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2013年8月

2013年8月25日 (日)

なぜ97年の歴史的大失敗の反省をしないのか(No.141)

内閣府と財務省は1997年の消費増税を行った後の深刻な不況は増税が主因でなく、アジア通貨危機や金融危機が主因だと分析した資料を8月22日の公明党の会議で配ったそうだ。

1997年、橋本内閣の緊縮財政・消費税増税とアジア通貨危機が重なり、日本はデフレに突入した。万一、消費増税が来年4月から強行されたとしたら、97年の失敗を繰り返すのは間違いない。あの失敗の反省は無いのだろうか。97年の景気落ち込みの主因はアジア通貨危機であり消費税は関係ない、もしくはほとんど関係ないという説は明らかな矛盾がある。デフレは16年後の今日まで続いているがアジア通貨危機も金融危機もとっくに終わっているからだ。

実際あの通貨危機で経済が大きく落ち込んだアジアの国々は確かに存在する。タイ、韓国、インドネシア、フィリピン、香港、マレーシア等である。しかし、それらすべての国が1999年~2001年までにすべて景気回復に成功しており、日本以外デフレに陥った国はない。それから考えても、97年の日本の景気悪化の主因がアジア通貨危機だという主張には無理がある。実質GDPの比較を次に示す。

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97年の金融危機の影響で98年には実質GDPは軒並み落ち込んでいる。しかし翌年の99年には日本以外はすべて景気回復に向かっていることが分かる。このことからも、日本の景気落ち込みがアジア金融危機だけではなかったことは明らかだ。次にGDPデフレーターを見てみよう。

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こちらは若干遅れて影響が現れているが、日本以外は落ち込みは1年間だけで、そのすぐ後に急回復しているが、日本だけは十数年後の現在もまだデフレーターは回復していない。
日本だけデフレーターをもっと詳しくみてみる。消費増税がデフレのきっかけになったことを否定するのは難しい。

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デフレは需給ギャップから起きる。誰もが需要不足の存在を認める。総需要を増やさなければならないときに、消費増税をすると消費が落ち込みデフレギャップを拡大させデフレを悪化させる。このグラフからも今は消費増税のタイミングではないことは明らかだ。

                          出所:栗林世
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なぜこのような需要不足が発生するのだろうか。それは生産性の上昇に需要が追いつかないからだ。生産性の上昇率を見てみよう。

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これで分かるようにデフレの期間にも生産性の上昇は続いている。物が効率よく生産できるようになっていることだ。一方で雇用者報酬は下がっている。

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雇用者報酬が下がれば、物が買えなくなる。生産能力が拡大したのに消費を抑える政策を行えば物余りとなり、投げ売りが始まりデフレとなる。政府のやらなければならない政策は消費増税ではなく消費税減税なのだ。

デフレは中国等から安い商品が入ってきたことが原因だという人がいる。それでは輸入物価を見てみよう。

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当然のことだが、円高になれば輸入品は値下がりするのだが、それでデフレになるのだろうか。このグラフで分かるように、日本がデフレになっている間、輸入物価はむしろ上昇気味である。急激な円高で輸入物価は急激に下がる。

次のグラフで分かるように1986年には急激な円高が進んだ。

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そのお陰で輸入物価が大きく下がったのだが、それでもデフレにならなかった。次のグラフで示すように名目GDPは増加し続けている。

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このようなことから、デフレは輸入物価の下落で起きたわけではなく、需要不足で起きたことが分かる。

金融危機、山一証券や北海道拓殖銀行の破綻も主因の一つといいたいようだが、その影響が今でも続いているとは考えられない。いい加減な資料を内閣府や財務省は配布するのは慎むべきだ。

97年には需要不足を引き起こす政策が行われた。消費増税、健康保険の自己負担率の増加、特別減税の廃止で約9兆円の国民負担が増えた。これで国の借金を減らすことができたかというと、全くその逆で次のグラフで明らかなように借金が増え方が加速されるだけだった。

