破綻に向かう欧州大手銀行から学ぶこと:国債の下落を恐れるな(No.101)
フランスとベルギーに主な経営基盤を置く金融大手デクシアが、公的管理のもとで会社を解体し、事実上の破綻処理に入る見込みだと伝えられている。一部国有化することも検討されている。デクシアはギリシャなど債務問題にあえぐ国の国債を多く持っているため、国債の値下がりとデフォルトの恐れが強くなっているために信用不安が高まっているためだ。
そもそも国債はBIS規制において100%安全とされ、買えば買うほど銀行の経営は安定するとされていた。だから日本の銀行もせっせと買い増したという面もあり、それが日本の景気を悪化させ国債残高を果てしなく増やし、金融機関が競って国債を買うために、国民が銀行に預けたお金が投資に回らない結果、銀行貸出も大きく減少した。
これに対して、「昔が貸出が多すぎたんだよ」という人がいる。これは「日本は本来貧乏な国なのだから、昔が異常だったんだよ。これからどんどん貧乏にしていけばいい。それが日本の本来の姿だから」と主張しているのに等しい。我々は、日本を豊かにしようとしているのであり、こういった貧乏神に取り憑かれた人々とは一線を画す。
ところで国債は100%安全資産としているBIS規制に、本当に意味があったのか。もし本当に意味があったとすれば、デクシアの破綻や欧州の金融不安は無かったろう。なぜ100%安全な資産を抱えていて破綻するのか。国債はどんなに発行しても100%安全だというなら、復興増税などと言わずに、どんどん発行し続ければよいではないか。財務省のホームページにも国債はギリシャと違って100%安全だと言っている。
http://www.mof.go.jp/about_mof/other/other/rating/p140430.htm
野田総理、是非答えて欲しい。日本国債はどんなに発行しても100%安全なのか。イエスと答えるなら、「増税による返済」を考えず、どんどん発行すればよい。ノーと答えるなら、国債は将来紙くずになる可能性がありますと、国債を買ってもらう際に国民に納得させる必要がある。日本国債が100%安全ではなく、デフォルトになる可能性があるというなら、BIS規制も意味がないと宣言すべきだ。BIS規制のお陰で邦銀は随分苦しめられた。政府は、わざとBIS規制を厳格に解釈した。欧州金融危機を見ていると、BIS規制は無意味なのは明らかで、むしろ政府は銀行にBIS規制を逃れるトリックを教えるべきだった。
なぜ、政府が景気対策を怖がるか、日銀がデフレを持続させようとするのか。その理由は、デフレ脱却が可能となり、景気が良くなってくれば、インフレ率が上がる。それに連動して金利が上がってくる。平成21年の日銀の発表によれば、金利が1%上がれば大手銀行で2兆円、地方銀行で4.12兆円の損失が出るという。バタバタ銀行が破綻するようだと、金融不安が募り、連鎖倒産や取り付け騒ぎなどが起きかねない。今回の欧州の対応に倣って国が支援するとか、金融不安が起きる前に対応することなど、安全に万全を期しておけば問題は起きない。すべてはカネで解決する問題だ。カネは刷れば、(あるいは日銀から引き出せば)いくらでもカネは生まれる。国の指示に従って国債をせっせと買っていた銀行が国債価格の下落で経営が悪化したとしたら、それは銀行の責任ではなく、政府の責任だから、支援の義務は発生する。あるいは、国債が下落する前に金融機関の所有する国債を金利連動型の国債に替えてやるとか、金利が上がらないように、日銀が買い支えるとか、手段はある。恐れず、デフレ脱却政策を断行すべきだ。
デフレ脱却をしたために、ハイパーインフレになったらどうするかと悩む必要はない。インフレで生産設備が破壊されるわけでなく、物はあふれている。インフレ率に連動して収入も増え、1人当たりに分配される財・サービスの量は変わらない、というよりむしろデフレの時代よりカネの流れがスムーズになるから増える、つまり豊かになる。物価が100倍になっても、収入が105倍になれば、何も困らない。このとき間違いなく言えることは、国の借金は100分の1になることだ。将来世代へのツケは完全に消え、日本は再び成長軌道に乗る。
たくさんタンス預金をしていた人がいたとすれば、何の対策もしなかったら、100分の1の価値になってしまう。しかし、経済が成長していて、かなりのインフレ率が続いていた頃は、たいていの人はタンス預金でなく、定期預金や投資信託等、工夫して増やそうとしたはずだ。果たして増やすことに成功したのだろうか。過去のインフレ率を見ると
出所:総務省物価統計局
出所:日本銀行
物価が上がるにつれて、個人金融資産も増えている。どちらが早く上がるのかを知るには個人金融資産を物価指数で割ればよい。
これで分かるだろう。個人金融資産の伸びは物価の上昇率よりずっと速い。インフレになれば、資産がある人は損をするというのは嘘だと分かるだろう。インフレになれば、資産がある人は、そのインフレ率以上に資産を増やすというのが実態だ。
結論は、「インフレを恐れるな、インフレは国の債務という意味での将来世代へのツケを減らし、国民の資産を増やす」ということだ。
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