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2011年9月

2011年9月26日 (月)

電力供給の将来を考える(No.100)

いきなり脱原発を言い出して混乱を招いた菅政権だったが、野田政権は脱原発という言葉を控えているようなので、ひとまず急激な電力不足の回避に向かうのではないかと期待される。とは言ってもやはり日本の将来を考える上で、電力の安定供給の問題は避けて通れない。

ここで注目されているのがシェールガスで、技術革新のお陰で価格が3分の1に急落、米国で供給がだぶついているとのこと。これを輸入して発電すれば、原発より安い電力が供給されるという。
http://sankei.jp.msn.com/life/news/110915/trd11091520580019-n1.htm
米国からの輸入を可能にしようと米国との交渉で活躍しているのが、なんと、かつて日本経済復活の会の幹事長であった牧野聖修経済産業副大臣だ。米国による液化天然ガス(LNG)の対日輸出が2015年にも本格化しそうだとのこと。これにより電力料金の値上がりを少しでも抑えられたとしても、CO2排出量の削減はどうするのかということになる。

今年5月下旬にフランスで開かれた主要8カ国首脳会議(G8サミット)でも菅前首相は再生可能エネルギー重視の方針を表明し、温室効果ガス排出量を2020年までに90年比で25%削減する公約を維持すると述べた。原発をLNGに置きかえれば、もちろんCO2の排出量は増える。この公約が守れなかった場合、排出権を買うために巨額の支払いをするのだろうか。

日本経済復活の会では、発足した2003年から一貫して、景気対策として自然エネルギー開発に巨額投資するように提案してきた。最近になって政府はようやく自然エネルギー開発の重要性に気付いたようだが、巨額投資を行いそうにない。それどころか、投資をすればその費用は電気代に上乗せさせたいようだ。原発の場合、地元への補助金などは電気代に入れていない。地熱・風力・太陽光等の発電所の設置費用は国が「刷ったお金」で賄い、それを電気料金に上乗せしなくてもよいのではないか。それができないということであれば、そうでなくても割高の日本の電気料金は更に高くなり、国際競争力を失いつつある日本企業を更に弱体化してしまう。

ここは発想を転換して、電力の輸入の可能性を考えてはどうだろう。ロシア、韓国、中国、台湾からケーブルを引いて高圧直流電流で日本まで電気を持ってくる。これはヨーロッパと北アフリカと中東(EU-MENA地域)でやろうとしているデザーテックのアジア版だ。デザーテックでは、サハラ砂漠で太陽熱発電や風力発電で電力を生み出し、その電力を消費地に届ける。サハラ砂漠は1.7万k㎡だが、現在中国の国土の18%、約174万k㎡が砂漠化しているというから実にサハラ砂漠の100倍だ。また内モンゴルの風力発電所の総設備容量は350万キロワットに達しているそうだが、設備の3分の1は事実上放置されているという。中国全土では約500万キロワット分もの風力発電の設備が、送電網に電気を送っていない状態だそうだ。

日本で風力発電の設備を造ろうとすると、土地の確保が問題になるし、また洋上風力発電は地上よりコストが高い。現在急激に発電コストが下がりつつあり、将来は発電の中心になる可能性があるのは太陽光発電ではなく、太陽熱発電だ。これは太陽光を直接電気に変えるのでなく、太陽光を集めて水を蒸発させ、タービンを回し発電する。広い土地が必要で、砂漠での発電が最適である。

また、ロシアでLNGを使って発電し、それを日本まで送電することもできる。ロシア、中国、韓国、日本、台湾などを電線で繫いでおけば、例えば今回の大震災での計画停電も必要無かっただろうし、韓国の大停電も無かっただろう。電線で繫ぐと、スイッチを切られたとき国がマヒすると思う人がいるかもしれないが実際はその逆だ。全体を電線で繫いで余裕を持って送電していたら、中国からの送電が止まったときは、ロシアからの送電を増やせば良いだけ。台湾、中国、韓国、ロシアのすべての国が日本に対し経済封鎖を始めたときの備えをする必要があるだろうか。経済封鎖は自国の経済にも壊滅的な損害をもたらすことを忘れてはならない。現代の戦争に勝者はない。あらゆる危険を避けることを考えていたらデザーテック構想は不可能だろう。現在中東から原油を運んでいるが、その供給がストップする危険の方が、台湾、中国、韓国、ロシアのすべての国が日本に対し経済封鎖をしてくる危険よりはるかに大きい。