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このグラフから分かることは、景気が悪化すると借金は増加速度を増し、景気がよくなると借金は余り増えなくなるということだ。来年、消費増税を強行し景気を悪化させれば借金はどんどん増え出すが、増税凍結し景気回復に専念すれば、借金はそれほど増えなくなる。つまり消費増税は財政健全化に悪影響を与える。

97年の緊縮政策で景気を悪化させた後行われたのが景気対策だ。1998年 橋本内閣 16兆円超、1998年 小渕内閣 17兆円超、1999年 小渕内閣 17兆円超
2000年 森内閣 11兆円といったように大規模景気対策が行われたが景気は回復しなかった。景気対策が行われなかったら、日本経済は今よりもずっと悲惨な状態になり国の財政も比べものにならないくらい悪化していただろう。

諸外国は不況に陥ってもすぐに立ち直れるが、日本だけは一度不況に陥ると立ち直れない体質だという説もあるかもしれない。もしそうなら、今回の消費増税は危険極まりない。景気腰折れなら、日本経済は二度と立ち直れなくなるのだから。

ドイツ連銀 8月の月報ではアベノミクスによる景気押し上げ効果は「わらについた火」だそうだ。2013年にGDPを1.25%押し上げるだけで、2014年には消費増税で効果は大幅に縮小、2015年にはマイナスの効果になると主張している。

日経の日本経済モデル(NEEDS)の予測では、実質GDPの伸びは2012年度1.2%、2013年度2.7%、2014年度0.2%だから同様に来年度は急激な景気の落ち込みを予測する。となると2年間で2%のインフレ目標は夢のまた夢だ。もちろん、消費税でゲタをはかせた「インフレ率」であれば2%のインフレは可能だが、そんなもの意味がない。ゲタの部分を除けば、そんな景気の落ち込みがあれば目標は達成できるわけがない。

それでも2015年度になれば景気が回復するのではないかと期待しているのかもしれない。しかし、それは余りにも楽観的すぎる。97年不況の後デフレはまだ続いている。こんなに長期間デフレが続くことも、増税が国の借金を逆に増やしてしまうということも誰も予想しなかったのだろう。増税が行われば2014年度には97年と同じ事、いやもっと厳しい不況が来る。長年デフレに苦しんだ国民は景気の落ち込みに過剰反応を示すことを忘れてはならない。国民の不安が頂点に達し、消費を抑え、借金を減らそうと一斉に行動を起こし、それが不況を加速させる。是非、思いとどまって欲しい。過ちを繰り返してはならない。2014年に我々が突入しようとしている大不況は抜け出す方法が無い。もうこれ以上国は借金はできないと国民が信じている限り景気対策はできないのだから。

(注)この記事では、8月22日の栗林世氏の講演とその配布資料を参考にした。

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2013年8月21日 (水)

消費増税の賛否を聞く有識者会合は国民の声を代表していない(No.140)

消費増税を予定通り実施するのかしないのか、議論が活発になってきた。政府は8月20日に消費増税に関する意見を聞くための会合に出席する有識者59名を決めた。26日から31日まで7回会合を開き意見を聞く予定だ。どうやって人選をしたのか分からないが、多数は増税賛成論者だそう。NHKや毎日新聞の世論調査で両方とも消費増税賛成は国民の26%しかいなかった。

 

○8月に行われたNHK世論調査

「消費増税は行うべきか」

行うべき      26%

行うべきでない   42%

どちらともいえない 27%

その他        5%

 

○7月27日、28日に行われた毎日新聞の世論調査

予定通り引き上げるべきだ         26%

引き上げるべきだが、時期は先送りすべきだ 36%

現在の5%を維持すべきだ         35%

その他                   3%       

 

これらの結果に従って賛成論者はこれに比例して26%に限らないと、偏った意見を聞くことになってしまう。一体、誰がこのような人選をしたのだろうか。マスコミに登場するコメンテーターや政治家もほとんどが増税賛成派だ。

 

