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2015年2月 9日 (月)

基礎的財政収支の赤字を拡大すれば、政府債務の対GDP比は減少する(No.171)

               ―内閣府の試算より-

来年度予算の国会審議が始まり、財政健全化の議論が活発になってきた。マクロ計量モデルの専門家であれば、簡単に分かる重要な事実がある。それは「基礎的財政収支の赤字を拡大すれば、政府債務の対GDP比は減少する」ということだ。これは日本の経済モデルを持っているシンクタンクなら簡単に確かめることができる。しかし、どのシンクタンクも財務省・内閣府が怖くて、この事実を公表できないでいる。それなのに、うっかりミスで内閣府がこの事実を公表してしまったことがある。2008年1月17日に内閣府が発表した「日本経済の進路と戦略」の中に、この重大な事実が隠されていたのだ。緊縮財政型のケースAと積極財政型のケースBとを比較して頂きたい。

①ケースA 緊縮財政型
  2011年度の予測
  名目GDP 574.0兆円
  債務残高 787.1兆円
  債務/GDP=137.1%
  基礎的財政収支=-1.4%
②ケースB 積極財政型
  2011年度の予測
  名目GDP 577.2兆円
  債務残高 790.6兆円
  債務/GDP=137.0%
  基礎的財政収支=-1.6%

この2つのケースを比較して分かることは、積極財政は緊縮財政に比べ、景気がよくなり、GDPは大きく増えるが、債務残高も増えてしまい、基礎的財政収支(PB)も悪化する。しかし、GDPの増加率のほうが、債務残高の増加率より大きいために、債務残高の対GDP比は減っていく。つまり経済成長のお陰で、債務は実質的に減り、将来世代へのツケを減らすことができるのだ。例えば日経新聞社のNEEDS日本経済モデルで行った試算を示す。財政を拡大した場合のGDPの増加は

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となる。例えば10兆円という空色のラインは、毎年10兆円だけ継続的に財政拡大したときの実質GDPの増加(兆円)である。国債を増発して歳出を拡大すると国の債務も増える。では債務とGDPでどちらが増加率が大きいだろうか。もちろんGDPの増加率の方が大きい。債務はすでに大きくなりすぎているので、増加速度はにぶいのだが、GDPは小さいので早く増加する。

1712


だから国の債務/GDPは財政を拡大するほど、小さくなっていく。つまり政府が財政を拡大すれば、国の借金は実質減っていく。これはどのシンクタンクの経済モデルでも同じ結果になるのは間違いない。

積極財政のほうが、債務残高の対GDP比を減少させるのは間違いないのだが、それだけでなく、景気が良くなれば、(もちろんデフレから脱却を意味する)税収も増え経済のパイが増えることにより、社会保障財源の確保も容易になる。積極財政では、最初はPBの赤字幅は大きくなるが、暫くすると景気がよくなり税収がある程度まで増えれば、もちろんPBも黒字化する。これはシミュレーションで確かめられる。2020年度にPBの黒字化を目指すなら、今のうちに財政支出を拡大して景気をよくしておかねばならない。

PBが赤字である限り、債務残高の対GDP比が増え続けると思っている人がいる。例えば平成26年12月27日の経済財政諮問会議で黒田日銀総裁はそのような発言をした。これは全くの誤解であり、日銀もマクロ経済モデルを持っているのだから、それが間違いだと日銀で確かめて頂きたい。昨年の7月25日に内閣府で発表された「中長期の経済財政に関する試算」においても、PBが続くのにもかかわらず。債務残高の対GDP比は2023年度まで減り続けるとの試算結果を得ている。これを次のグラフで示す。
               出所:内閣府
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赤の棒グラフが財政赤字であり、PBもやはりこの期間赤字だ。青の折れ線グラフが債務の対GDP比で、2015年~2023年の間下がり続けている。ただし、2014年4月の消費増税により景気が急激に悪化し、財政も悪化してきた。再びデフレに戻った場合は、このグラフのようにならず、また上昇を始める可能性も残る。是非、景気回復のための積極財政を行い、財政健全化を行っていただきたい。

第二次世界大戦の後、日本やフランス、ドイツは借金のGDP比は200%を超していた。その後、生産力が飛躍的に回復し経済成長をした結果、国の借金もほぼ消えた。

政府がどんどんカネを使うと経済規模が拡大し、生活も改善するだけでなく、借金も消えてしまうわけで、一挙両得の政策だ。インフレが起きたとしても、インフレの影響を考慮した実質賃金が上昇していれば問題ない。日本の借金がGDP比で世界一になったのは、緊縮財政でデフレが長く続き、GDPが減少したためである。逆に政府が減税し歳出を拡大すればデフレから脱却でき、借金のGDP比は下がっていく。

ちなみに、世界188カ国中146カ国の財政は赤字だが、借金のGDP比は日本のように増加を続けているわけではない。インフレでGDPを増やし、借金のGDP比を減らしている。世界188カ国の平均では対GDP比で約2%の赤字財政となっている。財政赤字で経済成長を促すのは世界の常識だ。

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コメント

 今晩は。higashiyamato1979です。当ブログの読者ならお馴染みの内容ですね。このような地道な活動こそ今求められています。
 それでは決まり文句! お金が無ければ刷りなさい! 労働はロボットに!人間は貴族に!

投稿: higashiyamato1979 | 2015年2月 9日 (月) 21時19分

There is certainly a great deal to learn about this subject. I love all the points you made.

投稿: Jason | 2015年3月 9日 (月) 02時48分

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