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2012年7月

2012年7月 6日 (金)

内閣府の試算によれば、法人税・所得税・消費税をタダにしても物価は上がらない??(No.122)

消費税増税法案が衆議院を通過した。野田総理はこの法案に命を掛けると発言しているが、その背景には内閣府計量分析室の試算で、消費税増税を行っても景気は悪くならないという結論が得られているからである。

今はデフレなのだから、むしろ減税すべきだろうというのが素朴な印象だ。それでは減税により経済はどうなるのか、内閣府の試算で考えてみよう。内閣府の試算は例えばヤフーで「内閣府計量分析室」というキーワードで検索すれば、結果を見ることができる。

まず、法人税減税を行って法人税を5年間0にしたらどうなるかを示す。

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GDPは名目も実質も増えるから景気は回復する。物価の上昇、為替の下落、金利の上昇は僅かだ。つまり「円の信認」の下落は限定的ということだ。

次に、所得税を5年間、0にしたらどうなるかを示す。

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結果は法人税減税と同様だ。次に消費税を5年間0にしたらどうなるかを示す。

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実質GDPは増えるが、名目GDPは減る。これは5%の課税がなくなった分、物価が見かけ上下がるためで、この名目GDPは余り意味がない。それでは法人税も所得税も消費税も全部タダにしたらどうなるのだろう。上記の3つを加え合わせたものが次の表だ。

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GDPは実質も名目も伸びているので景気は回復している。金利上昇は1%未満、為替レートへの影響は微々たるものだ。つまりここまで大減税をやっても「円の信認」は落ちない。物価は下がっている!!国民としては、これは大歓迎の結果だ。税金がタダになれば可処分所得は大幅に増え、物価が下がるのだからこんなに素晴らしいことはない。為替レートも大きな変動が無いとなれば、海外旅行だって気軽に行ける。

野田総理に是非お伺いしたい。

『消費税増税より、税金を全部タダにしたほうがよいのではないですか。総理が絶大なる信頼を置いておられる内閣府の試算でそのような結論がでたのですよ。』

こんな試算は間違いだ。税金をタダにすればハイパーインフレになるはずだと言われるのであれば、そうなるように方程式を変更して我々に新しいシミュレーションを示して下さい。そしてその方程式で消費税増税の影響を計算し直して下さい。結果が出るまで増税法案は棚上げお願いします。

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2012年7月 1日 (日)

『緊縮財政で国の借金が増える』ことの動かぬ証拠(No.121)

日本経済復活の会では、日本経済新聞社の経済モデルNEEDS等を駆使し、『積極財政で国の借金が減る』ことを示してきた。そんな馬鹿なと思う人がいるかもしれない。完璧な証明は、諸外国の「国の借金のGDP比」を見ればよい。日本がぶっちぎりのトップだ。その理由は簡単だ。政府がお金を十分使わないから経済を成長させるだけのお金が国民に渡らずデフレとなってGDPを減らしていく。そうすると税収も落ちる。デフレを加速させないために、少しずつ借金で経済を支えていくとデフレはいつまで経っても脱却できず、借金のGDPは増え続けるという仕組みになっている。

諸外国はデフレにしないよう、政府は適度にお金を使う。中には桁違いにお金を刷って使う国もある。ギリシャもその一つだ。2007年にユーロ加盟して以降、最近はマイナス成長が続いているが、例えば1998年~2007年の間の名目GDPの伸びは7%~10%であるから、国の借金のGDP比は120%以下に留まっていた。しかし、ユーロに加盟し緊縮財政を行い始めてから国の借金のGDP比は急増していることが分かる。

          出所:OECD Economic Outlook 91

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原因は明らかで、緊縮財政によってGDPが減少し、税収も減る。だから国の借金のGDP比は増える。緊縮財政をすればするほど、国の借金のGDP比は増えることの証明だ。

