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2014年1月

2014年1月23日 (木)

内閣府の予測:10年後、日本は国の借金は330兆円増加、金利は4.8%に上昇だが、財政破綻もハイパーインフレもなし(No.147)

1月20日に『中長期の経済財政に関する試算』が発表された。
http://www5.cao.go.jp/keizai-shimon/kaigi/minutes/2014/0120/shiryo_01.pdf

覚えておられるだろうか。2011年1月8日に菅直人(当時の首相)の「このまま赤字国債を発行するような状態は2年先は無理だ」という経済音痴丸出しの発言を。実際は2年後に何も起こらなかった。消費増税しなければならないという理由は、これ以上借金を増やしたら大変なことになると様々な「識者」からも聞かされた。しかし、これはすべて嘘だったということを内閣府の試算が証明した。

内閣府の試算によれば、国の借金は2013年度が933.2兆円だが、2023年度には1265.4兆円にまで増加する。2023年度の金利は4.8%でインフレ率は2%。何と国の借金はあと330兆円も増えても、金利が4.8%まで上がっても何も起こらないと内閣府は言っている。それだけでなく、莫大な財政赤字が続き、国の借金がこんなに増えてもGDP比でみれば減少しているから、借金は事実上減ってきているというのだ。

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基礎的財政収支と財政収支が2020年以降、大きく離れているのは、金利の上昇のために国の借金に対する利払いが爆発的に増えたためだ。日銀は国債を猛烈な勢いで買っているのだから実際は利払いは日銀を経由して日銀納付金として国庫に返る。このことを考慮すれば財政赤字は劇的に減るのだが、このことは内閣府は考慮に入れていない。日銀の異次元の金融緩和の効果はモデルに入れていないとのこと。金利上昇で国の財政が破綻するという馬鹿なエコノミストもいるが、4.8%まで金利が上がっても何も問題ないと内閣府が言っている意味は重い。

4.8%まで金利が上がるということは、そんな高金利でも金を借りて商売ができるほど、景気がよくなっているということだ。素朴に思うことだが、そんな時代に果たして、国民は政府に1265兆円(国民1人当たり1000万円)ものお金を貸しておくのだろうか。そんな金があるなら、政府に貸さずに自分で商売をしたほうが余程ましだと考えないだろうか。

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借金のGDP比が減ったのは、景気が回復し、税収が増えたというのが唯一の理由ではない。上図のように税収が増えても財政は大幅な赤字が続いていて借金はどんどん増えている。これが家計であれば、破綻するしかない。国の財政で重要なことは、必ずGDP比で考えるべきであり、借金/GDPの値はGDPが分母にあり、大赤字が続いてもGDPが増えれば借金のGDP比は下がり財政は健全化に向かうということだ。大幅な財政赤字は全く心配する必要なしと内閣府は言っている。

では、なぜ消費増税を4月にやらなければならないのか。8%への増税で5兆円程度の税収増になるが、景気の底割れを防ぐために5.5兆円の景気対策をする。増税分が景気対策に使われる形となっているのだから、4月に消費増税をやる意味はなかった。今年4月に消費増税をやらなかったらどうなったか。財政破綻?ハイパーインフレ?制御不能なインフレ?国債暴落?いやいやとんでもない。内閣府の試算ではこれから330兆円も国の借金が増えても国の財政はビクともしない事を示している。なにせこの試算では2017年~2023年の6年間、インフレ率は2%でぴったり止まっている。

そこまで経済が盤石であるなら、今からでも遅くない。消費増税を止め、消費税減税、法人税減税、所得税減税、そして歳出を思い切って拡大し、すみやかにインフレ率2%を達成すべきだ。追加の国債発行高は年間20~50兆円程度あれば、2%のインフレ率は2~3年で達成できる。その後はピタリとインフレ率を2%で止めればよいだけだろう。金利が上がっても心配無用だと内閣府は言っている。GDPが伸びれば莫大な財政赤字でも、国の借金のGDP比は減少するのだから財政は健全化する。

