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2011年8月 7日 (日)

消費税を上げるとGDPが減少し、累積赤字が増える(1)(No.94)

 (これは景気循環学会会員  松浦 昇 氏による投稿です。)

足下での日本政府の累積債務と名目GDPは 951兆円と479兆円で、比率を取ると199%、約2倍です。是だけ見ると日本の財政の現状は、あのギリシャよりずっと悪い。

 そこで、「このままではパンクして金利が急騰し、ハイパーインフレが来る。これを防ぐには、みんなが我慢して消費税を先ず10%に引き上げ、其の先も更に引き上げて、急いで借金を返すしかない。」と言う話を、新聞やテレビが一斉に流して洗脳した結果、世論調査をすると過半数の国民が、「消費税引き上げは止むを得ない」と思い込んで居るのが現状です。(日本人は本当に素直で、まじめな人々だと思います)

 ところが「みんなが少し我慢して、消費税を10%、15%へと引き上げる」と、本当に累積債務/GDPの比率が下がって財政状況が健全化すれば良いのですが、困ったことに、そうは成りません。家計の健全化と国家財政の健全化は本質的に違うからです。

何処が違うかと言うと、家計では支出と収入は独立して居て、支出を減らしても収入は変わらないから、支出を減らしただけ債務が減ります。ところが国家財政では、(正味)財政支出を削減するとGDPが減少して、税収も大きく減るからです。だから、消費税を引き上げて歳入だけを増やすと、肝心のGDPは其の額以上に減って、累積債務/名目GDP比の分母が小さくなって比率が悪化するだけでなく、GDPが減ると消費税以外の税収(所得税や法人税など)も大きく減って歳入が落ち込むから、翌年度には借金を返すどころか、今年よりもっと沢山の赤字国債を出さないと、予算が編成出来なくなります。

従って、日本の財政状況を「年収400万の家計で、借金が790万円あるのと同じだから云々」と描写するのは、上で説明した「家計と国家財政の根本的違い」を故意に無視して、世論を自分たちに都合の良い方に誘導する、悪質なデマ宣伝です。もし自分たちも、本当にそのように信じて居るなら、是は恐るべき無知・不勉強と言わざるを得ません。

 以上は簡単な算術の問題ですが、此の「基本的な思い違いが招いた大失敗」には身近な先例があります。それは1997年に橋本内閣が実行した「行財政の抜本的構造改革」と、その後の日本のGDPや税収と、国家債務累積の推移です。

1.橋本行財政改革の大失敗

 橋本龍太郎と言う人は大変な勉強家で度胸もあり、「財政通」と言われて居ました。其の彼が1997年の解散・総選挙に勝利し、「政治主導による抜本的行財政再建」を掲げて、「行政改革」「財政構造改革」「金融システム改革」「経済構造改革」「社会保障改革」「教育改革」などを断行したのですが、この中で特に経済と財政に大きく影響したのは「財政構造改革」でした。その中身は「直間比率是正」と称した、「所得税率上限の40%への引き下げ」と、税収面で此の減収を補う「消費税の2%引き上げ」及び、公共事業費削減、社会保障費を賄う各種保険料引き上げなどによる財政支出の圧縮でした。

 ところが同時に強行した金融機関の不良債権の即時処理の結果として、幾つかの大手金融機関が破綻した「金融危機」が重なって、98,99年には急激な景気後退に見舞われ、橋本政権は退陣を余儀なくされて、橋本行財政改革が完全に間違いだったことが明らかになりました。

941

表1で見ても1998 1999 はマイナス成長でGDPが下がり、税収が減って公債発行額が急増しました。ところが2000 年には各指標が大きく改善しましたが、これは 1999 年に橋本内閣が総辞職した後を継いだ小渕首相が「2兔は追わず」と宣言し、国債を追加発行して財政支出を増やし、景気回復に専念した結果です。この時の公債発行額は、前年までのGDP低下の結果である税収減少の尻ぬぐいに必要な34兆円に、僅か3.5兆円を上乗せした37.5兆でした。

