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2011年4月

2011年4月29日 (金)

悪化する日本経済と政府債務(No.70)

企業の生産活動の状況を示す11年3月の鉱工業生産指数は、東日本大震災の影響を受け、過去最大の下げ幅となった。経産省が28日に発表した11年3月の鉱工業生産指数は82.9で、前月比で15.3%低下した。これは過去最大の下落幅である。また個人消費も昨年の同じ月に比べ8.5%減少した。

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確かに今回の落ち込みは大震災によるものだ。しかし、上図を見て頂きたい。2008年には110を超えていたのが、今は82.9だ。リーマンショックと大震災のダブルパンチだと言うだろう。しかし、リーマンショックの後、麻生内閣の景気対策で急激に回復していた日本経済だったのに、民主党は景気対策を止めた。麻生内閣の景気対策のうち3兆円分も削減。事業仕分けでも、日本経済を伸ばすための事業予算を次々カットした。このグラフからも、民主党政権のお陰で、生産の伸びが止まり、更に大震災で大幅落ち込みとなったことが分かる。

国の借金が多いから、歳出削減と増税で減らしていくのだと主張する。しかし、その方法で国の借金を減らすのは不可能だということは計量経済学が証明している。ラッファー曲線の議論を使うともっと分かりやすくなる。次の図がラッファー曲線である。税率が0%であれば当然税収は0だ。税収が100%ということは、売上のすべてを税収で払うことになるから、経済は成り立たなくなって、GDPが0となり税収も0となる。ということは、その間で税収が最高値になるところがあるということ。それ以上いくら増税をしても、税収は経済を縮小させ、税収は減っていく。つまり税率にも限界値があって、その限界値を超えると税率を増やせば増やすほど税収は減っていく。

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これは次のような例と比較して考えると良い。大きな湖で魚を捕っていたとする。網を大きくしていくとたくさん捕れるが、大きくし過ぎて魚を全部捕ってしまったら、それ以後漁獲量はゼロになる。つまり網の大きさには限界値があって、その大きさの網のところが漁獲量は最大であり、それ以上網を大きくしても、逆に漁獲量は減ってくる。

国の借金のGDP比も同様だ。税率は増やしていくと、限界値までは税収も増え、国の借金のGDP比は減っていくが、それ以上に税率をすると、GDPが減り税収が伸び悩み、結果として借金のGDP比は増えてしまう。税率を100%にするとGDPは0になるから、国の借金のGDP比は無限大となる。現在の日本はその限界値を大きく超えており、増税をすると、借金のGDP比は逆に減っていく。このことは様々な計量モデルによる試算で確かめられている。

以下のような記号を導入してみよう。
国の借金 ・・・D 
GDP   ・・・Y
国の借金のGDP比 ・・・D/Y  → 実質的な借金の重さ
税率   ・・・T

次の図を見て頂きたい。一見すると難しそうだが、実際は馬鹿馬鹿しいほど単純なグラフである。横軸のTは、現在の税率からどれだけ税率を上げて増税するかと示している。縦軸は、その増税によって、実質的な借金の重さ(借金のGDP比)が増えるか減るかを示している。①の場合は借金のGDP比が小さいときのグラフだ。税率を少し増やすと借金のGDP比の変化率は負になっているから借金のGDP比は減ってくる。しかし、税金を取りすぎて、例えば売上の全部を取り上げたらGDPがゼロになるが、政府の借金は残る場合は借金のGDP比は無限大になる。

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ということは、どこかに増税の限界値があり、その手前では増税により借金のGDP比は減るが、それ以上増税すると借金のGDP比は逆に増えてしまう。国の借金を多く抱えている国でも日本以外では①なのだが、どんどん借金が増えてくるとグラフは上に移動して②に移る。この場合は増税によって借金のGDPは増えるばかりである。

その理由を知りたい方のために、簡単な説明をする。増税をしたとき借金 D が t だけ減り、GDPが at だけ減ったとしよう。そのとき借金のGDP比が減るか増えるかを計算してみよう。簡単な式の変形により

