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2013年6月24日 (月)

インフレが暮らしを豊かにする(No.135)

日本人はインフレを嫌い、デフレを好む。世界中捜しても、そんな国は日本だけだ。デフレは国の経済を縮小させ国を貧乏にし、国民はどんどん貧乏になる。民主党政権はそれにおかまいなしだったから国民の支持を失った。今回の都議会選ではなんと第一党から第4党へ転落した。安倍政権になってから「輪転機をぐるぐる回しお金を刷る」政策、アベノミクスを始めた。麻生財務大臣も日本の借金はお金を刷って返せばよいと発言した。デフレを脱却し、インフレを目指す政策に転換したことは、大変な進歩だ。

毎日買い物をしている主婦にとっては、インフレは大敵だし買い物に行って値上がりしていたら頭にくる。一日に何回も憤っているのかもしれない。一方で給料が上がるのは年に一度か二度程度。つまり、一年に2~3000回憤って、1~2回喜ぶ。だからインフレは怒りのほうが喜びより1000倍以上大きいのだろうか。過去130年間の賃金と物価の推移をグラフにしてみた。

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物価より賃金のほうがはるかに上がっていることは明らかだ。それだけ物が多く買えるようになった。130年前は1年間一生懸命働いても、やっと家族を養うだけの賃金しか稼げなかった。不作の年は飢餓に直面した。今は最悪でも生活保護があり、手続きさえすれば飢え死にはしない。安い外米を輸入しても買う人はおらず、高くてもおいしい米が売れる。その意味でも130年前との違いはグラフに示されるもの以上だ。さらに、現在入手できる多くのものは130年前には入手できなかった。テレビ、スマホ、メール、抗生物質、航空券等は入手不可能、つまり130年前には無限大の価値があったものだ。

ところで上図では戦前はどうなっていたか分からないので、対数グラフにしてみよう。

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賃金のほうが物価以上に上がっていたというのは戦前からだったことがわかる。つまり、インフレにもかかわらず、暮らしはどんどん改善されてきた。しかし、デフレの続く平成において状況は一変した。

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世界中で日本だけがデフレ経済で、平均給与(国税庁発表)の値下がりは物価の下落より大きい。デフレ時には積極財政や減税で国民にお金を渡せば、簡単にインフレ経済に戻ることができる。消費を増やせばよいだけだ。しかし、不幸なことに、日本人は財政健全化と少子高齢化対策として緊縮財政、増税が必要だと思い込まされてしまった。しかしデフレ時に緊縮財政は国民からお金を奪い、デフレを悪化させるので財政健全化にも少子高齢化対策にも悪影響を与える。このことに気付いた国民はアベノミクスを支持し、少しずつデフレ脱却へと歩み始めている。

かつて松方デフレの際にも賃金のほうが、物価の下落よりきつかった。

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これは西南戦争の戦費調達のため、政府はお金(政府紙幣)を刷りインフレになった。このインフレを解消しようと大蔵卿松方正義が紙幣を回収し、焼き払った。増税を行い歳出も削減したので激しいデフレをなり、農民の生活を困難にした。これは松方デフレと呼ばれている。その後、インフレ経済に戻ると、賃金のほうが物価以上に上昇している。

次に戦後のインフレの時代を見てみよう。ハイパーインフレとまではいかないが10%以上なのでギャロッピング インフレーションと呼ばれる。インフレで生活はどうなったのだろうか。

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焼け野原になった日本は戦後物不足に襲われ、傾斜生産方式による復興政策が始まると復興金融金庫から鉄鋼産業と石炭産業に大量の資金が融資された結果、復興インフレが発生した。インフレを止めるため1949年にドッジ・ラインが導入され、インフレは止まったが賃金は上がり続けた。1950年~1953年の間、朝鮮特需のお陰で日本経済は大きな恩恵を受けた。戦後の高いインフレで暮らしは悪化したのではなく、生産の回復で急速に暮らしは楽になっていった。

次に戦後の高度成長期を見てみよう。

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高度成長期には、物価も上がった。1974年にはオイルショックで23%も上がったが、それ以外の年でも数%程度ののインフレ率で、今では考えられない数字だ。しかし、このグラフでも分かるように、賃金の上昇はそれをはるかに上回り、急速に生活は改善されていった。