国民不在、政府は国民の声を聞く気はないのか!!共同通信はこの59名の有識者のアンケート調査を行っているので間もなくこの有識者の実態が分かるだろう。もし、その結果、上記アンケート結果を大きく食い違うようであれば、人選をやり直して真の国民の声を聞いて頂きたい。

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2013年8月 9日 (金)

内閣府=オオカミ少年がまた欺瞞的な経済財政試算を出してきた--これは予測ではなく目標だから当たらなくて当然だって!?-(No.139)

今年も8月8日に『中長期の経済財政に関する試算』が発表された。
http://www5.cao.go.jp/keizai-shimon/kaigi/minutes/2013/0808/agenda.html
例によって超高速でデフレ脱却し経済成長をするという予測だが、同様な予測を十年以上繰り返しているが、現実はまだデフレは脱却しておらず、GDPは1997年より10%近くも低いのが現状であり、予測ははずれっぱなしである。緊急地震速報ではずれたら気象庁は謝罪し、再発防止に全力を挙げると言うが内閣府は全く反省の色はないし、マスコミも政治家も疑うこと無く騙され続けている。

まず、名目GDPの馬鹿げた予測を見て頂きたい。

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今年は例年以上に高度成長を予測している。しかもこれは消費税増税という大きなハンディーがあってもこれだけ成長が可能だと言いたいのだ。しかし、内閣府に直接聞いてみると、これは目標であって予測ではないという。こんなに成長するわけがないと彼らも予測している。過去の「目標」もすごい。8年前の目標は、なんと2012年に645.2兆円になるというもの。現実は474.7兆円だから目標と現実の差はあまりにも大きい。アベノミクスだからこんなに成長するのだと絶対に思ってはならない。日銀がお金を刷って国債を買っているが、今のところそのお金は銀行に「タンス預金」として日銀当座預金に眠っているだけで実体経済には流れていない。消費税増税で不況が深刻化すれば、タンス預金は動かない。

GDPデフレーターの予測もひどい。

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この図で示したように毎年のように、内閣府はデフレは1~2年で脱却(デフレーターがプラスになる)が可能と主張してきた。しかしこの予測は最近十数年間外れっぱなしだ。内閣府も、これは目標であって予測ではないから、この調子でデフレ脱却できるとは信じていないことに注意が必要だ。

これらが予測でなく目標だというならマクロ計量経済学もシミュレーションプログラムもいらない。目標なら政府や日銀がすでに出している。なぜ多額の税金を使って人をたくさん雇って計算する必要があるのか。目標と言うのなら「これらの結果は目標であって、予測ではありません」と最初のページに大きく書いておくべきだ。今の政府の政策では、このような結果にはならないと内閣府は思っている。

この試算は2010年に発表されたモデルをそのまま使っている。ということは、同じように見当違いの予測になっているということだ。正確に将来の日本の経済状況を予測するための努力は一切行っていない。だからこそ大本営発表だと思うべきだ。その発表をずっと信じていたら国中が焼け野原になっていたという過去を思いだそう。

内閣府は消費税増税の悪影響は決して示さない。昨年の試算では、一体改革として消費税増税と社会保障を同時に行った場合と行わない場合とを比較していた。消費税増税の影響はどうなっているかと聞かれたとき答えるための試算だった。これも欺瞞的で、消費税増税を行ってそれを打ち消すための景気対策を同時に行って景気への影響はないという馬鹿げた結果を出していた。ではその景気対策の中身は具体的に何かと聞いても一切公表しなかった。今回は消費税は増税されるものとして計算され、増税する場合としない場合の比較は一切触れない。首相に「増税か見送りか」の選択肢を与えない試算になっている。首相は増税の悪影響について知りたがっているのだが、首相に謀反を起こした形になっている。増税の影響を計算せずして内閣府計量分析室の存在価値はない。