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であることが分かる。aD-Y は借金のGDP比が大きくなってくるといつも正の値になる。つまり増税により、必ず借金のGDP比が増えるようになる。だから上のグラフのように借金のGDP比が増えると(①から②に移動すると)グラフは上がってくる。これが日本経済の問題点だ。人は増税すれば借金が返せると思っているが、実はグラフは①から②に上がってしまっていて、増税しても借金は重くなる一方なのだ。

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2011年4月28日 (木)

日銀の国債引き受けに問題はあるのか(No.69)

東日本大震災から復旧・復興をするには大規模な補正予算が必要となります。今回の大震災に対する復旧・復興で必要とする費用が20兆円~50兆円と言われ、財源を増税に頼ると1人当たり20万円~50万円にもなり、デフレが続く日本経済に深刻な悪影響を与えることは間違いなく、復旧・復興どころではなくなります。

それに対して日銀の国債引き受けを行えば、すみやかに復興のための十分な財源は確保できるだけでなく、デフレ脱却も可能となります。なぜ反対意見があるのでしょう。

①円の信認が失われるのか。

4月12日の参議院財務金融委員会で白川日銀総裁は、円の信認が失われるとは

(a)インフレになる(b)円での支払いができなくなる

ことであると発言しています。インフレになるとは、デフレ脱却が可能になるということであり、歓迎すべきことです。むしろなぜ日銀は十数年間もデフレを放置していたのか厳しく追求すべきです。ハイパーインフレになるというなら、それを止めるのが日銀の役割であり、それができないなら日銀の総裁・理事は全員辞めていただき、それを阻止できる人たちに交替していただけばよいだけです。

日銀引き受けで円の支払いが出来なくなるのでしょうか。どこの銀行、あるいはどこのお店が円を受け取らなくなるのか、白川総裁に調べていただくのがよいのではないでしょうか。ハイパーインフレが起きたドイツ、オーストリア、ブラジル等ですら、自国通貨での支払いが不能になっておりません。

国債引き受けで円売り(日本売り?)が進むという人がいますが、サミュエルソンも言っていたように、不況に苦しむ日本にとって円安はよいことです。

②国債が暴落するのか。

国債価格は需要と供給の関係で決まるのであり。国債の買い手が増えれば国債価格は上がります。その意味で、日銀が国債を買えば直ちに、国債が暴落するということはあり得ないことです。金融機関にとって、国債は満期には元本と金利が確実に受け取れるのに、莫大な損失を覚悟して低価格で国債を売って、現金に換えることにメリットがあるのでしょうか。金融機関が保有する500兆円の国債が一斉に売りに出されたとしても、買い手がありませんし、真っ先に売り出そうとした金融機関は、その後政府からどのような扱いを受けるかよく理解していますから、金融機関にとって売り逃げをするという選択肢はありません。

もちろん、日銀が国債を買い、その結果インフレ率が上昇し、デフレ脱却が可能となり景気がよくなったときは、当然経営者マインドが改善し、投資意欲が上がり資金需要が出てきます。そうなれば、少々高めの金利を払っても融資を受けて事業拡大をする経営者が増えますので、金利が上がってきますが、それは大変歓迎すべきことで、それを否定していては日本の未来はありません。

その時、国債価格が下がり、国債を保有する金融機関に多大な損失が生じることを恐れるのであれば、金融機関の保有する国債を変動金利付きのものに交換しておくことも対策の1つとして考えるべきでしょう。インフレ率が上がったとき、金利も上がるのであれば、暴落はありません。

③日銀が国債を買うことを国際社会が認めないか。

不況脱却のために中央銀行が国債等を購入することは、どこの国でも行っていることです。

3月16日、フランスのラガルド経済大臣は、日本の復興支援をするためにG7に対し日本国債を協調して買うことを提案しました。外国に買ってもらうと円高になり輸出産業に打撃になりますが、日銀が買えば円安になり一挙両得です。4月20日にOECDは日本銀行に対し、長期国債の購入を増やして金利を下げることと、インフレ目標を2±1%にしたらよいのではないかと提案しています。これらの発言からも、日銀が国債を買うことを国際社会が認めないということはあり得ません。

