« 2012年7月 | トップページ | 2013年4月 »

2013年3月

2013年3月20日 (水)

TPPに参加し関税を撤廃した場合の経済効果(No.126)

3月15日に安倍総理はTPP交渉参加を表明した。それに伴いTPPのもたらす経済効果の試算も発表されたので、内閣府や農水省に電話で詳細を聞いてみた。それに基づいて少しコメントしてみる。今回発表されたのは
①関税を撤廃した場合の経済効果についての政府統一試算
http://www.cas.go.jp/jp/tpp/pdf/2013/130315_touitsushisan.pdf
②農林水産物への影響試算の計算方法について
http://www.cas.go.jp/jp/tpp/pdf/2013/130315_nourinsuisan.pdf
③PECC試算の概要
http://www.cas.go.jp/jp/tpp/pdf/2013/130315_pecc.pdf

日本のTPP交渉参加の表明に影響され日中韓のFTA交渉も進展の気配も見られる。これが実現すればTPP以上に大きな経済効果が期待される。また安いシェールガスをアメリカから輸入しようと思えば、TPPに入らないと不利になりそうだ。いずれにせよ、国益を最優先にした交渉が望まれる。

まず①ではTPP(11か国)に日本が参加した場合のGTAPという、WTO等の国際機関など世界各国が使っているモデルが使われた。ただし、ここでは関税の完全な撤廃がいきなり行われ、何の対策も講じなかった場合の影響を計算している。当然財政金融政策も同時に行われるのだが、雇用(失業率)は変化ないという前提で計算されている。デフレ経済の日本では、関税撤廃は安い輸入品が入ってきてデフレを悪化させる作用があるので、それに対抗できるだけの十分な財政・金融政策が同時に行われると仮定されているはずで、もしデフレ脱却ができないまま自由化を強行すれば、悪影響は計り知れないと考えるべきである。関税はすべて即時撤廃したとして計算されている。計算結果としては
(1)日本全体:実質GDPが0.66%(3.2兆円)増加
輸出+0.55%(+2.6兆円)、輸入-0.60%(-2.9兆円)
消費+0.61%(+3.0兆円)、投資+0.09%(+0.5兆円)
(2)農林水産物生産額だけに限れば3.0兆円減少

平成22年10月27日にも農林水産省は試算を行っている。このときはTPPに限らず全世界を相手に関税をすべてゼロにし、何の対策も講じなかった場合である。このときは農産物の生産減少額だけでも4.1兆円であった。
http://www.npu.go.jp/policy/policy08/pdf/20101027/siryou3.pdf

22年試算と25年試算の最も大きな違いの一つは、米に対する影響である。米の生産額の減少額は22年試算では1.97兆円だったが、25年試算では1.01兆円である。この差は、TPPでは一部の国から輸入するだけだから32%の米が国産から米国産や豪州産に置き換わるだけだが、全世界相手だと90%が外国産に置き換わるとしている。つまり、TPPの中だけだと、貿易相手国の輸出余力が限られているということでこの差が生じるとしている。アメリカとオーストラリアが産業構造の大規模な変換を行い日本向けに大規模な米の生産を行い始めたら日本の農業のダメージは更に拡大する。しかし、安倍総理は米を聖域として残すつもりだろう。

現在は小麦が輸入され、国内で製粉されているが、関税撤廃後は小麦粉で輸入されるようになる。運輸業などにも大きなダメージを与え、農業及び関連産業全体へのマイナスの影響は22年試算では7.9兆円と見積もっている。ただし、実際は関税をすべてゼロにすることはあり得ないし、しかも外国製品に対抗して競争力を高める努力がなされるから、農業及び関連産業への影響は、これらより少なくなる。

25年の試算では、輸入の増加と輸出の増加がほぼ同程度で、GDPへの寄与は輸入の増加はマイナスに、輸出はプラスにはたらくので、輸出入の増加ではGDPはプラスマイナスほぼゼロだ。しかし、安い輸入品のおかげで物価が下がり、実質的に可処分所得が増え消費が伸びる。その消費の増加分だけが、GDPの伸び、つまり国民生活が豊かになった分だ。
それが次の図で示されている。
1261