このような狭い国土で、CO2をたくさん排出して、化石燃料を燃やし、高い排出権料を支払い続ける必要が本当にあるのだろうか。そんなものを払うくらいなら、電線を引っ張って電力を輸入するという選択肢も考えた方がよいのではないか。直流電流を持ってくるなら関西も関東もない。

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2011年9月21日 (水)

通貨の信認が失われても高成長している国を見よ(No.99)

先日、ある国際会議からの招待を受けトルコのイスタンブールに行ってきました。トルコは通貨の信認が失われた典型的な国でしょう。通貨の信認が失われると経済が崩壊すると主張している方に、一度イスタンブール観光をお楽しみになるようお勧めいたします。東ローマ帝国の首都であった街に相応しく、風光明媚で活気のある街ですから、きっと満足頂けると思いますし、通貨の信認が失われても、経済が活性化しているということを肌で感じることができるに違いありません。

トルコの通貨はトルコリラですが、なぜトルコリラの信認は失われてしまったのでしょう。それは、政府が財政赤字を補うため、中央銀行による国債引受を大量に毎年行っていて、高いインフレ率が続いていたためです。日銀と日本政府がその気になれば、いつでも確実にこの方法でデフレ脱却でき、その額を調整すれば、お好みのインフレ率に持って行くことが可能です。

         出所:三菱UFJリサーチ&コンサルティング
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トルコでは通貨の信認低下のため、金利を高くしないと政府の国債は売れません。そういうわけで金利もインフレ率に連動して上昇しています。

                   出所:三菱UFJリサーチ&コンサルティング

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金利が上昇すると民間へはお金が流れなくなり、銀行は国債を買っていれば民間を相手にしなくても商売が成り立つわけです。資本市場から民間を閉め出すという意味でクラウディングアウトです。日本の場合は、ゼロ金利ですが、デフレであることを考慮すると、実質金利は高くなっていて、やはり銀行は民間への融資をしなくても、国債を買うだけで商売ができ、民間へ資金が流れなくなっています。そういう意味では実質的にクラウディングアウトは発生していると言えます。

トルコでは、2000年からIMFの改革プログラムを受けており、2005年1月には100万分の1にするデノミを行っています。2004年頃からはインフレ率は1桁台に下がってきました。それでも一度失われた通貨の信認は回復できていないようです。筆者は今月トルコに行ってきました。出国前に成田でトルコリラを買いましたら1トルコリラ=61円でした。両替所の人が、トルコリラが残った場合に、日本円に替えるとき非常にレートが悪いので、できるだけ両替の額を少なくするよう言われました。トルコに入って両替のレートを見ると1トルコリラ=43円になっていました。ホテルで宿泊料を払おうとしたら、ユーロで払う場合は109ユーロ(11554円)、トルコリラで払うときは16558円だということでした。トルコリラでの支払いの場合は割増料金を取ると言っていました。お土産物店でも、トルコリラで払うと高くなりますよと警告されました。

すべてトルコリラという通貨の信認が失われた結果でしょう。例えば、トルコリラとユーロを金庫の中にしまっていたら、トルコリラだけはインフレでどんどん価値が目減りして行ってしまうわけで、できるだけトルコリラは持っておきたくないと誰もが思っています。すぐに使いたくなるという点では経済活性化にとってはプラスです。日本はデフレで通貨の信認は盤石で、持っていればそれだけで価値が増す。だからタンス預金をしておけば十分で、お金が流れませんから、経済の停滞の決定的な原因になっています。

空港で新聞を無料で配っていたので、DAILY NEWS という新聞を入手しました。そこで産業大臣のNihat Ergun 氏 はトルコ経済の成長の源泉は個人消費であり、 トルコは中国に次いで世界で2番目の高成長を実現していると言い、稼いだ金は、できるだけ多く使うよう国民に呼びかけていました。

