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2011年4月28日 (木)

日銀の国債引き受けに問題はあるのか(No.69)

東日本大震災から復旧・復興をするには大規模な補正予算が必要となります。今回の大震災に対する復旧・復興で必要とする費用が20兆円~50兆円と言われ、財源を増税に頼ると1人当たり20万円~50万円にもなり、デフレが続く日本経済に深刻な悪影響を与えることは間違いなく、復旧・復興どころではなくなります。

それに対して日銀の国債引き受けを行えば、すみやかに復興のための十分な財源は確保できるだけでなく、デフレ脱却も可能となります。なぜ反対意見があるのでしょう。

①円の信認が失われるのか。

4月12日の参議院財務金融委員会で白川日銀総裁は、円の信認が失われるとは

(a)インフレになる(b)円での支払いができなくなる

ことであると発言しています。インフレになるとは、デフレ脱却が可能になるということであり、歓迎すべきことです。むしろなぜ日銀は十数年間もデフレを放置していたのか厳しく追求すべきです。ハイパーインフレになるというなら、それを止めるのが日銀の役割であり、それができないなら日銀の総裁・理事は全員辞めていただき、それを阻止できる人たちに交替していただけばよいだけです。

日銀引き受けで円の支払いが出来なくなるのでしょうか。どこの銀行、あるいはどこのお店が円を受け取らなくなるのか、白川総裁に調べていただくのがよいのではないでしょうか。ハイパーインフレが起きたドイツ、オーストリア、ブラジル等ですら、自国通貨での支払いが不能になっておりません。

国債引き受けで円売り(日本売り?)が進むという人がいますが、サミュエルソンも言っていたように、不況に苦しむ日本にとって円安はよいことです。

②国債が暴落するのか。

国債価格は需要と供給の関係で決まるのであり。国債の買い手が増えれば国債価格は上がります。その意味で、日銀が国債を買えば直ちに、国債が暴落するということはあり得ないことです。金融機関にとって、国債は満期には元本と金利が確実に受け取れるのに、莫大な損失を覚悟して低価格で国債を売って、現金に換えることにメリットがあるのでしょうか。金融機関が保有する500兆円の国債が一斉に売りに出されたとしても、買い手がありませんし、真っ先に売り出そうとした金融機関は、その後政府からどのような扱いを受けるかよく理解していますから、金融機関にとって売り逃げをするという選択肢はありません。

もちろん、日銀が国債を買い、その結果インフレ率が上昇し、デフレ脱却が可能となり景気がよくなったときは、当然経営者マインドが改善し、投資意欲が上がり資金需要が出てきます。そうなれば、少々高めの金利を払っても融資を受けて事業拡大をする経営者が増えますので、金利が上がってきますが、それは大変歓迎すべきことで、それを否定していては日本の未来はありません。

その時、国債価格が下がり、国債を保有する金融機関に多大な損失が生じることを恐れるのであれば、金融機関の保有する国債を変動金利付きのものに交換しておくことも対策の1つとして考えるべきでしょう。インフレ率が上がったとき、金利も上がるのであれば、暴落はありません。

③日銀が国債を買うことを国際社会が認めないか。

不況脱却のために中央銀行が国債等を購入することは、どこの国でも行っていることです。

3月16日、フランスのラガルド経済大臣は、日本の復興支援をするためにG7に対し日本国債を協調して買うことを提案しました。外国に買ってもらうと円高になり輸出産業に打撃になりますが、日銀が買えば円安になり一挙両得です。4月20日にOECDは日本銀行に対し、長期国債の購入を増やして金利を下げることと、インフレ目標を2±1%にしたらよいのではないかと提案しています。これらの発言からも、日銀が国債を買うことを国際社会が認めないということはあり得ません。

④国債発行が将来世代へのツケになるのではないか。財政赤字が巨額でEU加盟条件も満たしていないのではないか。

デフレ、大震災などの経済危機に対しては、一時的に財政赤字を拡大して危機を克復することは認められています。実際ドイツやフランスなども財政赤字の上限であるGDPの3%をリーマンショック後には超えています。

内閣府や様々なシンクタンクの行った試算でも、国債を追加発行して景気を刺激したときは、国の借金も増えますが、GDPも増えます。その増加率を考えると借金の増加率よりGDPの増加率のほうが、ずっと大きくなっています。このことは借金のGDP比は減少するということで、将来世代へのツケは減るということです。一時的に財政赤字を増やしても、景気が良くなれば、税収も増えてきて財政赤字も減ってきます。

