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2015年5月

2015年5月15日 (金)

週刊新潮が書いた嘘:国の借金「2000兆円」時代??(No.179)

2015年5月21日号で大々的に週刊新潮がPRしていた『国の借金「2000兆円」時代』に関して、発信元の財務省理財局に聞いてみた。全くの嘘だと分かったので、真実をお知らせする。

このPRの根拠になっているのが、財務省が2015年2月13日に行った次の発表だ。
『財務省は13日、国債と借入金、政府短期証券を合計した「国の借金」が平成27年度末 に1167兆円になるとの見通しを発表した。26年度末の見込み額より約106兆円増える ことになる。』

毎年100兆円づつ借金が増えれば、10年度には1000兆円増えて、国の借金は2000兆円になるだろうというのが週刊新潮の主張で、この数字を大々的に宣伝して売上げを伸ばそうというのが週刊新潮の作戦だ。しかし、財務省は週刊新潮の主張をきっぱり否定する。そもそも27年度末に1167兆円になると言ったのは2月に出した平成27年度予算に書かれた数字。この中に外国為替資金証券で外為特会の資金の融通について書かれた項目で27年度予算には195兆円の枠を定めたというだけのこと。詳しくは次のサイトの62頁を見て頂きたい。
http://www.mof.go.jp/budget/budger_workflow/budget/fy2015/h27y_e.pdf

政府短期証券(短期国債)の発行限度額がこれだけということ。実際はこの限度額一杯まで発行するわけがないし、これを国の借金に加えるのは無理がある。政府が為替介入をするとしたら195兆円を限度とせよとしている。だがこれだけ円安が進んだ今、政府がこのような大規模な為替介入をするわけがない。もし日銀が直接ドルを買うとしたら、この資金は必要ないわけだから、こんな資金はいらない。こんなものを国民が返すべき「国の借金」とすべきではない。あり得ないことだが、この短期国債を発行し、資金調達し、その資金で米国債を買ったとしても、これが国民が返すべき「国の借金」ではない。返済するなら、米国債を売って資金を取り戻し、短期国債を買い戻すべきだろう。

以上お分かりだと思うが、非現実的な政府短期証券の発行額を加えたものを無理矢理2015年度末の国の借金にしてしまったら、借金は106兆円も増えてしまうということで、実際はこれは限度額なのであり、限度額は今後急速に縮小するのであり、それにより借金の増加額も急速に縮小する。ましてや毎年100兆円ずつ国の借金が増えるということではない。つまり『国の借金「2000兆円」時代』と言ったのは、週刊新潮による雑誌の宣伝のための不当表示にすぎない。

シグマ・キャピタルのチーフエコノミストの田代秀敏氏は「日本の国債の価格や金利は事実上、すでに外国人によって握られている」と述べている(26頁)。しかし外国人の保有割合は僅か8.9%であり、日銀とケンカしても勝てないことは誰もが知っている。日銀ほど円を大量に動かすことができる者は世界中どこにもいないからだ。

ニッセイ基礎研究所の上野剛志氏はみんなが“日本の国債はダメだ”と思ったら、そのとき国債は売れなくなると主張している(26頁)。しかし、それでも日銀は最後の買い手として買うわけであり、そのことを誰もが知っているわけだから、“日本の国債はダメだ”と思うことはない。むしろ国債を持っていればいつかは日銀が買ってくれるという安心感がある。

上野氏は「経常赤字になると、国債の安心材料は失われる」と言っている。しかし2014年1~6月は経常赤字だったが、国債価格には影響はなかった。日本の対外純資産は300兆円あり世界一だから、経常赤字でも外貨不足に陥る心配はない。世界で経常収支の黒字国は59カ国、赤字国は128カ国ある。経常赤字なら国債が暴落するということでもない。不況で内需が縮小すると国民は貧乏になり、外国製品を買う余裕がなくなるので、経常収支は黒字になる。世界最悪の経常赤字国はアメリカである。黒字=善、赤字=悪という考えは間違いだ。

藤巻健史氏は(27頁)
「日銀が国債を買うのをやめれば国は“資金繰り倒産”をする」
と述べた。つまり倒産しないと確認できるまで日銀は国債を買うのをやめなければよいだけだ。日銀が国債を買い出す前も国は倒産してなかった。
「買い続けたらハイパーインフレになる」
のだそうだ。慶応大学経済学部の小林慶一郎教授は
「日本はハイパーインフレになる。物価は1年に5~10倍になる。それを防ぐには、年金や医療費を大幅削減、歳出を減らす。消費税率を40~45%にする。」
と述べた。2%のインフレすら起こせないのに、どうやってハイパーインフレにできるか藤巻・小林両氏は説明すべきだ。

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2015年5月 2日 (土)

「労働はロボットに、人間は貴族に」が実現する経済制度とは(No.178)

英国オックスフォード大学で「今後20年のIT化の影響で、米国における702ある職業のうち、およそ半分が失われる可能性がある。」というレポートが発表された。更に30年後、40年後を考えた時、我々の社会が市場原理主義に支配されていたら、人間はロボットに敗れ、職を奪われ失職する。更に働かざる者食うべからずという考え方が支配していたら、「人間は食うべからず」という社会となり、絶望的な未来がやってくる。