いや、消費増税は社会保障の充実のためと主張する連中がいる。実際は充実どころか、社会保険料は増え、年金は減らされていることを誰もが知っている。年金積立金の運用益は2012年が9兆円、13年が18兆円だから合計27兆円だ。これだけあれば、消費税を上げなくても当分やっていける。景気が良くなれば運用益は更に拡大する。今はデフレ脱却に専念すべきときだ。

OECDもIMFも2015年の日本の実質経済成長率は消費増税のお陰で1.0%にまで下落し、世界最低レベルになると言っている。アベノミクス景気に浮かれている時ではない。直ちに大規模な経済対策を打って出る時だ。

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2014年1月14日 (火)

浜矩子の間違いを徹底解説(No.146)

マスコミに頻繁に登場する浜矩子だが、歯切れの良い断定的な発言を繰り返しており、彼女の発言をそのまま信じてしまう人も多いのだろう。しかし、その発言には明らかな間違いが多く含まれており、その間違いが修正されれば、日本経済に与える良い方向へのインパクトは少なからずあると思われるので、ここではその間違いを徹底解説することにする。

【間違い1】
最初に取り上げたいのは『円安幻想』という浜氏の著書だ。浜氏は、通貨を増発する人、積極財政派は問答無用で悪人、緊縮財政派は善人と決めつけているようである。
①P84
荻原重秀(1658~1713)について次のように書いている。
元禄の改鋳を敢行した張本人、その効力に味を占めて、彼はその後も第二次通貨改悪を実施している。その意味で相当けしからん人物である。・・・通貨の価値を大幅に劣化させる改鋳を仕組む悪知恵・・・元禄の庶民は、激しい物価高騰に苦しむことになった。
荻原重秀はかなりブラックな人間で莫大な賄賂を受け取っていた。

これに対しては、金沢大学教育学部教授の村井淳志氏が徹底した調査研究を行っている。
『勘定奉行荻原重秀の生涯』村井淳志(集英社新書)集英社,2007年
村井淳志の研究によれば、元禄期貨幣改鋳の後11年間のインフレ率は名目で平均3%程度と推定され、庶民の生活への影響はさして大きなものではなかった。貨幣価値の下落で 富裕層は貯蓄から投資に動いた。その結果経済は元禄の好景気に沸いた。「貨幣は国家が造る所、金でなく瓦礫でもよい」と述べ荻原重秀は管理通貨制度という考えの先駆者である。この改鋳により改鋳差益約500万両を得て幕府の財政破綻を救い、大増税を避けることができた。当時、経済はデフレに陥っており商業の発達から、通貨増発の必要性があったわけでデフレ脱却という意味でタイムリーと言える。経済学者の若田部昌澄も、重秀の最大の業績はこの改鋳であると高く評価している。当時は富裕層、商業資本が富を蓄積していたが、そこから税を徴収する課税方法が無かった。インフレでため込んだ富の価値を失わせたということで、実質的に課税したと同等の結果を生じている。結果として経済は元禄の好景気に沸いた。

元禄地震、宝永地震、富士山の宝永大噴火、宝永の大火等により幕府の出費が続いていた。
1706年 宝永銀、1710年 宝永金・永時銀と貨幣改鋳を行い財政破綻を免れた。このとき荻原重秀は批判する人に対し「改鋳を批判しているが、他にどんな方法があったというのか。元禄の大地震等があったら、改鋳以外でどんな方法で人を救うのか。将来税収が豊かになれば、金銀の品位を戻す改鋳も可能だ。」と述べ批判に反論した。それに対し新井白石は「改鋳をしなければ、天災も起きなかったかもしれない。」などと、馬鹿なことを言っている。

