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2013年8月 5日 (月)

またオオカミ少年=内閣府が偽造試算を発表(No.138)

内閣府が年央試算を発表した。これは第17回経済財政諮問会議で提出された資料の形で発表されている。
http://www5.cao.go.jp/keizai-shimon/kaigi/minutes/2013/0802/agenda.html
筆者は、再三にわたって内閣府の試算のウソを指摘し、それによって騙された政治家達が行ってはならない政策を続けたために、日本経済がデフレから脱却できないでいると主張してきた。この試算を行っているのは内閣府計量分析室というところだが、例えばYahooの検索サイトで内閣府計量分析室というキーワードで検索をかけると、内閣府計量分析室のホームページの少し下に「内閣府の経済見通しはオオカミ少年」という筆者のブログが出てくる。筆者の見解が高く評価された証拠だ。

内閣府はこの批判を強く意識していて、以前ほどデタラメな試算が出せなくなった。例えば今回の基礎的財政収支の見通しだが以下のようになっている。

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これで試算を行ったと言えるだろうか。これでは何も書かないのと大差ないが、それでも首相から出せと言われたのだろう。これまで内閣府は、「あと○○兆円の増税と、○○兆円の歳出削減をすれば基礎的財政収支は黒字化する」という表現を続けてきた。そしてそれに従って時の内閣は必死になって歳出削減等をやってきた。筆者は、そういった過去の予測が全部ウソだったと指摘し、2013年4月9日に福田昭夫衆議院銀が内閣委員会でこのことに関し甘利大臣を追求している。
http://ajer.cocolog-nifty.com/blog/2013/04/no128-c2b6.html

今回の内閣府の発表は明らかに、この追求により強い影響受けている。彼らはジレンマに追い込まれている。以前から使っているデタラメなシミュレーションを使ってデタラメな見通しを発表すれば、まだ同じ間違いを繰り返すのかを追求を受けるのは必至だ。といってもモデルを修正して実体経済を忠実に再現できる正しいモデルを使った計算結果を出してしまえば、いままでの計算が全部ウソで、消費税増税は害あって益無しという結果を発表しなくてはならなくなり、責任問題に発展しかねない。苦渋の選択の結果が今回の発表となった。

図1
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右上がりになっているのが、毎年発表される内閣府のGDPデフレーターの見通しだ。プラスになればデフレ脱却ということだから、内閣府は恐ろしく楽観的な見通しを出しており、毎年「あと1~2年でデフレは脱却できる」と言い続けている。しかし実際は十数年間デフレは脱却できておらず、デフレーターはマイナスのままだ(グラフの黒い線)。毎年年中行事のように「昨年の予測時には予期できなかった事情により変更された」と言って下方修正を続けてきた。結果としてGDPデフレーターは十数年間プラスにならずデフレは続いてきた。内閣府のこのようなウソの見通しを出さなければ、政治家ももっと真剣にデフレ脱却の方法を考えたと思われるので、ウソを言い続けてきた内閣府の責任は極めて重大だ。

例えば2013年度のGDPデフレーターにしても、僅か半年前の2月に発表したときは、プラス0.2%になり、いよいよデフレ脱却だと言っていた。今回の発表ではマイナス0.2%に下方修正された。オオカミ少年のウソが今回もまた繰り返された。「半年前には予期できなかったほど景気が悪化した」とでも言いたいのだろうか。しかし、景気は半年前より明らかに良くなっている。デフレ脱却は内閣府が考えるよりはるかに難しいのだということがまだ分からないのだろうか。2014年度にデフレ脱却することは、絶望的だということは、この議論からも明らかだろう。図2は今回の内閣府の発表である。

図2
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GDPデフレーター=名目成長率-実質成長率
という式でGDPデフレーターは求められる。どこの国でもこのデフレーターはプラスなのだが、デフレの日本だけがマイナスになっている。平成25年度は名目と実質が接近すると予測しているが、最終的にはもっと開いたものになるだろう。平成26年度は名目が実質を上回り「デフレ脱却」のように見える。毎年、そう言って騙してきた内閣府のデータをまともな判断力を持つ人なら信じないだろう。更に考慮に入れておかねばならぬのは消費税増税の影響だ。3%の消費税増税があれば、多くの物の値段が3%だけゲタをはかされるから、それだけインフレ率もゲタをはかされる。我々がデフレというときは、需要が減って、物あまりが生じ、投げ売りが始まり物の値段が下がるという現象だから、デフレかどうかを考えるときは、ゲタをはいた部分を除いて考えるべきだ。そうすると名目成長率は3.1%でなく1.7%となり、デフレーターは図に示したように0.7%まで下がる。

過去のオオカミ少年の実績からすれば、平成26年度の本当のGDPデフレーターはマイナスと考えるのが、つまりデフレ脱却はできないと考えるのが自然だ。それどころか、消費税大増税などやっていては、デフレ脱却など夢のまた夢だ。そんなに簡単にデフレ脱却ができるのなら、もうとっくの昔にデフレ脱却はできていたに違いない。