輸入品が安くなる一因には関税撤廃の効果もある。輸入品にかけられていた物品税をタダにしたと同じような効果があり、減税したことに等しく、それが消費を増やし、それがGDPを押し上げたとも表現できる。すでに述べたように、このシミュレーションには「雇用は増えも減りもしない」という仮定の基に計算されている。デフレが続いていて、外国からの輸入品のお陰で農業が深刻なダメージを受け、失業者が増え社会問題になるようだとこのシミュレーションは成り立たない。TPP参加を考えるのであれば、消費税増税は棚上げして、まずデフレ脱却に専念し自由競争に耐えうる体力をつけるべきだ。

参考のために、平成25年試算と22年試算で農業生産物の生産減少額の比較を行ってみる。試算は各品目ごとに、価格差、商品競争力を調べ細かく分析がなされている。例えば、牛肉だと国産と輸入品との価格差が大きく、TPPも全世界相手でもほとんど変わらないが、豚肉だとそれほどの価格差が無いので両者で差が出る。

平成25年試算(TPPのみ、林業と漁業も含む)

1262


平成22年試算(全世界に対して完全自由化、林業と漁業は入れていない)

1263

22年と25年の試算は、関税撤廃だけに注目して行った試算だったが、今回の政府発表には、PECC試算
http://www.cas.go.jp/jp/tpp/pdf/2013/130315_pecc.pdf
も加えられていた。こちらは関税のみならず、非関税障壁の撤廃、経済ルールの統一、資本の移動等すべてを考慮して計算されている。結論を引用すると以下のようになる。

1264

TPPだけで約10兆円のGDP押し上げ効果があると結論し、東南アジア諸国、中国、韓国まで加えたFTAAPならその2倍以上の押し上げ効果があるとしている。当たり前だが、自由貿易を行う国が増えれば増えるほどGDP押し上げ効果は大きくなる。国際的分業が進めば進むほど国は豊かになるというのは言うまでも無いことだ。

我々の主張は、「お金を刷って国を豊かにする」ということだ。お金を刷れば、そのお金で景気が回復し、失業者も減り遊んでいた生産設備も動きだし、国は豊かになる。しかし、景気が回復した後も更にお金を刷ったとき、刷ったお金が国を豊かにするために使われないなら、インフレになるだけでそれ以上国は豊かにはならない。刷ったお金で非効率な分野で働く人を、もっと付加価値の高く競争力のある発展する分野へ移動させ、非効率な分野の生産物は輸入で補う仕組みができあがれば、国は更に豊かになる。過去には炭坑で働く労働者をもっと発展的な分野に移動し、石炭は輸入品に切り替えたという実績がある。そういった労働者の移動がなかったら今日の豊かな日本は無かった。過去に成し遂げたことを、今できないはずがない。

| | コメント (3) | トラックバック (1)

2013年3月17日 (日)

安倍晋三氏はどのようにしてリフレ派に転向したか(No.125)

あまり知られていないが、アベノミクスの誕生に我々は貢献した。覚えておられるだろうか。「増税によらない復興財源を求める会」を発足させるために、我々は多くの努力をした。
http://ajer.cocolog-nifty.com/blog/2011/06/no-1c55.html
http://ajer.cocolog-nifty.com/blog/2011/06/no82-6163.html
http://ajer.cocolog-nifty.com/blog/2011/06/post-001f.html
この会が如何にして発足したかを説明する。東日本大震災の直後から、「今は非常時なのだから、増税に頼らず日銀に国債を買わせることにより復興財源にすべきだ」と我々は国会議員の説得を始めていた。それに協力的だったのが衆議院議員の山本幸三氏だ。彼は、彼の経済理論(アベノミックスそのものと言うべきかもしれない)を支持する国会議員をたくさんの紹介してくれ我々は次々会っていった。2011年4月25日には参議院議長の西岡氏と面会した。そのとき西岡氏は、そのような活動をしたいのなら5人または7人の本当に「やる気のある」国会議員をこの参議院議長公邸に来させて会議を開きなさいと言っておられた。