新井白石は萩原重秀が発行した悪貨の元禄金銀および宝永金銀を回収し、良質の正徳金銀を鋳造して、主観的にはインフレの沈静に努めた。だが、実際には経済成長に伴う自然な通貨需要増に対応した前政権の政策を無にする「白石デフレ」を引き起こすことなったとも言われる(大石慎三郎などの研究による)。

荻原重秀の業績はそれだけではない。「延宝検地」を実施して成功している。検地を地方の豪族に行わせると、賄賂を使ってごまかす。しかし近隣の大名に検地を行わせたので賄賂戦術ができなくしたので、検地に成功した。

浜氏は荻原重秀が莫大な賄賂を受け取っていたと述べているが、その記述があるのが新井白石が書いた文書だけであり、新井白石は荻原重秀を失脚させようと手段を選ばなかった人物だ。家宣の病床で、どうしても荻原を罷免しないならば、自分が殿中で刺し殺すと脅迫さえ行っているのだから、莫大な賄賂の受け取りという事が事実かどうか疑わしい。

同様に通貨増発を行った田沼意次についても、賄賂を受け取っていたということになっている。しかし当時の資料を詳しく調べた大石慎三郎氏は著書『田沼意次の時代』の中で、賄賂を受け取ったという信頼できる証拠はないと書いている。要するに荻原重秀にせよ、田沼意次にせよ、通貨発行を行った人はすべて悪人と決めつけどうせ賄賂を受け取っていたのだろうと邪推したにすぎないのではないか。歴史を正しく知るためには、もっと動かぬ証拠を見つけるべきである。

【間違い2】P126
1877年 西南戦争の際戦費調達のための通貨大増刷となりインフレになった。戦争となれば歳出削減という選択肢はなく、通貨増発は当然の成り行きだ。浜矩子は「このままだと、歯止めなきハイパーインフレのなかで、経済大混乱のうちに明治政府は瓦解したかも」と述べている。「このような事態になだれ込むのを防ぐために乗り出したのが明治の傑物松方正義。1881年に大蔵卿に就任し緊縮財政と通貨価値の回復に向けて奔走、増税と歳出削減、紙幣償却、その準備として正貨蓄積し日銀による銀本位の紙幣発行」

このように浜氏は松下正義を褒め称えているが、この緊縮政策で経済は松方デフレとよばれる深刻なデフレに陥った。米価暴落で中小自作農家は大打撃を被った。米価が下がっても地租は減額されず、租税が払えなくなった農民が農地を手放し小作農民に転落した。
当時国民の大多数を占めた農民の階層が分解し貧民が都市へ流入した。一部の地主,高利貸、銀行へ土地が集中し貧富の差が拡大した。

結果として秩父事件などの社会的動揺が起きた。これは租税の軽減・義務教育の延期・借金の据え置き等を政府に訴えるための蜂起であり、事件後、約14000名が処罰を受けた。このように松方デフレ政策は国民に大変な犠牲を強いる結果となったのにも拘わらす、松方正義を英雄扱いにする浜氏の考えは間違えている。参考のために米価の推移を示す。松方デフレが分かる。西南戦争の終結後はゆるやかなインフレに導く政策にすべきだった。

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【間違い3】P156
「金本位制を維持していたら、太平洋戦争時の通貨増発はなかった。」

金本位制万能主義者の浜氏だが、その致命的な欠陥に気付いていないようだ。1936年2月26日に有名な226事件が起き、高橋是清大蔵大臣等が暗殺され、軍部の暴走が始まった。国債の乱発で軍事予算が爆発的に拡大した。

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これに対して浜氏は金本位制を維持していたら通貨発行の歯止めをかけることができただろうと言う。
反論:日本は、そんなに金を持っていなかった。