          出所:OECD Economic Outlook 91

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同様な例は無数にある。アメリカも軍事費だけで50兆円も使っている。日本の10倍だ。それでも国の借金のGDP比が増えないのはGDPが伸びているからだ。トルコ政府の金遣いの荒さは日本などより桁違いに大きい。インフレが進み2005年には100万分の1のデノミを行っている。しかし、国の借金のGDP比は39%にすぎない。月間のインフレ率が1億%を超えることもあるジンバブエでも国の借金のGDP比は70%だ。

政府の金遣いの荒さは色々だ。下のリストは国の借金のGDP比(将来世代へのツケ)のランキングで169カ国の中でぶっちぎりの1位が日本だということ。なぜ1位かというと緊縮財政を続けGDPを減らし続けているからだ。思い切って大規模な財政出動でデフレ脱却に成功したら、諸外国並に「将来世代へのツケ」は減っていく。そのことは計量モデルによっても示された。
http://ajer.cocolog-nifty.com/blog/2010/10/post-bd0c.html
日本も1970年代はインフレ率は高く、GDPもどんどん増加していったが、その頃は将来世代へのツケは低かった。増え出したのはデフレになってからだ。

財政出動が度が過ぎて、高いインフレ率になったとしても、日本が焼け野原になるわけではない。為替調整が行われドルで見た物価は安定していて企業は生き残る。そのとき、国の将来世代へのツケは激減する。このまま緊縮財政を続けて将来世代へのツケを増やし続けてよいのだろうか。ますます将来世代へのツケは、増税のような緊縮財政を行えば、増えるが、減税すれば消費が増え、GDPが増え、将来世代へのツケは減る。

次の2つの結論を確認しておこう。
①将来世代へのツケを特に増やしているのは、緊縮財政で名目GDPを減らし続けている日本とギリシャ
②政府が桁違いの放漫財政を行っている国でも将来世代へのツケは日本よりはるかに少ない。日本がこれから思い切った積極財政を行えば将来世代へのツケは減る。

誤解の無いよう次の事も確認しておく。

①緊縮財政とは名目GDPが増えない、むしろ減らしてしまうような財政の事であって、財政が赤字か黒字かは関係ない。

②積極財政とは前年に比べ名目成長率を押し上げるような財政の事を言う。

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
出所:IMF    http://ecodb.net/ranking/imf_ggxwdg_ngdp.html