私は7人集めることにした。山本幸三氏とも相談しながら私が集めたのは西岡氏に加え山本幸三、小泉俊明、田村憲久、亀井亜紀子、金子洋一、松原仁の7人であり、5月2日に参議院議長公邸に集まった。ただし西岡氏が始めた会ということでは立場上まずいようで、西岡氏はマスコミに対して、この会は自分が始めたものではないと説明していた。

この会で復興財源は増税によるべきでないという声明文に署名してもらうことを決め、それぞれ党に持ち帰って署名を求めることになった。最初の声明文は筆者が書き、吉野氏が修正を加えた。その文は以下の通りである。

――――――――――――――――――――――――――――――――
日銀による国債引き受けを求める声明文

 3月11日の東日本大震災で被災された方々に対し、心よりお見舞い申し上げます。被災された方々の救済と共に、復興に全力を挙げるのが我々国会議員に課せられた責務であることは言うまでもありません。しかしながら、大震災から2ヶ月近くになろうというのに、復興財源の見通しさえ立っておりません。増税で財源を賄おうという案もありますが、その場合国民1人当たり数十万円にも上る大増税になる可能性があり、これでは十年以上もデフレが続いている日本経済へのダメージは計り知れません。経済を破壊しては、復興はあり得ません。被災者にとってもその負担は大きすぎます。

 我々は、以下の理由により日銀による国債引き受けで復興財源を確保するよう求めます。

1.財政法第五条は『すべて、公債の発行については、日本銀行にこれを引き受けさせ、又、借入金の借入については、日本銀行からこれを借り入れてはならない。但し、特別の事由がある場合において、国会の議決を経た金額の範囲内では、この限りでない。』となっており、今回の大震災は明らかに特別の事由がある場合に相当します。

2.日本には生産力は十分あり、かなりの需要増でも十分対応できます。外貨も十分保有していますから、輸入で補充することもでき、深刻な物不足になる可能性はありません。深刻な物不足にならない限りハイパーインフレはありません。国内に円での取引を停止する銀行や商店があれば、ほぼ間違いなく営業ができなくなりますから、円での支払いができなくなることはありません。つまり日銀の国債引き受けにより円の信認が失われることはありません。
  円売りが加速し、円安が進むかもしれませんが、円安は日本経済にとっては好材料です。
 
3.国債が暴落する恐れはありません。
  国債価格は需要と供給の関係で決まります。日銀の国債引き受けは市場を通しませんから、国債価格に直接的な影響はありません。国債を多く保有する国内の金融機関ですが、国債を売って現金に換えるのだけでは、何の利益にもなりません。現金で保有するより国債で保有しておいたほうが、安全でしかも金利が稼げて有利です。国債が暴落するときは、国債よりはるかに有利な金融商品が現れたときであり、日銀が国債を引き受けただけで、そのような商品が出現するわけではありません。

4.一度日銀の国債引き受けを行うと、歯止めが利かなくなるなどという心配は無用です。
  これは政府・日銀の中で財政金融政策を担当する人の資質に拘わる問題です。一度引き受けを行うと、それを止められなくなる人達が財政金融政策を担当しているのであれば、そうでない人達に替わっていただくしかありませんし、民主主義においては選挙で交替してもらう仕組みになっております。
5.国債を発行して復興事業などを行った場合は、国の借金は増えますが、GDPも増加します。どのような計量モデルを使って計算しても、現在の日本においては借金の増加率よりGDPの増加率の方が大きくなります。つまり国の借金のGDP比は下がり、次世代へのツケは減らすことができます。逆に増税したり、復興事業費の削減をした場合は、結果として国の借金のGDP比を増やすことになり、次世代へのツケを増加させることになります。