④国債発行が将来世代へのツケになるのではないか。財政赤字が巨額でEU加盟条件も満たしていないのではないか。

デフレ、大震災などの経済危機に対しては、一時的に財政赤字を拡大して危機を克復することは認められています。実際ドイツやフランスなども財政赤字の上限であるGDPの3%をリーマンショック後には超えています。

内閣府や様々なシンクタンクの行った試算でも、国債を追加発行して景気を刺激したときは、国の借金も増えますが、GDPも増えます。その増加率を考えると借金の増加率よりGDPの増加率のほうが、ずっと大きくなっています。このことは借金のGDP比は減少するということで、将来世代へのツケは減るということです。一時的に財政赤字を増やしても、景気が良くなれば、税収も増えてきて財政赤字も減ってきます。

逆に増税や歳出削減は、借金だけでなくGDPも減らし、結果として将来世代へのツケを増やしてしまい、いつまで経っても財政赤字は減りません。

⑤国債の直接引き受けでなく、市場から日銀が買うのではいけないか。

もちろん、日銀が市場から買えば事実上同じ事ですから問題ありません。しかし、白川総裁は国債を買えばハイパーインフレになるなどと発言し買いオペを拒否しており、事実上デフレから脱却させる努力をしておりません。本来なら日銀法を改正し、デフレ脱却に対して日銀が責任を持つような制度に変えるべきでしょうが、大震災で打撃を受けた日本にとって、そのような時間的余裕はありません。そうであれば、国会の議決で日銀は国債を引き受けるべしと決議すべきです。日銀法第4条では、日銀は政府の経済政策の基本方針と整合的でなければならないとありますので、引き受けを拒否しないと思いますが、万一それでも日銀が非協力的であれば、日銀法改正をすべきだと考えます。

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2011年4月26日 (火)

通貨の信認について(No.68)

たくさんの国会議員と話してみて、一気に日銀の国債引き受けに賛成する議員が増えていると感じます。日銀引き受けで必ず反対の理由とされているのが「通貨の信認を失う」ということです。4月12日に金子洋一が白川日銀総裁に「通貨の信認」とは何かと財政金融委員会で質問してますね。

白川氏の答えは

【通貨の信認、物価の安定ともう一つ、これは最終的に通貨の支払、】つまり

①物価の安定を失うこと

②通貨の支払いができなくなること

だそうです。

http://www.sangiin.go.jp/japanese/joho1/kaigirok/daily/select0105/main.html

驚きですね。国債を日銀が買わなかったから、デフレが続いた。日銀の言う物価の安定とはデフレを維持することです。どの国もデフレにだけは絶対に避けなければならないと考えているのに、日本だけは絶対にデフレを続けるということですね。国債を買えばデフレを脱却できると分かっていて、デフレを脱却させないと必死で抵抗する日銀、まさに国賊です。

もっと驚くのは、日銀が国債を買えば、通貨で支払いができなくなるだろうということ。全国のどこのお店で円を受け取らなくなるのか、白川さんは言わなければなりません。一軒でもそんな店がありましたら、お知らせ下さい。このブログでご紹介させていただきますから。

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2011年4月24日 (日)

竹中・フェルドマンが積極財政で財政が健全化すると主張?(No.67)

これは全くの未確認情報ですが、以下の事を聞きました。どなたか正しい情報かどうか知っておられたら教えて下さい。

今朝(4月24日)のテレビ朝日で竹中平蔵とフェルドマンがシミュレーションの結果を示したとのこと。三十数兆円の景気対策をしたとすると物価が上がり、経済が成長し、財政収支が改善するとのこと。日本経済復活の会が2003年に発足したときに出版した本で示したシミュレーションを追試したことになりますね。もっと詳しく結果を知りたいものです。

