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2011年11月

2011年11月 9日 (水)

デフレの日本で、今後25年間も所得税増税をやろうというのか!!(No.104)

1997年には513兆円あったGDPが、昨年度には475兆円まで下がったという情けない日本経済。デフレ脱却を最優先にしなければならないはずだが、なんと民主、自民、公明の3党は今後25年間も所得税増税を行うことで合意した。呆れて物が言えない。25年と言えば、人生の3分の1。日本人の3分の1の人はこれからの人生は増税がずっと続くということ。給料が減り続ける一方で、国の借金がどんどん増え、国際社会の中での没落は目を覆うばかり。本当に日本をこのまま没落させてよいと思っているのか。

増税分は、震災復興に使われるという政府の説明をそのまま受け入れる人がいたら、お笑いだ。是非、別な政府の発表を見て頂きたい。これは内閣府のホームページに載っている。
http://www5.cao.go.jp/keizai3/econome/h22chuuchouki.pdf

                 内閣府『経済財政の中長期試算』

104

これは国の借金の利払いや償還に使われる国債費と税収との関係を示したものだ。これは2023年には、国債費が今回の増税分まで含めた税金の総額を上回るという政府の発表だ。つまり、我々の納めた税金はすべて、内外の金融機関に取られてしまい、震災復興にも福祉にも回らないということ。「震災復興のために国民がお金を出し合うのだ」と、よくも言えたものだ。この殺し文句にコロリを騙される日本人には困ったものだ。

10月31日に政府・日銀は為替介入を行った。その額は8~10兆円と言われている。これは財務省が行うのだが、財務省は為替の売買を行う店舗を持っていないので、日銀にお金を渡し、為替介入の委託をしている。およその事は日銀のホームページを見れば分かる。
日銀当座預金の増減
http://www3.boj.or.jp/market/jp/menuold.htm
2011年
  単位 兆円
10月25日  29.9
10月26日  30.1
10月27日  29.9
10月28日  30.4
10月31日  29.8
11月1日   29.5
11月2日   37.2
11月4日   38.1
11月7日   37.0
11月8日   37.0
ドル買い資金を財務省はどうやって入手するのかと言えば、まず政府が国庫短期証券なるものを発行し、それを日銀に引き受けてもらう。いわば国債の日銀引き受けだが、これは短期のものなので、国会の承認を得なくても自由に行える。短期とは3ヶ月の国債のようだ。その後、3ヶ月も経たないうちに、国庫短期証券を買い戻すためのお金が国庫から支払われる。つまりごく短期間だけ、日銀からお金を借りて為替介入をやってもらい、その代金は3ヶ月以内に国庫から支払うというもの。その額は、10月31日に行ったものだけで、今回の所得税増税25年間分である6.2兆円を大きく超える。復興増税は日本中で大議論をしたわけだが、為替介入の資金はどうやって入手したのか誰も議論しない。結局は、長期国債を発行し入手したお金だから確実に国の借金を増やしている。

過去の為替介入は
1993年4月2日~1993年9月7日  2.6兆円
1994年2月15日~1996年2月27日  8.6兆円
1999年1月12日~2000年4月3日   10.0兆円
2001年9月17日~2001年9月28日  3.1兆円
2002年5月22日~2002年6月28日  4.0兆円
2003年1月15日~2004年3月16日  35.1兆円
2010年9月                2.1兆円
2011年8月                4.5兆円
2011年10月               7兆円後半~10兆円
である。これらも、国の借金に積み上がっている。これも国の借金に加えて、国民1人当たりになおすとどうなるかを繰り返し発表する。しかし、ここで買ったドルは国の資産となるはずで、1人当たりの資産がいくらかも言わなければおかしい。

中国やスイスなど諸外国はこういった方法ではなく、中央銀行が直接ドル等を買って為替介入をしている。そうすると、刷ったお金で外貨を買うわけだから国の借金にならない。日本の財務省はわざと国の借金が多いように見せかけて増税を受け入れさせようとしている。どこまで日本国民を痛み付けるつもりだ。

デフレ時に増税をやろうとする政府には、デフレ脱却のための努力をしようとする気持ちはあるのだろうか。国民から借金してドルを買い、そのドルを韓国に通貨スワップでプレゼントした。韓国には恩を仇で返す風習があるようで、竹島に訪問客の安全管理などを目的とした現場管理事務所建設を計画しているという。それなら、通貨スワップは止めるぞと言うべきだ。それすら言えないようでは、TPP交渉などできるわけがない。