以上の理由により、復旧・復興財源は日銀の国債引き受けで賄うことを求めます。

             平成23年**月**日  日銀の国債引受を求める議員の会

―――――――――――――――――――――――――――――――――

しかしながら、日銀の国債引き受けという言葉に社民党が抵抗し、結局政府が震災国債を発行し、それを日銀が買い取るという形にするように修正された。修正された文章は以下にあるので比較して頂きたい。
http://ajer.cocolog-nifty.com/blog/2011/06/post-001f.html
結局この会の会長は安倍晋三氏になっていただき、230名以上の署名を得た。安倍氏はこの署名活動を通じて、財源は増税でなくともお金を刷ることで作り出せることを学んだのは間違いない。

2012年12月6日に安倍氏が演壇に立ち、リフレ政策に転向した経緯を語り、それが12月6日のニコニコ動画に掲載されている。
http://d.hatena.ne.jp/shavetail1/20121206
つまりこの手法で、お金を刷ってデフレから脱却できると安倍氏は学んだ。そしてアベノミクスを唱え始めた。

2011年8月30日に日本経済復活の会の定例会で安倍晋三氏は講演を行っている。その時、我々は彼に「お金がなければ刷りなさい」と教え、総理への再チャレンジを彼に促している。以上述べたことが我々のアベノミクスへの貢献である。

我々は十年以上、「お金がなければ刷りなさい」と政府に進言してきた。そんなことすれば、国債が暴落し、円も暴落して国家が破綻すると反論され続けてきた。今、その答えが出ようとしている。円安・株高で日本が一気に明るさを取り戻してきた。我々が言ってきたことが正しかったことが証明された。

| | コメント (9) | トラックバック (0)

2013年3月16日 (土)

福島原発処理と除染を劇的に加速する方法(No.124)

3月13日の衆議院予算委員会で西田譲衆議院議員は、福島第一原発事故の放射能汚染について、「低線量セシウムは人体に無害だから、強制避難を解除せよ」と要求したという。ほとんどの人がこれを暴論と決めつけいるようだが、しかし、放射能を専門的に研究している人はむしろ西田氏の意見が正論だと思っているように思える。実際、WHOは福島原発事故による放射能程度では癌にならないと言っている。それなのに強引にしかも強制的に避難をさせたために、いわゆる震災関連死で千数百人もの人が避難中や避難先で死んだ。本当にこんな避難のやり方でよかったのだろうか。正しい放射能の知識を伝えなかったために無駄に命を落とした千数百人の方々に申し訳ない気持ちでいっぱいだ。

日本物理学会誌の今月号(2013年3月号)に放射線の人体への影響に関して、専門に研究を行っている泉雅子という人の論文が掲載されている。結論から言えば、低レベルの放射能は一般の人が考えているほど危険ではないということだ。泉氏は、放射能によりDNAがどのように破壊され、その大部分が人体の中で修復されるのかについて詳細に説明し、修復の様子を示す写真も掲載されている。ここに掲載されている内容の一部を紹介しよう。

広島・長崎の被爆者を対象とした調査から、100ミリシーベルトの被爆による死亡率は0.5%増加し、それ以上では線量に比例して、発癌率が増加することが明らかになっている。しかし、100ミリシーベルト以下では発癌率の上昇は見られていない。これは一気に放射能を浴びた場合だが、もっと低いレベルの放射能を長年浴びた場合は全く異なる結果となる。比較的高い放射能レベルの中で暮らしている人たちの調査で、累積600ミリシーベルトを超えても発癌率は上がっていない。

チェルノブイリ事故後、子供の甲状腺癌が増えたのは大量の放射性ヨウ素を取り込んだためだが、この地域は日頃からヨウ素が欠乏していたために、より効率的にヨウ素を取り込んでしまったためと言われている。福島の事故後、小児1000人を対象に行った調査では、甲状腺等価線量の最高値は35ミリシーベルトにすぎず、甲状腺癌のリスクが高まるとされている100ミリシーベルトを下回るし、チェルノブイリの小児があびた150~3000ミリシーベルトよりはるかに低いので甲状腺癌の心配はない。しかもチェルノブイリと違い福島ではヨウ素不足ではなかった。

