内閣府発表の「経済財政の中長期試算」に隠された驚愕の事実(No.109)
今回発表された「経済財政の中長期試算」に関し、更に驚くべき事実が分かってきた。これは内閣府に直接電話して聞いた話を元にしている。
①発表には「慎重シナリオ」と「成長戦略シナリオ」とで、どちらが現実に近いと考えるかと聞いたら、「慎重シナリオ」だと答えた。ということは、成長戦略シナリオを引用したマスコミの報道は全部誤りで、正しくは増税を行っても、2020年の基礎的財政収支はGDP比で3%の赤字だから、増税によって何も解決しないということだ。
②なぜ、名目GDPの予測が現実離れした大きな値になっているかと言えば、全要素生産性を、鉛筆ナメナメで適当に大きくとって成長させているのだそうだ。全要素生産性など、政策によって大きく変えられるわけがない。デジタル用語辞典から引用すれば、全要素生産性とは「労働や資本を含む全ての要素を投入量として、産出量との比率を示すものである。具体的には、全ての要素を投入量として数値化するのは困難なので、全体の産出の「変化率」から、労働と資本の投入量の変化率を引いた差として計測される。労働と資本の成長では説明できない、技術上の進歩を表した数値であるといわれている。」となっており、これなら適当な値を入れても誰も意味が分からないだろうというのが内閣府の読みだ。国の政策で変えられるようなものではないから結局政府としては何もしないで景気の回復を待つということだ。
最近3年間の全要素生産性の値は0.2~0.3%であるのにも拘わらず、これを1.1~1.9%に意味もなく引き上げて計算している。なぜ引き上げるのかという問いに対し、内閣府の白石氏は「景気循環というものがある。今は不景気だがこれからよくなるだろうから。」という。景気循環というなら、現在値より上にしたり下にしたりしなければならぬはずだから、これは答えにならない。
③このような試算で我々が知りたいのは、消費税増税でどれだけ景気が悪くなり、消費税以外の税収が落ち込むのかということだ。例えば、日本経済新聞社のNEEDS日本経済モデルで計算した場合の消費税増税の影響は、すでに示した。
http://ajer.cocolog-nifty.com/blog/2011/12/no106-196d.html
内閣府は彼らのモデルを使って、今回の消費税増税が与える経済への影響を示すべきだ。なぜそれをやらないのかと聞くと10頁、11頁に書いてあると言う。見ると確かにあるが説明が一切ない。ということは、聞かれたらここを見ろと言うことになっているのだろう。しかし、わざと消費税増税の影響が分からないようにがっちりガードが掛かっている。第一のガード:増税による景気の落ち込みを社会保障を増やしてバックアップしているから、増税による落ち込み幅は見えないようになっている。増税までして社会保障を増やす必要があるのか。
第二のガード:11頁の脚注にあるのだが、これらの計算には復旧・復興対策の経費及び財源等の金額を除いてあるのだという。しかも社会保障と税の一体改革を入れた計算では2011年度だけは、復興・復旧対策の経費及び財源の金額を含むのだそう。ここまで複雑にすると誰も比較検討ができない。こんな馬鹿なガードを掛けるのは、増税による景気の落ち込みが暴露されると、増税に非難が集中するからだろう。これで国民を騙して、増税を強行しようとするのは許せない。
④名目GDPはデタラメではないかと聞いたところ、内閣府の白石氏と吉村氏は「そういった厳しい一般の方からのお言葉をしっかり受け止めて、今後の試算に反映していきたいと思います」とのことだった。
⑤GDPデフレーターも相変わらずひどい。毎年、大変な勢いでデフレ脱却が進むと予測しながら、次年度になると下方修正をする。今回も同じだった。消費税増税が含まれるから特にひどくなった。消費税が上がった分は物価上昇になる。これでデフレ脱却を主張されてはたまらない。
出所:内閣府
詳しい説明は
http://ajer.cocolog-nifty.com/blog/2010/10/no6-b9d6.html
を見て頂きたい。
結論を言えば、この試算を見ても明らかなように、増税で財政健全化は不可能だし、国の借金も、借金のGDP比も増え続ける。2023年度には国の借金は1302.2兆円に、国の借金のGDP比は221%にまで増加するから何も解決していないことが分かる。
一方で、我々の主張どおり、毎年50兆円の財政出動を5年間続ければ、景気は回復し、国の借金のGDP比も激減、財政赤字も解消する。
http://ajer.cocolog-nifty.com/blog/2010/10/post-bd0c.html
日本の進む道はこれしかない。
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