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2011年4月11日 (月)

原発事故の後、長期立ち入り禁止となる地域(No.64)

本日(4月11日)政府は飯舘村に計画的な避難を要請した。何の説明もないとの反発が地元にある。そこで、政府が何を考えているかのヒントとすべく、飯舘村(飯舘村役場)の放射能レベルを以下に示す。これは原発から北西40kmの距離にあり
http://www.pref.fukushima.jp/j/20-50km42.pdf
より引用した。ついでに南南西40kmにあるいわき市中央台北小学校の放射能レベルも示した。

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すぐ分かることは、同じ40km地点でありながら、極端に放射能レベルが違うことだ。原発が放射性物質を出した当日の風が飯舘村に向かったことを示している。いわき市は放射能レベルが低く安全ということになるが、飯舘村は高い。だんだん下がっているがこれからどうなるのだろうか。半減期はヨウ素131は半減期が8日、セシウム137は30年であり、1年後くらいであれば、ヨウ素は消え、セシウムはそのまま残ると考えて良い。飯舘村の放射能レベルは3月24日に12.8μSv/h、4月9日に5.76μSv/hだからもしも、放射能がヨウ素とセシウムだけから来るとすると簡単な計算より、暫く後にはヨウ素が消え、放射能レベルが3.4μSv/hに落ち着くだろうことが予想される。これは年間約30ミリシーベルトということになる。

国際放射線防護委員会が緊急時の被ばくについて、20~100ミリシーベルト以内と定めているのを踏まえて飯舘村は20ミリシーベルトを超えているから避難せよと言っているのだろう。そうであれば、20ミリシーベルトを下回らないと帰って来れないということだ。半減期30年で計算すると返って来れるのは約18年後ということになる。

20km圏内であれば、もっと放射能レベルが高い地点があるだろうし、そんな所は立ち入り禁止期間はずっと長くなるだろうし、原発そのものは、ほぼ半永久的に長時間の立ち入りは禁止されることになるだろう。もちろん、この仮説には様々な仮定がなされている。これだけ重要な事柄だから、もっと精緻な計算が必要なことはもちろんである。

①これは更なる放射能の放出は無いと仮定してあるが、更に放射能漏れが拡大するなら避難期間はもっと長くなる。

②放射能に汚染されていない土を上にかぶせれば放射能レベルは落ちる。

③年間20ミリシーベルトなら危険という証拠があるのだろうか。世界の放射線の専門家で作る「国際放射線防護委員会(ICRP)」によると、放射線を全身に一度に浴びると、がんなどで死ぬ危険は1000ミリ・シーベルトあたり5%高まる。簡単な比例計算なら、20ミリシーベルトであった場合、0.1%ということになるが、人間の場合放射線で破壊されたDNAを修復する機能があり、全く健康被害は無い可能性もある。一方たばこの場合はがん等で死ぬ確率が数十パーセント増やすから、たばこよりは桁違いに安全と言える。近くにたばこを吸っている人がいても避難命令は出さないのに、それよりずっと安全なレベルの放射線でなぜ避難させるのか理解できない。

④チェルノブイリの場合強制避難ゾーン40キュリー/平方km以上となっている。40キュリー/平方kmは私の計算では、およそ1600マイクロシーベルト/時にあたる。政府が考えている基準よりはるかに緩やかであり、これにより引き起こされた健康被害と比べる必要がある。避難させれば、そのことで大きな健康被害をもたらすことはよく知られている。避難の途中で死ぬ人も多い。避難所の環境が悪いために東日本大震災関連だけで282人が死亡したとされている。飯舘村の人がそのまま留まったとして、どれだけの人が死ぬかの予測とその根拠を明らかにすべきだ。避難のメリットとディメリットを比較して、メリットのほうが、ディメリットよりはるかに大きい場合のみ避難させるべきだ。薬の副作用も同様な考えだろう。

⑤多くの住民を半永久的に避難させるということは、日本の領土の一部を事実上失うことに等しい。そのような国家の非常事態に、現政権の対策は余りにもお粗末だ。チェルノブイリの場合、国家予算の20%がその事故対策に使われ、事故処理に86万人が従事したとこと。日本政府は今回の事故を東電に任せきりで、責任を果たしていない。少なくとも数千人を直ちに事故対応に派遣すべきだ。放射能の高い地点でも、リレー型式でひんぱんに交替させれば、作業は可能だ。放射能に汚染された水を低レベルのものは海に捨て国際的な非難を浴びた。タンカーに入れるべきだった。多数のバージ船を使いピストン輸送をすれば運べたはずだ。原子炉に大量の水をホースでかけ始めたときから、大量の放射能に汚染された水が出ることは分かっていたはずで、直ちに対策を始めれば間に合ったはずだ。予算が無いといいたいのだろうが、国家の非常時なのだから、日銀の国債引き受けで緊急に資金を確保し、国が総力を挙げてこの事故に対応すべきである。

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コメント

マスコミはとにかく国民の危機意識をあおる報道ばかりです。
国家財政についても同じように、財政破綻、増税、公務員給与削減などを
キャンペーンするばかりです。原発=危険ではなく、原発が危険で反対なら、
首都圏の電力確保の対案をしめしてもらいたい。対案なく、原発の危険性のみ
言うのは小学生と同じではないか。私は素人で、詳しいことはわからないが、
専門家のみなさんノウハウを示してください。そして、お金がかかるもので
あっても、お金を刷ればよいだけのことだから、政府はその政策を実行すべきです。
国債を日銀が引き受ければ、国民の信頼が低下するというたわごとを言っていますが、
予算がないとは言わせませんよ。

投稿: | 2011年4月11日 (月) 19時30分

対案は必要ありません。

原発を建設するときには、原発の発電量と同じだけの火力発電所、水力発電所をバックアップとして保持しています。
原発を全廃しても、我が国の電力供給力は全く低下しません。

しかし、今回の大震災は非常に大規模でバックアップの発電所まで大きな被害を受けました。
今回の原発事故で節電が呼びかけられているのは、原発事故で電力供給が減ったからではありません。バックアップの発電所が復旧していないか、活用していないからです。

現時点でも、原発を全期廃棄してもエネルギー供給については誰も困りません。

原発は、ただ止めれば良いだけです。

投稿: S | 2011年4月12日 (火) 09時35分

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