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2015年2月

2015年2月21日 (土)

「日本国債はリスク資産になりうる」黒田日銀総裁のオフレコ発言は的外れ(No.174)

2月20日、次のような報道がテレビから流れた。
http://saigaijyouhou.com/blog-entry-5632.html?utm_source=twitterfeed&utm_medium=twitter
引用:
日本銀行の黒田総裁の発言が政府の議事録から削除されていたことが判明しました。報道記事によると、削除されたのは日本の経済財政諮問会議で黒田総裁が日本国債のリスクに言及した発言で、政府側は市場に影響を与える可能性があると判断して削除したとのことです。

公開されている議事録に書いてある黒田総裁の発言は僅か1分程度ですが、実際には5分も日本国債の問題やリスクについて話していました。昨年末から日本国債が不安定化していることにも言及し、黒田総裁は日本国債を持っていることがリスクになると指摘しています。

最近では欧州で国債リスクが指摘されており、銀行の国債購入規制の話も浮上中です。日本の国債は銀行に買わせることで回っていたので、これは将来的に日本経済の破綻を誘発する恐れがある政策となります。おそらく、日本政府はこのような点を強く懸念していると考えられ、日銀総裁の発言規制もそれが原因である可能性が高いです。
引用終了:

引用:
http://www.fnn-news.com/news/headlines/articles/CONN00286617.html
日銀・黒田総裁、安倍首相に財政健全化に本腰入れるよう強く求める
先週行われた経済財政諮問会議で、日銀の黒田総裁が、日本国債が格下げされた現状について、極めてリスキーと指摘し、安倍首相に対して、財政健全化に本腰を入れるよう強く求めたことが、FNNの取材で明らかになった。
関係者によると、2月12日に行われた経済財政諮問会議で、日銀の黒田総裁は、民間の格付け会社が、2014年、日本の国債の格付けを引き下げたことによって、国債を保有する日本の銀行の経営に対する影響に懸念を示したうえで、状況は、極めてリスキーと指摘した。
これを受け、安倍首相は、格付け会社に働きかけるのが重要との考えを示したが、黒田総裁は、格付け会社のトップと話した際に、格付けを変えることはできなかったとしたうえで、安倍首相に対し、財政健全化に本腰を入れるよう強く訴えた。
日銀総裁が諮問会議の場で、首相に直談判するのは異例で、政府の財政健全化に向けた姿勢に、あらためて強い危機感を表した形となった。
引用終了:

黒田総裁は経済音痴
これらの黒田総裁の発言から、黒田総裁は全くの経済音痴だと断言せざるを得ない。ヨーロッパで国債がリスク資産と見なされているのは当然だ。ギリシャはIMFやECB等からの金融支援を受けられなければ直ちにデフォルトに陥り、ギリシャ国債は紙くずになるのだからリスク資産だ。それはギリシャ中央銀行がユーロという通貨を自由に発行できないからだ。日本国債は違う。日本は独自通貨を持っており、いくらでも円を発行し日銀が買い上げることができるのだからリスクは全くゼロだ。こんなことも分からず日銀総裁をやっているのだろうか。

格付け会社による国債の評価などどうでもよい。
そもそも国民の信任を得られていない民間格付会社の格付けに国の政策が影響を受けるべきでない。
〇2012年12月14日、金融庁はスタンダード&プアーズ・レーティング・ジャパン(S&Pジャパン)に対し、信用格付け付与の業務管理体制の整備が不十分で金融商品取引法に違反したとして業務改善命令を出した。
〇オーストラリア連邦裁判所は2012年11月、オランダ金融大手のABNアムロが組成・販売した仕組み債に最上級の「AAA」の格付けを与え、投資家をミスリードしたとして、S&Pに損害賠償するよう判決を下した。
〇欧米の格付け会社はリーマンショックを予測できなかった。彼らに日本国債の格付けができるわけがない。
〇2014年12月3日にムーディーズは増税延期を理由に日本国債を格下げしたのだ。それを受けた2日の東京市場だが、株も国債も上昇した。格付けが全く信頼されていないことの証拠だ。
〇2014年10月29日スタンダード&プアーズ・レーティングズ・サービシズ(S&P)のソブリン格付ディレクター(日本国債担当)、小川隆平氏は28日に行ったロイターとのインタビューで、来年10月に予定されている消費再増税について、日本の国債格付けにとってプラスになるとは限らないとの認識を示した。名目成長率が低迷する中で、経済成長の芽を摘むことになりかねないことを懸念している。