DNAを壊して癌を発症させるのは、放射線だけではない。我々の体内では、酸素呼吸により反応性の高い活性酸素が常に発生しており、これが絶えずDNAを大量に破壊し続けている。1個の細胞あたり、1日に数千箇所~数万箇所も破壊しており、絶えず修復作業が続けられている。人体には約70兆個もの細胞があるから膨大な修復作業だ。修復に失敗すると癌の原因となる。つまり低レベル放射能より活性酸素のほうがずっと怖いがそれから逃れる方法はない。

一方で、爆発事故を起こした4基の原発は極めて危険で一刻も早い処理をしなければならない。それを阻害しているのが増え続ける汚染水だ。東電は新浄化装置「アルプス」を導入した。これまで検出された放射性物質63種類のうちトリチウムを除く62種類は除去できることとなった。

トリチウムは三重水素と呼ばれ、化学的には水素と同じ性質を持つ。陽子1個と中性子2個からなる原子核を持つ。化学的な性質は全く水素と同じだから、化学的な方法では分離できない。海水中に含まれ、トリチウムを集めて燃やして夢のエネルギー源にしようというのが核融合だ。トリチウムを海水から取り出すのに大がかりな設備が必要なように、汚染水からトリチウムを分離するのにも大がかりな設備が必要となり、東電がため込んだ汚染水からトリチウムを分離するには莫大な費用がかかり、現実的でない。我々は逆転の発想が必要だ。例えば塩水を海に捨てようとしたとき反対をする人はいない。よほど濃度の高い塩水を大量に放出しない限り魚介類には何の影響もない。どうせ海水には塩が含まれているのだから。これと同じだ。どうせ海水中にはトリチウムが存在するのだから、濃度が低いトリチウムを含んだ水を海に放出しても何の害にはならないのは明らかだ。早く海に放出して、事故処理のスピードアップをすべきだ。怖くないものを怖がって事故処理を遅らせるなど言語道断だ。トリチウムを含んだ汚染水の海洋放出はどの原発でもやってよいと認められていることである。

更に、除染も遅れている。広範囲にまき散らされた低レベルの放射性物質を集め、福島第一原発の近くの海岸を埋め立てて捨てるべきだ。今でも原発の下の地下水を通って高レベルの放射性物質が海に流れ出ているようだ。本日(3月16日)の日経新聞にも、福島第一原発の港湾内で捕まった魚類で過去最大値となる1キログラム当たり74万ベクレルの放射性セシウムを検出したと発表した。

高レベル放射性物質が海へ流れ出るのをストップするには原発近くの海を除染で発生した大量の土壌で埋めればよいだけだ。それにより海に流れ出る放射性物質は激減するのは間違いない。これが福島の漁民も救う。除染で発生した土壌が海を汚すと考える人がいるかもしれない。しかし、汚染のレベルの桁が違うのだ。すでに述べたように、低レベルの放射能は人体には害にならない。しかし、高レベルの放射能は極めて危険だ。この区別がつかねば、福島は守れない。

この埋め立てにより同時に除染は飛躍的に進む。原発の廃炉が完了したずっと将来には埋め立てた土地は、汚染されてない土をかぶせて、公園にでもすることができる。土をかぶせれば、放射能は安全なレベルまで簡単に下げることができるのだから。

危険なものと危険でないものを明確に区別しよう。注射は痛い。腕に針を刺すのは怖いと思うかもしれない。しかし、そのディメリットより、それによる病気の治癒のメリットのほうがはるかに大きいから注射をする。上記の汚染水の海洋放出や汚染された土壌での埋め立てはこれに似ている。メリットのほうがディメリットよりはるかに大きいのだから、福島を救う救世主になり得る。

| | コメント (2) | トラックバック (0)

