« 2014年8月 | トップページ | 2014年10月 »

2014年9月

2014年9月10日 (水)

消費税増税でGDPは落ちないと騙し続けた内閣府(No.162)

消費増税後に次々と予想を超える景気の落ち込みを示す経済データが出ている。過去に内閣府では、消費増税の経済に与える試算を示している。例えば次のサイトの12ページを見て頂きたい。平成24年1月24日発表のデータだ。【試算1】
http://www5.cao.go.jp/keizai3/econome/h24chuuchouki.pdf
消費増税によって4年間の合計で実質GDPが僅か0.1%落ちるだけだと言っている。

次のサイトでは「内閣府試算「消費税増税をしても経済成長率への影響はほとんどない」更に「消費税を据え置くと、経済成長率は下がる」のはなぜ?」という質問が出ている。こちらは平成21年1月16日発表の内閣府の試算だ。【試算2】
http://okwave.jp/qa/q4653318.html

両試算とも、国民は見事に騙されていて、どのように騙されているのか誰も気付いていない。後者は次の試算だ。
http://mainichi.jp/select/seiji/news/20090117k0000m020063000c.html

この両方の試算のレポートを読めばほぼ全員が消費税でGDPは落ちないと誤解してしまう。筆者は、内閣府に電話して詳しく教えてもらった。何のことはない。消費増税をするときは、景気対策もやって消費増税をしないときとGDPが同じになるように細工してあるだけだ。若干、試算2について説明する。これは2011年度から増税をする試算だ。

笑ってしまうのは2012年には消費増税をしないシナリオでは実質成長率が下がってしまうのだが、消費増税をするシナリオでは下がらない。まともな計量モデルなら絶対起こらない現象だ。これはリーマンショックの後に行われた試算で、当時は大規模な財政出動で景気を回復させると言っていた。だから消費増税のないシナリオでは2011年度まで大きく実質GDPが伸びるがその後景気対策を縮小するから2012年度は落ちる。一方消費増税をするシナリオでは景気対策を拡大するから結局両方のシナリオで実質成長率は同じになる。

このように書けば誰でも簡単に理解できる。しかし内閣府はあたかも消費増税は経済に悪影響を及ぼさないと国民に思い込ませるような表現をわざとする。これって、大本営発表にそっくりだと思いませんか。

| | コメント (2) | トラックバック (0)

2014年9月 7日 (日)

日銀の黒田総裁の発言はおかしい(No.161)

黒田総裁は消費税を10%に再引き上げさせたいようだ。9月4日の記者会見で黒田総裁は「消費税を引き上げない場合、政府の財政健全化の意思、努力について市場から疑念を持たれ、政府・日銀としての対応のしようがないことにもなりかねない」と述べた。対応のしようがないということは、制御不能のインフレになるということだろう。これは緊縮論者が自分たちの無理な主張を通すためにいつも使う言葉だ。

そもそも先進国で制御不能なインフレなど起きたことがない。第一次世界大戦後のドイツやオーストリアのハイパーインフレや終戦直後の日本のインフレの例を見ても、政府が財政健全化の方針を示しただけでインフレはぴたりと止まっている。

下図はドイツのインフレ率だ。1兆倍になっても、政府が財政健全化の方針を打ち出した瞬間からインフレはピタリと止まった。

1611


次は、オーストリアのインフレ率だが、やはり同じ結果となっていて、通貨発行を止めるとすぐにインフレは止まっている。

1612

終戦直後の日本も日銀の国債引受でインフレが進んでいた。しかしドッジラインで1949年3月7日に日本経済の自立と安定とのために 実施された財政金融引き締め政策を行ったら、インフレはピタリと止まり逆にデフレに陥った。

1613



このように、インフレを止めるのは極めて簡単で制御不能なインフレなどない。一方日本で経験したようにデフレは止められない。それが失われた20年の原因だ。インフレを止める自信がないのなら日銀総裁の資格が無い。日銀は物価の安定を行う役目があり、物価安定ができない人は日銀総裁はできない。

今はどうやってデフレから脱却しインフレ率を目標の2%にまで高めるかという重要な課題に取り組んでいるところであり、制御不能のインフレを心配するときではない。42人のエコノミストに2年以内に2%のインフレ目標を達成できるかと聞いたところ「できる」と答えた人は2人しかいなかった。黒田総裁は自分の公約を守る必要がある。増税はインフレ目標をより難しくする。

さらに黒田総裁は、消費税を10%に引き上げた後、景気が下振れするリスクについては「予想以上に経済の落ち込みが大きくなれば、財政・金融政策で対応できる」と述べている。これは余りにも甘い見通しと言わざるを得ない。1997年の消費増税の際には、経済が落ち込み、財政・金融で景気を立て直そうとしたが失敗し、デフレが続き賃金も下がり続け「失われた20年」と言われる停滞期に突入してしまった。景気が悪くなっても何とかなるという甘い見通しが致命的な失敗となったが、それを繰り返そうとしている。

増税をすれば景気が悪くなるのは当たり前だ。実質成長率は2013年度には2.3%だったのに、消費増税のお陰で2014年度は大きく落ち込むことが決定的だ。42人のエコノミストの平均では0.48%にまで下落することになっている。これは予想以上に経済の落ち込みが大きくなった結果なのだから、黒田総裁の言うように今すぐに財政・金融で対応すべきだろう。つまり来年の消費増税を中止し、2%のインフレ目標が達成できるまで、きちんと景気対策を行わなければならない。増税は必ず景気を悪くし、その悪影響は一時的ではなく、税率を変えない限り永遠に続く。

景気対策を怠り、景気を冷え込ませてしまったら、景気を立て直すのに、それまで以上に多くの国債を買わなければならなくなり、出口戦略を更に困難にする。しかもどんなに多く国債を日銀が買おうとも、金利を低下させて銀行貸出を増加させない限り、景気浮揚効果はほとんどない。もちろん、日銀のバランスシートが拡大しているのを見て、海外投資家が円売りに走れば円安になるが、それにより輸出はほとんど増えてないから景気浮揚への効果はほとんどない。日銀の国債大量買い入れで「インフレが来るぞ」と思って,カネを他の物に変えようとする動きがあるかもしれない。偽薬効果だ。しかし、すでに日銀の国債保有残高は200兆円程度にまで増えている。今後多少買い増しても偽薬効果は限定的だ。こう考えると、景気浮揚の目的で日銀ができることはほとんどない。

黒田氏よ、金融政策を過信するな!!景気を悪化させてしまったら、日銀は景気回復にやれることは何もない。

| | コメント (5) | トラックバック (0)

« 2014年8月 | トップページ | 2014年10月 »