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第一次世界大戦時の特需で日本は巨額の正貨を手に入れた。しかし、その後の大正バブル崩壊とデフレ、そして昭和恐慌と続き、金の大半を失っていた。それでも金本位制を維持していたら、金の海外流出が続き、通貨発行ができず、昭和恐慌から立ち直れなかっただろう。世界大恐慌の後、金本位制からの離脱が早いほど景気回復が早かったことが分かっている。このことは下図で示される。
第一グループ:金本位制でないか1931年までに離脱した国
第二グループ:1931年に離脱(英、独、日本)
第三グループ:1932年~1935年に離脱(アメリカ等)
第四グループ:1936年にいたっても離脱せず(フランス等)

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デフレ脱却には、浜氏の大嫌いな通貨増発しかないことは明らかだ。

【間違い4】
次に『経済政策の射程と限界』扶桑社という本の中の浜氏の発言にコメントする。
P141
「いくら金融緩和の規模を大きくしたとしても、ザルのごとくそのお金は投機的なリスク資産に流れていってしまう。実体経済が活力を取り戻す方向には向かわない。」

 これは明らかな間違いだ。アベノミクスで金融緩和の規模を大きくした結果、円安・株高になった。株の時価総額は次のグラフで分かるように約200兆円増えた。

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200兆円の多くは日本国民の資産となった。年金積立金も2012年が9兆円、2013年が18兆円、合計27兆円もの運用益が出た。実体経済の活力を取り戻すために役立っている。もちろん、消費増税の後はどうなるか不安は残る。これは別問題だ。株が上がれば消費は伸びる。企業も資金を調達しやすくなる。家計金融資産も増加し、消費に良い影響を与えている。

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【間違い5】P142
インフレターゲットは、インフレが高すぎる国がインフレを何%にまで下げるという目的で掲げる。「物価を上げるために目標を決める」という国はない。意図的にインフレを起こそうとしている国は日本以外にない。

反論:デフレを十数年も続けている国は他に無いから、他の国がやったことがない政策を行うしかない。「インフレを起こしてはいけない」ということはデフレ脱却はいけないということ。こんなことを言う馬鹿なエコノミストは日本にしかいない。

【間違い6】P144
「インフレになれば、商品に高い値段がつけられるから、一見すると売り上げは伸びるがコストも上がる。円安にしているから原材料等の輸入コストも上がる。しかし、購買力は高まっていないからコスト削減を考えねばならない。そのために、人件費を削るだろう。これは本末転倒だ。」

反論:浜氏の頭の中はゴチャゴチャになっているようだ。このように経済は個々の現象だけに注目するとマクロ経済を見失ってしまう。円安が日本経済にどのような影響をもたらすかということに関しては、マクロ計量モデルを使って試算を行ってみるしかない。その影響の詳細に関しては、どのモデルを使うかによって異なる結果が出るかもしれない。しかし、方向としてはどのモデルでも同じ結果が出る。つまり円安は日本経済にとって良い結果をもたらす。これは近隣諸国の経済を悪化させながら自国の経済を発展させる政策なので近隣窮乏化政策と呼ばれている。例えば日経NEEDSによる試算では、円安は実質GDPを増加させ、雇用者報酬を増加させる。ただし財政を拡大したほどの劇的な効果ではない。実質消費は1年目、2年目は輸入物価の上昇で落ち込むが、その後伸びてくる。法人企業利益も伸びてくるがそれを賃上げに回すか、内部留保にするかは分からない。

【間違い7】P147
インフレターゲットはうまくいく確率が非常に少ない。
物価が上がり、賃金は上がらない。

 
反論:
日本においてインフレターゲットはデフレ脱却目標を意味する。消費増税をすれば物価は上がり、賃金は上がらないという状況は作り出せる。しかし、インフレターゲットで言うインフレ率は消費増税の影響を除いたもので考えるので、これは当てはまらない。円安に伴う輸入物価の値上がりであっても、マクロモデル(例えば日経NEEDS)で試算をしてみても、賃金は上がる。一般的に言って賃金が上がらないときに物価だけがどんどん上がり続けることはない。一時的にそのような状態になっても、誰も物を買えなくなるからやがてデフレに戻るだけ。物価が継続的に上がるには賃金が上がり需要が伸びることが絶対条件である。