間が抜けた話だが内閣府は日銀の国庫納付金に関して理解していない。これもこの試算の重大な欠陥だ。日本銀行法53条によれば、日銀は各事業年度の損益計算上の剰余金の額から準備金および配当金を控除した残額を、当該事業年度終了後2か月以内に国庫に納付することになっている。日銀が国債を大量に買い入れると、国が払う国債への利払いはかなりの部分が日銀へ行くことになる。このうち95%が国庫に戻るのだから、国債費のうちのそれに相当する部分が国庫に戻ることになる。「国の借金が増えると利払いが大変」と思っているかもしれないが、この利払い費の一部又は全部が国庫に戻ることを知れば、安心できるだろう。これなら金利がいくら高くなっても財政破綻しない。

バーナンキFRB議長も2013年7月18日に量的緩和策は最終的に納税者に有益な政策になると述べている。実際FRBは2011年には5.9兆円、2012年には7.8兆円を剰余金として国庫に納め財政赤字削減に貢献している。内閣府はこのことも考慮して計算し直すべきだ。

さらに今回の試算で注目して欲しいことは、財政赤字や基礎的財政収支の赤字が巨額であっても、経済成長すれば国の借金のGDP比は減ってくることが示されたことだ。内閣府の計数表の一部をとり出すと

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国・地方の借金のGDP比は2014年度をピークに減少に転じることがわかる。ここで注目して頂きたいのはこの間巨額の財政赤字は続いているということだ。日本人は99%までが財政赤字が続く限り将来へのツケ(借金のGDP比)は増え続けると思っている。内閣府の表はそうではないことを示している。巨額の財政赤字が続いても、経済成長が続けば将来へのツケは実質的に減ってくるという重大な事実を是非一人でも多くの日本人に知って頂きたい。国の借金はどこの国でも増え続けているが、GDPも同様に増え続けているので借金のGDP比は増えないというが標準的な国家のパターンだ。日本も経済成長すれば、そのパターンになるということである。

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2013年8月 5日 (月)

またオオカミ少年=内閣府が偽造試算を発表(No.138)

内閣府が年央試算を発表した。これは第17回経済財政諮問会議で提出された資料の形で発表されている。
http://www5.cao.go.jp/keizai-shimon/kaigi/minutes/2013/0802/agenda.html
筆者は、再三にわたって内閣府の試算のウソを指摘し、それによって騙された政治家達が行ってはならない政策を続けたために、日本経済がデフレから脱却できないでいると主張してきた。この試算を行っているのは内閣府計量分析室というところだが、例えばYahooの検索サイトで内閣府計量分析室というキーワードで検索をかけると、内閣府計量分析室のホームページの少し下に「内閣府の経済見通しはオオカミ少年」という筆者のブログが出てくる。筆者の見解が高く評価された証拠だ。

内閣府はこの批判を強く意識していて、以前ほどデタラメな試算が出せなくなった。例えば今回の基礎的財政収支の見通しだが以下のようになっている。

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これで試算を行ったと言えるだろうか。これでは何も書かないのと大差ないが、それでも首相から出せと言われたのだろう。これまで内閣府は、「あと○○兆円の増税と、○○兆円の歳出削減をすれば基礎的財政収支は黒字化する」という表現を続けてきた。そしてそれに従って時の内閣は必死になって歳出削減等をやってきた。筆者は、そういった過去の予測が全部ウソだったと指摘し、2013年4月9日に福田昭夫衆議院銀が内閣委員会でこのことに関し甘利大臣を追求している。
http://ajer.cocolog-nifty.com/blog/2013/04/no128-c2b6.html

今回の内閣府の発表は明らかに、この追求により強い影響受けている。彼らはジレンマに追い込まれている。以前から使っているデタラメなシミュレーションを使ってデタラメな見通しを発表すれば、まだ同じ間違いを繰り返すのかを追求を受けるのは必至だ。といってもモデルを修正して実体経済を忠実に再現できる正しいモデルを使った計算結果を出してしまえば、いままでの計算が全部ウソで、消費税増税は害あって益無しという結果を発表しなくてはならなくなり、責任問題に発展しかねない。苦渋の選択の結果が今回の発表となった。

