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2012年1月

2012年1月26日 (木)

内閣府発表の「経済財政の中長期試算」に隠された驚愕の事実(No.109)

今回発表された「経済財政の中長期試算」に関し、更に驚くべき事実が分かってきた。これは内閣府に直接電話して聞いた話を元にしている。

①発表には「慎重シナリオ」と「成長戦略シナリオ」とで、どちらが現実に近いと考えるかと聞いたら、「慎重シナリオ」だと答えた。ということは、成長戦略シナリオを引用したマスコミの報道は全部誤りで、正しくは増税を行っても、2020年の基礎的財政収支はGDP比で3%の赤字だから、増税によって何も解決しないということだ。

②なぜ、名目GDPの予測が現実離れした大きな値になっているかと言えば、全要素生産性を、鉛筆ナメナメで適当に大きくとって成長させているのだそうだ。全要素生産性など、政策によって大きく変えられるわけがない。デジタル用語辞典から引用すれば、全要素生産性とは「労働や資本を含む全ての要素を投入量として、産出量との比率を示すものである。具体的には、全ての要素を投入量として数値化するのは困難なので、全体の産出の「変化率」から、労働と資本の投入量の変化率を引いた差として計測される。労働と資本の成長では説明できない、技術上の進歩を表した数値であるといわれている。」となっており、これなら適当な値を入れても誰も意味が分からないだろうというのが内閣府の読みだ。国の政策で変えられるようなものではないから結局政府としては何もしないで景気の回復を待つということだ。

最近3年間の全要素生産性の値は0.2~0.3%であるのにも拘わらず、これを1.1~1.9%に意味もなく引き上げて計算している。なぜ引き上げるのかという問いに対し、内閣府の白石氏は「景気循環というものがある。今は不景気だがこれからよくなるだろうから。」という。景気循環というなら、現在値より上にしたり下にしたりしなければならぬはずだから、これは答えにならない。

③このような試算で我々が知りたいのは、消費税増税でどれだけ景気が悪くなり、消費税以外の税収が落ち込むのかということだ。例えば、日本経済新聞社のNEEDS日本経済モデルで計算した場合の消費税増税の影響は、すでに示した。
http://ajer.cocolog-nifty.com/blog/2011/12/no106-196d.html
内閣府は彼らのモデルを使って、今回の消費税増税が与える経済への影響を示すべきだ。なぜそれをやらないのかと聞くと10頁、11頁に書いてあると言う。見ると確かにあるが説明が一切ない。ということは、聞かれたらここを見ろと言うことになっているのだろう。しかし、わざと消費税増税の影響が分からないようにがっちりガードが掛かっている。第一のガード:増税による景気の落ち込みを社会保障を増やしてバックアップしているから、増税による落ち込み幅は見えないようになっている。増税までして社会保障を増やす必要があるのか。
第二のガード:11頁の脚注にあるのだが、これらの計算には復旧・復興対策の経費及び財源等の金額を除いてあるのだという。しかも社会保障と税の一体改革を入れた計算では2011年度だけは、復興・復旧対策の経費及び財源の金額を含むのだそう。ここまで複雑にすると誰も比較検討ができない。こんな馬鹿なガードを掛けるのは、増税による景気の落ち込みが暴露されると、増税に非難が集中するからだろう。これで国民を騙して、増税を強行しようとするのは許せない。

④名目GDPはデタラメではないかと聞いたところ、内閣府の白石氏と吉村氏は「そういった厳しい一般の方からのお言葉をしっかり受け止めて、今後の試算に反映していきたいと思います」とのことだった。

⑤GDPデフレーターも相変わらずひどい。毎年、大変な勢いでデフレ脱却が進むと予測しながら、次年度になると下方修正をする。今回も同じだった。消費税増税が含まれるから特にひどくなった。消費税が上がった分は物価上昇になる。これでデフレ脱却を主張されてはたまらない。
                     
                               出所:内閣府

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詳しい説明は
http://ajer.cocolog-nifty.com/blog/2010/10/no6-b9d6.html
を見て頂きたい。

結論を言えば、この試算を見ても明らかなように、増税で財政健全化は不可能だし、国の借金も、借金のGDP比も増え続ける。2023年度には国の借金は1302.2兆円に、国の借金のGDP比は221%にまで増加するから何も解決していないことが分かる。

一方で、我々の主張どおり、毎年50兆円の財政出動を5年間続ければ、景気は回復し、国の借金のGDP比も激減、財政赤字も解消する。
http://ajer.cocolog-nifty.com/blog/2010/10/post-bd0c.html
日本の進む道はこれしかない。

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2012年1月25日 (水)

名目GDPの予測を見れば内閣府試算が全くデタラメだと分かる(No.108)

消費税を10%に引き上げても、2015年度までに基礎的財政収支の赤字半減という公約は不可能だし、2020年度までに黒字化するには、消費税を更に6%分引き上げなければならないという政府の発表を信じてしまった人に警告したい。この内閣府試算が全くデタラメであり、単に消費税引き上げの口実にすぎないということは、以下のグラフで一目瞭然だ。内閣府が発表したデータは以下のサイト
http://www5.cao.go.jp/keizai3/econome.html
にあり、ここから名目GDPの予測データを抜き出し、実際の値と比べてみた。

                           出所:内閣府

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グラフに添えてある数字は名目GDPの予測が発表された年であり、下の黒い線が実際の名目GDPの値だ。例えば2005年に発表された名目GDP予測は、2010年度が597兆円、2012年度が645兆円だが、実際の2010年度の名目GDPは479兆円にすぎない。2002年度から2012年度までの11回の予測のすべてで、名目GDPは、ものすごい勢いで上昇しているが、実際には2005年度に505兆円だった名目GDPは2010年度には479兆円にまで減少している。

