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2012年6月

2012年6月28日 (木)

日本でハイパーインフレにならないこれだけの理由(No.120)

以前は景気が悪くなるとすぐに景気対策として財政出動を行っていたが、最近は財政出動はほとんど禁句になってしまった。その理由はこれだけ国の借金があると、財政出動によりハイパーインフレが引き起こされるという間違った説が信じられているからだ。増税をしないと金利が暴騰しハイパーインフレになると信じている人も多いようだ。

しかしながら、現実は政府・日銀の「涙ぐましい」努力にも拘わらず、ハイパーインフレどころか15年前からデフレ脱却すらできていない。物価の変動幅は以前に比べ極端に少なくなっている。

図1
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戦前の物価を1944年を100とした指数でみてみよう。

図2

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よく知られたデフレは松方デフレと昭和恐慌である。昭和恐慌は世界大恐慌の真っ直中、高橋是清蔵相が国債の日銀引き受けにより大規模な景気対策を行い、世界最速でデフレ脱却に成功した。「刷ったお金」で大規模な景気対策を行ったわけだが、高橋蔵相の蔵相在任期間の1932年~1936年の間は穏やかなインフレだった。2・26事件で高橋蔵相が暗殺された後に発足した廣田内閣では馬場鍈一蔵相が軍部の言いなりになり、過度の国債発行を行いインフレが進んだが、高橋蔵相の景気対策では過度のインフレにせず、経済を活性化させたのであり、その功績は世界的に高く評価されている。

一方で、高橋財政や馬場財政より更にインフレ率を高くしたのが大正バブルであり、これを引き起こしたのは高橋是清蔵相の度を超した積極財政であった。第一次世界大戦の特需で、海外で稼いだお金を日本国内に持ち帰ったために通貨流通量が増えた。さらに金利引き下げまで行っている。1919年の消費者物価は1915年の2.37倍になった。この頃の大蔵大臣だった高橋是清はバブル発生とその後のバブル崩壊を経験し、これが昭和恐慌からのスムーズな脱却を成功させることとなったのだろう。大正バブルは第一次世界大戦における特需で日本は果てしなく発展すると勘違いし「少々のインフレ」は受け入れるべきだと判断した政府が、景気が加熱しているのに気付かずバブルを引き起こしたのだ。1990年前後のバブル景気ではインフレ率は2%程度であったことを考えると、大正バブルは桁違いの規模だったと言える。

図2から言えることは、物価は乱高下はしたものの長期的に見れば緩やかな上昇傾向にあるということだ。経済が発展するには、物価は緩やかに上昇したほうがよいということは、世界中で認められたことである。次のグラフで戦後の物価指数を示す。

図3

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1970年代はオイルショックと高い経済成長でインフレ率は高かった。第一次オイルショックでは、原油価格は3ヶ月で4倍近くになり、物価全体に大きな影響を及ぼした。その後も原油価格の値上げはあったものの、様々な対策が取られており、第一次オイルショックほどの影響は無くなっている。図3を見ても、戦後においても長期的に見れば物価はゆるやかな上昇を続けていると言える。しかし、最近の十数年間はデフレが続いており、明らかに異常である。インフレが恐いからデフレを続けているという笑い話のような話しが現実になっている。しかし、急激な物価変動は起こりにくくなっている。

1997年から日本はデフレが続いているが、1997年の物価を100としたとき、2011年の物価指数は96.5である。過去のデフレと比べてみよう。

表1

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この表で分かるように、平成におけるデフレは長期であるにも拘わらず下げ幅は小さい。
更に図1から分かるように物価変動幅自体も着実に少なくなっている。それには様々な理由がある。
【理由1】物価の変動の激しい農業生産物のGDPに占める割合が減っている。2010年のGDPに占める農業所得の割合は1.4%にすぎない。

図4

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【理由2】
経常黒字の続く日本では輸入は全く問題ない。様々な生産物の国際化により、製品の国際価格が国内価格に大きく影響する。デフォルトを起こした国では、輸入がストップする事が多く、物不足が深刻化するために物価の急騰の可能性があるが、対外純資産が21年連続世界一の日本では外貨不足で輸入代金が払えなくなる可能性はない。この点で日本はギリシャと正反対と言える。特定の商品の値段が上がってくれば、単に輸入量が拡大し値段を下げるだけだ。これは経済のグローバル化と関係しており、経済連携が強化されるにつれ物価変動幅の縮小するということは工業国全体に言えることである。このことは次のグラフからも一目瞭然だ。