2013年3月 8日 (金)

アベノミクスの足を引っ張る財務省(No.123)

野田前首相が解散表明をしてからもう少しで4ヶ月だ。この間、日本は明るくなった。株価は約4割も上昇、週刊誌には『株価18000へ』とか『20000年へ』とかの文字が躍っている。こういったアジテーションを見ると二十数年前のバブル発生当時を思い出す。一方では、アベノミクスを潰そうとする勢力が顔をのぞかせる。

3月6日に財務省が馬鹿な試算を発表した。3%成長をしても税収不足になるというもの。アベノミクスにケチを付けたいのだろう。ホームページに詳細が載っている。
http://www.mof.go.jp/budget/topics/outlook/sy2503a.htm
正直、この試算にはあきれて、思わず財務省主計局の担当者に電話をしてしまった。計算によると、国債費は金利上昇のお陰で、24年度には21.9兆円だったものが、28年度には28.7兆円になるのだという。しかし、大胆な金融緩和という黒田新日銀総裁なら、そうはならない。長期国債を大胆に買うということだから、金利は下がり、しかも必ず日銀が保有する国債からの、かなりの金利を受け取り、それを国庫に納めるはずだ。

FRBも2011年には5.9兆円、2012年には7.8兆円を国庫に納めている。金融緩和でどんどん長期証券を買っているから受け取る利子も多く、それを国庫に納めている。日銀だってFRBと同様な買い入れを行うはずだ。それが政府の収入になるのだが、財務省はそれを計算に入れない。しかも大胆な金融緩和で国債を大量に買えば、もちろん金利は下がる。それにより国債費は減っていくはずだが、この試算では金利が上がるものとして計算されている。要するに白川さんが日銀総裁を続投した場合の試算だが、それは非現実的だ。

更に、社会保障関係費の支払いがどんどん膨らむことがこの試算には考慮に入っているが、年金積立金の運用益は無視だ。実際、野田前首相が解散を発表してから12月末までで、運用益は約5兆円だ。3月8日までなら10兆円を超える。このように景気が良くなれば、様々な経路を通じて政府にもお金が入ってくる。

3月8日現在の株価は12283円であり、前首相の解散発表時には8664円だったから、42%上昇した。それによる時価総額の増加は約100兆円だ。それだけではない。地価もゴルフ会員権もすべて値上がりに転じている。日本人の保有する海外純資産は約250兆円だったが、対ドル円相場はこの間2割以上下落しているので、海外純資産は約50兆円増えたはずだ。財務省の保有する100兆円の外貨準備も20兆円程度増えたはずだ。様々なところからお金が生まれている。

この財務省の試算のいい加減さはこれだけではない。消費税の扱いが全くデタラメだ。消費税が上がっても、物価には影響しないという馬鹿な仮定をしている。小売り業者が一切値上げしないというのか。そのため名目GDPにも影響しない。またそれによる消費の縮小もない。税収だけが増える。そんな馬鹿な経済学はないし、そんな馬鹿な試算はないはずだ。厳重に財務省に電話で抗議し、電話に出た財務省の職員からの反論は無く、恐縮していた。

ロケットスタートで快調に走り続けるアベノミクスは何としても成功させたい。しかし、心配な事がある。トヨタは国内生産台数の減産計画を発表した。2013年は310万台だったものが、2014年には300万台、2015年には270万台にするというもの。消費税増税で大不況がやってくるということを予測しているのだ。安倍さん、消費税増税を延期しよう。そうでないと株価が暴落する。

先日テレビを見ていたら榊原英資と浜矩子がこの株高をバブルだと言っていた。外国のハゲタカがそのうち売り抜けで暴落するのだそうだ。そうならなかったら、この二人にはしっかりと責任をとらせよう。まだとてもバブルなんかではないことは、下のグラフからも明らかだ。
1231

| | コメント (2) | トラックバック (0)

« 2012年7月 | トップページ | 2013年4月 »