過去の平均給与の推移をみるとよい。インフレ時には給与はインフレ率以上に上がった。
デフレ時には給与は物価の下落率以上に下がった。

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内閣府による「国民生活に関する世論調査」でも、インフレ時には、生活がよくなると思う家庭が多かったがデフレ時には、生活が悪くなると思う家庭が多くなった。
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【間違い8】P161,162
日銀の手元に不良債権がどんどん溜まっていく。これじゃあもう日銀経営ダメだなと、海外投資家に思われたら、円という通貨は円安どころか値段が付かない消滅の危機に瀕する。

反論:
浜矩子の著書『1ドル50円時代を生き抜く日本経済』と完全に矛盾する。
円暴騰論の後は円暴落論では無責任極まる。読者を馬鹿にするのもほどほどにしろと言いたい。

【間違い9】P163
日本経済は未来永劫大きくならなければいけない、などということは不可能。
    
反論:経済の拡大が止まった国など世界のどこにもない。日本が世界一成熟した国だというわけでもない。下図のように、成長率がマイナスの国は世界中で日本だけだ。経済を停滞させようという浜氏の主張に同意できない。

出所:OECD Economic Outlook 91 2012
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長期的にみても、実質GDPは戦争時を除いて一貫して増大を続けている。

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2014年1月12日 (日)

コンピュータに仕事を奪われないための経済政策(No.145)

最近大学や民間が持つ人工知能技術を結集して東大入試に挑む「ロボットは東大に入れるか」プロジェクトが話題になっている。すでに代ゼミのセンター模試を受験し、平均点以下ではあったが、私立大学の学部のほぼ半数で合格可能の80%以上の「A判定」を獲得した。2021年度東大合格を目指して基礎技術を積み上げつつある。

そのプロジェクトのリーダーである国立情報学研教授の新井紀子氏は『コンピュータが仕事を奪う』という本を書いている。この本のタイトルからして、コンピュータを作る目的を間違えていることが分かる。新井氏は「知的労働までロボットに奪われ、十分な賃金が得られなくなれば大学進学自体をあきらめる層が出てくるかもしれない」と述べている。
人の仕事を奪い、失業者を増やし、人を不幸にするためにコンピュータを作るのか。そんなコンピュータならいらない。コンピュータは人の生活を豊かにし、人を幸福にするためにつくらなくてはならない。

洗濯機は、主婦の生活を快適にした。すでにロボット(機械・コンピュータ)が人間の労働を肩代わりしつつある。例えば駅の改札、銀行のATM、自販機、百科事典、ワープロ、メール、スマホ、カーナビ、インターネット、製造業のロボット化などで多くの労働者は仕事を奪われたが、大部分は別な仕事に移った。それは少子高齢化で失った労働力を補って余りある、というよりはるかに多いというべきだ。いわばロボット(機械・コンピュータ)という新たな労働力は入ってきたために、供給過剰となり先進国では世界的なデフレになろうとしている。

需要不足・供給過剰になったとき、工場破壊をして生産力を落とすという選択肢は無い。国民は欲しい物はたくさんあるが、お金がないから買えないだけだ。例えば、今住んでいるよりもっと大きくて快適な家を建ててあげようと国が言ったら拒否する人は少ないだろう。お金が無いから結婚できない、子どもが産めないと思っている人でも、宝くじで1億円が当たれば結婚、出産も夢でなくなる。要するに需要は可処分所得が増えればいくらでも出てくる。

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デフレ脱却の処方箋は簡単だ。減税や歳出拡大で国民にお金を渡せば、国民生活は豊かになる。通貨を増やしてデフレを止めた例はたくさんある。江戸時代には何度も貨幣改鋳を行い通貨増発をし、昭和恐慌の際にも通貨創発でデフレから脱却した。ロボットが労働を肩代わりして供給を増やしても、失業者が増え生産された製品を買うお金が国民に渡ってなかったら供給力増強の意味が無い。供給を増やすときは必ず同時に需要も増やさなければならない。どんなに素晴らしい製品を作っても国民にお金を渡しておかないと買えない。当たり前だ。市場原理主義者にはこれが理解できない。

