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2013年5月

2013年5月26日 (日)

アベノミクスは砂上の楼閣 ―消費税増税で崩壊の危機―(No.130)

5月23日、日経平均株価は1万5900円から暴落し一気に1500円近く下げた。中国の景気指標悪化が原因だと言われている。消費税増税は、これに比べれば景気への悪影響は桁違いに大きいから、アベノミクスを跡形も無く崩壊させる可能性がある。長年株価下落で苦しんだ投資家は、僅かの悪材料でもすぐに資金を引き揚げることを忘れてはならない。

1 主要民間シンクタンクの経済予測
最新の実質GDPの予測(伸び率:%)は次のようになっている。

         2012年度  2013年度  2014年度  2015年度
日経センター    1.2      2.6        0.4    
三菱総研      1.2      2.6       0.4    
みずほ総研     1.2      2.7       0.6                   
ニッセイ基礎研   1.2      2.6        0.0             0.8
     
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      平均       1.2            2.6              0.4             0.8
2013年度はアベノミクス効果もあってか、結構なGDPの伸びであるが、2014年度になると消費税増税のお陰で成長率は大きく落ち込む。2%のインフレ目標どころの騒ぎでは無い。我々がうんざりしている不況がまたやって来る。

不況の原因は消費税増税で実質所得が減少したことによる消費の落ち込み、駆け込み需要の反動と景気対策を続けなかったための財政削減効果などだ。次に民間最終消費(実質)の予測(伸び率:%)を示す。
          2012年度   2013年度   2014年度  2015年度 
日経センター    1.6         1.9        -0.7 
三菱総研      1.6         1.8        -0.2  
みずほ総研     1.6          2.2        -1.2               
ニッセイ基礎研  1.6          2.0        -1.3           0.3  
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  平均       1.6          2.0         -0.9          0.3

当然の事ながら需要不足の現在、消費の伸びなくしてデフレ脱却はあり得ない。2年後デフレ脱却どころか、デフレは悪化するという予測だ。2015年度には更に過酷な増税が待っている。次に景気に大きな影響を与える民間住宅投資(実質)の予測(伸び率:%)を示す。
         2012年度   2013年度   2014年度  2015年度 
日経センター     5.3        9.3         -6.0
三菱総研       5.3        6.7         -3.8  
みずほ総研      5.3       7.6          -8.4               
ニッセイ基礎研   5.3        9.0         -13         1.4  
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 平均         5.3        8.2         -7.8         1.4

これで分かるように消費税増税は景気に深刻な悪影響を与える。アベノミクスによる株価高騰で株式時価総額は160兆円も増加したと言われている。消費税増税によりそれを一夜にして失ってよいのだろうか。消費税増税による税収増は僅か8兆円足らずにすぎないというのに。

2.浜田宏一内閣官房参与が消費税増税先延ばしを提言
5月24日号の週刊朝日で浜田宏一氏が消費税増税を先延ばしするように進言している。デフレ下で増税を行って経済が回復した例は無いとし、消費税増税を実施するための条件は次の3つだとしている。
① デフレギャップが解消されること
② 失業率が3%台に下がること
③ 有効求人倍率が1.5倍~2倍にまで上昇すること
消費税は景気の上向きの芽を摘む。財務省は増税リスクを説明すべきだと浜田氏は主張している。
 またFACTA 2013年6月号には次の見出しで高橋洋一氏の記事が掲載されている。
消費税増税「来年スキップ」浮上 英国の二の舞を避けよ。マネーストックは2年後の経済を決定する。増税はインフレ目標を達成してからでいい。

3.実質GDP 1-3月期 3.5%成長 の実態
2013年1-3月期の実質GDPは前期比年率3.5%となったことで、景気回復と思った人がいるかもしれない。しかし景気の実感は名目GDPに関係している。名目GDPの推移を下図で示した。内閣府の名目GDPのデータによると、1997年10-12月期は524兆4361億円だったのに、2012年10-12月期には473兆1483億円、2013年1-3月期には474兆8873億円になった、つまり今期は前期に比べ1兆7千億円増加しただけだ。しかし16年前と比べると、まだ49兆5千億円も減少している。この間に中国に抜かれてしまい世界第3位に転落した。このペースで増加していくと1997年のレベルまで回復するのに
29年もかかってしまう。こんな経済状態で消費税増税を行い更に経済発展にブレーキをかけてよいのだろうか。

