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2015年5月 2日 (土)

「労働はロボットに、人間は貴族に」が実現する経済制度とは(No.178)

英国オックスフォード大学で「今後20年のIT化の影響で、米国における702ある職業のうち、およそ半分が失われる可能性がある。」というレポートが発表された。更に30年後、40年後を考えた時、我々の社会が市場原理主義に支配されていたら、人間はロボットに敗れ、職を奪われ失職する。更に働かざる者食うべからずという考え方が支配していたら、「人間は食うべからず」という社会となり、絶望的な未来がやってくる。

しかし、発想を転換し労働はロボットに任せ、ロボットが供給してくれた財・サービスを人間が使う、あるいは財・サービスを人間に分配をするという考えなら「労働はロボットに、人間は貴族に」という経済システムが実現する。この考えに基づいて、果たしてそのような経済システムはどのようにすれば実現するかを考えてみよう。国、家計、私企業、国営企業の4つの部門に分けて、資金の流れを考えた。
生活支援金:年金や生活保護費等
国から私企業へ(Cp):国の財政支出のうち私企業に流れたもの
国から国営企業へ(Cg):国の財政支出のうち国営企業に流れたもの
私企業からの給料(Wp):私企業が支払う賃金
国家公務員の給料(Wg):国家公務員の賃金
国営企業からの給料(Wn):国営企業が支払う賃金
所得税率(Ri):全員が同じ税率とする
売上税率(Rs):売り上げ×Rsが売上税とする
私企業売上(Ip):私企業の売り上げ合計
国営企業売上(Ig):国営企業の売上げ合計
 
表1

178


次の表で具体的に数字をあてはめてみた。単位は兆円とする。
表2

1782

現代においては、国営企業の民営化は推奨されている。「民間でできるものは民間で」ということだ。しかし、未来の民間企業に人間はほとんど働いておらず工場にはロボットばかりがいる。人件費のかからない民間企業の経営者は自分でろくに働らかなくても莫大な利益を得て、富みの集中が起きる。だから未来の世界では逆に「国でできるものは国で」という考えで、国営企業でできるだけ財・サービスの供給を行うべきだ。そこで得た莫大な利益で、多数の国民を雇い給料を払う。その給料で国民は財・サービスの購入が可能となる。

表2は、そのような未来社会の一例での資金の流れを示した。国営企業が圧倒的に大きく、私企業は小さい。

私企業はロボット中心なので、収入に比べ人件費は非常に小さい。一方国営企業はロボット中心で財・サービスの供給をしているのにも拘わらず、人件費の割合が高い。これは生産に直接携わらない「労働者」を多数雇っているということであり、「貴族」のような生活ができる「従業員」である。
現代の社会において、給料を受け取ろうとすると、何らかの形で誰かのために役立つ仕事をしなければならない。しかし、ロボットが労働を引き受けてくれる理想社会では、必ずしもそれは必要がない。例えそれが自己満足に過ぎないとしても、自分が楽しめる「職業」に就けば良い。作家、タレント、小説家、俳優、評論家、記者、料理人、デザイナー、科学者、研究者、発明家、音楽家、カメラマン、芸術家、陶芸家、園芸家、棋士、落語家、プロスポーツ、教師、等がある。現代では、このような職に就こうと思えば競争に勝たなければならないが未来社会では競争に勝てなくても自分が好きな職業に就ける。
未来社会では、こういった人達の活動を、国営会社で雇い支援する。国立の研究所を大幅に拡充する。科学技術関連の研究所はもちろん、文化、陶芸、音楽、栄養、スポーツ等に関する研究所も大規模につくり、大学への助成金を思い切って増やし、研究活動や教育に充分な資金を与える。大学も増やすと良い。例えば、水泳を専門に教える大学をつくる。そして全国に国立の水泳スクールをつくり、水泳大学で科学的トレーニング法を学んだ卒業生が、水泳スクールの指導にあたる。
例えば作家を例に挙げると、ノーベル文学賞を目指す売れっ子作家もいれば、誰にも読んで貰えない作家もいる。この時代は全員が国営企業の労働者として給料を貰える。ただし、その作品が多くの人に読まれれば、それだけ給料が高くなる仕組みで、給料は人工知能が決める。どの分野でもよい。成功を収めれば収めるほど給料は高くなるから、各自自分の特技を生かして頑張るようになる。
国営企業で莫大な利益を上げられるのだから無税国家にもできる。ここでは企業に若干の所得税と売上税を納めさせて政府の財源にした。国家公務員に給料が払える仕組みにした。また、公共事業等、様々な事業も国が行えるようにし、年金や生活保護費なども「生活支援金」として払えるようにした。ロボットが作るからと言っても、すべての商品の値段がゼロになるわけではない。商品の値段がゼロなら給料を貰う意味が無くなる。商品には値段はつく。だから、生産には仕入れのコストが掛かる。私企業も国営企業も「その他の支出」が「仕入れコスト」として必要になるわけである。

このような一見無駄に見える「労働者」を多数雇う国営企業は破綻するのではないかと心配するかもしれない。しかし、ここではロボットがしっかり生産し、素晴らしい商品を生産している。しかもほぼ独占企業に近いから、間違いなく売れ、しっかり収入が確保できる。表2のように、その収入の範囲内で給料が払われており全くの健全経営であることが分かる。