結論から言えば、復興増税などと言うが、実際は復興などといいう名目で増税をやっているだけだ。デフレで経済がこれだけ疲弊している今は、増税ではなく、減税が必要なときだ。大規模な財政出動をすれば、国の借金の問題も、円高も、デフレも一挙に片付く。

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2011年11月 4日 (金)

戦後の復興費用は誰が払ったか。(No.103)

戦後の復興費用は誰が払ったか。(No.103)

震災復興費用は誰が払うべきかで議論が行われている。その議論をする前に、戦後の復興費用は誰が払ったのかを調べてみよう。次のグラフを見て頂きたい。

図1                 出所:明治以降本邦主要経済統計、日銀統計局

1031

これで分かるように、終戦直後は現在と同じように国の借金はGNPの約2倍あった。当時、野田氏が総理であったなら復興増税で、経済はデフレで縮小し、焼け野原になった国土は放置され、国の借金のGNP比はどんどん増えていっただろう。しかし、当時の政府は逆に巨額の財政出動を行った。

図2               出所:明治以降本邦主要経済統計、日銀統計局

1032


これはすさまじい規模の財政出動である。1944年の新規国債発行額を今に換算すれば、約400兆円になる。2011年度第3次補正予算案は12兆円であり、これっぽっちのお金を復興増税で取り返そうという話しをしているのだから、お笑いだ。復興債を発行するのだが、その償還期間を10年にするのか、15年にするのか、60年にするのかでもめている。終戦当時は復興増税などはせずに、日銀に国債を引き受けさせたし、今でもそれをやれば大成功間違いなしだ。

これだけ借金を増やせば、さぞ次世代へのツケは増えただろうと思うかもしれない。しかし現実は逆だ。図1で分かるように、国の借金のGDP比は急激に減っていき、瞬く間に財政は健全化していった。要するに経済成長でGDPが増えたために債務のGDP比が減ったのだ。経済成長というよりインフレと言ったほうが、よいかもしれない。

図3               出所:明治以降本邦主要経済統計、日銀統計局

1033

図3は生産高の推移だ。米の生産は直ぐに増加したが、それ以外は元に戻るのに時間が掛かっている、債務のGDP比は、その前に激減している。つまり、国の借金はインフレで事実上消えてしまう。その逆も真なりで、国の借金はデフレでどんどん増え続ける。

つまり、復興費用を払ったのは現役世代でも次世代でもなく、インフレだった。当時は貧しかったけれど、どんどん豊かになっていくのが感じられたし、国の借金もみるみる減っていき、明日への希望が持てた。その点では、現代は増税で、どんどん貧乏になっていき、国の借金も増える一方、老後の生活への不安がつのる。日本人が希望を取り戻すには、大規模な景気対策を断行し、デフレから脱却し、経済を拡大していくしかない。

国債を国民が購入していたら、インフレで値下がりし、多大な損失を被ったに違いない。日銀引き受けなら、日銀が損をするだけで、日銀は破綻しない。本当に日銀は損をしたのか。刷ったお金の価値が下がったところで、印刷代を損しただけだ。日銀職員の給料は確保されていたのだし、誰も損をしていないし、円の信認も失われなかった。その一方で奇跡の経済復興を導いたのだから、日本経済に、そして日本国民に計り知れないほどの利益をもたらした。

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2011年11月 3日 (木)

TPPや復興増税より経済成長を議論せよ(No.102)

最近、超多忙でなかなかブログを書いている暇が無く、申し訳ありません。

10月30日に、尾道で講演をしてきた。私の出身校である尾道北高の同窓生が集まってくれ、経済の話をたっぷりして来た。大変よく理解して下さっていて、日本経済復活の会の尾道支部を作りたいくらいだ。

近頃のマスコミはTPPの話や、増税の話ばかり。民主党の成長戦略は2020年までにGDPを650兆円にするということだったが、この調子では、650兆円どころか、1997年の513兆円のレベルにも達しないのではないだろうか。TPPに入ればGDPの押し上げ効果は10年で僅か2.7兆円だそうだが、今のGDPは14年前のGDPより約40兆円も少ない事に何も感じないのだろうか。

