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2011年3月18日 (金)

「復興国債」緊急発行方針、10兆円超日銀が引き受け(No.58)

3月18日の産経新聞によると『東日本大震災を受け、政府は、復旧・復興のための補正予算編成に向け、主要財源として日銀が全額を直接引き受ける「震災復興国債」を緊急発行する方針を固めた』とのことである。これは筆者が3月14日に提案した内容そのものだ。

http://ajer.cocolog-nifty.com/blog/2011/03/post-c080.html

課題はその規模と継続性だ。10兆円超と言っているが、10兆円は大幅に超えるべきだ。今回の地震の被害総額だが、3月17日の産経新聞によると5人のエコノミストの平均被害額は14.7兆円、最大で20兆円ということで阪神大震災の9.9兆円を大きく上回る。

子ども手当、高速無料化、農業個別補償制度などに充てる予定だった財源も復興資金の一部に振り分けるとしている。谷垣氏は増税で復興資金を賄えと主張しているが、歳出削減・増税は、大震災で打撃を受けた経済を更に悪化させる。阪神大震災の時は復興資金として3兆円しか使わなかったから復興が遅れた。今回はその失敗を繰り返してはならない。

今回は東日本大震災からの復興ということで、十分国債の日銀引き受けの要件を満たしている。何も大震災からの復興ということでなくても、デフレ脱却ということでも十分国債日銀引き受けの要件は満たされている。その意味でも復興金融公庫を立ち上げ、そこから数年間、毎年50兆円規模で資金を供給するべきである。

筆者は一昨日、衆議院議員の田野瀬氏(自民党)と約2時間お話しした。たくさんの質問をして下さった。田野瀬氏の質問のレベルの高さから、財政金融政策を最も正しく理解した国会議員として筆者は高く評価している。彼のレベルにまでどの議員も達するのであれば、日本経済は完璧に復活できる。筆者は50兆円の景気対策を5年間続けた場合のシミュレーションを示し、それに対して質問していただいたもののうち2つだけ書いてみよう。

①今、財政支出が90兆円だが、これに50兆円が加わると140兆円になる。こんなに増やして大丈夫か。

【回答】日本はデフレで経済が縮んでいる。中国は来年度の歳出は125兆円。日本もデフレでなかったら、財政は今よりずっと拡大していたに違いない。

②諸外国でも、財政が拡大しているのであれば、データを見たい。

【回答】OECDのデータをグラフにすると次のようになる。

581

日本が最低である。つまりデフレのため財政が拡大していない。1995年から2010年までに歳出が2倍以上になった国は28カ国中16カ国である。1995年の日本の歳出は75兆円だったので、デフレが無かったら、今頃日本の歳出は150兆円程度にまで拡大し、しかも国の借金の問題で悩む必要は全く無かったに違いない。

50兆円も使えるなら、是非林業に使いたいと田野瀬議員は言っておられたが、筆者は大賛成だ。景気対策にもなるし、温暖化防止にも、花粉症対策にもなるだろう。議員が提案しあって50兆円の使い道を決めればよい。50兆円は日銀から引き出すだけで「恐いお金」でもないし、「サラ金」でもない。その後もいくらでも引き出せるのだから。

その他、数限りない質問を受けたがここでは省略したい。マクロ計量経済に基づいたシミュレーションに関して国会議員に説明しても、なかなか理解が難しいのが現状であるが、田野瀬議員は1を話せば10まで理解して下さる方で、非常に頼もしく感じた。嬉しくなって、詳しく説明していたらその部屋に自民党税制調査会長の野田毅氏も入ってこられ、野田氏も加わり、率直な議論の交換ができた。

現在の国の非常事態に対し、超党派で危機打開に動いて欲しいと思う。

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経済・政治・国際」カテゴリの記事

コメント

信じられないことですが、現時点では全く根拠のない報道のようです。
16:20、真偽を確かめるために産経新聞社に電話しました。
編集部(経済部、政治部)を出すように言ったのに、お客様対応係にまわされ軽くあしらわれました。

政府「関係者」からのいろいろな話を「政治部か経済部の誰か」が「聞いてきたのだろう」産経独自のネタだと言っていました。その「政府関係者」が誰なのかときいたら「いろいろ」と答えて省庁を特定することもなく、結局、何も言っていないの同じことでした。
そこで、政治部・経済部を出せと言ったら、それは出来ないと言って断られました。
普段地元紙やブロック紙に問い合わせると編集部か取材した記者本人が出て対応してもらえます。
それに慣れていたので、大手紙のいい加減な対応に呆れるやら腹が立つやら…。

続報が出るのか?と尋ねたら、「何かあれば出る」としか答えず、クレーマー対策で適当に言っているだけなのがミエミエでした。

こんな非常時に平気で憶測記事、あるいはねつ造記事を書ける産経は、狂っているか、よほど読者を舐めているとしか思えません。

投稿: S | 2011年3月18日 (金) 16時27分

与謝野さんも枝野さんも、この報道を否定しました。
与謝野さんは「日銀が特別なことをする必要はない」とすら言ったそうです。

呆れ果てて何も言えません。
我々を棄民するつもりなんでしょうか?

投稿: S | 2011年3月18日 (金) 16時38分

事実かどうかわかりませんが、日銀は多額の財政支出すべきです。10兆円にとどまらず、50兆円を目指し支出額を増やすべきです。与謝野、枝野は何を考えているのでしょう。被災地で苦しんでいる人たちの復興を何も考えていないのでしょうか?与謝野は増税させすればいいのか?今の時期の増税は国民を苦しめるだけということがわからないのか?まったく頭が悪いといかいいようがありません。
自民党の田野瀬議員あなたの仲間をもっと増やしてください。とにかく、悠長なことはしてられません。日銀の財政支出が不可欠です。

投稿: | 2011年3月18日 (金) 20時06分

今回の報道は観測気球を上げたということでしょう。
政府の常套手段に世論反応を見ながら政策決定していきます、今まで日銀の買い切りオペはしても直接引き受けは前例がありません、世論がどのように反応するのか見たかったのでしょう。

いかに危機感の無い菅政府や財務省でも今回だけは何とも成らないでしょう、壊れた道路や橋や港など放っておくわけには行きません、とりあえず年度内に10兆円でも用意しなければなりません、その後も順次公共事業として国家財政を圧迫します。

その財源を増税でと言い放っていた谷垣を味方につけようと腐心しましたが断られたようです、増税などではとても追いつきません。

今回ばかりは財務官僚も覚悟を決めたのではないでしょうか、決めていないのは与謝野と野田と谷垣ぐらいなのではないでしょうか。

少し前進したように感じます、悲観する事ではないのでは。

投稿: yasu | 2011年3月20日 (日) 01時19分

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» 11/3/18 [不条理審議委員会]
今日の午前中 ”復興国債10兆円を日銀引受”というニュースが踊った。 そこで政治家とのチャンネルを持つ、小野のお父さんに http://ajer.cocolog-nifty.com/blog/ >既にご存知かと思いますが、下記についての >コメント記事よろしくお願いします。 >10兆円規模「復興国債」発行へ  >全額日銀が引き受け http://sankei.jp.msn.com/politics/news/110318/plc11031801100004-n1.htm  というコメン... [続きを読む]

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