銀行が国債を売っても、日本経済は破綻しない
銀行が国債を売ればどうなるか。日銀が買いまくればよいだけだ。ギリシャと違い、日本経済は破綻しない。むしろ、国債を売って現金に換えた銀行は、その現金を何に投資するのか困るだろう。投資にはリスクが伴い、失敗すれば銀行は破綻する。国債なら償還期限まで持っていれば損はしない。銀行にとって国債を保有するリスクより売却するときのリスクのほうがはるかに大きい。それでも銀行が国債を売ったとし、例えば株や土地に投資すれば、資産インフレとなり、それは日本企業にとって担保物件の価値が増大するから融資を受けやすくし設備投資しやすくなる。それにより企業の国際競争力が増せば、次世代への素晴らしい資産となる。経済の破綻どころか、経済の活性化に導く。それにより経済のパイが大きくなれば、国の借金も軽くなるし、固定資産税、有価証券取引税等税収等の税収増により財政も健全化する。

歳出削減をして経済を悪化させれば確実に税収もGDPも減り財政は悪化し、国の借金は重くのしかかるようになる。

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2015年2月19日 (木)

二階ペーパーは正論:「与謝野の方程式」を封印 経済諮問会議の迷い(No.173)

遂に出た!鉄壁だった経済財政諮問会議によるプライマリーバランス(基礎的財政収支=PB)の黒字化が国の借金を減らす唯一の方法だという間違った考えを崩す素晴らしい一撃!

http://www.nikkei.com/article/DGXMZO83244330W5A210C1000000/

以下日経から引用する。

首相の安倍晋三を議長に仰ぐ経済財政諮問会議がふらついている。2020年度に国と地方のプライマリーバランス(基礎的財政収支=PB)を黒字化する中期財政計画を描くはずが、その手段の増税や歳出削減には政治の壁が立ちはだかる。勢い、安倍カラーの高成長による税収増に頼りがち。その姿をかつての会議関係者が批判し始めた。
■出足を鈍らせた二階ペーパー
 「PBの改善を目指すことは、そもそもの財政規律目標である『債務残高の対国内総生産(GDP)比の改善』の障害だ」
 自民党総務会長の二階俊博の名でこんな新説を唱える資料「二階ペーパー」が政権内で出回っている。1990年代のクリントン米政権は政府投資を大幅に拡大して経済のパイを膨らませ、債務残高のGDP比を低下させた、との論法で歳出削減をけん制。公共投資重視の旗を振り、農協改革の裏でも動いた二階の腕力には安倍も一目置く。与党から吹きつける逆風が諮問会議の出足を鈍らせる。
 12日の諮問会議。提出された2つの資料が迷いを象徴した。1つめは事務方の内閣府が生産性上昇率、原油価格などに一定の前提を置いて計量モデルにかけた中長期の経済財政試算だ。
 「20年度のPBはベースラインケース(成長率=実質1%弱、名目1%半ば程度)の場合はGDP比で3.0%程度の赤字、経済再生ケース(同=実質2%以上、名目3%以上)の場合は1.6%程度の赤字となる」

引用終わり。

PBを改善するために増税や歳出削減を行えば、GDPが減少し、政府債務の対GDP比は増えてしまう。逆に積極財政を行えば、税収が増え、GDPが増加し政府債務の対GDP比は減少に向かい、暫くするとPBも黒字化する。このことは何度も述べた。
①日経のモデルでシミュレーションして証明
http://ajer.cocolog-nifty.com/blog/2010/10/post-bd0c.html