逆に増税や歳出削減は、借金だけでなくGDPも減らし、結果として将来世代へのツケを増やしてしまい、いつまで経っても財政赤字は減りません。

⑤国債の直接引き受けでなく、市場から日銀が買うのではいけないか。

もちろん、日銀が市場から買えば事実上同じ事ですから問題ありません。しかし、白川総裁は国債を買えばハイパーインフレになるなどと発言し買いオペを拒否しており、事実上デフレから脱却させる努力をしておりません。本来なら日銀法を改正し、デフレ脱却に対して日銀が責任を持つような制度に変えるべきでしょうが、大震災で打撃を受けた日本にとって、そのような時間的余裕はありません。そうであれば、国会の議決で日銀は国債を引き受けるべしと決議すべきです。日銀法第4条では、日銀は政府の経済政策の基本方針と整合的でなければならないとありますので、引き受けを拒否しないと思いますが、万一それでも日銀が非協力的であれば、日銀法改正をすべきだと考えます。

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コメント

>本来なら日銀法を改正し、デフレ脱却に対して日銀が責任を持つような制度に変えるべき

ということは、政治が怠けて続けてきた現状ではデフレ脱却に対して日銀は責任がないのでは?

投稿: あれ? | 2011年4月28日 (木) 13時30分

>日本の復興支援をするためにG7に対し日本国債を協調して買うことを提案しました。外国に買ってもらうと円高になり輸出産業に打撃になりますが、日銀が買えば円安になり一挙両得です。


また、外国が買うと、
万一の場合(例えば、浜岡原発、また、東京直下型地震等で、首都圏が壊滅的な状況に立ち入って経済も含め日本が麻痺した場合等)、
売り浴びせの玉にもなりかねません。

国際金融資本家は、助けるどころか、ここぞとばかり売り浴びせする事は十二分に考えられる。
(アジア通貨危機を顧みれば十二分に予想されます。)

その後、安値で乗っ取り

投稿: 星空 | 2011年4月28日 (木) 14時14分

浜岡原発、また、東京直下型地震等で、首都圏が壊滅的な状況に立ち入って経済も含め日本が麻痺した場合等

先とは逆に、国際金融資本家が世界大恐慌を望まなければ、そういう事態にはは為らないかもしれません。

投稿: 星空 | 2011年4月28日 (木) 14時25分

ヤフー知恵袋とかを見ますと、
ハイパーインフレになるとか ?
ギリシャのようになるとか ?
を言うのは例外なく経済の素人です。
白川総裁は2つも当てはまるので、
根拠無き不安だけで金融政策を行っているとしか思えません。
世界一の供給過剰の日本がなぜインフレに ?
世界一の金持ちの日本が、
外国から借金して外国商品を浪費していたギリシャと一緒になるのか ?
経済の素人意外には思い浮かばない発想です。
白川総裁を非難するのも良いのですが、
それ以前の人材だと思います。
もっと専門知識の有る人が総裁になるべきです。
国として恥ずかしい。

投稿: inadak | 2011年4月29日 (金) 11時18分

「拒食症の患者が肥満を恐れて食べ物の摂取を拒否すると、
更に病状は悪化する。」
まさに白川そのもの !!!
山本議員あたりが白川に言えば良いんですね。

投稿: inadak | 2011年4月29日 (金) 11時28分

>拒食症の患者が肥満を恐れて食べ物の摂取を拒否する

良い例えですね。この言い方、使わせて下さい。

投稿: S | 2011年4月29日 (金) 13時14分

震災復興のための補正予算大いに結構ですが、その反面増税、高速無料化中止など、
決して余裕のない国民生活を犠牲にするという姿勢。拒食症患者にさらに栄養補給
させないといっしょです。休日千円の高速道路や授業料無料かなど、国民が
ささやkであるが、民主党に期待したものである。国民へのしわ寄せをやめてもらいたい。国債日銀引き受けで国民の悩みは全て解決できる!!
政府はこの不況時の国民のささやかさを考えろ。
増税、高速、子供手当、授業料の無料化廃止反対しろ。!!

投稿: | 2011年4月29日 (金) 16時48分

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