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2014年4月

2014年4月30日 (水)

また財務省による「大本営発表=緊縮財政のすすめ」(No.156)

2014年4月28日、マスコミがしつこく報じたことだが、これが如何に欺瞞的かをここで暴露する。まずはNHKで何と報じたかを引用する。
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「2060年度 債務残高は8000兆円余に」
財政制度等審議会は、政府が今の財政健全化目標を達成できたとしても、その後、一段の収支改善策を実行しなければ、国と地方を合わせた債務残高は、2060年度には今の6倍を超える8000兆円余りに膨らむという試算を初めて示しました。
財務大臣の諮問機関である財政制度等審議会は、28日の会合で、およそ50年後の2060年を見据えた財政の長期試算を初めて示しました。
それによりますと、実質で2%程度、名目で3%程度と高めの経済成長が続き、政策に充てる経費を税収などで賄えるかを示す「基礎的財政収支」を2020年度に黒字化する今の財政健全化目標を達成できたとしても、高齢化で医療や介護といった社会保障費が増え続けることなどから、現行の制度のままでは2060年度の国と地方を合わせた債務残高は今の6倍を超える8157兆円に膨らむとしています。
この場合、GDP=国内総生産に対する債務残高の比率は、現在の1.6倍の397%にまで達することになり、財政危機の発生を防ぐためにも、債務残高の比率を速やかに下げていくことが不可欠だとしています。

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この発表の詳細を知るために、財務省主計局に電話して聞いてみたが、デタラメだと分かった!!まず、発表された論文だが、次のサイトの資料7-1と資料7-2にありました。

https://www.mof.go.jp/about_mof/councils/fiscal_system_council/sub-of_fiscal_system/proceedings/material/zaiseia260428.html

NHKは「この場合、GDP=国内総生産に対する債務残高の比率は、現在の1.6倍の397%にまで達することになり、財政危機の発生を防ぐためにも、債務残高の比率を速やかに下げていくことが不可欠だとしています。」と伝えている。この膨大な論文の中でこの結果はどこに書いてあるのかを財務省の担当者に聞いたところ、この論文には書いてないとの返事でした!!なんと、これは記者の質問に答えた数字であり、この論文には関係ないというのです。つまり財務省とNHKなどの記者が協力して国民を騙し、緊縮財政の必要性を訴えた報道のようです。

更に納得できないのは、この財政審の分析はEU諸国の財務状況を改善するための数式に当てはめていることで、通貨発行権を持たないEU諸国と持つ日本ではやれることは全く違います。このことを財務省の担当者に言いましたら「そうですね」との返事!!

例えばギリシャ中央銀行がギリシャ国債を無制限に購入できるでしょうか。できるならギリシャの金融危機はなかったはずです。日銀が無制限に国債を購入できるということ、財政はギリシャと違って破綻することはあり得ないことを理解していないのでしょうか。つまりギリシャは通貨発行権を持たないから夕張の赤字財政のようなものだけど、日本は通貨発行権を持つのだから、EUと同じ分析は通用しない。

国が国民からGDPの397%の借金(今で言えば2000兆円)をすることができるのか!!誰が貸しますか!これだけの借金を日銀が買ったら、さすがに大変なインフレになるけど、財政審の仮定は2060年までインフレ率は1%だって!!誰が信じますか。こんなバカな分析で緊縮財政を強要されてたまりません。

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2014年4月25日 (金)

日本経済の没落のきっかけを作った最初はオイルショック(No.155)

戦後日本経済は世界を驚かすほどの奇跡の復興をした。日本経済復活の勢いを止めたのが2つの誤解だ。その一つが「インフレは悪い、怖い」ということ、もう一つは「国の借金は悪であり、将来世代へのツケ」という考えだ。インフレなくして経済の拡大はないし、どこの国でもそれを受け入れているのに、なぜ日本だけ異常にインフレを怖がるのか。国の借金は日銀が買い取れば、将来世代へのツケではなくなるし、そうしても過度なインフレにならないことは、黒田総裁が異次元金融緩和で証明した。

日本経済の最初のつまずきは、1973年と74年のオイルショックよりもたらされた物価の異常な高騰(狂乱物価)だった。その原因は次の3つだ。
①1973年から田中角栄が引き起こした列島改造ブームで地価が急騰していた。
②第一次オイルショックで原油価格の急騰とその便乗値上げ。
③スミソニアン協定で設定された為替水準を維持するためにお金を刷った。

その結果1973、74年は狂乱物価となった。

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オイル価格の急騰で日本経済は大きな影響を受けた。

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政府は1973年11月総需要抑制策を採り、1973年には公定歩合を9%にまで引き上げ企業の設備投資を抑制する政策を採った。

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その結果消費は低迷し、大型公共事業の凍結・縮小で1974年には実質成長率がマイナスになった。実質成長率は72年度が8.8%、73年度は8.0%であったことを考えれば、74年度-1.4%にまで落ち込ませてしまったことはやりすぎと言わざるを得ない。

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確かに、過度の物価の値上がりは抑えた方がよいしオイルショックによるある程度の景気減速は覚悟すべきだ。しかし、起こっていたのは供給が需要に追いつかないというデマンド・プル・インフレではない。原油の値上がりという一時的な要因のためコスト・プッシュ・インフレが起きただけであり、原油価格が安定すれば放置しても自然に元に戻ったはずだった。異常なまでのインフレ恐怖症が、好調だった経済を徹底的に痛めつけ、高度成長を終わらせてしまった。