なぜ、我々のシミュレーションを引用しなかったのかなんて、ヤボなことは言いません。率直に歓迎します。

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2011年4月22日 (金)

OECDの日本への提言:日銀は長期国債をもっと買え(No.66)

4月21日にOECDが日本に対して重要な提言を行ったのだが、日本のマスコミは一切報道しないので、ここで皆さんにそれを紹介する。重要なポイントは2つである。
①日銀は長期国債をもっと買うべきであり、そうすれば長期金利が低下し、それがインフレ期待を上昇させるし、下落した地価に好ましい影響を与える(つまり地価を上昇させる)可能性がある。
②インフレ目標は2±1%にした方がよい。

日銀が国債を買えば、国債が暴落(長期金利が暴騰)するなどということはあり得ないと言っているのだ。それどころか、国債は上昇(金利低下)だと言っている。また諸外国のインフレ目標を引用し、それに準ずるとよいということで、インフレ目標は2±1%がよいとし、比較のために、表も示している。

これは白川日銀総裁の発言が完全に間違えていることを痛烈に批判しているのである。

またこれは、日本経済を救う極めて重要な提言であり、マスコミはこれを大々的に報じなければならないのに、財務省が見事にこれを封印した。ことごとくマスコミは財務省の圧力に屈した。是非皆さんには真実を知って頂きたいので、原文のままここに引用する。もともとは
http://www.oecd.org/dataoecd/6/5/47651437.pdf
に、日本語で掲載されている。

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金融政策
日本銀行は、デフレの克服を確かなものとするため緩和的なスタンスを維持すべきである…
日本銀行は、金融市場の安定化を目的として大規模な流動性を供給することにより、地震の後迅速に対応した。また、為替レートの変動を抑えるためのG7財務相・中央銀行総裁による多国間のコミットメントの一環として、外国為替市場への介入が行われた。加えて、日本銀行は、企業の景況感の悪化やリスク回避の高まりを防ぐために資産買入プログラムの規模を10兆円(GDPの2%程度)に倍増することを発表した。資産買入プログラムは元来、
i. 長期金利の引き下げやリスクプレミアムの減少のため、3.5兆円の国債、1.5兆円の社債、CP、不動産投資信託の買入を含む、当初、5兆円の追加的な資産買入プログラムを創設する、
ii. 政策金利を0.1% から、ゼロから0.1% の間へと引き下げる、そして、
iii. 「物価の安定が展望できる情勢」になったと判断するまで、実質的なゼロ金利政策を維持することを約束する
といったことにより、デフレと戦うために2010年10月に開始された「包括的な金融緩和政策」の一部であった。日本銀行は、地震による影響を含む下方リスクに注意を払い、現在の緩和的なスタンスを維持するとともに、先行きが悪化した場合には更なる措置を講じる準備をすべきである。そのような場合においては、高いリスクの民間金融資産を購入することには注意を払う一方、長期国債の購入拡大を通じて長期金利を低下させることに焦点を当てるべきである。こうした取組みは、インフレ期待をも上昇させるかもしれない。デフレの克服は、資産価格、特に19年連続の下落の後に1975年の水準まで低下した地価に好ましい影響を与えるかもしれない。
…他方で、金融政策の枠組みを改善する
金融政策の枠組みについても改善の余地がある。2009年12月、金融政策委員会は、ゼロ%の下限を除くことにより、0 から2%程度とする物価安定の「理解」を改定した。この措置は依然として物価安定の理解を非常に低いままに留めている。なぜなら、この範囲のインフレが展望できる情勢になった時には、原則的に物価安定の理解が満たされることになるからである。より高いインフレの目標は、デフレに対して更なるバッファーを提供するであろう。加えて、仮に1つの値を中心とした範囲により表される場合、日本銀行の政策意図はより明らかになり、その結果より信認のおけるものとなるであろう。1つの典型的な目標は2%、プラス、マイナス1パーセントポイントといったものである。物価安定の理解を設定する際のメカニズムを改定するといったこともなされうる。いくつかのOECD加盟国では、インフレの範囲は中央銀行により独立的に設定されるというよりは、政府もしくは政府と中央銀行による協議によって設定されている。そうした取組みは、インフレ目標に対する政府の支援を促し、中央銀行がより独立してその目標を達成することを認めることになるかもしれない。枠組みの変化は、信頼性をさらに高めるとともに物価安定の実現に向けた力強い取組みを確かなものとすることを助け、それ故、今後長期間にわたる財政健全化の過程で経済を下支えすることになるであろう。
© OECD 2011

