週刊新潮が書いた嘘:国の借金「2000兆円」時代??(No.179)
2015年5月21日号で大々的に週刊新潮がPRしていた『国の借金「2000兆円」時代』に関して、発信元の財務省理財局に聞いてみた。全くの嘘だと分かったので、真実をお知らせする。
このPRの根拠になっているのが、財務省が2015年2月13日に行った次の発表だ。
『財務省は13日、国債と借入金、政府短期証券を合計した「国の借金」が平成27年度末 に1167兆円になるとの見通しを発表した。26年度末の見込み額より約106兆円増える ことになる。』
毎年100兆円づつ借金が増えれば、10年度には1000兆円増えて、国の借金は2000兆円になるだろうというのが週刊新潮の主張で、この数字を大々的に宣伝して売上げを伸ばそうというのが週刊新潮の作戦だ。しかし、財務省は週刊新潮の主張をきっぱり否定する。そもそも27年度末に1167兆円になると言ったのは2月に出した平成27年度予算に書かれた数字。この中に外国為替資金証券で外為特会の資金の融通について書かれた項目で27年度予算には195兆円の枠を定めたというだけのこと。詳しくは次のサイトの62頁を見て頂きたい。
http://www.mof.go.jp/budget/budger_workflow/budget/fy2015/h27y_e.pdf
政府短期証券(短期国債)の発行限度額がこれだけということ。実際はこの限度額一杯まで発行するわけがないし、これを国の借金に加えるのは無理がある。政府が為替介入をするとしたら195兆円を限度とせよとしている。だがこれだけ円安が進んだ今、政府がこのような大規模な為替介入をするわけがない。もし日銀が直接ドルを買うとしたら、この資金は必要ないわけだから、こんな資金はいらない。こんなものを国民が返すべき「国の借金」とすべきではない。あり得ないことだが、この短期国債を発行し、資金調達し、その資金で米国債を買ったとしても、これが国民が返すべき「国の借金」ではない。返済するなら、米国債を売って資金を取り戻し、短期国債を買い戻すべきだろう。
以上お分かりだと思うが、非現実的な政府短期証券の発行額を加えたものを無理矢理2015年度末の国の借金にしてしまったら、借金は106兆円も増えてしまうということで、実際はこれは限度額なのであり、限度額は今後急速に縮小するのであり、それにより借金の増加額も急速に縮小する。ましてや毎年100兆円ずつ国の借金が増えるということではない。つまり『国の借金「2000兆円」時代』と言ったのは、週刊新潮による雑誌の宣伝のための不当表示にすぎない。
シグマ・キャピタルのチーフエコノミストの田代秀敏氏は「日本の国債の価格や金利は事実上、すでに外国人によって握られている」と述べている(26頁)。しかし外国人の保有割合は僅か8.9%であり、日銀とケンカしても勝てないことは誰もが知っている。日銀ほど円を大量に動かすことができる者は世界中どこにもいないからだ。
ニッセイ基礎研究所の上野剛志氏はみんなが“日本の国債はダメだ”と思ったら、そのとき国債は売れなくなると主張している(26頁)。しかし、それでも日銀は最後の買い手として買うわけであり、そのことを誰もが知っているわけだから、“日本の国債はダメだ”と思うことはない。むしろ国債を持っていればいつかは日銀が買ってくれるという安心感がある。
上野氏は「経常赤字になると、国債の安心材料は失われる」と言っている。しかし2014年1~6月は経常赤字だったが、国債価格には影響はなかった。日本の対外純資産は300兆円あり世界一だから、経常赤字でも外貨不足に陥る心配はない。世界で経常収支の黒字国は59カ国、赤字国は128カ国ある。経常赤字なら国債が暴落するということでもない。不況で内需が縮小すると国民は貧乏になり、外国製品を買う余裕がなくなるので、経常収支は黒字になる。世界最悪の経常赤字国はアメリカである。黒字=善、赤字=悪という考えは間違いだ。
藤巻健史氏は(27頁)
「日銀が国債を買うのをやめれば国は“資金繰り倒産”をする」
と述べた。つまり倒産しないと確認できるまで日銀は国債を買うのをやめなければよいだけだ。日銀が国債を買い出す前も国は倒産してなかった。
「買い続けたらハイパーインフレになる」
のだそうだ。慶応大学経済学部の小林慶一郎教授は
「日本はハイパーインフレになる。物価は1年に5~10倍になる。それを防ぐには、年金や医療費を大幅削減、歳出を減らす。消費税率を40~45%にする。」
と述べた。2%のインフレすら起こせないのに、どうやってハイパーインフレにできるか藤巻・小林両氏は説明すべきだ。
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