政府はもっと信頼できる経済予測をすべきではないか(No.149)
『政府はもっと信頼できる経済予測をすべきではないか』というタイトルでネットでの一般の質問コーナーに質問を投げかけてみた。内閣府の担当者か、それに極めて近いと思われる人が回答してくれた。内閣府の試算に関しては、全く見当外れの予測ばかりで、これはひどいということで、知り合いの国会議員を通じて予算委員会などの委員会や質問主意書等で何度も追求してきた。こうした公式の質問に対しては、政府としての回答となり重大な責任を伴うために、どうしても核心を避け、あいまいな回答が多い。ところが、この質問に対しては、本音を語ってくれ、参考になった。
質問の要旨:
政府(内閣府)は毎年中長期の経済予測を出している。今年(2014年)も1月20日に出された。
http://www5.cao.go.jp/keizai-shimon/kaigi/minutes/2014/0120/shiryo_01.pdf
しかし、この予測は毎回全くデタラメの数字が並ぶばかりで、余りにもお粗末すぎる。過去の経済財政の中長期予測は次のサイトで見ることができる。
http://www5.cao.go.jp/keizai2/keizai-syakai/shisan.html
例えば平成17年(2005年)に出された試算を見るとよい。2012年度の名目GDPはなんと645.2兆円と予測している。実際は472.6兆円だったから大本営発表もいいところだ。冗談でしょうと笑ってしまう。こういった過大な成長予測を毎年繰り返している。毎回同じ間違いをしていて、恥ずかしくないのかと思ってしまう。もっと信頼できる経済予測を内閣府は国民に示すべきではないか。
回答やその後のやりとりの詳しい内容はhttp://okwave.jp/qa/q8426997.htmlを見て頂きたいのだが、内閣府では、2%のインフレ率はすぐに達成できると仮定して試算をしているようだ。そのような結果を出さないと政府は納得しないのだろう。その仮定は毎年大ハズレで、結果として15年以上デフレは続いている。これだけ外れても内閣府は謝らない。それどころか外れた理由(逃げ口上)もちゃんと用意している。
「外れたのはGDPデフレーターと名目GDPだけで実質GDPは大きく外れていない。要するに物価が当たらなかっただけだ。物価については日銀が責任を負うべきものであり、我々(政府、内閣府)には責任はないのだから、物価の予測ははずれてもよい!?」
これは、とんでもない間違いだ。デフレ脱却を政府が最重要課題としているのだから、内閣府はどういう政策でデフレ脱却が可能かを真剣に研究しなければならないはずだ。物価の予想は当たらないと断言しながら、前もって2%と決めてしまっているのだから、最初から大本営発表のつもりでいる。物価の調整は日銀が責任を持って行わなければならないと言っても、デフレでゼロ金利時代、金利はこれ以上下げられない。また国債を買っても日銀当座預金として滞留するだけで、その資金は市中に流れていかない。日銀だけでは、やれることは限られている。
内閣府の予測が如何にバカバカしいかは次のようにして見れば分かる。2005年に内閣府が持っていたデータを下図のグラフで示す。
馬鹿みたいに簡単にできる一次関数での予測をお見せしよう。まず内閣府のホームページから名目GDPをExcelにコピーする。例えば2005年に将来の名目GDPを一次近似で予測するとする。過去10年位の名目GDPから推測し、一次関数で近似してみる。例えば1995年度から2004年度までのグラフを描き、そこでレイアウト → 近似曲線 → 線形近似曲線と選べば完成だ。1分とかからず次のような近似直線が引かれる。
しかも近似直線の方程式まで表示してくれる。
y=-0.5068x+1515.6
これでxに求めたい年度の2006、2007,・・・を入れれば名目GDPが予測できる。この方法で求めたものと内閣府発表のものを比べてみよう。
名目GDP(兆円)
年度 実際の値 1次近似 内閣府
2006 509.1 499.9 521.5
2007 513.0 499.4 535.1
2008 489.5 498.9 553.3
2009 473.9 498.4 574.1
2010 479.2 497.9 596.7
2011 470.1 497.4 620.7
2012 474.8 496.9 645.2
1次近似のほうが実際の値に近いのは明かだ。グラフで示すと次のようになる。
この比較から、直線近似のほうが内閣府よりはるかに精度が高い予測だと分かる。2006年度と2007年度は世界経済は誰もが予想しなかった程景気がよかった。30年に1度と言われるほどの好景気だった。これはこの直線近似には考慮されていなかったから、予測は過小になった。一方2008年度以降はリーマンショックでGDPは落ち込み、予測は過大となった。過小になったり過大になったりするということは予測が正常であるという証明になる。