通貨の信認を守るために、日銀からお金を引き出さず、緊縮財政を続けた結果、GDPの減少に歯止めがかからず、円高で国内産業を破壊し、しかも国の借金をどんどん増やし続けている日本と、通貨の信認は無視し、積極財政で世界第2位の実質経済成長を実現し、国の借金もインフレで帳消しにしているトルコと、どちらが正しい経済政策と言えるのか、じっくり考えてみませんか。

もちろん、経済発展をすると、設備投資が進み、労働生産性が上昇し、国が豊かになるわけですが、日本とトルコの労働生産性の伸びを比較したグラフを参考までに以下に示します。

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2011年9月20日 (火)

日本のGDPは461兆円にまで下がった(No.98)

誰も言わないし、マスコミも報道しないのだが、つい最近まで500兆円を超えていると思っていた日本のGDPは、遂に461兆円まで下がってしまった。

                        出所:内閣府

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もともと、自民党時代の悪政のお陰で長年経済は停滞を続けた上、リーマンショックでGDPは大きく下がっていた。それでも麻生政権では強力な景気対策でGDPは上昇の気配はあった。しかし民主党政権ではその景気対策を止め、事業仕分けで次々と歳出削減を行ったため、GDPは再び急降下を始めてしまった。その結果2008年には520兆円近くにまでに達していたGDPは、何と461兆円にまで落ち込んでしまった。国の借金が増えていることに、日本中がため息をついているが、1000兆円の借金があっても、GDPが520兆円なら借金のGDP比は192%であるのに対し、GDPが461兆円ならGDP比は217%となる。何と25ポイントつまり11%もの違いがあるのだ。1000兆円の11%と言えば110兆円になる。デフレでGDPを11%減らしたということは、借金を110兆円増やしたことに相当するということ。110兆円の景気対策をやっていたら、今頃はGDPは600兆円を超していて、借金のGDP比は大きく下がっていた。

民主党の『新成長戦略』では、毎年3%成長を実現して、2020年までにGDPを650兆円にするというものだった。500兆円の3%は15兆円であり、約束通りなら、2年でこのグラフの上限を突破するはずだった。ところが実際はこの下限を割るほどの急激がGDPの落ち込みだ。これから震災の復興需要が期待できるものの、増税案が次々と出されており、消費マインド、経営者マインドを一気に冷やすのは悪材料だ。

それだけではない。ギリシャ等の欧州ソブリンリスクの高まりが金融危機に発展する可能性もある。アメリカも景気回復が遅れているのに、財政出動が議会の反対でできない。更に中国もインフレ率が高まり、景気刺激ができない。デフレに悩む日本こそが、大規模な景気対策を行えば、世界が大不況に陥るのを救える可能性もあるし、しかも日本の経済は急成長し、デフレ脱却、需要拡大、経済は活性化し、しかも国の借金のGDPも減らすことができるのだからこんなに素晴らしいことはない。しかし、民主党の緊縮財政政策は日本をどん底に突き落とす。次のグラフは2011年の予想実質経済成長率だ。こんなときに増税で更に成長率を下げようと言っている人の気が知れない。

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経済政策が成功し景気がよくなれば、株も上がる。株価の変動で、各政権の経済政策の評価ができる。朝日新聞よりその比較を引用する。

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過去14内閣で株を上げたのは4政権のみだ。そのうち安倍、小泉政権は世界経済が30年間で最も良い状態にあると言われた時期であり、貿易は約2倍に拡大しており、大変な追い風が吹いていた。それを考慮すると、このような僅かな上昇はむしろ失敗というべきだ。そういった中で、小渕政権だけは、株価を大きく押し上げていて、大成功と言える。もちろん、それはしっかり景気対策を行った成果であり、高く評価すべきである。小渕政策を続けていたら、日本経済は急拡大をし、国の借金の問題は自然消滅していただろう。小渕政権の経済政策を踏襲する政権の誕生が待たれる。

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