②諸外国の例で説明
http://ajer.cocolog-nifty.com/blog/2012/07/post-ad88.html

③内閣府の試算でも裏付け
http://ajer.cocolog-nifty.com/blog/2014/05/post-e76d.html

④数々の歴史もそれを証明している
http://ajer.cocolog-nifty.com/blog/2015/01/no170-f7b5.html

⑤PBの赤字を拡大すれば、政府債務の対GDP比が減少することの決定的な証拠
http://ajer.cocolog-nifty.com/blog/2015/02/gdp-0601.html

世界中で政府債務の対GDP比をこれだけ増やしている国などどこにもない。そもそもデフレが20年近く続いているのに、増税・歳出削減など行うとは、宍戸駿太郎氏の言葉を借りれば「気は確かか?」である。消費が伸びないで苦境に陥っている日本。最良の経済対策は消費税を5%に戻すこと。5%から8%に、たった3%、初年度の税収にして僅か5兆円という火中の栗を拾うために、好調だった経済をマイナス成長という大火傷をしてしまった。

なぜ日本だけ政府債務の対GDP比が増えたのか。政府債務が増えるのは、どこの国でも共通だが、日本だけデフレでGDPを減らしている。日本が積極財政でGDPを増やせば債務の対GDPは減る。たったそれだけのこと。

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2015年2月15日 (日)

内閣府試算=狂った羅針盤は、今年も狂っていた(No.172)

2015年2月12日に内閣府より『中長期の経済財政に関する試算』が発表された。
http://www5.cao.go.jp/keizai-shimon/kaigi/minutes/2015/0212/shiryo_01.pdf
毎年、予測があまりにも当たらないので呆れているのだが、今年もオオカミ少年の嘘が並んでいた。

以前は、『経済再生ケース』と『参考ケース』の2種類だったが、今回の試算は『経済再生ケース』と『ベースラインケース』の2種類となった。内閣府によれば、安倍内閣の成長戦略が実行されれば『経済再生ケース』となることが予想されるが、もしもそれが実行されなければ、足元の経済状態が続けば、『ベースラインケース』の予測になるという。それでは成長戦略のうちで、どの政策がどれだけGDPを押し上げるのかを内閣府に質問したが、その答えは計算していないし、分からないということだった。要するに、ちゃんと計算をせず、鉛筆なめなめで数字を並べたということ。

内閣府の2人の人に聞いたのだが、彼らは本音を決して語ることはないが、経済再生ケースのような高い成長率になるわけがないと彼らは思っているのだろう。またオオカミ少年だったじゃないかと追求されたときに、「ベースラインケースも見てくれ、成長戦略がうまくいかなかったから低成長になったのだ」と逃げるつもりだろう。昨年までは、参考ケースとしていたが、名前をベースラインケースとした方が、「成長戦略に失敗しただけ」と言って逃げやすい。

『経済再生ケース』と『ベースラインケース』ではどこが違うのか。最も大きいのはTFP(全要素生産性)の違いだ。この違いを次のグラフで示す。

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ベースラインケースではTFPは1.0%、経済再生ケースではTFPは2.2%とされている。TFPを上げればGDP成長率も上がるので、安倍首相が望む成長率を簡単に達成することができる。ではどうやってこれほど大幅にTFPを上げることができるのかという問いに誰も答えることはできない。いい加減に決めたのだから。ましてや安倍内閣の成長戦略でTFPがこれだけ上がるのかという問いには誰も答えられない。唯一言えることは、安倍首相の願望である、実質成長率2%、名目成長率3%、インフレ率2%を達成するには、TFPをこのように大幅に上げればよいということだけだ。TFPという得体の知れない経済用語を使えば、何をどうすればよいのか誰も分からないから好都合だと内閣府は考えているのだろう。

TFPを自由に変えて政府が希望するGDPを実現するという手法は馬鹿げているし、シミュレーションの名に値しない。こんな子供だましの禁じ手で経済予測をやっている国は日本だけだ。閣議決定で成長率も経済政策も決めてしまったのだから、内閣府では無理矢理それに合わすモデルを作るしか無い。だから現実離れした狂った羅針盤になってしまう。