TPPは賛成と反対で世論も国会も意見が真っ二つに割れている状態で、しかも警戒感が極めて高い状態で、野田さんがTPP交渉参加に突っ走っても、結局はTPPがまとまらなくなるだけではないか。TPPの日本が参加を望んでも、国民を説得してから出直して来いと言われるだけではないか。環太平洋連携協定(TPP)交渉について、米通商代表部(USTR)の高官が、日本の参加を認めるには米政府・議会の非公式な事前協議が必要で、参加決定に時間がかかるため「受け入れが困難になりつつある」との認識を示したそうだ。

ノーと言えない日本だから、TPP交渉に一旦入ると、アメリカの言いなりになってしまうのではないかと言う人がいる。もしそうなら、海部内閣時代、アメリカの要求に応じて10年間で総額430兆円の公共投資を行うという約束を守っただろうし、とっくに農産物の自由化を行っていただろうし、普天間問題も解決していただろう。ノーと言えない日本どころか、イエスと言えない日本、米国に従わない日本と言ったほうがよい。そんなTPP交渉に邪魔になることが明らかな日本を、米国が交渉に参加させる可能性が本当にあるのか。もちろん、人気に陰りの見えるオバマ大統領にとっては、日本をTPPに参加させたいだろうが、下手に交渉参加を認めて逆にTPPをぶち壊す結果になってはやぶ蛇というものだろう。

このままで、貿易立国日本は大丈夫なのか。輸出入のグラフを次に示す。

                   出所:内閣府

1021

これで分かるように、小泉、安倍、福田内閣の時代に世界的好況のため輸出入が激増した。特需というべきで、本来なら普通の政策を行っていれば、この時期にデフレを完全に脱却できたはずだ。しかし、これらの政権が行った緊縮財政のため景気にブレーキがかかり、デフレ脱却ができなかった。麻生内閣では、規模は不十分だったが景気対策を行い景気は上向きで、デフレ脱却のチャンスはあった。不運なことにそこで政権交代があり、麻生内閣の景気対策の一部を凍結し、景気回復もデフレ脱却もストップした。このグラフで分かるように、巨額だった貿易黒字もジワジワと減り続けている。民主党政権下での経済環境は最悪だ。高い法人税、円高、デフレ等、国内の経済環境悪化のため、企業は次々と海外へ逃げていっている。原油高や電力不足や震災の影響も加わり貿易赤字になることすらある。国内で生産していた企業が工場を海外に移せば、当然GDPは下がり、国内の職は失われ、海外で生産した製品を逆輸入するとなれば、輸入が増え貿易収支も悪化する。

こんな状態が続き国内産業が弱体化すれば、日本もギリシャのようになる可能性だってある。もちろん、すぐにそうなるということではない。日本企業が海外生産を行えば少なくともロイヤルティーは入る。海外から受け取るロイヤルティ-や利子や配当等の収入の推移を次のグラフで示す。

                       出所:内閣府
1022


こういった、過去からの遺産があるから、日本は簡単には外国からの借金を心配する必要はない。これがギリシャとは違うところだ。海外純資産が約250兆円もある。本来、これらは日本人の努力の成果なのだから、日本人に還元されるべきだ。しかし、日本に持ち帰ると税金も掛かるし円高になり、ますます国内産業は衰退する。現状では、海外で稼いだ金はドルなど外貨のままで保有され、投資され、海外の経済を潤す。

この海外に移った富を日本に取り返す方法はある。日銀からお金を引き出して景気対策をやればよいだけだ。減税、震災からの復興、放射能除染、農業の大規模化・近代化、環境エネルギー対策、教育、医療、福祉などお金の使い道はいくらでもある。毎年50兆円規模でよい。こうすれば、内需は一気に拡大する。日本の市場拡大を諦め海外に逃げていた企業も日本に帰ってくる。需要拡大ということは、国産品のみならず、輸入品の消費も伸びるということだから、貿易赤字になるかもしれないし、円安に向かう。それは海外に保有して海外でしか運用しなかった日本の財産を取り戻すことだ。もちろん、やりすぎて貿易赤字が続き、外国から巨額の借金をしなければならない状態にすべきではないが、内需拡大により、日本企業の国際競争力は格段に強化されるのであり、これこそ我々の世代が将来世代に残すべき遺産だろう。円安になれば、海外に保有する資産も外貨準備も価値が増えるのだし、メリットは大きい。原油価格など、輸入品の値段は上がる。しかし、日本の人件費が下がることは、貿易立国日本にとっては、極めて重要だ。

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