いくら日銀が国債を買って、銀行に資金を供給しても、国民にお金が渡ってなければ需要は生まれないし、需要が生まれなければ設備投資も意味が無いから資金需要が生まれない。結局資金は銀行に滞留するだけ。この壁を突破するには財政赤字を拡大・財政規律を無視・マネタイゼーション(通貨増発)の断行・財政の健全化の棚上げをすべきだ。新しい時代には新しい経済システムが必要で、過去の教訓は忘れるべきだ。

「未来の世界は人工知能が雇用を奪うから、人は、コンピュータができない仕事をしなければならない。」と新井教授は主張する。コンピュータができない仕事をしなければ給料がもらえないのであれば、将来の世界は地獄だ。誰がそんな超能力を持つというのか。どんなに努力しても、コンピュータはものすごい勢いで進歩する。折角コンピュータのできない技能をつけたと思ったら、あっという間にコンピュータに追い抜かれる。未来とはそんな地獄なのか。発想の転換があれば、未来も地獄から天国に変わる。つまり、「労働はロボットに、人間は貴族に」という考えだ。人があまりやりたくない労働はロボットにまかせ、財・サービスの供給を十分確保したら、人間は貴族の生活をすればよいのだ。そのような生活を確保するための資金は国が国民に渡せばよいだけだ。

頭の切り替えができるかどうかで、世界は天国にも地獄にも行きうる。最悪のシナリオだが市場原理主義者が財政規律一辺倒で貫き、小さな政府で市場に任せておいたらどうなるだろうか。ロボットを駆使して大規模な生産を行う企業に富が集中することは明らかだ。他を寄せ付けない巨大独占企業ができあがり、すべての利益を独り占めする。ほとんど人手はかからないから、従業員はほとんどいない。人件費はほぼゼロで、売り上げがそっくり経営者だけの利益となる。国民の大部分は失業。生活保護の生活。社会保障制度は崩壊。失業者は購買力がないから物を作っても売れずデフレが慢性化し経済は衰退する。これぞまさに地獄だ。

地獄から天国にするには市場原理主義を排し、国が積極的に経済に介入すればよい。刷ったお金で巨大独占企業の株を徐々に買い占めることから始めるべきだ。やがて経営権を握るまで株を買う。そして、経営者に利益を独り占めされるのでなく、利益の一部を国が吸収していく。そしてだんだん国はその利益吸収割合を増やし、吸収した利益を国民に還元していく。何に使えば良いか。
①減税を進めていき、やがて税金をタダにする。無税国家の実現だ。
②社会保障の充実に充てる。やがて社会保険料もタダにする。現行の社会保障制度の大転換だ。
③ロボット産業育成に巨額の投資をする。農業・漁業のロボット化、医療・介護のロボット化、教育のロボット化(コンピュータ化)などに重点投資する。一家に一台のロボットを入れることを目標とする。とはいえ、ロボットもロボットがつくるのであり、人間の役割はより高度なロボットの開発である。
④失業者を出さないためにも、公務員を増やしていく。③の事業に携わる人たちも公務員にする。
⑤国が様々な分野で活躍したい人を公務員として雇う。
音楽、絵画、彫刻などの芸術家、作家、タレント、俳優、スポーツ各種、カメラマン、記者、料理人、研究者、発明家、陶芸家、園芸家、棋士、落語家、評論家、漫画家
⑥奨学金を充実させ、誰でも大学・大学院まで行けるようにする。ただし、入試制度は維持し、成績が悪くても3流校でもよければ入学できる。

このような社会制度を導入する際重要なことは、様々な活動評価を行い、評価の高い人は高い給料が得られるようにする。がんばった人は報われ、がんばらなかった人でも生活はできる社会にすることだ。時代の変化に対応しなければならない。

