名目GDPの予測を見れば内閣府試算が全くデタラメだと分かる(No.108)
消費税を10%に引き上げても、2015年度までに基礎的財政収支の赤字半減という公約は不可能だし、2020年度までに黒字化するには、消費税を更に6%分引き上げなければならないという政府の発表を信じてしまった人に警告したい。この内閣府試算が全くデタラメであり、単に消費税引き上げの口実にすぎないということは、以下のグラフで一目瞭然だ。内閣府が発表したデータは以下のサイト
http://www5.cao.go.jp/keizai3/econome.html
にあり、ここから名目GDPの予測データを抜き出し、実際の値と比べてみた。
出所:内閣府
グラフに添えてある数字は名目GDPの予測が発表された年であり、下の黒い線が実際の名目GDPの値だ。例えば2005年に発表された名目GDP予測は、2010年度が597兆円、2012年度が645兆円だが、実際の2010年度の名目GDPは479兆円にすぎない。2002年度から2012年度までの11回の予測のすべてで、名目GDPは、ものすごい勢いで上昇しているが、実際には2005年度に505兆円だった名目GDPは2010年度には479兆円にまで減少している。
予測とは、当たったりはずれたりするものだ。しかし11回もの間、毎回これだけ極端に上ぶれしているということは、明らかに恣意的であり、「大本営発表」と言われても仕方がない。このことからも、今回の内閣府発表も、見当違いの予測と思われて当然だ。名目GDPが全く当てにならないということであれば、税収見込みも同様だ。税収は名目GDPが変われば大きく変わる。ということは、「消費税を10%に引き上げても、2015年度までに基礎的財政収支の赤字半減という公約は不可能だし、2020年度までに黒字化するには、消費税を更に6%分引き上げなければならない」という、政府の発表は全く根拠がないと言うべきだ。驚くべきは、巨額の分担金をIMFに払い、金の力でIMFに「日本は消費税を15%に引き上げよ」と言わせていることだ。こんな目的に国民の税金を使ってよいのだろうかと思ってしまう。
政府は、この計量モデルがなぜ、ここまで過大な成長率の予測を行ったのか、どこが悪かったのか、国民に説明をする必要がある。その後で、改良を行い、修正されたモデルが日本経済の中長期の予測に十分耐え得ることができることを示さなければならない。その新しいモデルを使い過去10年間の経済をどこまで再現できるのか、現実のデータとのかい離はどれだけかを、国民に示すべきだ。
増税を国民にお願いするのであれば、改良後のモデルで新しく経済予測を行い、消費税増税を行った場合と行わなかった場合の差が、どのようなものかをまず示すべきだ。「成長戦略シナリオ」と「慎重シナリオ」を提示する以上に重要なのが「増税シナリオ」と「増税無しシナリオ」である。これこそが、消費税増税で国民に信を問う前に絶対に行わなければならないことだ。それを行わないとしたら、それは野田内閣が国民を騙そうとしていることの証明になるだろう。
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