図1
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右上がりになっているのが、毎年発表される内閣府のGDPデフレーターの見通しだ。プラスになればデフレ脱却ということだから、内閣府は恐ろしく楽観的な見通しを出しており、毎年「あと1~2年でデフレは脱却できる」と言い続けている。しかし実際は十数年間デフレは脱却できておらず、デフレーターはマイナスのままだ(グラフの黒い線)。毎年年中行事のように「昨年の予測時には予期できなかった事情により変更された」と言って下方修正を続けてきた。結果としてGDPデフレーターは十数年間プラスにならずデフレは続いてきた。内閣府のこのようなウソの見通しを出さなければ、政治家ももっと真剣にデフレ脱却の方法を考えたと思われるので、ウソを言い続けてきた内閣府の責任は極めて重大だ。

例えば2013年度のGDPデフレーターにしても、僅か半年前の2月に発表したときは、プラス0.2%になり、いよいよデフレ脱却だと言っていた。今回の発表ではマイナス0.2%に下方修正された。オオカミ少年のウソが今回もまた繰り返された。「半年前には予期できなかったほど景気が悪化した」とでも言いたいのだろうか。しかし、景気は半年前より明らかに良くなっている。デフレ脱却は内閣府が考えるよりはるかに難しいのだということがまだ分からないのだろうか。2014年度にデフレ脱却することは、絶望的だということは、この議論からも明らかだろう。図2は今回の内閣府の発表である。

図2
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GDPデフレーター=名目成長率-実質成長率
という式でGDPデフレーターは求められる。どこの国でもこのデフレーターはプラスなのだが、デフレの日本だけがマイナスになっている。平成25年度は名目と実質が接近すると予測しているが、最終的にはもっと開いたものになるだろう。平成26年度は名目が実質を上回り「デフレ脱却」のように見える。毎年、そう言って騙してきた内閣府のデータをまともな判断力を持つ人なら信じないだろう。更に考慮に入れておかねばならぬのは消費税増税の影響だ。3%の消費税増税があれば、多くの物の値段が3%だけゲタをはかされるから、それだけインフレ率もゲタをはかされる。我々がデフレというときは、需要が減って、物あまりが生じ、投げ売りが始まり物の値段が下がるという現象だから、デフレかどうかを考えるときは、ゲタをはいた部分を除いて考えるべきだ。そうすると名目成長率は3.1%でなく1.7%となり、デフレーターは図に示したように0.7%まで下がる。

過去のオオカミ少年の実績からすれば、平成26年度の本当のGDPデフレーターはマイナスと考えるのが、つまりデフレ脱却はできないと考えるのが自然だ。それどころか、消費税大増税などやっていては、デフレ脱却など夢のまた夢だ。そんなに簡単にデフレ脱却ができるのなら、もうとっくの昔にデフレ脱却はできていたに違いない。

内閣府による名目成長率の予測もひどい。

図3
1384

毎年、急激な経済成長を予測している。例えば2005年に発表された予測によれば、今頃名目GDPは640兆円を超えていなければならないが、実際は480兆円までに落ち込んでいる。毎年国の税金を使ってこんな馬鹿な見通しを発表し、毎年下方修正を続けている。いい加減にしろと筆者は言い続けているのだが、性懲りも無く今年も右端のような急上昇する名目GDPを発表してきた。どうせウソでしょと、判断力がまともな人なら分かる。2014年度の予測には消費税増税のゲタが乗っかっていることにも注意しよう。

財政健全化は全日本国民の悲願だろう。しかし、いままで健全化の方法を完全に間違えており、デフレ下の緊縮路線は財政健全化に役立たないことが明らかになった。政府目標は2015年までに基礎的財政収支の赤字を2010年レベルから半減、2020年までに黒字化ということだった。その目標を達成するために緊縮財政を続けてきた結果、20年が失われた。