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1. 各年1月1日の地価(住宅地、商業地、工業地全てについて)。
出典: Ministry of Land, Infrastructure, Transport and Tourism.

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2011年4月17日 (日)

東京電力はリストラを加速すべきでない(No.65)

東京電力の勝俣恒久会長(71)は4月17日の記者会見で東電の経営状況について、「創業以来最大の危機にある」との認識を示した上で、経営資金確保のために「資産売却や人件費削減など、あらゆることを実施したい」と述べた。東電の経営に関して口だしするつもりは無いが、東電には今大きな課題ある。それは原発事故の対応、特に放射能で汚染された水の処理、避難させた近隣住民への対応、放射能の外部への放出を止めること、放射能汚染の実態調査、放射能で汚染された土地の改良、そして電力不足にならないように、発電所の増設等である。これらは、どれも大至急やらねば、日本にとって大損害になるものばかりだ。

これだけの事を今までの人員で行うのはとても無理だ。それなのに、リストラをやるという。むしろ逆に、社員を大量に雇って、事故対応と電力不足解消を大幅に加速すべきだ。金が無いと言いたいのかもしれないが、この事故は政府にも連帯責任があり、当然政府に巨額の援助を求めるべきだ。

ともかくやっていることが遅すぎる。事故対応をする人員を10倍にするとよい。放射能に汚染された水の処理も、貯水槽をつくったり、タンクを設置したり、タンカーを使ったり、すべて同時進行で行うべきだ。原発の近くでも、放射能レベルが低い地域も多くありそうだ。大爆発の危険が去れば、そのような地域すみやかに帰宅を許すべきだ。

宇宙ステーションで飛行士は1日で1ミリシーベルトの被曝をする。セルゲイ・クリカレフは803日宇宙に滞在した。1時間当たりだと42マイクロシーベルトだ。これでも安全ということを知っているから宇宙ステーションに人が長期滞在をする。避難しろと言われている飯舘村は4月17日現在毎時4.74マイクロシーベルトしかない。宇宙ステーションの10分の1だし、これからもっと減っていく。なぜ避難の必要があるのか。

長期的にはがんの危険が増すと言いたいのかもしれない。何か科学的な根拠があって言っているのだろうか。高い放射能を浴びて暮らしている人たちがどれだけがん死亡率のデータがある。次は中国の例。
http://criepi.denken.or.jp/research/news/pdf/den451.pdf

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これを見ると、被曝量が増えるとむしろがん死亡率は減っている。次はインドの例。確かに原爆のように一度に大量の放射能を浴びるとがん死亡率は高くなっているが、低レベル放射能の場合は、たくさん浴びるとむしろ死亡率は下がっている。これらのデータを見ても、例えば飯舘村のような微弱な放射能の地域であれば、避難の必要は全く無いのではないか。心配なら国が責任を持って地面から放射能を取り除く作業をやるべきだろう。

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避難させれば、確実に健康を害し、老人の場合など最悪の場合は死に至ることもある。4月11日の読売新聞によれば、今回震災で避難したが、避難所が不衛生であったり、寒かったりで生じた震災関連死は282人に上ると言っている。こういったディメリット以上のメリットが避難することによって得られるのであれば科学的なデータを政府は示すべきだ。

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2011年4月11日 (月)

原発事故の後、長期立ち入り禁止となる地域(No.64)