図5  出所:OECD Economic Outlook Vol 91、81

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図6 出所:OECD,IMF

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【理由3】
日銀による金融政策が有効で物価変動幅を少なくしている。また「遠慮気味」の財政政策のお陰でデフレ脱却の機会さえ失っている。

以上述べたように、何が起ころうと日本だけが突然制御不能なインフレになり、例えば年率100%を超えるようなインフレ経済に突入することなど考えられない。過度のインフレになれば、金利を上げたり、預金準備率を上げたり、売りオペをしたり増税・歳出削減したりという財政・金融両面からの制御が極めて有効であり、簡単にインフレを抑えることが可能だ。デフレの今、政府日銀に求められることは、その逆の政策、つまり金利引き下げ、買いオペ、減税・歳出拡大を大胆に行うことである。インフレ率が高くなりすぎたら、インフレ制御に移ればよいのであり、ハイパーインフレを恐れる必要は全くない。

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2012年6月26日 (火)

ギリシャがユーロから離脱するとどうなるか(No.119)

世界中の注目を集めたギリシャ国会の再選挙で緊縮派が勝利し、新政権が発足、当面のユーロ離脱はないとなったが、問題は何も解決していない。ギリシャの失業率は2008年が7.8%、2010年が10.8%だったが、2012年1月には21.2%に跳ね上がった。これで更に緊縮財政を強要すれば失業者は更に増えるし、ますます外国からの支援に頼って暮らすことになる。

ギリシャだけではなく、スペイン、イタリア、アイルランド、キプロスも同様に支援を要請している。今後ずっとドイツがこれらの国に財政支援を続けるというシナリオは考えにくく、余程の大胆な改革が無い限り、結局いつかユーロは崩壊するのではないか。最初にユーロから離脱すると考えられているのはギリシャだ。しかし、ユーロ離脱の手続きは決まっていない。どのような状況になるのだろうか。

産経ニュースによるとイギリスの紙幣印刷会社がドラクマ印刷の準備を始めたそうである。ドラクマを供給することになった場合地中海のマルタにある工場で印刷するとみられ、実際の印刷には6ヶ月程度かかるという。ではドラクマはどのようにギリシャで流通するようになるのか。
シナリオ1:中央銀行が発行する。政府は国債を発行し中央銀行に引き受けてもらう形で資金を得て、公務員給与の支払い、年金支払いを含むあらゆる政府支出に使う。
シナリオ2:最初は一定額を政府貨幣の形で発行し、その後の通貨の発行、更新等は中央銀行に任せる。

シナリオ1の場合は、最初に必要とする資金がすべて国債発行に頼るということなのだから、最初からドラクマ建ての巨額の国の借金を抱えて出発することになる。それ以外にもちろんユーロ建てでもGDPの1.7倍もの借金がある。シナリオ2から出発すれば、最初はドラクマ建ての借金はゼロから出発できる。

政府がユーロ離脱を宣言すればユーロ建ての借金(ギリシャ国債等)が返せなくなるのは目に見えているのだから、各方面でその準備が進んでいる。例えばギリシャでは2012年6月現在大手銀行から1日あたり800億円ものユーロが引き出されている。ギリシャ国民がユーロをタンス預金化しているということで、例え政府がドラクマを国の通貨だと宣言しても、ドラクマと並行してユーロは国内で流通し続けるだろう。ドラクマの印刷が遅れても物々交換しか取引の手段が存在しないという事態は避けられる。第一ドラクマの需要はそれほど大きくない。政府がドラクマを何らかの支払いに使ったとしても、ドラクマの価値がどんどん低下していくことを誰もが知っているから、ドラクマを受け取った人は、できる限り早く手放そうとするだろう。何か物を買ったり、両替所でユーロに交換したりする。両替所からは、極めて迅速に中央銀行に戻ってくる。つまり流通する紙幣は非常に少なくなる。

いくらでも発行できるドラクマは政府にとっては都合がよいが、国民には常に厄介者扱いになる。政府はドラクマを大量に発行するしかない。4人に1人と言われる公務員の給料や、現役の8割と言われる年金、それに景気対策も急がれる。GDPの170%にもなる外国からの借金の返済はどうやっても無理だ。実際この返済は日本の国の借金の返済とは比べものにならないほど大変だ。例えばドラクマがユーロに対し半分の価値にまで下落したら、借金は2倍、つまりGDPの340%に膨れあがる。

