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2013年4月10日 (水)

来年の消費税増税で不況に逆戻り(No.127)

                -5つのシンクタンクによる経済予想-

主要民間シンクタンクの経済予測をまとめる。実質GDPの予測(伸び率:%)は次のようになっている。

2012年度  2013年度  2014年度 
日経センター    1.1      2.3      -0.2    
三菱総研      0.9      2.3       0.3    
みずほ総研     0.8      2.1       0.4    
大和総研      1.0      2.7       0.4     
ニッセイ基礎研   0.9      2.4      -0.2     
      平均       0.9            2.4              0.1
2013年度はアベノミクス効果もあってか、結構なGDPの伸びであるが、2014年度になると消費税増税のお陰でGDPは大きく落ち込む。2%のインフレ目標どころの騒ぎでは無い。我々がうんざりしている不況がまたやって来る。

不況の原因は消費税増税で実質所得が減少したことによる消費の落ち込み、駆け込み需要の反動と景気対策を続けなかったための財政削減効果などだ。次に民間最終消費(実質)の予測(伸び率:%)を示す。
         2012年度  2013年度  2014年度 
日経センター    1.4       1.4       -1.0  
三菱総研      1.4       1.2       -0.4  
みずほ総研      1.4       1.4        -1.3  
大和総研      1.4       1.6        -0.9  
ニッセイ基礎研    1.4       1.2       -1.5  
  平均       1.4        1.4        -1.1

当然の事ながら、消費の伸びなくしてデフレ脱却はあり得ない。2年後デフレ脱却どころか、デフレは悪化するという予測だ。2015年度には更に過酷な大増税が待っている。次に景気に大きな影響を与える民間住宅投資(実質)の予測(伸び率:%)を示す。
         2012年度  2013年度  2014年度 
日経センター    4.9        7.2       -7.3  
三菱総研      5.0        5.5        -4.4  
みずほ総研      4.2        6.4        -7.9  
大和総研      4.9        6.4        -4.9  
ニッセイ基礎研    5.0          9.1       -12.8  
 平均        4.8         6.9        -7.5
原材料や電気代の値上がりに加え消費税の大増税、消費の急激な減少は多くの企業の破綻に追い込み、日本に投資を始めた海外投資家も一斉に資金を引き揚げれば株式の大暴落を招く。株式に重点を移し始めた年金積立金も巨額の損失が発生し、年金が危なくなる。年金財政を安定させようとした増税が裏目に出る。国民は経済政策が必敗したと思い内閣支持率は急降下し、政権は存続すら危うくなる。このようなシナリオさえも考えられるのでは無いだろうか。

次の図はみずほ総合研究所による消費者物価の見通しだ。コアCPIという黒い線が今注目している消費者物価の推移である。みずほの予測だと、消費税増税が予測されている来年の4月にはまだデフレは続いている。消費税増税なら増税分だけ物の値段がかさ上げされ、物価上昇のように見えるが、そのかさ上げされた部分を除くと、実質所得の減少で消費が減り、実質的にデフレは悪化する。

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何が悪かったのか、アベノミクスの3本の矢は失敗だったのかと言えばそうではない。財政・金融・成長戦略の3本の矢だが、このうちで景気への影響が圧倒的に大きいのは財政だ。2013年度は10.3兆円の財政出動を行い景気改善に貢献したのだが、2014年度は増税だから財政の矢を逆向きに放とうとしている。これでは折角上昇しかけた景気を撃墜してしまう。デフレを脱却するには正しい方向に矢を放ち続ける必要がある。つまり消費税増税を延期し、デフレが完全に終わるまで景気対策を続けることだ。一時しのぎの景気対策ではなく5年~10年計画で成長戦略を考えなければならない。インフレ率2%達成目標だけでは夢も希望もないのではないか。所得倍増計画とまでいかなくとも所得3割増計画を掲げて頂きたい。

国債を増発すると国債が暴落するという俗説がある。しかし、今回の緊急経済対策でも国債は暴落するどころかむしろ上がっている。今後経済対策を続けたとしても、国債が売りに出されれば黒田日銀総裁は買いまくるだろう。国債暴落の余地は全くない。インフレを危惧する意見がある。デフレ脱却とはインフレにすることだが、上記の消費者物価見通しを見て頂きたい。国債を買いまくると主張する黒田氏が日銀総裁になったのに、物価見通しでは「インフレ率2%達成は無理」となっている。これは絶対に無理と言っているのではなく、財政という矢を逆向きに放ったら無理と言っているのであって、増税を中止し財政出動を続ければ無理でなくなる。政府と日銀が一体となって立ち向かわなければ「失われた20年」は終わらない。インフレ目標達成に自信を持つ黒田総裁はハイパーインフレを起こさないことにも自信を持っている。国債発行残高が増えても、経済が拡大しGDPが増加すれば国の借金のGDP比は下がってきて、借金は実質的に減ってくる。

円安・株高がデフレ脱却に大きく貢献すると思っている人が多いかもしれない。実際マクロ計量モデルで試算を行ってみると、これらの効果は財政出動に比べればずっと小さいのだ。更に悪いことには、円安や株高は一部の企業や国民にしか利益をもたらさない。これに消費税増税が加わるとどうなるか。円安に加え輸出戻り税が加わって輸出企業には大変な利益をもたらすが、それ以外の企業には原材料・電気代の値上がりに加え消費税増税で大打撃となり、経済に大きな歪みを生じさせてしまう。国民が政治への不満を爆発させてもおかしくない。

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コメント

 お晩です。higashiyamato1979です。市場原理主義・新自由主義の影響力は未だ健在ということですか。テレビや新聞はもとより書店の経済書のコーナーを覗いてみても三橋氏の云う「ドミナントストーリー」の持ち主と思しき面々の著作がかなりのスペースを我が物顔で占拠しています。最近出版されたそのような著作の中で谷本真由美なる海外在住の長い人物の著作がやけに気になっております。書店で立ち読みしましたが数分で頭がクラクラしてきました。極端な例ではないかとのご指摘もあるでしょうがアマゾンのブックランキングによれば売れ行きはかなり良好な様で社会への影響力は無視できませんし、またこれほどまでに純粋培養的な例は珍しく、それだけに三橋氏の云う「ドミナントストーリー」や「経済的自虐史観」について知る上で貴重な例だと考え敢えて紹介した次第です。長文失礼致しました。
 それでは決まり文句! お金が無ければ刷りなさい! 労働はロボットに!人間は貴族に!
 

投稿: higashiyamato1979 | 2013年4月10日 (水) 18時25分

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