しかし、数字は正直であり、時々彼らの意図するものと正反対の結果も出てくる。次のグラフ「経済再生ケース」で求めたもので、赤の棒グラフは財政赤字の推移を示し、2023年度までずっと巨額の赤字が続く。基礎的財政収支もずっと赤字だ。一方折れ線グラフは国の借金の対GDP比だ。消費増税を行った2014年度だけは、増えているが、その後ずっと減り続けている。

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ここで使った名目GDPは、消費増税によりかさ上げされたものだ。「借金の実質的な重さ」を見るには、かさ上げされないGDPを使ったほうが、より正確であるので、かさ上げ分を除いたGDPを使って計算したものも以下で示す。

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点線で示したのが、かさ上げ分を除いて「公債残高/名目GDP」を計算したものだ。これではっきり分かる。2014年度と2017年度は消費増税のために景気が悪化し、GDPが縮小し、国の借金は実質的に増えている。それ以外の期間は財政赤字にも拘わらず、減り続けている。このグラフで分かることは、消費増税など行わなければ、財政赤字あるいは基礎的財政収支の赤字が続いても、国の借金はどんどん軽くなるということである。

筆者は内閣府に電話し、次のようなケースで政府債務の対GDP比を比較したらどうかと提案した。
①消費増税を行う場合と行わない場合の比較
②財政支出を削減する場合と削減しない場合の比較。
内閣府の回答は「安倍内閣の下で働いており、立場上そのような計算はできない。」ということだった。しかし、安倍首相は「基礎的財政収支にばかり気を取られ、経済を悪化させて政府債務の対GDP比は何にもならない。基礎的財政収支だけでなく、債務のGDP比を下げることも目標に入れるべきだ」と主張していると話すと、ご意見として承りましたとの返事だった。

内閣府の予測はひどいもので、毎年内閣府が繰り返して「昨年までの予測は全部間違いで、予期せぬ理由により今年の景気は大変悪くなりましたが、来年からもの凄い勢いで経済成長を始めます。」と言う。このいい加減さ次の名目GDPのグラフで分かる。

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要するに、右肩上がりで成長するグラフを毎年出してくる。これらは全部はずれたのだが、今度こそ当たりますと言って政府、国民を騙す。実際は名目GDPは1997年に521兆円になったのが最高で2013年度は481兆円まで下がっている。これほど長期にGDPが下がってしまった国はどこにも無い。成長戦略などいくらやっても成長などしない。財政を拡大し、減税を行えば、名目3~5%は簡単に達成できるし、財政健全化も同時に実現する。

上図を見て、またオオカミ少年だと思わない人はどうかしている。要するに右肩上がりのグラフを右に平行移動して国民を騙している。今の政策を大転換しない限り、日本経済の衰退は続く。消費増税の影響については次のサイトで2012年1月24日に予測されていた。
http://www5.cao.go.jp/keizai3/econome/h24chuuchouki.pdf

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要するに、内閣府によれば、消費増税を行っても、行わなくても成長率はほとんど変わらない。4年間の実質GDPの合計で、その差は僅か0.1%だと主張した。ところが実際は実質GDPは2013年度が2.1%、2014年度がマイナス0.5%という甚大な影響があったわけで、内閣府のモデルが如何にデタラメかが分かる。

下図は図Aが2014年1月に、図Bが2015年2月に内閣府が発表した試算結果である。消費増税の悪影響が強く表れたことを認めざるを得なくなって、図Bでは図Aに比べて2014年度と2017年度の実質GDP成長率を大きく下げざるを得なくなったことが分かる。しかし、それでも2015年度と2018年度にはV字回復するとしているが、本当にそうなるか大いに疑問が残る。消費増税で可処分所得が減り消費が落ち込むのだが、それはずっと先まで残り景気の足を引っ張り続ける。1997年の消費増税の後も、大規模な景気対策にも拘わらず、ずっと景気は良くならなかった事を忘れてはならない。

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以下に2つのグラフを重ねてみた。2014年予測は、消費増税の影響は小さいとした成長率でこれは完全に間違いだった。2015年予測は、消費増税の影響は大きいとしながらも、理由もなくTFPを意図的に大きくして成長率をわざと大きくしたことが分かる。要するに、安倍内閣の目標を実質成長率2%としているから、それに合うようにTFPが調整されているだけで、これは予測はなく、安倍総理の願望に過ぎない。
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今回発表された試算で長期金利は下図のようになると発表された。

