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2013年4月

2013年4月23日 (火)

福田昭夫衆議院議員が内閣委員会で甘利大臣に質問(No.128)

                                         2013年4月9日

 
4月9日に福田昭夫議員から電話で相談を受け、経済政策に関する様々なアドバイスをし、それを参考にして福田議員は4月11日の内閣委員会で甘利大臣に質問をした。格調高い質疑であり、その詳細はネットで見ることができる。
http://www.shugiintv.go.jp/jp/index.php?ex=VL&deli_id=42642&media_type=fp
この質問に関して、日本のデフレ脱却と景気回復を心から願う筆者の立場からコメントしたい。

【福田議員】基礎的財政収支(PB)に関して、政府の発表はウソばかりだ。
【コメント】
嘘の中身を書いてみる。
【嘘1】2006年7月小泉政権の末期に「2011年度にPBを黒字化する」と宣言。
  → 実際は2011年度のPBはGDP比で-8.92%の大赤字だった。
【嘘2】2007年1月 14.3兆円削減なら0.2%黒字 になる。
【嘘3】2008年1月 14.3兆円の削減を行っても0.1%赤字になる。
【嘘4】2008年7月 14.3兆円の削減を行っても0.7%赤字になる。
【嘘5】2009年1月 2011年度黒字化はできない。消費税を12%にして2020年に黒字化を実現します。
【嘘6】2009年6月 2020年に黒字化するには消費税を13%にしなければならない。
【嘘7】2012年1月 2020年にPBを黒字化するには消費税は17%にしなければならぬ。 
このように次々と発表を変えているということはそれまでの発表が全部嘘だったということを認めることだ。しかし馬鹿なマスコミは、試算のお粗末さを追求せず政府の努力が足りないからもっと緊縮財政をやれとはやし立てた。
【福田議員】プライマリーバランスの目標は非現実的だからやめてはどうか。
【甘利大臣】財政再建を放棄すれば、国債の信認は失われ財政は破綻する。
【コメント】例えば会社が破綻すると言えば、それは債務の返済が不能になったことを意味する。債務を全部返済できるのなら破綻することはない。国の財政が破綻するということは、国債の償還ができなくなったということであり、国債が紙くずになるということである。甘利大臣は近いうちにそうなると考えているのだろうか。
財政が破綻ということは、国債が売れなくなるということだが、日銀がこのように大規模に国債を買い始めた今、国債は売れないどころか、飛ぶように売れている。むしろ買いたくても買えないし、金利が安すぎることもあり、株や外債の購入にシフトをはじめている。
【福田議員】2年間で2%のインフレ率という目標を日銀が持ったのだから、政府もデフレ脱却の目標を持つべきだ。
【甘利大臣】デフレ脱却は後になってからその時期が分かる。
【福田議員】政府のGDPデフレーターの予測も名目GDPの予測も、ことごとく外れている。計量経済モデルを変えたらどうか。
【甘利大臣】車を走らせていて、スピードを上げるためにアクセルを踏む、アクセルを踏んだときはスピードが上がるけれど、ちょっとアクセルから足を緩めると急激にスピードが落ちる。そこでまたアクセルに力を入れる。これは財政出動の連続であります。しかしなぜアクセルを踏んでいるときしか車が一定速度しか保てないのかと言って、気がついたらサイドブレーキが目一杯引かれていた状態だった。これがデフレです。このサイドブレーキを外して正常な状態に経済を戻して、その上で政策効果をはかる対応が必要だ。
【コメント】そのサイドブレーキの効果が計量経済モデルに入っていないから、予測が外れていると考えられる。適切な財政出動でデフレ脱却が可能となり、デフレというブレーキをはずすことができる。
【福田議員】デフレから脱却するには新しい産業を生み出すような成長戦略と大胆な財政出動が必要だと思います。大胆な金融政策はむしろ後からの話で、機動的な金融政策であって、大胆な財政出動が必要だと思いますがそこまでは踏み込めませんか。
【甘利大臣】過去にもやってきたが、効果が無かった。お金は持っていれば持っているほど価値が上がるからいいというマインドがある限り民間は消費しない。そんなときに政府がお金を使う政策をやっても、景気はよくならない。
【コメント】大規模な財政出動であればマインドは変わる。少々の金融緩和でマインドが変わるかどうかわからない。世の中の国債を全部買うとアナウンスすればマインドは変わるだろう。世界大恐慌の際、世界各国は大規模な財政政策でデフレを脱却した。
【福田議員】消費税増税ですが、これは日本経済復活の会の小野盛司先生がまとめた表です。「来年の消費税増税で不況に逆戻り」というタイトルがついている。主要民間シンクタンクの経済予測をまとめてみると実質GDPの予測は平均で2013年度が2.4%、14年度が0.1%と、影響がでてくる。不況の原因は消費増税で実質所得が減少したことによる消費の落ち込み、かけこみ需要の落ち込みと景気対策を続けなかったことの財政削減効果などが出てくるということで、民間最終消費の予測は2013年度に比べると5つのシンクタンクで大きく下がっていく。2013年度1.4%だったものが-1.1%、更に民間住宅投資は2013年度は6.9%で増えるが、14年度には-7.5%と大きく下がっていく。景気に大きく影響を与える原材料や電気代の値上がりに加え消費税の大増税、消費の急激な減少が多くの企業の破綻に追い込み、日本に投資を始めた海外投資家も一斉に投資を引き上げれば株式の大暴落を招く。株式に重点を移しはじめた年金積立金も巨額の損失が発生し、年金が危うくなる。年金財政を安定させようとした増税が裏目に出る。国民は経済政策が失敗したと思い内閣支持率は急降下し政権は存続すら危うくなる。このようなシナリオさえも考えられるのではないだろうか。こういう指摘をいたしております。この指摘を読んでどうお考えになりますか。
【甘利大臣】内閣支持率の低下のご心配をして頂きまして有り難うございます。過去や諸外国の例を見ますと消費税率引き上げの前後には、駆け込み需要およびその反動減等が見込まれるもののその前後の期間でならしてみると経済への影響は限定的になると考えております。
【コメント】それは違う。甘利大臣の言う「諸外国の例」は15年間も続いたデフレの中で消費税増税を強行した例ではない。確かに好調な経済のときに消費税増税を行ってもそれほど悪影響はないだろう。しかし、国民が経済に関し弱気になっているときに緊縮財政を強行すれば悲惨な結果になる。例えば井上準之助は不況時に強烈な引き締めを行い昭和恐慌を招いた。また景気回復の途中で緊縮財政を行い大不況を招いたのはルーズベルト不況(又はルーズベルト恐慌)と呼ばれるものだ。デフレが完全に収束していない時に、そして人々の心の中からデフレが消え去っていないときに緊縮財政に移行すると予想をはるかに超える大惨事が起きるという歴史の教訓だ。
http://shimotazawa.cocolog-wbs.com/akebi/2010/10/post-dfb6-1.html
http://electronic-journal.seesaa.net/article/248510081.html