しかし、発想を転換し労働はロボットに任せ、ロボットが供給してくれた財・サービスを人間が使う、あるいは財・サービスを人間に分配をするという考えなら「労働はロボットに、人間は貴族に」という経済システムが実現する。この考えに基づいて、果たしてそのような経済システムはどのようにすれば実現するかを考えてみよう。国、家計、私企業、国営企業の4つの部門に分けて、資金の流れを考えた。
生活支援金:年金や生活保護費等
国から私企業へ(Cp):国の財政支出のうち私企業に流れたもの
国から国営企業へ(Cg):国の財政支出のうち国営企業に流れたもの
私企業からの給料(Wp):私企業が支払う賃金
国家公務員の給料(Wg):国家公務員の賃金
国営企業からの給料(Wn):国営企業が支払う賃金
所得税率(Ri):全員が同じ税率とする
売上税率(Rs):売り上げ×Rsが売上税とする
私企業売上(Ip):私企業の売り上げ合計
国営企業売上(Ig):国営企業の売上げ合計
 
表1

178


次の表で具体的に数字をあてはめてみた。単位は兆円とする。
表2

1782

現代においては、国営企業の民営化は推奨されている。「民間でできるものは民間で」ということだ。しかし、未来の民間企業に人間はほとんど働いておらず工場にはロボットばかりがいる。人件費のかからない民間企業の経営者は自分でろくに働らかなくても莫大な利益を得て、富みの集中が起きる。だから未来の世界では逆に「国でできるものは国で」という考えで、国営企業でできるだけ財・サービスの供給を行うべきだ。そこで得た莫大な利益で、多数の国民を雇い給料を払う。その給料で国民は財・サービスの購入が可能となる。

表2は、そのような未来社会の一例での資金の流れを示した。国営企業が圧倒的に大きく、私企業は小さい。

私企業はロボット中心なので、収入に比べ人件費は非常に小さい。一方国営企業はロボット中心で財・サービスの供給をしているのにも拘わらず、人件費の割合が高い。これは生産に直接携わらない「労働者」を多数雇っているということであり、「貴族」のような生活ができる「従業員」である。
現代の社会において、給料を受け取ろうとすると、何らかの形で誰かのために役立つ仕事をしなければならない。しかし、ロボットが労働を引き受けてくれる理想社会では、必ずしもそれは必要がない。例えそれが自己満足に過ぎないとしても、自分が楽しめる「職業」に就けば良い。作家、タレント、小説家、俳優、評論家、記者、料理人、デザイナー、科学者、研究者、発明家、音楽家、カメラマン、芸術家、陶芸家、園芸家、棋士、落語家、プロスポーツ、教師、等がある。現代では、このような職に就こうと思えば競争に勝たなければならないが未来社会では競争に勝てなくても自分が好きな職業に就ける。
未来社会では、こういった人達の活動を、国営会社で雇い支援する。国立の研究所を大幅に拡充する。科学技術関連の研究所はもちろん、文化、陶芸、音楽、栄養、スポーツ等に関する研究所も大規模につくり、大学への助成金を思い切って増やし、研究活動や教育に充分な資金を与える。大学も増やすと良い。例えば、水泳を専門に教える大学をつくる。そして全国に国立の水泳スクールをつくり、水泳大学で科学的トレーニング法を学んだ卒業生が、水泳スクールの指導にあたる。
例えば作家を例に挙げると、ノーベル文学賞を目指す売れっ子作家もいれば、誰にも読んで貰えない作家もいる。この時代は全員が国営企業の労働者として給料を貰える。ただし、その作品が多くの人に読まれれば、それだけ給料が高くなる仕組みで、給料は人工知能が決める。どの分野でもよい。成功を収めれば収めるほど給料は高くなるから、各自自分の特技を生かして頑張るようになる。
国営企業で莫大な利益を上げられるのだから無税国家にもできる。ここでは企業に若干の所得税と売上税を納めさせて政府の財源にした。国家公務員に給料が払える仕組みにした。また、公共事業等、様々な事業も国が行えるようにし、年金や生活保護費なども「生活支援金」として払えるようにした。ロボットが作るからと言っても、すべての商品の値段がゼロになるわけではない。商品の値段がゼロなら給料を貰う意味が無くなる。商品には値段はつく。だから、生産には仕入れのコストが掛かる。私企業も国営企業も「その他の支出」が「仕入れコスト」として必要になるわけである。

このような一見無駄に見える「労働者」を多数雇う国営企業は破綻するのではないかと心配するかもしれない。しかし、ここではロボットがしっかり生産し、素晴らしい商品を生産している。しかもほぼ独占企業に近いから、間違いなく売れ、しっかり収入が確保できる。表2のように、その収入の範囲内で給料が払われており全くの健全経営であることが分かる。

表3 無税国家

1783


ロボットに働かせて企業が莫大な利益を得る場合は、表3で示したように無税国家も実現可能だ。国営企業が巨額の利益を毎年確保できるなら、その利益の一部を国庫納付金として国庫に納めればよい。国営企業は充分な利益を上げられるのだから、政府の財政支出を支えるだけの充分な納付金を納めることができる。そればかりでなく、年金や生活保護費さえも、その納付金でカバーが可能だ。国民にとっていやな税務署も必要が無くなるということだけでも大変なメリットである。

表4 重税国家

1784




巨大な国営企業に多数の従業員を雇うということは、究極の大きな政府を意味する。今の財務官僚の残党がこの時代に生き延びていたら、きっと大増税を提案するだろう。巨額の税収で、国営企業が多くの職員を雇う。どんなに税率が高くても可処分所得が高ければ生活水準は高くなるから一見問題ないように思える。表4では所得税率も売上げ税率も90%にしてみた。9割税金で取られても、総支給額が10倍なら手取りは同じだ。この表から分かるように巨額の資金が国、家計、企業の間で目まぐるしく動き回っているのが分かる。売上げの9割が税金で持って行かれるなら、売上げを10%だけ低くみせるだけで手元に残るカネは2倍になる。所得税も同様だ。脱税を防ぐために税務署の職員を大幅に増強する必要があるし、国民と税務署の間の争いは熾烈になりいやな世の中になるだろう。

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