本日(4月11日)政府は飯舘村に計画的な避難を要請した。何の説明もないとの反発が地元にある。そこで、政府が何を考えているかのヒントとすべく、飯舘村(飯舘村役場)の放射能レベルを以下に示す。これは原発から北西40kmの距離にあり
http://www.pref.fukushima.jp/j/20-50km42.pdf
より引用した。ついでに南南西40kmにあるいわき市中央台北小学校の放射能レベルも示した。

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すぐ分かることは、同じ40km地点でありながら、極端に放射能レベルが違うことだ。原発が放射性物質を出した当日の風が飯舘村に向かったことを示している。いわき市は放射能レベルが低く安全ということになるが、飯舘村は高い。だんだん下がっているがこれからどうなるのだろうか。半減期はヨウ素131は半減期が8日、セシウム137は30年であり、1年後くらいであれば、ヨウ素は消え、セシウムはそのまま残ると考えて良い。飯舘村の放射能レベルは3月24日に12.8μSv/h、4月9日に5.76μSv/hだからもしも、放射能がヨウ素とセシウムだけから来るとすると簡単な計算より、暫く後にはヨウ素が消え、放射能レベルが3.4μSv/hに落ち着くだろうことが予想される。これは年間約30ミリシーベルトということになる。

国際放射線防護委員会が緊急時の被ばくについて、20~100ミリシーベルト以内と定めているのを踏まえて飯舘村は20ミリシーベルトを超えているから避難せよと言っているのだろう。そうであれば、20ミリシーベルトを下回らないと帰って来れないということだ。半減期30年で計算すると返って来れるのは約18年後ということになる。

20km圏内であれば、もっと放射能レベルが高い地点があるだろうし、そんな所は立ち入り禁止期間はずっと長くなるだろうし、原発そのものは、ほぼ半永久的に長時間の立ち入りは禁止されることになるだろう。もちろん、この仮説には様々な仮定がなされている。これだけ重要な事柄だから、もっと精緻な計算が必要なことはもちろんである。

①これは更なる放射能の放出は無いと仮定してあるが、更に放射能漏れが拡大するなら避難期間はもっと長くなる。

②放射能に汚染されていない土を上にかぶせれば放射能レベルは落ちる。

③年間20ミリシーベルトなら危険という証拠があるのだろうか。世界の放射線の専門家で作る「国際放射線防護委員会(ICRP)」によると、放射線を全身に一度に浴びると、がんなどで死ぬ危険は1000ミリ・シーベルトあたり5%高まる。簡単な比例計算なら、20ミリシーベルトであった場合、0.1%ということになるが、人間の場合放射線で破壊されたDNAを修復する機能があり、全く健康被害は無い可能性もある。一方たばこの場合はがん等で死ぬ確率が数十パーセント増やすから、たばこよりは桁違いに安全と言える。近くにたばこを吸っている人がいても避難命令は出さないのに、それよりずっと安全なレベルの放射線でなぜ避難させるのか理解できない。

④チェルノブイリの場合強制避難ゾーン40キュリー/平方km以上となっている。40キュリー/平方kmは私の計算では、およそ1600マイクロシーベルト/時にあたる。政府が考えている基準よりはるかに緩やかであり、これにより引き起こされた健康被害と比べる必要がある。避難させれば、そのことで大きな健康被害をもたらすことはよく知られている。避難の途中で死ぬ人も多い。避難所の環境が悪いために東日本大震災関連だけで282人が死亡したとされている。飯舘村の人がそのまま留まったとして、どれだけの人が死ぬかの予測とその根拠を明らかにすべきだ。避難のメリットとディメリットを比較して、メリットのほうが、ディメリットよりはるかに大きい場合のみ避難させるべきだ。薬の副作用も同様な考えだろう。

