終戦直後の電力不足は、大規模財政出動で乗り切った(No.93)
稼働中の浜松原発を止め、地元が苦渋の決断の末、再稼動を容認しかけていた玄海原発もストレステスト導入とやらでストップを掛け、地元と調整を続けてきた経産相・海江田万里は二階に上がってはしごを外された。政権延命を狙い原発を全部止めてしまう勢いの菅首相だ。現在の日本の電力の約3割は原子力なのだから、一気に止めてしまうのは無理がある。原子力の発電能力は4884万kWであるが、菅首相は企業の持っている自家発電設備を活用すれば、原発分を補充できると思っていたようだが、実際調べさせてみたら116万kWしかなく、遠く及ばなかった。
このような国民生活にも経済にも重大な影響を及ぼす決定を、政権延命に使った菅首相に怒りを覚える。果たして電力不足は乗り切れるのか。停止中の火力発電を再稼動することによって原発分を補充できたとしても次のような問題が残る。
① 燃料代で年間3兆円が余分にかかり、それによって電気代が値上げになれば、それは増税と同じで、デフレで苦しむ日本経済を更に落ち込ませる。
② 原油は中東に頼っており、紛争多発地点であるだけに、リスクは大きくなる。
③ 現在のように、政府が電力確保に不熱心であり、電力供給が不安定でしかも値上げが目前となれば、多くの企業が海外に流出してしまう。実際日経新聞社の調査では、3年以内に何らかの機能を海外へ移転せざるを得ないとしているのが調査した企業の約4割だったという。
どうすればよいかと言えば、ストレステストは諸外国のように、原発を稼働させながらやればよいだけだ。テストの有効性も危険性も変わらない。原発は止めれば地震があっても、津波が来ても安全というわけではない。動かしながらテストしても危険性は同じだから、諸外国どこでもそうしているように、動かしながらやればよいのだ。それをわざわざ止めたのは、如何にも安全に気を配っているのだと菅総理が自己主張し人気を挽回しようと悪あがきをしているにすぎない。そんなもののために日本経済をぶち壊されてはたまらない。
電力不足は終戦直後にもあった。
空襲で焼け野原になったのだから仕方がない。このとき政府は金が無かったし、国民も金を持っていなかったから増税もできなかった。しかし、戦後復興のためには電気・石炭・鉄鋼の緊急確保は必須であった。そこで国債を日銀に引き受けさせて資金を調達し、国の発展の基礎となる産業に集中的に投資をし、奇跡的といわれる経済復興に導いた。
もちろん、飢えに苦しむほどの深刻な物不足の時代に大規模に国債を発行し日銀に引き受けさせたのだから、インフレになった。しかし、物価は上がったが収入の増加はそれよりはるかに大きかったから、国民は物をより多く入手できるようになり、生活は大幅に改善したのだから「被害」は無かったと言えるのではないか。単純にインフレは悪と決めつけてよいのだろうか。
現在はデフレで物価が下がる。しかし、収入はそれ以上に下がっていて、生活はどんどん苦しくなっている。だからこそデフレは悪と言える。もしも、終戦直後国債を日銀に引き受けさせず、増税に頼ったら、デフレとなり、電力・石炭・鉄鋼等は確保できず、生活はどんどん悪化していっただろう。インフレは抑えられたかもしれないが、おびただしい数の餓死者が出ただろう。この方が良かったと主張する人がいるだろうか。
戦後の国債発行は何か問題があっただろうか。円の信認は落ちなかったし、インフレも次のグラフで示されるように、基幹産業の育成が終わったときに、ピタリ止めることができたわけで、制御不能のインフレにはならず、奇跡の経済復興へと導いた。
将来へのツケが残ったかと言えば残らなかった。それはGNPが増加したから、債務のGNP比は次の図のように減少していった。
現在の状況で違うのは、デフレで物余りの時代だということだ。日銀による国債引受を行ってもゆるやかなインフレしか起こらない。それにより獲得した資金(50兆円×5年)で電力不足を補い、震災復興を行い、デフレ脱却のための数々の政策を行えばよい。そうすると
①震災復興
②電力の確保
③デフレ脱却
④国の債務のGDP比の減少
が同時に達成される。
電力に関しては、少なくともある程度原発の早期の再稼動は必要になる。
①諸外国のように稼働しながらストレステストを行えばよい。
②安全確保のために、地震対策・津波対策は十分過ぎるほど行えばよい。
③風力・波力・太陽光・地熱発電等に大規模に投資
④スマートグリッドの整備
⑤福島原発事故の処理と補償は、国が肩代わりをして行い、電気料金の値上げをさせない。
福島原発事故の処理が遅すぎる。限られた予算内で行おうとしているから、どうしても遅れる。十分な予算をつければ、一気に処理が進む。
①原発から出た汚染水を浄化する装置を並列に何台も並べ、一気に汚染水処理をやるとよい。
②人海戦術で放射能汚染された瓦礫の処理をする。福島第一原発の近くの土地を国が買い上げ、穴を掘り、防水処理をした後、瓦礫を埋めるべきだ。
③放射能汚染された全地域で除染を行う。5~10cm程度表面の土をはがし、穴を掘って埋め、その上に土をかぶせる。チェルノブイリでは事故後8ヶ月間で約500町村の除染が行われたという。
http://www.asyura2.com/11/genpatu13/msg/599.html
建物などは高圧の洗浄機で洗う。除染は早ければ早いほどよい。遅れれば、汚染牛等様々な問題が次々起き、被害が拡大する。
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