 しかし 2000 年に小渕首相が急逝すると、後を継いだ森内閣も小泉内閣も(財務省好みの)歳出削減一点張りの(所謂)財政再建型に戻り、GDPは伸びず、税収は減って累積債務は増え続けました。

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経済・政治・国際」カテゴリの記事

コメント

マイケル・ムーア「米国は破産なんてしてない」 ウィスコンシン州労働デモで演説
http://democracynow.jp/video/20110307-4

米国は破産などしておらず、数百人が人口の半分を合計した以上の富が、まともに税金も払わないわずか四百人の「ムバラク」の手中にある米国の社会構造そのものが問題だと明解に指摘し、「まともな仕事⇒まともな給与⇒生活のための消費⇒雇用」という実経済の循環を再建すること、「若い世代のための教育⇒新しい発想⇒起業・雇用促進⇒税収増」という財政の基本を取り戻すことこそが求められている、と力強く呼びかけます。(斉木)


国際金融資本家の歴史、ダイジェスト
↓↓↓
http://www.youtube.com/user/hosizorajp?feature=mhum#p/c/8041E95EC625633E/13/lyMC3V2f2pI


国際金融資本家の手先財務省の圧力
↓↓↓
http://www.youtube.com/user/hosizorajp?feature=mhum#p/a/f/0/B_Y0iRh3jrk


国際金融資本家のシナリオは、
日本を弱体化して、徐々に日本乗っ取り、
最終的には、FRB同様日銀も乗っ取り計画か!?

投稿: | 2011年8月 7日 (日) 15時59分

 どうも。higashiyamato1979でございます。暑い日々が続いておりますが小野先生をはじめ日本経済復活の会の皆様、並びに貴ブログを閲覧されているユーザーの皆様、どうぞご自愛くださいませ。
 さて、本エントリーも日本の経済政策について大変わかりやすくまとまっています。我が国にはこうした「本当の事」を淡々と語るメディアが最近は増えつつあるとはいえまだまだ発展途上です。しかし、発展途上だからこそ成長の余地が十二分にあり、メディアに大変革を起こすことが可能なのです。そしてそうなった時、日本は覇権国に成るべく人類史上前例の無い「超」大規模な積極財政に邁進していることでしょう。
 それでは決まり文句! お金が無ければ刷りなさい!労働はロボットに!人間は貴族に!

投稿: higashiyamato1979 | 2011年8月 7日 (日) 18時41分


まっとうな理論で考える日本経済
「政府紙幣発行で財政再建可能」のウソ 國枝 繁樹
 【http://business.nikkeibp.co.jp/article/life/20110726/221685/?P=1

sign03
という、馬鹿げた、日経ビジネス記事


さすが、プロパガンダの専門家ですね、
「まっとうな理論で考える日本経済」wwと、のっけから、上手いですねww

記事引用

ポイント

•日銀の通貨発行益は、通常の状態では貨幣需要側に制約される。流動性の罠の下でも、金利が非常に低いため重要な財源とならない。

•政府紙幣は、発行時には利益を確保できても、流動性の罠からの脱出の際の政府紙幣回収に伴い損失が発生するため、中長期的に重要な財源とはならない。

記事引用以上


記事にポイントとして、2点記されていますが、

●そもそも、日銀の通貨発行益を財源と考えている事じたい馬鹿げていますね!w

●政府紙幣を回収に伴い損失が発生するため、と
あたかも回収しなければならない物のように書かれていますが、
これも馬鹿げていますね!w


しかし、日経ビジネスという名前に騙されるインテリも多いのでしょうね!w


政府貨幣発行権を考える 2
↓↓↓
http://www.youtube.com/user/hosizorajp?feature=mhum#p/c/8041E95EC625633E/3/aPMGS2V3dHw


小野会長へ、財務省及びプロパガンダとしての日経の圧力
↓↓↓
http://www.youtube.com/user/hosizorajp?feature=mhee#p/a/f/0/B_Y0iRh3jrk