それに比べ、内閣府の予測は常に過大だ。世界経済が30年に1度の好景気と言われていた頃ですら過大な予測であり、それ以降は冗談はよしてくれといいたいほどの過大な予測だ。明らかに政治で歪められた予測だ。内閣府は「複雑な計算をした結果こうなったのだ」との主張のようだが、いくら複雑でも実際のデータに合わなければなんにもならない。
内閣府は直線近似に対して「財政政策も金融政策も考慮されていない予測は意味がない」との主張のようだが、今後の財政政策も金融政策も成長戦略も過去10年と余り変わり栄えしないと仮定するなら、直線近似で十分だ。つまり第一次近似として財政政策も金融政策も成長戦略も「過去と変わらない」として考慮に入れたことになる。更に精度を上げたければ、政策変更の部分をこの直線グラフに変更を加えればよいわけであり、内閣府のように理由もなく一方的にGDP拡大をさせればよいというものではない。それでも2005年だけの1回だけの予測の間違いであるなら、まだ許せるが、同じ間違いを毎年繰り返していれば「大本営発表」と言われても仕方が無い。本来ならこのように派手に間違えた翌年には、改良され修正が加えられ、実際のGDPに近づくようになったはずだ。
財政を拡大しようとすると、野党もマスコミも、政権内部からも猛反対される。こんなに国の借金が多いのにもっと借金をせよと言うつもりかと。しかし、これは誤解だ。財政を拡大すれば、国の借金は増えるかもしれないが、国の借金のGDP比は逆に減る。例えば、2008年1月17日に内閣府発表の資料では財政支出を増減させて比べた試算があった。
積極財政と緊縮財政の比較が行われている、3年後の2011年度の予測は
緊縮財政 積極財政
名目GDP 574.0兆円 577.2兆円
GDPデフレーター 0.7% 0.9%
失業率 3.4% 3.3%
国の借金 787.1兆円 790.6兆円
国の借金のGDP比 137.1% 137.0%
これから分かるように、積極財政を行えばGDPは増加し、失業率は減少、国の借金のGDP比は下がって、財政は健全化する。同様な結果は日経のモデルでも示された。
http://ajer.cocolog-nifty.com/blog/2010/10/post-bd0c.html
当然の結果なのに、誰も知らない。積極財政が財政を健全化するということを見事に示しているのだが、マスコミも国会議員も理解しない。逆に増税や歳出削減などを行えば、景気は悪化し財政も悪化するということ。まさに積極財政の正しさを示しており、日本経済の救世主になりうる試算なのだが、どうやれば国民に教えることができるのだろうか。
要するに、内閣府が過去の経済データを再現できるモデルをつくり、ちゃんと正直な試算を発表すればよいのだ。もっと分かりやすく積極財政と緊縮財政の比較を行い、あらゆる意味で積極財政のほうが、良い結果をもたらすことを。どれだけ財政を拡大すれば2%のインフレ率と3%の名目成長率が達成されるかも示して欲しい。それにより日本における政策の大転換が始まり、日本経済復活が始まる。
昨日(2014年2月10日)の日経新聞の朝刊には米国政策当局者の一部が日本に対し歳出を増やせと圧力をかけているとの記事が載った。IMF内部にもそのような動きがあるという。当然だろう。このまま日本が消費増税に踏み切れば、デフレが悪化し、それが世界経済に悪影響を及ぼす恐れがあると考えるのは当然だ。デフレが悪化すれば、間違いなく財政も悪化する。安倍首相よ、第二の矢の財政政策が足りないよ。米国やIMFのアドバイスにも耳を傾けよ。
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コメント
今日は。higashiyamatyo1979です。今度の都知事選での田母神氏の落選もそうですが正しい知識を広めるのは本当に難しいです。併せて「国の借金ガー」に代表されるプロパガンダの根強さには怒りを通り越して力が抜けてしまう思いがします。しかし、諦めては試合終了です。日本の左翼、朝鮮人、シナ人どもだって「慰安婦」「南京」といった捏造を最初は相手にされなくとも決して挫けず執念深く訴え続けたからこそ「今」の状況があるのです。
それでは決まり文句! お金が無ければ刷りなさい! 労働はロボットに!人間は貴族に!
投稿: higashiyamato1979 | 2014年2月11日 (火) 14時37分
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投稿: iPhone5カバー | 2014年2月20日 (木) 11時13分