過去の歴史より学んだことは、生産力が不足しているときは社会主義・共産主義は経済の発展を妨げるということだ。生産力アップにはより多くの労働と創意工夫を引き出す必要があった。努力しても努力しなくても報酬が同じなら人は最小限の労働しかしない。だからソ連や東欧の共産主義は成功しなかった。

生産力があり余っているときは事情が違う。逆に、市場原理主義は経済の発展を妨げる。 ロボットのお陰で、人間が労働から解放されたのであれば、社会制度を工夫すれば人間は貴族のような生活を送ることができるはずである。かつてのように、競争を利用して人間に苦痛を伴う労働を強制する必要がなくなる。もちろん上記理想社会でも競争は残す。しかし、競争に敗れても十分快適な生活を送れるという種類の競争であり、弱肉強食社会ではない。

時代に相応しい社会制度に変革ができるのかどうかで、国民生活は天国にも地獄にもなりうる。上記のような社会制度改革に成功すれば、労働はロボットに、人間は貴族にといった理想社会=天国で生活ができるようになる。

2014年1月9日の朝日新聞に「女性ロボットの表紙をめぐり“炎上”という記事が載った。

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人工知能学会誌が上記のようなデザインを採用したことに対する批判だ。この種の議論は、これから始まろうとしているロボット社会における大論争の序曲だ。これからこの種の論争は大爆発するだろう。批判は「無自覚な性差別」、「ひどすぎ!うつろな目で掃除をする女性型ロボット!」、「なぜ女性なのか理由付けが必要」、「公共性への配慮を欠く」という批判だが、このデザインは学会員らの投票で一番人気だった。賛成派は「過剰反応だ」と主張する。

雑誌の表紙に可愛い女の子の写真を使うのは、ありふれたことであり、誰も気にしない。ここで問題になったのは見苦しい電線だ。実際のロボットは電磁誘導等非接触充電方式などもっとスマートな方式があるだろうから、まさかこんな電線はないだろう。この電線がまるで奴隷少女のような印象を与えたのかもしれない。

論争がエスカレートすることが確実な理由は、やがてロボットは家族の一員となる時代が来るということだ。将来は『動物愛護管理法』に相当する『ロボット愛護管理法』が制定されるだろう。ペットに愛着を感じた人間はペットを食肉用動物とは別扱いして特別な保護をするための法律を制定している。この表紙にあるようなロボットが自宅に入ってきたらペット以上に愛着を感じるのは間違いない。

ロボットに対する虐待禁止を法律で定めるようになるになるだろう。マネキンの人形なら動かないから特に愛着は感じず、特別保護する必要はなく、不要なら普通のゴミとして処分して構わない。しかしロボットとは自由に会話ができ、「心が通じ合う」。炊事、洗濯、掃除、老人の介護、子どもの教育等言われたとおり何でもやってくれる。医学の知識は医者以上、法律の知識は弁護士以上、欲しい商品の情報も瞬時にインターネットを検索し教えてくれる、学問の知識は大学教授以上という才女のロボットを自由に購入が可能となったらどうだろう。そこまでの才女でなくても楽しい会話ができる少女ロボットの段階ですでに大論争が始まるだろう。

もちろん、人身売買は遠い昔に禁止されている。しかし、身売りは日本でも行われていた。特に不況になると激増した。昭和恐慌の際には青森県だけで7083人の娘が芸娼妓(げいしょうぎ)に売られたとされている。金持ちは少女を買いたがる。人工知能学会の表紙にあるような見かけ上、少女とあまり変わらないロボットが売買されるようになったとき、ロボットは機械だから単なる機械の販売に準ずるのか、それともそれに異を唱える議論が出るのか分からない。上記の表紙ですでに“炎上”するのだから、その販売が始まろうとしたときそれとはケタ違いの大論争になりそうな予感がする。

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