電力供給の将来を考える(No.100)
いきなり脱原発を言い出して混乱を招いた菅政権だったが、野田政権は脱原発という言葉を控えているようなので、ひとまず急激な電力不足の回避に向かうのではないかと期待される。とは言ってもやはり日本の将来を考える上で、電力の安定供給の問題は避けて通れない。
ここで注目されているのがシェールガスで、技術革新のお陰で価格が3分の1に急落、米国で供給がだぶついているとのこと。これを輸入して発電すれば、原発より安い電力が供給されるという。
http://sankei.jp.msn.com/life/news/110915/trd11091520580019-n1.htm
米国からの輸入を可能にしようと米国との交渉で活躍しているのが、なんと、かつて日本経済復活の会の幹事長であった牧野聖修経済産業副大臣だ。米国による液化天然ガス(LNG)の対日輸出が2015年にも本格化しそうだとのこと。これにより電力料金の値上がりを少しでも抑えられたとしても、CO2排出量の削減はどうするのかということになる。
今年5月下旬にフランスで開かれた主要8カ国首脳会議(G8サミット)でも菅前首相は再生可能エネルギー重視の方針を表明し、温室効果ガス排出量を2020年までに90年比で25%削減する公約を維持すると述べた。原発をLNGに置きかえれば、もちろんCO2の排出量は増える。この公約が守れなかった場合、排出権を買うために巨額の支払いをするのだろうか。
日本経済復活の会では、発足した2003年から一貫して、景気対策として自然エネルギー開発に巨額投資するように提案してきた。最近になって政府はようやく自然エネルギー開発の重要性に気付いたようだが、巨額投資を行いそうにない。それどころか、投資をすればその費用は電気代に上乗せさせたいようだ。原発の場合、地元への補助金などは電気代に入れていない。地熱・風力・太陽光等の発電所の設置費用は国が「刷ったお金」で賄い、それを電気料金に上乗せしなくてもよいのではないか。それができないということであれば、そうでなくても割高の日本の電気料金は更に高くなり、国際競争力を失いつつある日本企業を更に弱体化してしまう。
ここは発想を転換して、電力の輸入の可能性を考えてはどうだろう。ロシア、韓国、中国、台湾からケーブルを引いて高圧直流電流で日本まで電気を持ってくる。これはヨーロッパと北アフリカと中東(EU-MENA地域)でやろうとしているデザーテックのアジア版だ。デザーテックでは、サハラ砂漠で太陽熱発電や風力発電で電力を生み出し、その電力を消費地に届ける。サハラ砂漠は1.7万k㎡だが、現在中国の国土の18%、約174万k㎡が砂漠化しているというから実にサハラ砂漠の100倍だ。また内モンゴルの風力発電所の総設備容量は350万キロワットに達しているそうだが、設備の3分の1は事実上放置されているという。中国全土では約500万キロワット分もの風力発電の設備が、送電網に電気を送っていない状態だそうだ。
日本で風力発電の設備を造ろうとすると、土地の確保が問題になるし、また洋上風力発電は地上よりコストが高い。現在急激に発電コストが下がりつつあり、将来は発電の中心になる可能性があるのは太陽光発電ではなく、太陽熱発電だ。これは太陽光を直接電気に変えるのでなく、太陽光を集めて水を蒸発させ、タービンを回し発電する。広い土地が必要で、砂漠での発電が最適である。
また、ロシアでLNGを使って発電し、それを日本まで送電することもできる。ロシア、中国、韓国、日本、台湾などを電線で繫いでおけば、例えば今回の大震災での計画停電も必要無かっただろうし、韓国の大停電も無かっただろう。電線で繫ぐと、スイッチを切られたとき国がマヒすると思う人がいるかもしれないが実際はその逆だ。全体を電線で繫いで余裕を持って送電していたら、中国からの送電が止まったときは、ロシアからの送電を増やせば良いだけ。台湾、中国、韓国、ロシアのすべての国が日本に対し経済封鎖を始めたときの備えをする必要があるだろうか。経済封鎖は自国の経済にも壊滅的な損害をもたらすことを忘れてはならない。現代の戦争に勝者はない。あらゆる危険を避けることを考えていたらデザーテック構想は不可能だろう。現在中東から原油を運んでいるが、その供給がストップする危険の方が、台湾、中国、韓国、ロシアのすべての国が日本に対し経済封鎖をしてくる危険よりはるかに大きい。
このような狭い国土で、CO2をたくさん排出して、化石燃料を燃やし、高い排出権料を支払い続ける必要が本当にあるのだろうか。そんなものを払うくらいなら、電線を引っ張って電力を輸入するという選択肢も考えた方がよいのではないか。直流電流を持ってくるなら関西も関東もない。
| 固定リンク
| コメント (26)
| トラックバック (0)