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2023年には経済再生ケースの長期金利は4.6%にも達する。金利が1%上がれば、金融機関の持つ債権に7.6兆円の損失が出ると日銀が発表した。4%金利が高くなれば単純計算で約30兆円の損失が出ることになる。しかし、そこまで損失が出る前に金融機関は保有する国債を売るのではないか。経済再生ケースで名目長期金利は、2014年が0.4%、2015年が1.2%、2016年が1.8%、2017年が2.3%といように一本調子で上がるとしている。そんなに急激に金利が上昇してきたら、日銀が国債を買って金利上昇を抑えるのではないか。

現在、日銀当座預金の残高は180兆円あり、更に日銀券発行残高は約90兆円ある。しかも日銀は毎年国債を大量に購入し、残高を年間80兆円増やす。こういった利子がつかない現金は、金利が4.6%の時代にはどうなるのか。ゼロ金利時代にはタンス預金でもまだ我慢できたが、長期金利が4.6%になると、タンス預金はあり続けるという内閣府の仮定は余りにも不自然である。こんなに借金が増えるから緊縮財政をしなければいけないとアピールしたかったのだろう。この状況ならもちろん、多額の現金を持つ金融機関は国債を買う。国債を買いたい人が殺到すれば金利は当然下がるから4.6%の金利はあり得ない。

内閣府によれば、日銀は短期金利を上げていくとのこと。国債の購入も止めるようだ。金融政策を全く理解していない人が日銀総裁になれば、このような支離滅裂な政策が実行され大混乱が起きるかもしれないが、この試算では大混乱の様子も記述されていない。例えばベースラインケースを見るが良い。2023年度は実質成長率が0.9%、名目成長率が1.4%、消費者物価上昇率が1.2%、GDPデフレーター上昇率0.5%という不況の真っ只中だ。それでも長期金利は2.7%だ。これだけの不況で、政府目標にはほど遠いのだから、まだまだ量的緩和は続いているはずなのだが、国債買い入れは止めたのだろうか。内閣府からはこれに対する明確な回答はなかった。

もし国債買い入れを続けていたら、国債の大部分は日銀に買われてしまっているはずだ。そうなれば、金利は日銀を通じて国庫納付金として日銀に入っているはずだ。国庫納付金は「その他の収入」として扱われているそうだ。金利上昇も国庫納付金を増やす。2つの理由でその他の収入はどんどん増え続けるはずだが、内閣府の試算では増えておらず、2014年が6.8兆円だったものが逆に2023年度には5兆円に減っている。一方で国債費はどんどん増加し2023年度には40.3兆円に達している。ということは、日銀は2015年度には国債の購入を止め、日銀は逆に国債保有残高を減らしているということだ。不況が続く中、そんな金融政策があり得るのだろうか。

この点を問い詰めると、内閣府の回答は、国債の売買に関する事は計算に入っていないと主張を繰り返す。それでは日本経済の予測は全く無理である。

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2015年2月 9日 (月)

基礎的財政収支の赤字を拡大すれば、政府債務の対GDP比は減少する(No.171)

               ―内閣府の試算より-

来年度予算の国会審議が始まり、財政健全化の議論が活発になってきた。マクロ計量モデルの専門家であれば、簡単に分かる重要な事実がある。それは「基礎的財政収支の赤字を拡大すれば、政府債務の対GDP比は減少する」ということだ。これは日本の経済モデルを持っているシンクタンクなら簡単に確かめることができる。しかし、どのシンクタンクも財務省・内閣府が怖くて、この事実を公表できないでいる。それなのに、うっかりミスで内閣府がこの事実を公表してしまったことがある。2008年1月17日に内閣府が発表した「日本経済の進路と戦略」の中に、この重大な事実が隠されていたのだ。緊縮財政型のケースAと積極財政型のケースBとを比較して頂きたい。