それでも最低限の対応をしようとするだろう。そのためにはドラクマをユーロに替えてユーロを手に入れようとする。国民も政府と政府の発行するドラクマを信用していないから、ドラクマが回ってきたら一刻も早く手放そうとするだろう。結局その努力がドラクマは大幅な値下がりを加速させる。過去においてもギリシャ政府は2年に1度のペースでデフォルトをやってきたというのだから、ドラクマは最初から信認を得られていない。

ギリシャ経済は原油、機械類等の輸入がなければ成り立たない。だからデフォルト(借金踏み倒し)の後1~2年は輸入が思うようにできなくなり、経済が停滞する。しかし、ドラクマの大幅な値下がりの後には、ギリシャ産業が競争力を取り戻し、経済が復活する。農業、鉱業、鉱業等に加え観光業も復活する。更に、海外へ移民した人達からの送金もドラクマの値下がりで価値を増す。ギリシャ人の給料が相対的に高くなりすぎて、貿易相手国との競争に敗れたのだが、ドラクマの下落によって再び競争できるようになるということだ。

デフォルトによりドラクマで見た輸入物価は急騰する。しかし、ギリシャではユーロも同時に使い続けるだろうし、ユーロで見た物価は安定しているか、むしろ下落気味になるかもしれない。それはギリシャの人件費が下がるからだ。これを「ハイパー輸入インフレ」という言葉で表現するのが正しいかどうか疑問だ。

経済を理解していない一部の識者は、政府貨幣発行とか日銀の国債発行を行うとギリシャと全く同じ事が起きると誤解している。しかしながら、日本とギリシャとは全く逆だ。通貨の価値が半分になれば、ギリシャでは借金が2倍になるからますます返済が大変だ。一方、日本は逆に世界一と言われる対外純資産250兆円があるのだから、通貨の価値が半分になればこれが2倍の500兆円になるのだから笑いが止まらない。日本で言う国の借金は、返そうと思えば日銀が買い取れば一夜で「返せる」のであり借金とは言えない借金だ。全部「返す」必要はなく、日銀が一部買い取って少しづつ「返していけば」デフレ脱却、景気回復、借金返済が簡単にできる。増税でなく減税が可能になる。

円高と韓国のウォン安が重なってテレビの価格競争でソニーやシャープがサムスンに負けた。円の価値が半分になれば、もちろん競争力は逆転するし、様々な業界で日本企業は勝ちまくるようになる。円の信認が落ちて、円安になれば日本経済にとって朗報となる。むしろ難しいのは、円の価値をどうやって下げるかということだ。ギリシャのようにデフォルトをやった経験など無いから、国債は絶対安全という神話が存在している。しかし、大規模景気対策を行って景気が回復しデフレが止まり、株や土地が上昇に転じたら、国債から株や土地に資金が移る。それで景気回復が加速し、賃金も上昇、消費が戻る。内需拡大により、輸入も増えると円安に向かう。これが自然な円安誘導であり、これなら諸外国の反発もない。

本日、増税法案が衆議院を通ったが民主党造反者は「反対」だけで57名、欠席・棄権まで加えると約70名。これが党内の野党と考えれば野田内閣は少数与党となった。造反者を処分できない。つまり今後内閣不信任案が出ても単独では否決できない不安定な政権となった。これでは事実上政権運営は不可能だから解散総選挙するしかなくなったと言える。一刻も早く解散して、真に日本経済復活を考える内閣をつくって欲しい。

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2012年6月21日 (木)

100回記念パーティー (No.118)

2012年6月20日、日本経済復活の会の100回記念パーティーは私学会館で開かれました。会長の私としては、大成功、大満足の会でした。参加・協力して下さった方々に深く感謝をします。参加し講演・ご挨拶をして下さった方々は

亀井静香衆議院議員
田中康夫衆議院議員
亀井亜紀子参議院議員
グレゴリー・クラーク多摩大学名誉学長
宍戸駿太郞元国際大学学長、筑波大学副学長
三橋貴明 経済評論家、作家
倉山満 国士舘大学体育学部・21世紀アジア学部講師
河添恵子 (株)ケイ・ユニバーサルプラニング 代表取締役

司会は島倉原氏、そして私小野盛司もご挨拶をさせていただき、また、第一部上場会社である川田工業株式会社の創業者川田忠樹氏もご参加下さいました。また参議院議員の姫井由美子先生と衆議院議員の田中康夫衆議院議員からは、立派なお花を頂き、会を盛り上げて下さいました。