投稿: | 2011年8月 7日 (日) 21時04分


菅総理の異常な地位執着心が、米国のジャパンハンドリングに利用されている
http://blogs.yahoo.co.jp/hisa_yamamot/25956556.html

記事結論

当面、彼らは菅総理、財務官僚、日銀幹部を筆頭に、悪徳ペンタゴン日本人をフルに活用するでしょう。

 われら国民は、日本の中枢に、日本国民より米国国益を優先する輩が跋扈していることに気付く必要に迫られています。


投稿: | 2011年8月 8日 (月) 15時08分

10円円高になると日経平均は1100円下がる現実を見よ--米国債格付け引き下げより深刻な、政府・日銀の「自国窮乏化政策」
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/15094?page=4

記事より

日本株価がドル建てで米国株価と同じ動きということは、円高になればなるほど日本株価は下がるということになる。このデータからは、10円円高になると、日経平均で1100円程度下がることがわかる

日本はもう金融緩和は打ち止め、一方、米国はQE3まで視野に入っているとなると、円高基調は続き、株価はさえなくなるという見通しにならざるをえない。


円の過小供給は「自国窮乏化政策」


 自国通貨を安くする政策はこれまでいろいろな国で採用されているが、その理由は自国にとってプラスがあるからだ。それは近隣窮乏化政策とも言われるが、それは他国がやったときに非難する言葉で、自国向けにはいわない。なお、近隣窮乏化といわれるが、過度に自国通貨安にすると酷いインフレになる。失業率が低いマイルドインフレになる程度の自国通貨安は、結局隣国の輸出にもプラスで、自国も隣国も「WIN-WIN関係」になることが、国際経済学で知られている。
sign03
 こうして考えてみると、日本のように、円を過小供給にして円高にしているのは自国窮乏化であって、なんと愚かな政策なのか。

 本コラムの読者であれば、円高とデフレが表裏一体のものであることを理解しているだろう。円とドルとの相対量で円のほうが過小でドルのほうが過大であれば、相対的に多いドルの価値が安くなってドル安・円高になる。また、円とモノとの相対量で円のほうが過小でモノのほうが過大であれば、相対的に多いモノの価値が安くなってデフレだ。円高もデフレも円の相対量が少ないことによって起こる現象だ。

 量的緩和でも日銀引受でも何でもいいが、円の過小供給を少し緩和すれば、円高やデフレも解消できるのに、無策の政府・日銀で国民は不幸になっている。

投稿: | 2011年8月 8日 (月) 20時27分

今朝のフジテレビめざましテレビで評論家の方(名前は忘れました)が増税よりも日銀引気受けで資金調達
すべきと言っていましたよ・・・
テレビでもこういう発言者が出ていますね。

投稿: | 2011年8月 8日 (月) 20時54分


sign03
実際に起こった、過去の歴史も述べられており、
説得力があり、大変解り易いです!

『悲劇の歴史を繰り返すつもりか!』小野盛司 AJER2011.8.8(2)
↓↓↓
http://www.youtube.com/user/hosizorajp?feature=mhee#p/f/12/u-eqBk4XG2k

出でよ高橋是清

投稿: | 2011年8月 9日 (火) 15時55分


http://quasimoto.exblog.jp/15250549/

記事一部

我々日本人の一般人は、あたかもそれが自分の自由意志の結果そういう判断を下していると思っている。しかしながら、もしそういうあなたの心情の変化がすでに何かに記載された事柄のスケジュールになっていたとしたら、これについてあなたはどう思うだろうか?

投稿: | 2011年8月 9日 (火) 19時23分

増税しても、
それを政府が社会保障などに
「政府支出」として正しく使えば
GDPは変わらないのではないですか?
「政府が正しく使えば」を敢えてカットして説明していませんか?

私は国債を刷るな、と言ってる訳ではありません。

投稿: | 2011年8月10日 (水) 22時20分

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