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2011年12月23日 (金)

おかしな統計数値が政策判断を誤らせたか? 1990年代の家計調査(No.105)

(これは日本経済復活の会 幹事 松浦昇氏の論文です)

私は以前から、「消費性向が低い高所得階層の所得税を減税して、その財源に逆進性の強い消費税を当てれば、所帯数が大きく消費性向が高い、中以下の階層の可処分所得減を通じて、消費支出減→名目GDP低下のメカニズムが働き、成長を阻害することが明らかなのに、何故、橋本財政改革では直間比率是正が強行されたのか?」と言う疑問を持ち続けて来ました。

一応は、「サプライサイダーの毒気に当てられ、レーガン・サッチャー主義の流行に乗った失策」と考えて居たのですが、最近見つけた文献によると、税制改革の効果を見積もるに当たっては、所得階層別の消費行動に着目するアプローチが行われて居て、サプライサイダー云々は勝手な邪推だったことが判りました。

しかし同時に生じたのは、所得階層別の消費行動」を見積もるベースである「所得階層別の消費統計」が、1990年台には、かなり狂って居たのではないか?と言う疑問です。この判断の切っ掛けになったのは、1998年に、当時は東大の助手だった土居丈朗氏(現在は慶応大学教授)による「平成11年所得減税のねらいー所得階層別に見た消費支出への効果―」と言う論文です。推論のベースとなった所得階層別消費支出は表2にあります。

表 2

1051


 ところが、この表にある、所得階層別平均年収と平均消費性向を、今まで私が扱って来た東京都の「都民のくらしむきにある7分位階層別の家計データや、最近公表される様になった、総務省の所得10分位別家計調査の結果と同じグラフ上にプロットして見ると、非常に異なった値を示すことが判りました。

この事は、総務省のデータベースには、「所得10位別の年次統計」が、最近まで公表されて居なかったので、利用する機会が少なく、気が付きませんでした。

図 1  所得階層別年収と消費性向の関係

1052



グラフ上のトレンドは、10分位データを、次の拡張成長曲線で近似した推計値です。

Y = C+a・X+(K+b・X)/(1+m・Exp(-ρ・X))               (1)

Y 消費性向   C =  100
X 年収平均   a = -0.4
           b = -1.0
                 K =  -78
                 m = 1800
ρ  = 2.86

図 2 で見ると、土居論文では高所得層の消費性向が著しく過大に見積もられて居て、この結果として「直間比率是正」のマクロ経済的悪影響を過小評価し、その後の、GDPと税収の著しい減少を招いたことが判ります。

ただ、1990年台の統計は、現在の総務省のHP上に公表されて居ないので、元の数字が狂って居たのか、または土居氏の統計処理に問題が在ったのかは不明です。
 

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経済・政治・国際」カテゴリの記事

コメント

今日の朝のフジテレビの報道番組で中谷巌氏がグローバル資本主義の中では日本政府がスピーディ
に対応すべきと言っておりました。その典型例が大阪市長の橋下です。日本だけがよくなっても
世界経済が冷え切っているので、回復は難しいとのことです。消費税は上げざるを得ないなどと
橋下方式では可処分所得を減らすだけで、全く逆効果です。また、八ッ場ダムを敵視しておりますが
公共工事を否定する者はどうすれば国が発展するのか教えてほしいものです。

投稿: | 2011年12月25日 (日) 09時38分

1:所得=消費+投資+政府支出+経常収支
2:所得=消費(+租税)+貯蓄

1と2より、
投資+政府支出+経常収支=貯蓄(+租税)…3

3より、経常収支が均衡しており、かつ税収を0と仮定した場合、
政府支出=貯蓄-投資
よって、財政赤字は過剰貯蓄を生みだす!

また3より、政府支出を0と仮定した場合、
経常収支=貯蓄-投資
よって、経常黒字は過剰貯蓄を生みだす!

結論
■経常黒字は過剰貯蓄を生みだす!!
■財政赤字は過剰貯蓄を生みだす!!


投稿: 財政中立派 | 2011年12月25日 (日) 17時21分

>経常黒字は過剰貯蓄を生みだす!!

GDPに占める経常黒字の割合は、わずか2%~3%です。
経常黒字が過剰貯蓄の「極一部」になることは確かですが"
あまりにもわずかなので、大雑把に把握する場合、経常黒字の存在は無視して構いません。

>財政赤字は過剰貯蓄を生みだす!
財政赤字(国債)が国民の金融資産を形成することを表します。
その逆も真ですので、過剰貯蓄がある限り財政は赤字になります。

なおS-Iバランス式は恒等式ですから、それ自体因果関係を表している訳ではありません。
因果関係があると説明したいなら、S-Iバランス式を補完する別の説明が必要です。

投稿: | 2011年12月26日 (月) 13時59分

所得税や法人税とは異なり、スタビライザーとしての機能が弱い(もしくは「ない」)税金があります。
すなわち、不景気だろうが恐慌だろうが、容赦なく徴収され、国民経済回復の妨げになる税金です。そうです。消費税です。


法人税や所得税は、税収弾性率に影響を与えると同時に、一種の安定化装置(スタビライザー)の働きもしています。
景気が悪化し、企業が赤字になるということは、「その企業は法人税支払い負担から解放される」
 という話です。結果的に、その企業は景気悪化によるダメージを緩和することができます。所得税も同様です。

野田が財務省のいいなりになるならそれでいいが、国民がこれで不幸になるのなら、野田政権ひいては民主党が
政権奪取されるだけです。離党が相次いで生じ、自民も民主もなくなり、デフレ脱却を目指す政党ができ、
大阪維新や既成政党より国民の支持を集め、ひいては財務省や日銀をも変えさせるそんな政治家が集まってくれ
ればいいと思う。
今こそチャンスですよ。

投稿: | 2011年12月30日 (金) 12時38分

こんばんは。お久しぶりです。約一ヶ月のご無沙汰でした。higashiyamato1979でございます。政府の統計には怪しいものが多いですね。本日のエントリも大変勉強になりました。
 それでは決まり文句! お金が無ければ刷りなさい!労働はロボットに!人間は貴族に! 

投稿: higashiyamato1979 | 2011年12月30日 (金) 18時35分

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