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2013年7月

2013年7月25日 (木)

消費税増税を凍結し金利が上がれば、日本経済は復活する(No.137)

消費税増税をするかしないかの判断が9月にも行われるとされている。マスコミによれば国民は次の2つの選択肢の中の一つを選ぶのだそうだ。
①消費税増税を行い景気が悪化し税収も伸びない
②消費税増税を凍結すると金利が上がり景気が悪化する。

おかしな選択肢で、これでは日本には景気が悪くなる選択肢しかないということになる。増税してもしなくても景気が悪くなるのだが、どちらを選ぶかという馬鹿な質問だ。

消費税凍結なら、財政に関し国際的な信用を失うから国債が一斉に売り出され国債が暴落し、金利が上がり景気が悪くなるのだそうだ。暴落というと一体金利は何%上がると言いたいのか。国債暴落とはとても言えないかもしれないが、例えば金利が3%上がるとしよう。それは、今より3%高い金利でも融資を受けて設備投資をしたいと企業が言い出すことだ。また、住宅ローンが現状の3%増しでも家を建てたいと国民が言い出すことだ。それは大変な好景気の訪れを意味する。毎年給料が下がっている現状では夢のまた夢だ。地価がまだ下がり続け、しかも年金の不安もある状況を考えると尚更だ。アベノミクスの恩恵を受けていない多くの国民にとって消費税増税だけでいきなりそのような心変わりがあり得るわけがない。

南欧では財政不安からいきなり金利が上がったから、あれと同じことが日本でも起こると言っている人は経済を知らない人だ。南欧では国が通貨発行権を持っていないから政府が発行する国債の信認は赤字財政で一気に失われる。デフォルトの危険があるのだ。危ない会社にカネを貸すのと同じで、利子を余程高くしなければ貸す人はいない。

もし、その会社が国から特別に通貨発行権を与えられているとしたら話は別だろう。お金が足りなくなったら、社内の印刷機でいくらでも刷れるとしたら、100%間違いなくお金は返してもらえる。だから低い利子で貸しても大丈夫だ。日本はその立場にある。南欧で金利が上がったのは、限られたお金を政府と国民が奪い合いをしていて、政府が使いすぎると国民の使うお金が減ってくる。これがクラウンディングアウトと呼ばれる現象だ。日本はいくらでもお金を刷れるのだから、日銀がお金を刷り続けている限りそんなことは起こりえない。異次元の金融緩和をすると言っているのに、市場に資金不足を起こさせることはあり得ない。

金融機関が勝手に金利を上げて、誰も借り手がいなくなったらどうするかという質問があるかと思う。そうすれば、金融機関の存在価値が無くなる。金融機関の業務が国債を買って運用することだけなら、金融機関はいらない。日銀が政府と直接やりとりするだけで十分だ。金融機関は借り手がいなくなるまで金利を上げることはできない。そうであれば景気がよくなるまで金利は上げられない。だから②のように消費税増税を凍結するとすぐに金利が上がるということは起こりえない。消費税増税を凍結し、景気対策を十分行えば景気がよくなって、資金需要もでてくれば、当然金利も上がってくる。この順番だ。何らかの事情で突発的に銀行に資金が無くなって金利が上がるようなことがあれば、それは日銀が責任を持って資金を銀行に供給すべきである。

国債の投げ売りが始まったらどうするかという質問があるかもしれない。そのときは日銀が片っ端から買えばよいだけ。だけど売り出す金融機関にはリスクが伴う。国債を売った後、現金を得て何を買うのか。例えば銀行であれば国債を売り株を買えば自己資本比率が下がり、経営が危うくなる。第一株式保有比率は簡単には変えられない。大量に保有した株が下がって、苦労したバブル崩壊後の金融機関の悪夢は忘れられないだろう。そのまま現金で持っておくのは馬鹿馬鹿しい。利子がつかないから、それより国債で持っていた方がはるかによい。

いずれにせよ、十数年間需要不足に悩んでいる日本で、大規模な増税を行い更に需要を減らそうという馬鹿な政策は悪いに決まっている。十数年間も国民が景気に対して弱気な状態が続いているこの時期の大増税は、政府が考えているよりはるかに大きな経済の悪化を招くことを覚えておかねばならない。

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2013年7月 2日 (火)

かつての日本は軍事費が巨額で超積極財政だったが借金はそれほどでもなかった(No.136)