このような会を開くことができたのは、やはり今の政治に対する不満が根底にあるのだと思います。国民の多くが反対している消費税増税法案を自公民の3党の談合で決めてしまいました。前回の衆議院選挙では、景気回復ができない自民党政権に対し、夢と希望を与えてくれた民主党のマニフェストに期待し、多くの国民が民主党に投票し現在の政権ができたわけです。ところが政権交代してみると、マニフェストは事実上撤回され、マニフェストに書かれていなかった消費税増税をだまし討ちのごとく決めてしまう。デフレ時にこんなことをすれば、経済が深刻な打撃を受け、財政再建・社会保障制度の維持は不可能であることは明らかなのに、何と馬鹿なことをやるのでしょうか。

この100回記念パーティーは一つの通過点に過ぎません。日本経済をこのまま放置して、衰退し続けさせるわけにはいきません。一日も早く日本国民にこれではいけないと気付いてもらわねばならないと思います。日本は「おカネのない国」と諸外国に見られています。日本で商売しようと思っても国民がカネを持っていないから無駄ということで、外国企業も見捨てています。IMFに助けてもらえばおカネは何とかなると考えている人がいるかもしれません。しかし、日本で足りないのは円であってドルやユーロではありません。日本は外貨をいっぱい持っています。そして円を作れる(刷れる)のは、日本政府・日銀であり、IMFではありません。「天は自ら助くる物を助くる」です。IMFに頼るのでなく、政府・日銀がやろうとしなければなりませんし、やろうと思えば今日にでも円は作り出せますし、増税は必要ありません。これを日本人が理解できればすべてが解決するのです。

これからも日本経済復活の会を宜しくお願いします。

日本経済復活の会 会長 小野盛司

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亀井静香衆議院議員

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小野盛司会長

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三橋貴明先生

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田中康夫衆議院議員

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亀井亜紀子参議院議員

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2012年6月 6日 (水)

第100回記念パーティーを開きますので是非ご参加下さい

第100回記念日本経済復活の会   (No.117)

                    ご案内

  謹啓 時下 ますますご清祥のこととお慶び申し上げます。

  当会は平成15年1月15日に第1回定例会を開いて以来、多くの皆様に助けられて活動を続けてまいりました。当会の活動は、マクロ計量経済学を駆使した日本経済の分析からスタートいたしましたが、そこで得られた「日本の財政を健全化し、経済を再び成長軌道に乗せる唯一の方法は、大規模な財政出動を行って経済を活性化することである」という結論は、現在に至るまで変わっておりません。

 我々は多くの政治家に真実を伝え、積極財政を推進するよう説得を続けてまいりました。多くの方々に理解していただきましたが、残念ながら未だにその政策は実行されていません。逆に緊縮財政政策が繰り返された結果、計量経済学の予言通り財政はより一層悪化し、日本経済の没落も止まることを知りません。あまつさえ、さらなる景気悪化をもたらす消費増税に命をかけようとする政治家が出てくる始末です。

 翻って世界に目を転じれば、サブプライム・ショックを経て、バーナンキFRB議長、クルーグマン教授といった高名な経済学者が折に触れて財政政策の重要性を唱える一方で、欧州でも「緊縮財政は国民を苦しめるだけで何の問題解決にもならない」ことに国民が気付き、緊縮財政を推進する政党が次々と選挙で敗北しています。

 こうした動きが早晩日本にも波及することを確信し、下記の通り第100回記念の会を開催いたします。どうぞ万障お繰り合わせの上、ご出席下さるようお願い申し上げます。

                                              謹白

平成24年6月6日
                                 日本経済復活の会
                                 会長 小野盛司

日時 平成24年6月20日(水)午後6:00時~午後8:30時
                 (開場5:30、開始6:00)

祝辞・講演 亀井静香衆議院議員
      小野盛司(日本経済復活の会会長)
     

場所 東京都千代田区九段北4-2-25 アルカディア市ヶ谷(私学会館) 
TEL 03-3261-9921

会費 5000円

   会費は当日会場でもお受けしますが、事前にお振り込みいただければ幸甚です。

お振り込み先:みずほ銀行 動坂支店 普通預金 8027416
             日本経済復活の会

所在地 東京都文京区本駒込3-17-2 (〒113-0021)
電話  03-3823-5233 担当 小野

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