以下の図で分かるように、基礎的財政収支(PB)が悪化するのは財政出動をするときというより、景気が悪くなったときだ。
                          出所:OECD Economic Outlook 92 (2012)

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2013年4月10日 (水)

来年の消費税増税で不況に逆戻り(No.127)

                -5つのシンクタンクによる経済予想-

主要民間シンクタンクの経済予測をまとめる。実質GDPの予測(伸び率:%)は次のようになっている。

2012年度  2013年度  2014年度 
日経センター    1.1      2.3      -0.2    
三菱総研      0.9      2.3       0.3    
みずほ総研     0.8      2.1       0.4    
大和総研      1.0      2.7       0.4     
ニッセイ基礎研   0.9      2.4      -0.2     
      平均       0.9            2.4              0.1
2013年度はアベノミクス効果もあってか、結構なGDPの伸びであるが、2014年度になると消費税増税のお陰でGDPは大きく落ち込む。2%のインフレ目標どころの騒ぎでは無い。我々がうんざりしている不況がまたやって来る。

不況の原因は消費税増税で実質所得が減少したことによる消費の落ち込み、駆け込み需要の反動と景気対策を続けなかったための財政削減効果などだ。次に民間最終消費(実質)の予測(伸び率:%)を示す。
         2012年度  2013年度  2014年度 
日経センター    1.4       1.4       -1.0  
三菱総研      1.4       1.2       -0.4  
みずほ総研      1.4       1.4        -1.3  
大和総研      1.4       1.6        -0.9  
ニッセイ基礎研    1.4       1.2       -1.5  
  平均       1.4        1.4        -1.1