①ケースA 緊縮財政型
  2011年度の予測
  名目GDP 574.0兆円
  債務残高 787.1兆円
  債務/GDP=137.1%
  基礎的財政収支=-1.4%
②ケースB 積極財政型
  2011年度の予測
  名目GDP 577.2兆円
  債務残高 790.6兆円
  債務/GDP=137.0%
  基礎的財政収支=-1.6%

この2つのケースを比較して分かることは、積極財政は緊縮財政に比べ、景気がよくなり、GDPは大きく増えるが、債務残高も増えてしまい、基礎的財政収支(PB)も悪化する。しかし、GDPの増加率のほうが、債務残高の増加率より大きいために、債務残高の対GDP比は減っていく。つまり経済成長のお陰で、債務は実質的に減り、将来世代へのツケを減らすことができるのだ。例えば日経新聞社のNEEDS日本経済モデルで行った試算を示す。財政を拡大した場合のGDPの増加は

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となる。例えば10兆円という空色のラインは、毎年10兆円だけ継続的に財政拡大したときの実質GDPの増加(兆円)である。国債を増発して歳出を拡大すると国の債務も増える。では債務とGDPでどちらが増加率が大きいだろうか。もちろんGDPの増加率の方が大きい。債務はすでに大きくなりすぎているので、増加速度はにぶいのだが、GDPは小さいので早く増加する。

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だから国の債務/GDPは財政を拡大するほど、小さくなっていく。つまり政府が財政を拡大すれば、国の借金は実質減っていく。これはどのシンクタンクの経済モデルでも同じ結果になるのは間違いない。

積極財政のほうが、債務残高の対GDP比を減少させるのは間違いないのだが、それだけでなく、景気が良くなれば、(もちろんデフレから脱却を意味する)税収も増え経済のパイが増えることにより、社会保障財源の確保も容易になる。積極財政では、最初はPBの赤字幅は大きくなるが、暫くすると景気がよくなり税収がある程度まで増えれば、もちろんPBも黒字化する。これはシミュレーションで確かめられる。2020年度にPBの黒字化を目指すなら、今のうちに財政支出を拡大して景気をよくしておかねばならない。

PBが赤字である限り、債務残高の対GDP比が増え続けると思っている人がいる。例えば平成26年12月27日の経済財政諮問会議で黒田日銀総裁はそのような発言をした。これは全くの誤解であり、日銀もマクロ経済モデルを持っているのだから、それが間違いだと日銀で確かめて頂きたい。昨年の7月25日に内閣府で発表された「中長期の経済財政に関する試算」においても、PBが続くのにもかかわらず。債務残高の対GDP比は2023年度まで減り続けるとの試算結果を得ている。これを次のグラフで示す。
               出所:内閣府
1713_2

赤の棒グラフが財政赤字であり、PBもやはりこの期間赤字だ。青の折れ線グラフが債務の対GDP比で、2015年~2023年の間下がり続けている。ただし、2014年4月の消費増税により景気が急激に悪化し、財政も悪化してきた。再びデフレに戻った場合は、このグラフのようにならず、また上昇を始める可能性も残る。是非、景気回復のための積極財政を行い、財政健全化を行っていただきたい。

第二次世界大戦の後、日本やフランス、ドイツは借金のGDP比は200%を超していた。その後、生産力が飛躍的に回復し経済成長をした結果、国の借金もほぼ消えた。

政府がどんどんカネを使うと経済規模が拡大し、生活も改善するだけでなく、借金も消えてしまうわけで、一挙両得の政策だ。インフレが起きたとしても、インフレの影響を考慮した実質賃金が上昇していれば問題ない。日本の借金がGDP比で世界一になったのは、緊縮財政でデフレが長く続き、GDPが減少したためである。逆に政府が減税し歳出を拡大すればデフレから脱却でき、借金のGDP比は下がっていく。

ちなみに、世界188カ国中146カ国の財政は赤字だが、借金のGDP比は日本のように増加を続けているわけではない。インフレでGDPを増やし、借金のGDP比を減らしている。世界188カ国の平均では対GDP比で約2%の赤字財政となっている。財政赤字で経済成長を促すのは世界の常識だ。

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