平成の日本人は積極財政が大嫌いのようだ。国の借金がGDPの2倍以上もあるのだから節約すれば減っていくと誤解している。実際は、政府が思い切って歳出を拡大すれば、借金のGDP比はみるみる減っていく。これが真実だということを知るには、例えば戦前の日本を見れば良い。軍事費のGNPを次に示す。

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これから分かるように、軍事費のGNP比は約5%程度で戦争が起きると激増している。現在の価格に直すと、年間予算は平時で25兆円、日清戦争のときは50兆円、日露戦争のときは130兆円にも昇ったことが分かる。最近の防衛費のグラフを以下に示す。

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GNP比は僅か1%前後で諸外国に比べても非常に低い。だから防衛費を戦前並にせよと言うつもりはない。ある元首相の亡国的発言もあり、尖閣防衛のためにしっかり予算をつけて欲しいとは思うのだが、防衛以外にもやらなければならぬことは山ほどある。次に戦前の財政の中に占める軍事費の割合を示す。


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当然の事だが戦争の度にすさまじい戦費を必要としていたことが分かる。現在、少しでも財政を拡大しようとすると、馬鹿な連中が「ハイパーインフレになる」とか「次世代へのツケを回す」などと言う。しかし、この時代、ハイパーインフレなど来なかったことは次のグラフで分かる。

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日清・日露・第一次世界大戦と日本は3連勝だったのだが、この中で最も戦費がかさんだのは日露戦争だった。今の価値で言えば750兆円程度の戦費がかかった。そんなに政府が使えばハーパーインフレになると馬鹿なエコノミストは言うだろう。しかし、この3つの戦争の中でインフレ率は最も低かった。実は、戦費を外債(つまりイギリス等からの借金)でまかなったから大したインフレにならなかった。逆に借金の返済のためお金が海外に流出したため、国内にそれほど巨額の資金は残らなかった。

3回の戦争の中で、最も戦費が少なかったのは第一次世界大戦だったが、逆にこのときが最もインフレ率が高かく、年率30%を超えた。このことからも、政府が多くカネを使えば、インフレ率が高くなるという単純思考は当てはまらないことが分かる。第一次世界大戦では日本は戦場にならず、本格的な戦闘に巻き込まれなかったし、戦争による特需で潤った。巨額の外貨を稼いだ成金連中が、それを円に替えて国内で使いまくったからインフレになった。

それでは、国が巨額の借金をして戦費を払った3回の戦争だが、それが将来世代へのツケにはなっていないことは、次のグラフよりはっきり分かる。

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確かに戦争の度に「国の借金」は増えるのだが、それはしばらくするとGNPの拡大のために、借金のGNP比は減って行っていることが分かる。日清戦争のときは、巨額の賠償金(3億円、国家財政の4倍)は国内に入ってきてインフレとなり、GNPが増加し、借金/GNPは減少した。日露戦争の際は、カネを使いすぎたために、増税も必要となり、戦費も外国からの借金で支払い、賠償金ももらえなかったが巨額の戦費がかかった。それでもたいしたインフレにならなかったし、GNPが大きく伸びることもなかった。そのため借金のGNP比の減少速度は遅かった。外国からの借金の返済で苦しみ、破綻寸前のところまで追い込まれていたときに第一次世界大戦の特需が入り巨額の利益を得た。稼いだ外貨が日本に入ってきてインフレになりGNPが急増し、借金のGNP比は激減した。その後第二次世界大戦でも莫大な借金がたまり、戦後にインフレでそれが消えた。

現在、債務のGDP比は200%を超えているのだが、戦前は、今よりずっとカネを使っていたのに債務のGDP比は今より低い。それは税収が伸びたというよりGDPののびが債務のGDP比を押し下げていたことは明らかだ。安倍政権が意を決して財政を大規模に拡大すれば、債務のGDP比は下がってくることは間違いない。

財政を拡大してインフレになれば、生活は苦しくなると思っている人には、次のグラフをお見せしたい。

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賃金のほうが、物価以上に上がっている。これは人間の知恵で、効率よく物が作れるようになったために、より多くの物を買えるようになった証拠だ。ついでに実質GNPのグラフも示す。

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物価は上がったり下がったりだが、実質GNPは着実に増加を続けていることが分かる。案ずることはない。生活は着実によくなってきているのだがから。

参考にした文献
明治以降本邦主要経済統計 日本銀行
日本統計年鑑 2 1950年
日本統計年鑑 3 1951年
長期経済統計 8 物価
長期経済統計 1 国民所得
長期経済統計 7 財政支出
大正デモクラシーの政治経済学
概説日本経済史

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