当たり前のことなのだが、消費税増税をすれば国民から巨額のお金を取り上げることになるのだから、必ず消費は減り名目GDPは減る。消費税収は増えても、法人税や所得税などは減ってくる。これらの配慮は内閣府の試算では、全く、あるいはほとんどなされていないから、過去の試算で外れ続きなのだ。昨年内閣府で試算が発表されたとき、筆者は
「基礎的財政収支、これで9回目のウソ」
http://ajer.cocolog-nifty.com/blog/2012/01/post-9754.html
という記事を書いた。年中行事のようにウソの発表を繰り返す内閣府だが、ウソを認めて自己批判をし、どこが間違いだったかを示すつもりはないようだ。国民を騙し続ける、国民は騙され続ける。だからいつまで経っても財政収支の改善はできない。

では、どうすればよいか。結論は単純だ。この試算は大増税を行って経済を破壊し国民を絶望のどん底に陥れても国の借金は返せないことを意味している。一方で安倍総理の言うように輪転機をぐるぐる回してお金を刷って国民に渡せば、経済は発展し国の借金は苦も無く減っていく。アベノミクスを支持するということは「輪転機をぐるぐる回してお金刷る」ことには賛成しているということだ。刷って作り出されたお金は金融機関に渡っている。このお金をどうやって国民に渡すのかについて国民的な議論が必要となる。

このお金を国民が借りて使ってくれるなら誰も反対しないが、現在のようなデフレ不況では、なかなか借りる人を見つけるのは大変だ。下手に設備投資をして増産をしても売れ残る。ローンを組んで住宅を建てても不動産の値下がり、給料の値下がりといった将来不安がありなかなか決断できない。

このお金が株式市場に流れ込み株価を押し上げてくれれば企業も設備投資をしやすくなるし、また株で儲けた人は高額商品を買う。しかし、国は金融機関に流れた金を株式市場に流れないような仕組みをつくっている。株はリスク債券であり、そんな危ない金融商品に金融機関が手を出したら、株の値下がりで日本の金融制度の崩壊につながるというわけだ。しかし海外投資家はそのような縛りがないから株を買った。だから株が上がった。しかし、彼らはそのうち売り逃げすることを考えている。

このお金を国民のために最も有効に活用するには政府が国債を発行し金融機関に売って財源を確保し、そのお金を減税や医療・介護・福祉・教育・農業・防衛・新エネルギー開発・国土強靱化等、様々な事業に使うことだ。それによりGDPが増え、国民が豊かになり、税収が増え国の借金のGDPは減る。日経NEEDSを使った試算では基礎的財政収支どころか財政収支そのものの黒字化も可能となる。現在政府が考えている増税シナリオは国民を絶望のどん底に落とす国家貧困化シナリオであり、我々の考えているシナリオは国民を豊かにする繁栄のシナリオだ。

将来世代へのツケを増やすと思うかもしれないが、将来世代も「輪転機をぐるぐる回してお金を刷る」ことができる。将来国債を税金で返す必要は全く無い。多少のインフレになるかもしれないが、それがインフレ目標というもの。日本以外のすべての国が受け入れていることだ。日本だって2%のインフレ目標はアベノミクスに組み入れられており、容認しているではないか。その目標達成までやればよい。増税などやっていては、インフレ目標は100年経っても達成できない。

増税凍結なら金利が上昇すると主張する人もいるが、増税凍結の可能性が出てきても国債の金利は動いていない。デマに惑わされる必要はない。

安倍総理に是非消費税増税凍結の決断をお願いしたい。総理の周辺には増税賛成派が多いのかもしれないが、先月27日と28日に行われた毎日新聞の世論調査では消費税を予定通り上げるべきだと言った人は僅か26%、凍結が35%、引き上げ延期が36%という結果になった。将来世代の事を考えれば、ここでデフレ脱却の可能性を潰してしまうのは余りにももったいない。安倍さんが消費税増税を凍結し日本経済を長期のデフレから脱却させた英雄になるのか、消費税増税を決行し、日本経済を不況のどん底に陥れてしまうのか、決断の時期がせまっている。現実は内閣府の見通しよりはるかに厳しいことを肝に銘じてご判断をお願いしたい。

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