次に戦前のデータを示す。

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これで分かることは、戦前も賃金のほうが、物価よりずっと速く増えていたことだ。この間で大きく物価が上昇したのは、第一次世界大戦の時だ。戦争特需で巨額の外貨を稼いだ企業が外貨(正貨)を円に替え、その円が大量に日本で出回ったためにインフレになった。しかし長期的に見れば賃金のほうがもっと上がったので、暮らしは楽になった。よく見ると1920年~1929年の間はデフレなのだが、それでも賃金は上がっている。ここで考えられる理由は労働運動の盛り上がりだ。次のグラフで分かるように1917年からストライキの件数も参加人数も急上昇している。

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第一次世界大戦頃の様子をもっと詳しく見てみよう。

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第一次世界大戦の間は、成金が手に入れたお金で商品を買いまくり、また国内で生産されたものをどんどん輸出したため、国内では物不足となりインフレを加速させた。またお金が一般国民に広く行き渡ったわけでなく、多くの場合、労働者、サラリーマン、官吏の生活はかえって苦しくなった。一方で大金を手に入れた成金たちに対し、一般国民は「俺たちにも分け前をよこせ」というわけで労働運動も活発になった。大戦景気の労働需要の高まりや大衆運動勃興の影響で、労働者間でも権利を求める活動が活発化し、やがて、労働争議の頻発に呼応して労働組合として性格を強めた。

1920年3月15日の東京株式市場の大暴落に端を発した1920年恐慌は、それまでにない大幅な価格の暴落、企業の倒産を引き起こした。しかし、日銀特融で最悪の事態は逃れた。その後も企業は支払い能力はあるとして労働組合の要求は続き、賃金は上がり続け生活は改善されている。

この例からも明らかなように、我々現代に生きる者として、次の世代に豊かな国を手渡すために必要なことは、生活を改善するよう政府に強く要求することだ。消費税増税阻止、歳出を拡大し、医療・介護・福祉・教育・社会インフラ整備、補修等に思い切った予算をつけ、デフレを脱却せよと声を上げよう。

結論としては、インフレを過度に恐れる必要は全く無い。今、万一財政が破綻し、国債が暴落し、国債に流れ込んだ資金が一気に流れ出て急激なインフレを引き起こしたとしても、過去の経験からして、それは国民の生活水準をむしろ引き上げるし、国の借金のGDP比を大幅に引き下げる。また国債の再暴落の危険も去り、円安が進み国内企業が活性化する。デフレから脱却ができ、給料も上がり始める。日本人にとって夢の世界ではないか。資産を現金で持っている人は、国の内外の株や投資信託に移しておけば、国債から流れ出た資金が一気にそれらに流れ込み、その資産が値上がりしインフレでも価値は失われない。

参考にした文献
明治以降本邦主要経済統計 日本銀行
日本統計年鑑 2 1950年
日本統計年鑑 3 1951年
長期経済統計 8 物価
大正デモクラシーの政治経済学
概説日本経済史

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コメント

 お晩です。higashiyamato1979です。コメントが遅れ申し訳ありません。インフレ経済の下では物価は上昇するが賃金はそれ以上に上昇する、そしてそれは戦前戦後を通じて変わりない・・・これこそデフレに苦しむ日本が、日本人が改めて確認せねばならない事実です。マスゴミは相変わらず伝えませんから草の根の国民一人一人がこの事実を周知拡散してゆかねばなりません。
 それでは決まり文句! お金が無ければ刷りなさい! 労働はロボットに!人間は貴族に!

投稿: higashiyamato1979 | 2013年7月 6日 (土) 17時57分

一方モンクレールも非常に積極的に "イタリア製"ロゴ活動の濫用に対して大規模に関与
http://www.monclerdown-japan.com

投稿: モンクレール | 2013年8月23日 (金) 10時36分

 インフレ2%が継続できたら、36年間で貨幣価値は半減する。3%なら24年間で半減する。
 貨幣価値半減とは、財政赤字の額面は変化しないが、対GDP比は200%から100%に低下することだ。
 現在得ている消費税額は、5%で約10兆円。3%増税して、うまくいって約6兆円の増加。財政赤字1000兆円が半減する差額500兆円の36分の一は、約14兆円だ。なぜ税率アップにこだわるのか納得がいかない。
 本来、24年なり、36年で金融資産が半減すると聞いたら、富裕層は対策を考えるだろう。不動産を購入する、宝石を購入する等の行動がとられることも付け目と思う。

投稿: Old Nutria | 2013年9月13日 (金) 08時42分

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