内閣府による名目成長率の予測もひどい。

図3
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毎年、急激な経済成長を予測している。例えば2005年に発表された予測によれば、今頃名目GDPは640兆円を超えていなければならないが、実際は480兆円までに落ち込んでいる。毎年国の税金を使ってこんな馬鹿な見通しを発表し、毎年下方修正を続けている。いい加減にしろと筆者は言い続けているのだが、性懲りも無く今年も右端のような急上昇する名目GDPを発表してきた。どうせウソでしょと、判断力がまともな人なら分かる。2014年度の予測には消費税増税のゲタが乗っかっていることにも注意しよう。

財政健全化は全日本国民の悲願だろう。しかし、いままで健全化の方法を完全に間違えており、デフレ下の緊縮路線は財政健全化に役立たないことが明らかになった。政府目標は2015年までに基礎的財政収支の赤字を2010年レベルから半減、2020年までに黒字化ということだった。その目標を達成するために緊縮財政を続けてきた結果、20年が失われた。

当たり前のことなのだが、消費税増税をすれば国民から巨額のお金を取り上げることになるのだから、必ず消費は減り名目GDPは減る。消費税収は増えても、法人税や所得税などは減ってくる。これらの配慮は内閣府の試算では、全く、あるいはほとんどなされていないから、過去の試算で外れ続きなのだ。昨年内閣府で試算が発表されたとき、筆者は
「基礎的財政収支、これで9回目のウソ」
http://ajer.cocolog-nifty.com/blog/2012/01/post-9754.html
という記事を書いた。年中行事のようにウソの発表を繰り返す内閣府だが、ウソを認めて自己批判をし、どこが間違いだったかを示すつもりはないようだ。国民を騙し続ける、国民は騙され続ける。だからいつまで経っても財政収支の改善はできない。

では、どうすればよいか。結論は単純だ。この試算は大増税を行って経済を破壊し国民を絶望のどん底に陥れても国の借金は返せないことを意味している。一方で安倍総理の言うように輪転機をぐるぐる回してお金を刷って国民に渡せば、経済は発展し国の借金は苦も無く減っていく。アベノミクスを支持するということは「輪転機をぐるぐる回してお金刷る」ことには賛成しているということだ。刷って作り出されたお金は金融機関に渡っている。このお金をどうやって国民に渡すのかについて国民的な議論が必要となる。

このお金を国民が借りて使ってくれるなら誰も反対しないが、現在のようなデフレ不況では、なかなか借りる人を見つけるのは大変だ。下手に設備投資をして増産をしても売れ残る。ローンを組んで住宅を建てても不動産の値下がり、給料の値下がりといった将来不安がありなかなか決断できない。

このお金が株式市場に流れ込み株価を押し上げてくれれば企業も設備投資をしやすくなるし、また株で儲けた人は高額商品を買う。しかし、国は金融機関に流れた金を株式市場に流れないような仕組みをつくっている。株はリスク債券であり、そんな危ない金融商品に金融機関が手を出したら、株の値下がりで日本の金融制度の崩壊につながるというわけだ。しかし海外投資家はそのような縛りがないから株を買った。だから株が上がった。しかし、彼らはそのうち売り逃げすることを考えている。

このお金を国民のために最も有効に活用するには政府が国債を発行し金融機関に売って財源を確保し、そのお金を減税や医療・介護・福祉・教育・農業・防衛・新エネルギー開発・国土強靱化等、様々な事業に使うことだ。それによりGDPが増え、国民が豊かになり、税収が増え国の借金のGDPは減る。日経NEEDSを使った試算では基礎的財政収支どころか財政収支そのものの黒字化も可能となる。現在政府が考えている増税シナリオは国民を絶望のどん底に落とす国家貧困化シナリオであり、我々の考えているシナリオは国民を豊かにする繁栄のシナリオだ。

将来世代へのツケを増やすと思うかもしれないが、将来世代も「輪転機をぐるぐる回してお金を刷る」ことができる。将来国債を税金で返す必要は全く無い。多少のインフレになるかもしれないが、それがインフレ目標というもの。日本以外のすべての国が受け入れていることだ。日本だって2%のインフレ目標はアベノミクスに組み入れられており、容認しているではないか。その目標達成までやればよい。増税などやっていては、インフレ目標は100年経っても達成できない。

増税凍結なら金利が上昇すると主張する人もいるが、増税凍結の可能性が出てきても国債の金利は動いていない。デマに惑わされる必要はない。

安倍総理に是非消費税増税凍結の決断をお願いしたい。総理の周辺には増税賛成派が多いのかもしれないが、先月27日と28日に行われた毎日新聞の世論調査では消費税を予定通り上げるべきだと言った人は僅か26%、凍結が35%、引き上げ延期が36%という結果になった。将来世代の事を考えれば、ここでデフレ脱却の可能性を潰してしまうのは余りにももったいない。安倍さんが消費税増税を凍結し日本経済を長期のデフレから脱却させた英雄になるのか、消費税増税を決行し、日本経済を不況のどん底に陥れてしまうのか、決断の時期がせまっている。現実は内閣府の見通しよりはるかに厳しいことを肝に銘じてご判断をお願いしたい。

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コメント

 久方ぶりです。higashiyamato1979です。政府の欺瞞的な姿勢には最早言葉が出ませんね。
 それでは決まり文句! お金が無ければ刷りなさい! 労働はロボットに!人間は貴族に!

投稿: | 2013年8月13日 (火) 20時12分

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