⑤多くの住民を半永久的に避難させるということは、日本の領土の一部を事実上失うことに等しい。そのような国家の非常事態に、現政権の対策は余りにもお粗末だ。チェルノブイリの場合、国家予算の20%がその事故対策に使われ、事故処理に86万人が従事したとこと。日本政府は今回の事故を東電に任せきりで、責任を果たしていない。少なくとも数千人を直ちに事故対応に派遣すべきだ。放射能の高い地点でも、リレー型式でひんぱんに交替させれば、作業は可能だ。放射能に汚染された水を低レベルのものは海に捨て国際的な非難を浴びた。タンカーに入れるべきだった。多数のバージ船を使いピストン輸送をすれば運べたはずだ。原子炉に大量の水をホースでかけ始めたときから、大量の放射能に汚染された水が出ることは分かっていたはずで、直ちに対策を始めれば間に合ったはずだ。予算が無いといいたいのだろうが、国家の非常時なのだから、日銀の国債引き受けで緊急に資金を確保し、国が総力を挙げてこの事故に対応すべきである。

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2011年4月 7日 (木)

国債暴落という迷信をいつまで信じるのか(No.63)

日銀の国債引き受けをせよという声が次々と上がっている。これは、国債という伝票を書いてお金を日銀から引き出すことであり、デフレに苦しむ日本にとっては、干ばつが続いた後の恵みの雨に例えることができる。しかし、心配症の人は、雨がふる前から洪水を心配するように、日銀の引き受けの前に様々な心配をするようだ。

筆者が高校生だった頃、物理の時間に、ある生徒が先生に質問していた。「自分が窓から飛び降りたとしましょう。そうすると重力で下に落ち始めます。しかし、空気抵抗は上向きの力なので、今度は上に上がり出します。そうすると空気抵抗は下向きの力なのでまた下に落ち始めます。一体、自分はどうなるのでしょう。」先生の答えは簡単だ。「空気抵抗は重力よりはるかに小さな力なので、下向きの力を若干弱めるだけであり、あなたは下に落ちるだけなのです。」

日銀の国債引き受けだって同じ事。デフレの際にお金が国民に渡れば、経済活性化に大きく貢献する。しかし、空気抵抗のように、その効果を若干弱める作用をもたらす変化が生じる。例えば金利上昇、つまり国債価格の下落だ。お金が国民に渡れば消費が伸び、景気がよくなり、企業の利益が拡大する。そうなれば、少々金利が高くても融資を受けて投資しようとするから金利は上がってきて、国債価格は下落する。

しかし、馬鹿な連中は日銀からお金を引き出すと、金利が上がり、中小企業が倒産、賃下げ、企業収益が悪化、住宅ローンの返済ができなくなり、国民は貧乏になると主張する。なんと、日銀からお金を引き出して国民に渡せば渡すほど、国民は貧乏になるのだそうだ。馬鹿かと言いたい。これは、笑い話だ!!上述の高校生の例と同じ結論だ。窓から飛び降りると、空気抵抗のために上向きの力がはたらき、天に昇っていくと結論する。物理が全く理解できぬ人の結論だ。国民にお金を渡せば国民は貧乏になると結論する人は経済が全く理解できぬ人だ。

筆者は最近、国会議員と次々会って経済の話しをしている。国債暴落を心配している人は多い。今は震災復興もあり、日銀からお金を引き出して使うべきだということは冷静に考えればすぐ分かることだ。例えば、あなたが100万円で国債を買ったとしよう。金利1.2%で10年後には元本と金利は確実に受け取れる。ある日あなたは日銀が国債を引き受けたというニュースをテレビで見たとしよう。「ヤバイ、このままでは国債が暴落する。50万円でもよいから今売っておこう」と思うだろうか。あなたは、日銀よりも自分の利益のほうが大切だから、売るかどうかの判断はどうすれば多くの利益が得られるかを考えるだろう。100万円で買ったものを今50万円で売ると50万円の損になるが、10年間待つと100万円に金利を加えた112万円が返ってくる。