失敗の原因は、経済予測が楽観的過ぎたことも原因している。オイルショックで原油価格が約4倍になっただけでなく、トイレットペーパーなどの買い占め、ガソリンスタンドの休日休業、ネオンサインの点灯中止など社会的に大きな影響がでた。実質成長率は1974年の政府見通しで2.5%、日経センター予測で3.7%と急落する予測であったが、実際はさらに悪くマイナス1.4%になった。モデル計算をするのであれば、ここまで厳しい緊縮策でなく、もっと穏やかなソフトランディングできる政策を提案し政府に再考を促すべきではなかったか。

次のグラフは政府と日経センターの実質GDP成長率の予測を実績と比べたものである。見通しが楽観的であったということは、このままの緊縮政策を続けていても経済は大きくは落ち込まないと政府に助言していることになるわけで、景気に対する過剰な自信だ。

        出所:「新しい経済予測論」山澤成康

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経済予測とは逆に、オイル価格の値上がりだけで、日本中に悲観論があふれた。池田内閣で所得倍増計画を立案した下村治までもが今後ゼロ成長が続くと言い始めた。しかし、原油高騰は日本だけではないし、それに対抗して産業の省エネ化が進めばよいだけだった。日本製品の国際競争力は落ちるわけはないし、輸出を伸ばして十分成長は可能だし内需拡大もできるのだからゼロ成長予測は過度の悲観論だ。1960年代の10%を超える実質成長率は無理だったにせよ、かなりのレベルは確保できたはずだ。結局5%程度の成長に移行した。

不運だったのは、1973年11月に愛知揆一大蔵大臣が急死し、後任に均衡財政論者の福田赳夫が起用され、公共事業費の大幅削減を行ったことだ。1974年12月には田中角栄総理が失脚し、後任は三木武夫となった。三木内閣でも福田赳夫は経済担当副総理に就任し物価の値上がりを批判した。彼にとっては経済の健全な成長より健全な財政・安定した通貨がすべてだった。1976年には福田内閣発足した。彼は高度成長を否定した。更に1978年に大平 正芳が誕生したが、やはり財政再建を強く主張する内閣であった。

一方国際社会は内需拡大を強く求めた。ドルショックの時期だけは一時的に日本は経常赤字だったが、それ以外の期間は経常黒字が続いていた。「経済成長の余力のある国は、国際経済を牽引せよ」と、国際社会は日本に景気刺激を求めた。国際収支はゼロサムゲームで、黒字国が外貨をため込んで使わなければ、赤字国は貿易ができなくなり世界経済は縮小してしまう。黒字国は内需を拡大せよというのは正しい要求であり、日本はいつも国際的な義務を果たさずにいる。財政均衡論者は緊縮財政を行えば赤字国債の発行を抑えることができ将来世代へのツケを残さないで済むと言うが、逆に実際は緊縮財政で税収が減り、財政は悪化している。こんな単純な間違いに日本国民が気づくのはいつの日になるのだろうか。

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2014年4月24日 (木)

高度成長期には毎年減税しても税収は増えていった(No.154)

日本の政治家は税収を増やすためには増税しかないと考えている。ほとんど誰も知らないことだが、高度成長期には毎年のように減税をしていたが、それでも税収は増えていった。そんな馬鹿なことがあるかと言われそうだがまず次の所得税の控除のグラフを見ていただきたい。

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ほぼ毎年、基礎控除や配偶者控除を引き上げることで減税を行っていた。ブラケットクリープという言葉がある。インフレと所得税の累進性によって、同一の購買力を持つ所得への税率が上がることにより実質増税になることだ。高度成長期には、賃金が大きく上昇していて、控除を引き上げなかったら所得税が増えすぎて景気を悪化させてしまう。その調整のためにこのグラフのように、毎年控除を拡大していた。それでも所得税収は増えていた。

たとえば現在の所得税率をみる。

月収     税率(%)   税額
20万円    2.3    4770円
40万円    4.1   16510円
100万円  13.1  130830円

月収が20万円から2倍の40万円になると税額は約4倍に、5倍の100万円になると税額は約27倍になり給料が上がれば税収が激増する。つまり高所得者ほど税率が高くなり、労働者全体の給料が上がると、全員が高所得者になるから全体の税率が上がってくる。

景気が拡大し、賃金が上がれば間違いなく所得税収は大きく増える。逆にデフレで賃金が下がれば所得税収は大きく減ってしまう。税収を増やしたければひたすら景気を刺激し、インフレ目標を達成すればよいだけだ。下手に景気刺激をすると、ハイパーインフレになるからという理由から、財政出動が控えられ、いつまで経ってもデフレから脱却できないでいる。しかし、インフレが進んでくると上述のブラケットクリープにより税収が激増し猛烈なブレーキが掛り、インフレが止まる仕組みになっている。いわばインフレが制御不能にならないように安全装置がついているといえる。心配せずにデフレから完全に脱却するまで景気対策を進めるべきだ。次に平均給与増加率を示す。

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これで分かるように、高度成長期には給料は毎年10〜20%の割合で増加していた。それにより所得税収が激増し、景気を悪化させてしまうので毎年控除を引き上げて減税を行っていた。バブル崩壊以降、デフレに陥ってからは給料は下がり気味だ。これでは税収はどんどん下がる。税収が不足するから増税をするとさらにデフレが悪化し、給料が更に下がる。この悪循環に陥っている。

人口が減少しているから仕方がないと諦めている人も多いかと思うが、これは人口とは全く関係ない。人口とは無関係に日銀は金融緩和としてお金を刷った。そのお金は今銀行に眠っており、それを使い国が減税なり、歳出拡大などで市中に資金が流れれば景気はよくなり人手不足になって給料は上がってきて財政も健全化する。こういったよい循環に戻してほしいものだ。

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