« 量的・質的金融緩和(異次元金融緩和)の出口戦略(No.142) | トップページ | 江戸時代の経済を発展させた通貨増発(No.144) »

2013年12月10日 (火)

GDP下方修正-これで消費増税などとても無理-(No.143)

内閣府は12月9日にGDPの改定値を発表した。四半期データだと、下方修正されて

1431

となった。7-9月期の実質GDPは、速報値年率換算で1.9%増だったものが、1.1%増に下方修正された。安倍総理が消費増税を決断したのは4-6月期が年率換算で3.8%増というもの。7-9月期の値を見れば、やはり判断は間違いだったと思っているのではないか。

そのような短期的な成長率に注目するのでなく、上図のようにもっと長期的に、そして生活実感に近い名目GDPの推移を見て欲しいものだ。名目GDPは1997年7-9月期には524兆円だったのが、2013年7-9月期には479兆円にまで減少している。消費増税などせずに、一刻も早く経済を立て直せと言いたい。

OECDは世界経済は今後順調に回復するが、消費増税のお陰で日本だけが取り残されると予測している。

OECD Economic Outlook No.94
OECD経済予測
実質GDP増加率(%)
      2013  2014  2015
日本    1.8   1.5   1.0
ドイツ    0.5   1.7   2.0
フランス  0.2   1.0   1.6
イギリス  1.4   2.4   2.5
アメリカ  1.7   2.9   3.4
中国    7.7   8.2   7.5

となっている。国内のシンクタンクも消費増税による経済の落ち込みを予測している。

実質GDP
          2013年度  2014年度  2015年度
SMBC日興    2.8%    1.2%    1.7%
みずほ        2.9%    0.9%    1.6%  
ニッセイ基礎研  2.6%     0.2%    0.9% 
第一生命      2.7%    0.9%    1.1%

名目GDP 
SMBC日興     2.6%    2.6%    2.8%
みずほ         2.5%    2.1%         1.9%
ニッセイ基礎研  2.6%    1.2%    1.6%
第一生命     2.5%    2.8%    2.1%
名目GDPに関しては、消費増税によるゲタがはかされていることを注意しなければならないので、実質的に相当の落ち込みがあると考えるべきである。

コア消費者物価(消費増税の影響を除く)
         2013年度  2014年度  2015年度
SMBC日興   0.7%    0.5%     0.6%     
みずほ       0.6%    0.4%      0.5%
ニッセイ基礎研  0.6%    0.6%      0.7%
第一生命     0.7%    1.0%     1.2%
 
これを見ても、消費増税を行うために2年間で2%のインフレ目標の達成は夢のまた夢になったことが分かる。黒田日銀総裁は消費増税で経済失速なら追加の対策をすると明言している。日銀の量的・質的金融緩和の内容は次の表で示される。

1432


マネタリーベースも急激に伸びている。
1433


1990年頃はすでに名目GDPは今と大差がなかったが、マネタリーベースは40兆円程度だった。これを来年末には270兆円までに拡大、それでも足りなければ更に追加するとのこと。マネタリーベースは日銀券発行残高と日銀当座預金残高の合計だ。日銀券発行残高の推移を示すと

1434

つまり、本来30兆円程度の日銀券があれば十分なのに、デフレでタンス預金化したお金が動かないために90兆円にまでお札を刷ったのにまだ動いてくれないという状況にある。日銀当座預金残高を次に示す。

1435

2013年4月以降、日銀の金融緩和策で急激に伸びていることが分かる。2008年には7兆円台であったものが、2014年末には175兆円にしようという日銀の構想。金融機関が国債を売って代金を得たり、預金を預かったりすると銀行は一旦日銀当座預金に入れる。金利は0.1%なので、この資金は企業への融資を行ったり、もっと利回りの高い投資先に回すまでに置いておく借り置き場のようなものにすぎない。しかし、デフレ時には低利回りで滞留させておいても損失はない。これがインフレ率2%になったりすると日銀券や日銀当座預金の巨額の資金が動き出す可能性がある。一旦、日銀が国債保有残高を増やしてしまうと、減らすのが大変である。

例えば、銀行が日銀当座預金から引き出して、証券会社から株を買ったとしよう。その代金は証券会社の日銀当座預金に移動するだけで、日銀当座預金の残高は変化しない。つまりいくら使っても総額は減らない資金だ。いつか、この資金がデフレ脱却を助けてくれれば良いと期待して、果てしなく増やし続けるより、消費増税を中止し減税をし、財政拡大をし、需要を伸ばし、一刻も早く2%のインフレ目標を達成したほうが、はるかにリスクが少ないのは明らかだ。財政を拡大しても、刷ったお金で国債を日銀が大量に買っている限り、国債暴落の可能性はゼロである。

|

« 量的・質的金融緩和(異次元金融緩和)の出口戦略(No.142) | トップページ | 江戸時代の経済を発展させた通貨増発(No.144) »

経済・政治・国際」カテゴリの記事

コメント

 お晩です。higashiyamato1979です。庶民がお金を使わないのはつまるところ仕事(需要)が無いことに尽きるということに一日も早く気づいて欲しいです。体調不良に付短文にて失礼致します。
 それでは決まり文句! お金が無ければ刷りなさい! 労働はロボットに!人間は貴族に!

投稿: higashiyamato1979 | 2013年12月13日 (金) 17時00分

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: GDP下方修正-これで消費増税などとても無理-(No.143):

» Double/ダブル | 消費者詐欺被害センター [Double/ダブル | 消費者詐欺被害センター]
消費者詐欺被害センターは『お金を騙し取られた』などの悪質な詐欺被害情報を検索、投稿出来る口コミサイトです。『おかしいな?』と思ったらまずは検索を! [続きを読む]

受信: 2013年12月26日 (木) 21時56分

« 量的・質的金融緩和(異次元金融緩和)の出口戦略(No.142) | トップページ | 江戸時代の経済を発展させた通貨増発(No.144) »