それでも50万円で売ると決心する場合は、50万円を別なもの、例えば株などに投資して確実に112万円以上になると確信したときだ。しかし、現在の日本でそんな素晴らしい投資先は存在しないから、乗り移ろうと誰も思わない。1989年、日経平均は38915円まで上昇したが、今はその4分の1にまで下がった。国債はそこまで下がるのは非常に難しい。余程の高いインフレ率にならない限り無理だ。例えば50兆円程度日銀の国債引き受けがあったとし、それを全部公共投資に使ったとしたとき、内閣府の試算では消費者物価を0.7%押し上げるだけだ。まだデフレから完全に脱却できるとは言えない規模だから、国債の暴落など夢のまた夢といったところ。ましてや国債市場特別参加者制度なるものがあって、国債が下がらないような制度になっている。

こんな馬鹿な論理で、国民に必要とされているだけお金を渡す政策が否定されていることを国民は怒るべきだ。日銀はもっと国民にお金を渡せと要求すべきだ。

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2011年4月 3日 (日)

日銀の国債引き受けで80兆円を捻出すべきだ 全国知事会(No.62)

 読者のコメントによれば全国知事会が「日銀の国債引き受けで80兆円を捻出すべきだ」とする提言をまとめたそうです。我々の活動のゴールが大接近してきたという感があります。ここまで来たのですから、何としても日銀の国債引き受けをさせましょう!!

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テレビ朝日:

 

全国知事会は、震災復興に必要な財源として、日本銀行による国債の引き受けで約80兆円を捻出すべきだなどとする提言をまとめました。

 全国知事会の泉田災害対策特別委員長は、自民党に対して「国は大胆な財源確保を行うべきだ」と強調しました。そして、復興予算の財源として、日本銀行による国債の引き受けで80兆円の捻出などを盛り込んだ提言をまとめ、自民党に申し入れました。また、震災復興のための特別立法を制定し、被災者の生活再建支援や道路や河川などの復旧事業の予算を国が全額負担するべきだとしています。

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全国知事会のホームページには次のようになっています。

○菅内閣総理大臣等への東北地方太平洋沖地震に係る緊急要請について(2011331)

 3月31日(木)、麻生全国知事会会長(福岡県知事)は、菅内閣総理大臣、山口公明党代表及び谷垣自由民主党総裁と面談し、東北地方太平洋沖地震被害への今後の国の法制や財政措置への対応に関して取りまとめた緊急要請を提出しました。

 要請活動終了後、麻生全国知事会会長が都道府県会館において記者会見を行いました。

 要請活動の資料及び記者会見概要は、以下のとおりです。

http://www.nga.gr.jp/news/kinkyuyouseih230331.pdf

○東北地方太平洋沖地震に係る緊急要請について(2011330)

 3月30日(水)、泉田災害対策特別委員会委員長(新潟県知事)は、自由民主党総務部会に出席し、東北地方太平洋沖地震被害への今後の国の法制や財政措置への対応に関して取りまとめた緊急要請を提出し、説明しました。

 また、総務部会終了後、公明党の坂口副代表、井上幹事長、石井政務調査会長、西総務部会長及び石田東北地方太平洋沖地震対策本部事務局長、自由民主党の石破政務調査会長、大島副総裁及び田野瀬幹事長代理に対して要請を行いました。

 要請活動時の資料は、以下のとおりです。

http://www.nga.gr.jp/news/h230330youseisiryo.pdf

中川秀直氏のホームページにも紹介があります。

http://ameblo.jp/nakagawahidenao/entry-10846575572.html

田中康夫氏もツイッターで日銀の国債引き受けで100兆円を確保するように提言してます。

日銀引き受けで100兆円規模の震災復興債を発行すべき。後藤新平に倣って震災復興院を創設し、共産党をも含む救国内閣で対処すべき。畏友・桜井勝延氏が市長を務め、壊滅地域を有する南相馬市を始めとする基礎自治体に総務省、国交省、厚労省、文科省、農水省から職員を派遣すべし。鈍感力の官邸。

                    田中康夫

これだけの国家の非常時に、日銀からお金を引き出して何が悪いのか!もしかして、今の政府は戦争になっても、財政が厳しいから増税しないと戦費は出せませんと言い出すのではないだろうか。

日銀の国債引き受けに賛成の人のリストを作りましょう!情報がありましたらお知らせ下さい。

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