           国の借金のGDP比(%)=将来世代へのツケ
1位 日本        229.77
2位 ギリシャ       160.81
3位 セントクリストファー・ネーヴィス 153.41
4位 ジャマイカ     138.98
5位 レバノン        136.22
6位 エリトリア      133.82
7位 イタリア         120.11
8位 バルバドス     117.25
9位 ポルトガル     106.79
10位 アイルランド  104.95
11位 アメリカ        102.94
12位 シンガポール 100.79
13位 アイスランド    99.19
14位 ベルギー       98.51
15位 モーリタニア   92.4
16位 コートジボワール 90.53
17位 イラク           86.92
18位 グレナダ         86.61
19位 フランス          86.26
20位 カナダ           84.95
21位 セーシェル      83.02
22位 イギリス          82.5
23位 ブータン         82
24位 ドイツ           81.51
25位 ハンガリー     80.45
26位 ベリーズ        80.35
27位 カーボヴェルデ 77.58
28位 エジプト         76.45
29位 アンティグア・バーブーダ 74.55
30位 サントメ・プリンシペ  74.43
31位 イスラエル              74.34
32位 スーダン                 73.14
33位 オーストリア            72.2
34位 ギニア                72.19
35位 ニカラグア              72.03
36位 セントルシア           71.95
37位 キプロス                 71.84
38位 セントビンセント・グレナディーン 71.41
39位 マルタ                  70.94
40位 ジンバブエ             70.33
41位 ドミニカ国              69.88
42位 ヨルダン                69.78
43位 モルディブ             69.1
44位 ガンビア               68.77
45位 スペイン               68.47
46位 インド             68.05
47位 オランダ              66.23
48位 ブラジル              66.18
49位 ガイアナ              61.75
50位 パキスタン           60.12
51位 シエラレオネ        59.96
52位 アルバニア          58.92
53位 ラオス            57.36
54位 ジブチ            55.46
55位 ポーランド           55.39
56位 モロッコ              54.39
57位 ウルグアイ          54.19
58位 フィジー              53.89
59位 マレーシア          52.56
60位 キルギス            52.44
61位 エルサルバドル   50.79
62位 モーリシャス        50.63
63位 ベラルーシ         50.24
64位 ノルウェー          49.61
65位 ケニア           48.94
66位 スイス           48.65
67位 バハマ          48.61
68位 フィンランド         48.56
69位 セルビア            47.89
70位 スロベニア         47.31
71位 デンマーク         46.43
72位 モンテネグロ      45.83
73位 クロアチア         45.57
74位 ベネズエラ        45.5
75位 ギニアビサウ     45.23
76位 スロバキア       44.63
77位 タンザニア       44.39
78位 ミャンマー        44.32
79位 アルゼンチン    44.2
80位 メキシコ           43.81
81位 ガーナ       43.39
82位 イエメン          42.52
83位 マラウイ         42.46
84位 チュニジア      42.41
85位 タイ          41.69
86位 チェコ           41.46
87位 中央アフリカ   40.9
88位 台湾         40.8
89位 ボスニア・ヘルツェゴビナ 40.63
90位 セネガル        40.62
91位 フィリピン       40.47
92位 レソト           39.65
93位 39          39.44
94位 リトアニア      38.96
95位 南アフリカ      38.77
96位 ベトナム        37.97
97位 パナマ         37.83
98位 ラトビア        37.77
99位 スウェーデン 37.44
100位 エチオピア  37.26
101位 ニュージーランド 37.04
102位 ウクライナ   36.5
103位 バーレーン   36.46
104位 タジキスタン 35.35
105位 ブルンジ      35.27
106位 アルメニア   35.1
107位 コロンビア    34.67
108位 韓国       34.14
109位 ネパール     34.07
110位 グルジア     33.88
111位 香港     33.86
112位 モザンビーク 33.2
113位 ルーマニア 32.96
114位 ボリビア      32.88
115位 トリニダード・トバゴ 32.35
116位 チャド       32.15
117位 コンゴ(旧ザイール) 31.99
118位 カタール      31.48
119位 ベナン     31.33
120位 アンゴラ       30.9
121位 トーゴ     30.84
122位 コスタリカ    30.76
123位 マリ       30.64
124位 ブルキナファソ 29.44
125位 ドミニカ共和国 29.26
126位 ウガンダ        29.22
127位 カンボジア     28.6
128位 ホンジュラス  28.12
129位 マケドニア     28.11
130位 ザンビア       26.07
131位 中国        25.84
132位 インドネシア  25.03
133位 グアテマラ    24.06
134位 ルワンダ      23.43
135位 モルドバ       23.39
136位 オーストラリア 22.86
137位 ソロモン諸島 22.64
138位 コンゴ共和国 22.17
139位 ナミビア        21.85
140位 ペルー         21.64
141位 ルクセンブルク 20.85
142位 スリナム         20.57
143位 ガボン          20.45
144位 ニジェール     18.94
145位 エクアドル      17.98
146位 ナイジェリア    17.86
147位 スワジランド    17.53
148位 ボツワナ         17.26
149位 ブルガリア      17.04
150位 アラブ首長国連邦 16.89
151位 トルクメニスタン 15.35
152位 リベリア           13.92
153位 パラグアイ        13.66
154位 カメルーン        12.87
155位 イラン         12.7
156位 カザフスタン     10.88
157位 ハイチ         10.63
158位 アゼルバイジャン 10.23
159位 アルジェリア      9.93
160位 チリ               9.91
161位 ロシア            9.6
162位 ウズベキスタン 9.1
163位 赤道ギニア       8.35
164位 サウジアラビア 7.52
165位 クウェート        7.35
166位 エストニア        6.04
167位 マダガスカル    5.68
168位 オマーン          5.06
169位 ブルネイ          0

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