表3 無税国家

1783


ロボットに働かせて企業が莫大な利益を得る場合は、表3で示したように無税国家も実現可能だ。国営企業が巨額の利益を毎年確保できるなら、その利益の一部を国庫納付金として国庫に納めればよい。国営企業は充分な利益を上げられるのだから、政府の財政支出を支えるだけの充分な納付金を納めることができる。そればかりでなく、年金や生活保護費さえも、その納付金でカバーが可能だ。国民にとっていやな税務署も必要が無くなるということだけでも大変なメリットである。

表4 重税国家

1784




巨大な国営企業に多数の従業員を雇うということは、究極の大きな政府を意味する。今の財務官僚の残党がこの時代に生き延びていたら、きっと大増税を提案するだろう。巨額の税収で、国営企業が多くの職員を雇う。どんなに税率が高くても可処分所得が高ければ生活水準は高くなるから一見問題ないように思える。表4では所得税率も売上げ税率も90%にしてみた。9割税金で取られても、総支給額が10倍なら手取りは同じだ。この表から分かるように巨額の資金が国、家計、企業の間で目まぐるしく動き回っているのが分かる。売上げの9割が税金で持って行かれるなら、売上げを10%だけ低くみせるだけで手元に残るカネは2倍になる。所得税も同様だ。脱税を防ぐために税務署の職員を大幅に増強する必要があるし、国民と税務署の間の争いは熾烈になりいやな世の中になるだろう。

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コメント

 今日は。higashiyamato1979です。「例えそれが自己満足に過ぎないとしても」-本エントリーのポイントはおそらくここですね。どんなに一生懸命にやっても「結果」が出なければ評価されない社会から一生懸命やればそれだけで評価される社会への大転換ー意外とその時は近いのかもしれません。
 それではいつも以上に気合を入れて決まり文句! お金が無ければ刷りなさい! 労働はロボットに!人間は貴族に!

投稿: higashiyamato1979 | 2015年5月 3日 (日) 09時11分

ロボットに資本主義的労働を代替させる社会については、ロボットの最初の発案であるカレル・チャペクの戯曲に遡り、英国フェビアニズム系のSF作家が何十年も思考実験を繰り返しています。
先日の定例会は山形浩生さんが講師でしたが、山形さんが世に出た最初は経済学ではなく英米SFの評論でした。山形さんも未来技術によって変容した社会のイメージについて上手に説明してくれるのではないかと思います。定例会での次の登場を期待しています。

なお、反論者としてグレゴリー・クラークさんはいかがでしょうか?クラークさんはデフレギャップの増大を懸念して、これ以上の資本整備には眉を潜めています。資本装備率の上昇は価格にしめる粗利を圧迫します。ロボットを人間の労働の代替ではなく新たな資本整備だとすれば反論は成り立ちます。
この構想を煮詰めていくためにも反論は必要でしょう。

どこかでお話したような気がしますが、私はロボット工学に代表されるハイテクノロジーを企業ではなく個人が装備して個人の身体能力を拡張する方向に期待しています。見える義眼、自在に動く義手、筋肉の代わりをする服などです。

投稿: | 2015年5月 6日 (水) 21時00分

自然=コメ=お金=エネルギー
と考えると

お金をただ刷り増し人々に渡してみる《エネルギーとして》

お金をただ刷り増し人々に渡してみると銀行や金利のない世界ならおもしことが起こります。
まず、刷り増した分だけ物の価格が上がります。
(お金が増えその価値をさげなければならない為)
では借金は、どうでしょう。
人間の欲により金利を取らないなら借金は、お金の価値が下がった分だけ楽に支払えます。
自然から獲れた米を人々に配ることと
ただ刷り増し人々にお金を渡すことは、
米は、食べて無くなる(エンデの腐るお金の意)
お金は、増やした為に価値が下がる(エンデの腐るお金の意)
同じに考えられます。

人類の考え方や労働や欲に対する精神性が上がれば世の中は、劇的に変えられます。
お金を欲と物にむすびつけず(お金は、裏付けが有ってはならない金品等)
ただ降り注ぐエネルギーや自然の恵みとして扱うこと。
また国は、お金を刷り増した時点で全てのお金から税を徴収したことになる。
なぜなら、結局国に必要なお金や誰かの借金の目減り分は、皆で払うことになる。
それは、お金の価値が落ちた分の総計から。
この考え方の行き着く先は、物の値段(あえて価格と書いてない・利益を追求しなくてもいいから)を劇的に下げていくことになるだろう。
銀行が無く金利が無くお金さえ必要のない世界に。


上手く伝えられてたら幸いですが。

投稿: θ89 | 2015年5月25日 (月) 22時09分

「ぼくのかんがえたりそうのしゃかい」だな。できの悪い空想科学小説。

投稿: 釣本直紀 | 2016年4月15日 (金) 09時58分

ロボットが人間生活に必要な物資等を調達する労役を担ってくれて、人間は広義のアーチストとして活動できる世の中が理想かなと思います。
プロのスポーツ選手等は、お金でなく名誉のため(!?)に競い合う。そこに満足を得て人生を過ごせたら、人類の生き方の革命に繋がるかな。
医療分野等で研究開発なども確実に必要ですが、その仕事に従事する人も、アーチストとして対価を求めずに全うできるか? 研究開発だけでなく、"人間が"活動して行くためのモチベーションをお金以外に確立できるかも課題。

投稿: Drwon | 2016年11月27日 (日) 22時11分

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