当然の事ながら、消費の伸びなくしてデフレ脱却はあり得ない。2年後デフレ脱却どころか、デフレは悪化するという予測だ。2015年度には更に過酷な大増税が待っている。次に景気に大きな影響を与える民間住宅投資(実質)の予測(伸び率:%)を示す。
         2012年度  2013年度  2014年度 
日経センター    4.9        7.2       -7.3  
三菱総研      5.0        5.5        -4.4  
みずほ総研      4.2        6.4        -7.9  
大和総研      4.9        6.4        -4.9  
ニッセイ基礎研    5.0          9.1       -12.8  
 平均        4.8         6.9        -7.5
原材料や電気代の値上がりに加え消費税の大増税、消費の急激な減少は多くの企業の破綻に追い込み、日本に投資を始めた海外投資家も一斉に資金を引き揚げれば株式の大暴落を招く。株式に重点を移し始めた年金積立金も巨額の損失が発生し、年金が危なくなる。年金財政を安定させようとした増税が裏目に出る。国民は経済政策が必敗したと思い内閣支持率は急降下し、政権は存続すら危うくなる。このようなシナリオさえも考えられるのでは無いだろうか。

次の図はみずほ総合研究所による消費者物価の見通しだ。コアCPIという黒い線が今注目している消費者物価の推移である。みずほの予測だと、消費税増税が予測されている来年の4月にはまだデフレは続いている。消費税増税なら増税分だけ物の値段がかさ上げされ、物価上昇のように見えるが、そのかさ上げされた部分を除くと、実質所得の減少で消費が減り、実質的にデフレは悪化する。

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何が悪かったのか、アベノミクスの3本の矢は失敗だったのかと言えばそうではない。財政・金融・成長戦略の3本の矢だが、このうちで景気への影響が圧倒的に大きいのは財政だ。2013年度は10.3兆円の財政出動を行い景気改善に貢献したのだが、2014年度は増税だから財政の矢を逆向きに放とうとしている。これでは折角上昇しかけた景気を撃墜してしまう。デフレを脱却するには正しい方向に矢を放ち続ける必要がある。つまり消費税増税を延期し、デフレが完全に終わるまで景気対策を続けることだ。一時しのぎの景気対策ではなく5年~10年計画で成長戦略を考えなければならない。インフレ率2%達成目標だけでは夢も希望もないのではないか。所得倍増計画とまでいかなくとも所得3割増計画を掲げて頂きたい。

国債を増発すると国債が暴落するという俗説がある。しかし、今回の緊急経済対策でも国債は暴落するどころかむしろ上がっている。今後経済対策を続けたとしても、国債が売りに出されれば黒田日銀総裁は買いまくるだろう。国債暴落の余地は全くない。インフレを危惧する意見がある。デフレ脱却とはインフレにすることだが、上記の消費者物価見通しを見て頂きたい。国債を買いまくると主張する黒田氏が日銀総裁になったのに、物価見通しでは「インフレ率2%達成は無理」となっている。これは絶対に無理と言っているのではなく、財政という矢を逆向きに放ったら無理と言っているのであって、増税を中止し財政出動を続ければ無理でなくなる。政府と日銀が一体となって立ち向かわなければ「失われた20年」は終わらない。インフレ目標達成に自信を持つ黒田総裁はハイパーインフレを起こさないことにも自信を持っている。国債発行残高が増えても、経済が拡大しGDPが増加すれば国の借金のGDP比は下がってきて、借金は実質的に減ってくる。

円安・株高がデフレ脱却に大きく貢献すると思っている人が多いかもしれない。実際マクロ計量モデルで試算を行ってみると、これらの効果は財政出動に比べればずっと小さいのだ。更に悪いことには、円安や株高は一部の企業や国民にしか利益をもたらさない。これに消費税増税が加わるとどうなるか。円安に加え輸出戻り税が加わって輸出企業には大変な利益をもたらすが、それ以外の企業には原材料・電気代の値上がりに加え消費税増税で大打撃となり、経済に大きな歪みを生じさせてしまう。国民が政治への不満を爆発させてもおかしくない。

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