1301         

国際的にも日本の経済不振は際立っている。次の図は2005年を100とした、先進5カ国の名目GDPの比較である。諸外国はリーマンショックの水準と取り戻し、更に発展し続けているが、日本だけはその水準よりはるか下のレベルだ。

1302

1303

もっと長期的にも日本経済の凋落は明らかだ。1993年を100として比較して下図に示した。これらのグラフを見て、日本経済の低迷は深刻であると分かる。失われた20年の絶望の中で、アベノミクスはかすかな希望を日本人に与えてくれた。しかしその希望の光を絶ってしまったら日本の経済回復のチャンスは二度と訪れないのではないか。賃金が上がらない中で、消費税増税で物価だけが上がってしまったら、消費は低迷、需要不足は更に深刻化する。弱体化した日本経済を襲うのがTPPなど市場開放で、国際競争の荒波に身をさらして、本当に生き残れるのだろうか。

1303_2

外国人投資家が逃げ去り、再び株安に陥った日本で何ができるだろう。金融緩和策も万能ではない。行き過ぎた円安は諸外国からの厳しい批判を浴びるだろう。

国を貧しくしてしまったら、巨額の国の借金は返せない。アベノミクスの提唱者浜田宏一氏の助言に従い消費税増税は延期し、景気回復に全力を尽くし、本格的に景気が十分回復してから財政健全化の方法を考えるべきではないか。

 

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2013年5月 8日 (水)

政治のロボット化、財務省・日銀をコンピュータに置き換えよ(No.129)

「労働はロボットに、人間は貴族に」というキャッチで、我々はロボットを積極的に導入するように提唱している。その中でも最重要なのが政治のロボット化だ。財務省や日銀の主要な仕事をロボット(=コンピュータ)に置き換えれば大変な繁栄をもたらすことに誰も気づいていない。

様々な能力においてコンピュータが人間を超えてきていることは皆さんよくご存じと思う。先月、コンピュータとプロの将棋棋士が対戦し、コンピュータが3勝1敗1引き分けで勝った。トップ棋士を破ったGPS将棋というソフトだが、世界コンピュータ将棋選手権では3位だったから、それよりも更に強いのが2ついるということだ。しかも、コンピュータは毎年ものすごい勢いで読む速度が速くなり様々な手を覚えて強くなりつつある。もう将棋の名人でも、ハンディをつけないと勝てないのではないか。チェスにおいては1988年にコンピュータが世界チャンピオンを破り、もはや人間は誰もコンピュータに勝てなくなっている。

日銀と財務省の主要な仕事をコンピュータに置き換えたらどうなるのか、是非考えて頂きたい。と言うのは、日本の長期にわたる景気低迷は日銀と財務省の政策が失敗したからであり、コンピュータであれば間違わなかったと確信しているからである。もちろんコンピュータに正しく教えないと何にもならない。どう教えればよいだろうか。多くの人間を最も幸せにする方法を考えろと教える。国民の幸せとはできるだけ多くの人々の要望を政策に繁栄することだ。

コンピュータに財政・金融政策を教えたら、そのメリットは計り知れない。というより「労働はロボットに、人間は貴族に」という世界の実現には、不可欠というべきかもしれない。まず、経済データをすべてコンピュータに覚えさせる。それは全国の地方自治体の財政データのみならず、インフラの状況、交通渋滞の状況を含む道路関連の情報、災害に対する危険度、教育、医療、介護等あらゆるデータだ。政治家はその100万分の1も覚えられないだろう。

