高度成長期には毎年減税しても税収は増えていった(No.154)
日本の政治家は税収を増やすためには増税しかないと考えている。ほとんど誰も知らないことだが、高度成長期には毎年のように減税をしていたが、それでも税収は増えていった。そんな馬鹿なことがあるかと言われそうだがまず次の所得税の控除のグラフを見ていただきたい。
ほぼ毎年、基礎控除や配偶者控除を引き上げることで減税を行っていた。ブラケットクリープという言葉がある。インフレと所得税の累進性によって、同一の購買力を持つ所得への税率が上がることにより実質増税になることだ。高度成長期には、賃金が大きく上昇していて、控除を引き上げなかったら所得税が増えすぎて景気を悪化させてしまう。その調整のためにこのグラフのように、毎年控除を拡大していた。それでも所得税収は増えていた。
たとえば現在の所得税率をみる。
月収 税率(%) 税額
20万円 2.3 4770円
40万円 4.1 16510円
100万円 13.1 130830円
月収が20万円から2倍の40万円になると税額は約4倍に、5倍の100万円になると税額は約27倍になり給料が上がれば税収が激増する。つまり高所得者ほど税率が高くなり、労働者全体の給料が上がると、全員が高所得者になるから全体の税率が上がってくる。
景気が拡大し、賃金が上がれば間違いなく所得税収は大きく増える。逆にデフレで賃金が下がれば所得税収は大きく減ってしまう。税収を増やしたければひたすら景気を刺激し、インフレ目標を達成すればよいだけだ。下手に景気刺激をすると、ハイパーインフレになるからという理由から、財政出動が控えられ、いつまで経ってもデフレから脱却できないでいる。しかし、インフレが進んでくると上述のブラケットクリープにより税収が激増し猛烈なブレーキが掛り、インフレが止まる仕組みになっている。いわばインフレが制御不能にならないように安全装置がついているといえる。心配せずにデフレから完全に脱却するまで景気対策を進めるべきだ。次に平均給与増加率を示す。
これで分かるように、高度成長期には給料は毎年10〜20%の割合で増加していた。それにより所得税収が激増し、景気を悪化させてしまうので毎年控除を引き上げて減税を行っていた。バブル崩壊以降、デフレに陥ってからは給料は下がり気味だ。これでは税収はどんどん下がる。税収が不足するから増税をするとさらにデフレが悪化し、給料が更に下がる。この悪循環に陥っている。
人口が減少しているから仕方がないと諦めている人も多いかと思うが、これは人口とは全く関係ない。人口とは無関係に日銀は金融緩和としてお金を刷った。そのお金は今銀行に眠っており、それを使い国が減税なり、歳出拡大などで市中に資金が流れれば景気はよくなり人手不足になって給料は上がってきて財政も健全化する。こういったよい循環に戻してほしいものだ。
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コメント
今日は。久方ぶりの更新です。higashiyamato1979です。新年度になり消費税の増税もスタートし、デフレ脱却はいよいよ正念場です。本日の記事はこうした時期に改めて思い出すべき「常識」なのでしょう。しかし、それにしても「高度成長期には給料は10~20%の割合で増加していた。それにより所得税収が激増し、景気を悪化させてしまうので毎年控除を引き上げて減税を行っていた」・・・現在生きている我々にとってはとても同じ国での出来事とは思えない事実です。旧大蔵省も当時はまともだったのですね・・・。
それでは決まり文句! お金が無ければ刷りなさい! 労働はロボットに!人間は貴族に!
投稿: higashiyamato1979 | 2014年4月27日 (日) 12時44分
累進課税もあんまりいい制度とは言えないけどね。法人税と同様に消費したら控除するようにすれば表面税率は80%くらいの一定でいい。
というより「消費したら」というのは即ち「GDPにしたら」ということであり、「課税する」ということは「政府がGDPにする」ということでもあるのだから、そうしないとGDPには縮小圧力がかかる(三面等価の法則で収入もまたGDPだからね)。
実際、財務省はこの「消費したら控除される重税」の逆の「やっちゃいけないこと」ばっかりやってて、その当然の帰結としてのこの状況なわけですよ。
投稿: tarosuke | 2014年7月 5日 (土) 13時44分