として資産買入れ等の基金による長期国債の買入れ等を行っていると承知している。

七及び八について
 御指摘の「財政自主権が失われ」とは、必ずしも御指摘のような意味ではなく、財政運営が極めて困難となり、財政運営の自由度が失われる状況について記述したものである。

九について
 御指摘の発言は、国債発行に過度に依存した財政運営はもはや困難との認識を示したものである。

十について
 御指摘の「経済財政の中長期試算」(平成二十三年一月二十一日内閣府公表。以下「中長期試算」という。)計量経済モデルを用いて、一定の前提に基づき行っているものであり、中長期試算における各年度の歳出と税収等との差額が、そのまま当該年度における新規国債発行額になることを示しているものではないが、政府としては、「財政運営戦略」(平成二十二年六月二十二日閣議決定)に沿って、平成二十四年度以降の新規国債発行額について、財政健全化目標の達成へ向けて着実に縮減させることを目指し、抑制に全力を挙げることとしている。
 なお、御指摘の総理の発言については、九についてで述べたとおりである。

十一について
 中長期試算の成長戦略シナリオにおいては、名目長期金利の上昇等を反映して、平成三十五年度の国債費は大幅に増加することとなっており、結果として税収を上回る形となっている。このことは、成長率が高い成長戦略シナリオにおいても、平成三十五年度の財政状況は深刻であることを示している。

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答弁書に対する筆者のコメント

コメント

一について
財政破綻とは、国家財政の資金繰りが付かなくなってしまうことであり、単に「財政状況が著しく悪化し、財政運営が極めて困難になること」ではない。したがって、財政運営が困難になるかもしれないが、完全に資金繰りが付かなくなることはないというのであれば、この文章は撤回すべきである。

二から四について
どんなに国債を発行しても国債の元金償還および利子支払いを、政府が行うことが出来るのであれば財政運営が困難になることはあり得ないし、ましてや財政破綻の可能性は無い。したがって財政破綻の可能性を政府は撤回すべきである。

五及び六について
終戦直後のインフレと同様なことが、現在の日本で起こり得るとの主張である。政府は終戦直後と現在の経済状態との違いを全く理解していない。

終戦直後は、空襲で生産力が落ちて物不足になっていた。終戦の翌年の1946年、日本のGDPは戦前のピーク1938年の2分の1まで下がっていた。鉄鋼の生産量は戦前の7%にまで落ち、鉱工業生産は戦前水準の27.8%しかなかった。農業でも、戦時動員による人手不足で作付面積が減少したところに冷害などの災害が加わり、1945年の米作は、587万トンという記録的な凶作となった。ちなみに1940~44年度の平均は911万トンだった。それ故、食料が足りず飢餓に苦しんでいた。

戦費捻出のために発行された戦時国債の償還、軍需物資に対する支払い、復員兵の帰還費用の捻出等、政府には巨額の出費が迫られた。財政破綻だ、財源はあるのかなどとのんきなことを言っている時ではなかったのであり、お金を刷って支払うしかなかった。

生産力を増強するには、電力の供給を増やさねばならず、そのためには石炭供給の増強が必須であった。石炭業では1944年まで年産5300万トンの水準だったが、中国人・朝鮮人を強制的に働かせて生産を維持していた。終戦後、強制労働が解除されると年産1000万トンを下回るまで激減し極端な石炭不足に陥った。そこで1947-1948年に基幹産業の発展を最優先する「傾斜生産方式」が実施された。

まず復興金融公庫(復金)が大量の国債(復興債)を発行し、それを日銀が引き受けることにより資金を獲得、それを石炭・電力・海運を中心に基幹産業に重点的に投入した。一般金融機関の資金供給力が低下する中、復興金融金庫による融資の割合は大きく、設備資金では1949年3月末現在の融資残高の74%は復興金庫融資で占められていた。お金を刷って復興資金にしたわけだが、これが生産回復に大きな役割を果たした変面、復金インフレと呼ばれたように、インフレを加速する結果となった。

この財政・金融政策をどのように評価すべきだろうか。もし、このような政策が行われなかったら、政府は財政難で生産力を回復させる強力な政策は出せなかっただろうし、石炭・電力・鉄鋼の生産不足が続いていただろうから、物不足つまり需要が供給を大幅に上回る状況が続きインフレは長期化しただろう。そして奇跡の経済復興はあり得なかっただろう。戦後の混乱期のような非常事態においては、通貨発行権を行使し政府に十分な資金を確保し、それによって基盤産業を緊急に育てるという政策は正しかった。国民に対しては、激しいインフレに耐えてくれと、つまり暫くは痛みに耐えて日本経済を復興させようと協力を求めたわけだ。

終戦直後と現在と同じ経済状態とでも政府は主張したいのだろうか。極端に生産力が不足していた当時と違い、今はデフレで逆に生産力が余っている。外貨が不足し輸入が思うようにできなかった当時と違い、現在は外貨も十分あり輸入はできる。鉄鋼、石炭等資源が極端に不足していた当時とは全く違う。米の備蓄もあり多くの国民が飢餓に苦しんでいるという状況ではないし、食料が不足すればいくらでも輸入は可能だ。

財政法第五条は終戦直後の昭和二十二年に定められたのであり、当時は意味があったが、全く異なる経済状態の現在では逆にこの法律がデフレ脱却を不可能にし、国民を苦しめている。新しい時代には新しい法律が必要であることは言うまでもない。法律改正をしないとしても、時代が変わったのだから、この法律を柔軟に適用し、日銀の国債価格の買い支えや、財政赤字のファイナンスも認めるべきである。

七及び八について
国語辞典によれば「自主権とは他から干渉を受けず、自主的に決定することができる権利」である。政府は、どこから干渉を受ける恐れがあるといっているのか。金融機関の言うなりになるということなのだろうか。それともIMFからの干渉なのか。他からの干渉を受け、財政運営の自由度が失われると主張するのであれば、干渉するのは誰なのかを明らかにすべきである。

九について
総理大臣が国債発行による財政運営が2年後にできなくなるというのであれば、国民に対し、他にどのような方法があるのか示す義務があり、示せないなら総理としての資格はないと考える。

十について
歳出と税収の差額が新規赤字国債発行額にならないのであれば、それ以外の財源があるということであり、それは何なのかを明らかにすべきである。

十一について
政府は、税収を全部使っても、国債費さえ払えないという経済状態に日本を陥らせようとしている。それでよいと考えているのだろうか。消費税を福祉目的税にしようと言っているのは増税のための詭弁にすぎないのではないか。思い切った改革は必要ないと考えているのか。

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コメント

ぜひ この小野先生のコメントを
内閣へ再質問するように もっていっていただきたいです。

一度始めた議論を ちゃんと続けることが重要だと思います。
議論して、誤りを認めさせないと、相手の考えは変わらないからです。

投稿: | 2011年9月 8日 (木) 03時08分

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