次に計量経済モデルを理解させる。これは日本に存在するあらゆる経済モデルを覚えさせれば良い。そしてそれらをそれぞれ走らせ、実際の経済データをどれだけ正しく再現できるかを判断させる。これぞ人工知能だ。毎年、大はずれの予測ばかり出している内閣府のモデルは真っ先に除外されるだろう。様々なモデルの結果を現実と比較しているうちに、だんだんコンピュータは正しい経済予測と経済政策を決定できるようになる。これまでは人間のカンに頼っていた経済政策・金融政策が,あまりにお粗末であったことを理解するようになるだろう。コンピュータが経済政策・金融政策を行うようになれば、様々なメリットが出てくる。

①限られた数の政治家や官僚が陳情を受けていたら、圧力団体を持つ人たちには有利だが、陳情しない人たちの声は反映されないし、また陳情する人たちやその陳情を受ける政治家たちに膨大な労力を強いることになる。しかも利権が絡み巨額のカネが裏で流れてフェアでない、つまり圧力団体を持つ一部の国民の利益にしかならないという問題がある。コンピュータによる判断であれば、一瞬で決断できるし、計算過程をたどれば不正が無かったかを後で確かめることができるから不正は入りにくい。またコンピュータは最も多くの人の利益を最優先するのだから、国民の生活レベルの向上に資することは明らかである。

②経済を発展させようと思えば市中に流れるお金の量を最適にしなければならない。しかし、現在の日本ではその調整に失敗しているためにデフレが十数年も続くという悲劇に見舞われている。コンピュータなら適正レベルに通貨を発行し、経済発展に最適なマネーストック(マネーサプライ)の増加率を選択する。日銀と財務省が一体となったコンピュータシステムであり、発行された通貨を政府が財政に使うという方法であるから国債の発行も必要がない。

③この方法だと国債を発行しなくてよく、「生まれながらにして日本人は1千万円近い借金を背負う」といった馬鹿げた事は無くなり、日本人を借金地獄から解放する。国債の暴落の心配も全くない。財政の健全化、財政規律の遵守等は全く気にしなくてもよくなる。

④「政府が一度通貨発行して使い始めたら、際限なく通貨発行してハイパーインフレに陥る」といった人間特有の愚行はあり得ない。コンピュータは私利私欲を離れ、国民の幸せのための判断をするのだ。

⑤ということになれば、20兆円以上の国債費の支払いもなくなるからそれを減税に回せる。国の借金が多いからデフレで需要不足でありにも拘わらず歳出削減・増税という矛盾した政策から永遠に解放される。

⑥現在の制度だと、馬鹿な政治家・中央銀行総裁の間違った判断で、世界大恐慌などに陥り、多くの人々を苦しむことになる。コンピュータならそれはあり得ない。

もしも政治のロボット化・財政・日銀のコンピュータ化を目指さないなら、日本は次のような深刻な問題に直面することになる。これは人間の愚かさ,偏見、迷信に基づく判断の誤りからくるものだ。

①国の借金が多いからこれ以上財政出動ができないということなら、発行した通貨を国民に渡す手段が絶たれる。

TPPを含む成長戦略を練り生産性を上げるのであれば、農業も含め多くの人が職を失う。しかもその受け皿が無いので失業率は高まる。

政治のロボット化が進めば、強力な財政出動により職場は十分確保される。国債を発行せずにどうやって財源を確保するかだが、それは通貨発行でよい。人間に行わせると、通貨発行を繰り返しハイパーインフレになるという迷信から日本は長い間デフレから抜け出せないでいる。実際は通貨発行をする勇気がなくて、長期にデフレから抜け出せていない。コンピュータであれば、そのような恐怖感も迷信も完璧に排除でき、最良の通貨発行量を選択できる。

もちろん、いきなり税金が無くなるわけでもないし、諸外国とのやりとりも別途必要だ。政治家が完全に不要になるわけでもない。しかし「政治のロボット化」は、「労働はロボットに、人間は貴族に」という理想の社会の構築のための第一歩になるだろう。

安倍総理、日銀と財務省のコンピュータ化を考えては如何ですか。世界一のコンピュータをつくるのでしょう。世界一のコンピュータに経済・財政運営を任せ、日銀もその中に組み込んでは如何でしょう。

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