予測とは、当たったりはずれたりするものだ。しかし11回もの間、毎回これだけ極端に上ぶれしているということは、明らかに恣意的であり、「大本営発表」と言われても仕方がない。このことからも、今回の内閣府発表も、見当違いの予測と思われて当然だ。名目GDPが全く当てにならないということであれば、税収見込みも同様だ。税収は名目GDPが変われば大きく変わる。ということは、「消費税を10%に引き上げても、2015年度までに基礎的財政収支の赤字半減という公約は不可能だし、2020年度までに黒字化するには、消費税を更に6%分引き上げなければならない」という、政府の発表は全く根拠がないと言うべきだ。驚くべきは、巨額の分担金をIMFに払い、金の力でIMFに「日本は消費税を15%に引き上げよ」と言わせていることだ。こんな目的に国民の税金を使ってよいのだろうかと思ってしまう。

政府は、この計量モデルがなぜ、ここまで過大な成長率の予測を行ったのか、どこが悪かったのか、国民に説明をする必要がある。その後で、改良を行い、修正されたモデルが日本経済の中長期の予測に十分耐え得ることができることを示さなければならない。その新しいモデルを使い過去10年間の経済をどこまで再現できるのか、現実のデータとのかい離はどれだけかを、国民に示すべきだ。

増税を国民にお願いするのであれば、改良後のモデルで新しく経済予測を行い、消費税増税を行った場合と行わなかった場合の差が、どのようなものかをまず示すべきだ。「成長戦略シナリオ」と「慎重シナリオ」を提示する以上に重要なのが「増税シナリオ」と「増税無しシナリオ」である。これこそが、消費税増税で国民に信を問う前に絶対に行わなければならないことだ。それを行わないとしたら、それは野田内閣が国民を騙そうとしていることの証明になるだろう。

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2012年1月24日 (火)

基礎的財政収支、これで9回目の政府のウソ(No.107)

政府の経済財政に関する中長期試算がまとまったと発表された。内閣府に電話して聞いたところでは、まだマスコミ向けの発表であり、まだまとめている最中で、今月中にはホームページで詳細を発表するのだそうだ。

結果はもう分かっている。消費税を10%にしても2020年度基礎的財政収支を黒字化できない。黒字化のためには、なんと17%にまで増税が必要なのだそうだ。私がざっと数えただけで、2006年から数えてこれが9回目のウソだ。よくもまあ、ここまで日本国民は騙され続るもんだと感心する。それでも政府発表を信じている。オオカミ少年は3回目で、もう誰にも信じてもらえなくなった。是非、頭を冷やして過去の政府発表を思い出して頂きたい。

第1回~第4回までは2011年度基礎的財政収支(PB)黒字化の条件に関するウソだ。
変わっていく政府の発表(大本営発表)を一覧にしたので、是非笑って欲しい。第7回目からは、ウソが自民党政権から民主党政権に引き継がれている。官僚の作文は政権交代しても変わらない。

第1回目のウソ 2006年7月 小泉政権末期に2011年度PBの黒字化を宣言
第2回目のウソ 2007年1月 第1回の宣言はウソでした。 14.3兆円削減なら0.2%黒字 になります。
第3回目のウソ 2008年1月 第2回も宣言もウソでした。 14.3兆円の削減を行っても0.1%赤字になります。
第4回目のウソ 2008年7月 第3回の宣言もウソでした。  14.3兆円の削減を行っても0.7%赤字になります。
第5回目のウソ 2009年1月 第4回の宣言もウソでした。 2011年度黒字化はできません。消費税を12%にして2020年に黒字化を実現します。
第6回目のウソ 2009年6月 第5回の宣言もウソでした。 2020年に黒字化す
るには消費税を13%にしなければなりません。
第7回目のウソ 2010年6月 2020年に黒字化する。 
第8回目のウソ 2011年1月 第7回の宣言もウソでした。2020年に黒字化する
にはGDP比で4.6ポイント(約22兆円)程度収支の改善が必要となります。
第9回目のウソ 2012年1月 第8回の宣言もウソでした。 2020年にPBを黒
字化するには消費税は17%にしなければなりません。 

今回発表された第9回目のウソを、あなたはまだ信じますか。間違いなく言えることは、現在の緊縮財政が続く限り、「昨年発表した宣言はウソでした」と毎年言い続けるということだ。また、今回の発表で明らかになったことは、消費税増税分は、社会保障費に使うのでなく、赤字補填に使うということだ。そうでなければ「2020年にPBを黒字化するには消費税は17%にしなければなりません。」などと言うわけがない。ポロリと本音が出てしまった。

社会保障財源などと国民を騙しやすい名目で増税をしようとしているが、じつは赤字を減らし国の借金を返したいということだ。しかし、消費税増税で絶対に国の借金の1000兆円は返せないということは、政府の試算でも示されているし、我々を含む様々なシンクタンクの計量モデルによる試算でも示されている。

デフレの時増税すれば、デフレは悪化し、国民は貧乏になるから、物が買えなくなる。企業にとっては物が売れなくなる。失業者が増え、企業は競争力を失う。国民を貧乏にしておいて、1000兆円もの借金を返せというのは無理だ。お金は日銀に眠っている。それを有効活用し、国民を豊かにすれば、財政健全化が可能になる。

これら9回のウソは、すべて増税・歳出削減の口実にされていることに注目していただきたい。借金よりはるかに多い日銀資金は使われないで眠っている。なぜ使わないのか、何の説明もない。

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