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2015年6月 6日 (土)

消費税増税による景気の急激な悪化に関する質問主意書(No.180)

福田昭夫衆議院議員に日本経済復活の会の主張に沿った質問主意書を書いてもらい、それに対する安倍総理からの答弁書が返ってきたので、ここで紹介する。質問は消費増税を批判するものになっているが、決してアベノミクスを全否定するものではなく、質問の目的はあくまで日本経済復活の方法を政府に理解させることである。

質問1は政府が消費増税の悪影響を過小評価したことへの批判である。この点に関しては安倍総理は内閣府や財務省に対して不信感を持っているのではないだろうか。答弁書の「1及び2について」の中で「政府としては、今後とも、ご指摘の「消費増税の影響」など過去の経済財政政策の影響も含め経済動向を総合的に検証・分析しつつ、経済財政運営に万全を期してまいりたい。」と述べていることは評価できる。

質問3は「好景気は財政健全化に資する」ということを理解させたかった。つまり増税で景気を悪化させても、それにより景気が悪化すれば、税収が減り、名目GDPも減るので政府債務のGDP比は増えてしまい、将来世代へのツケを増やしてしまう。答弁書には「一般論としては、持続的な経済成長は、税収の増加を通じて財政健全化に資することとなる」ということを認めている。時間をかけてもこのことを理解させなければ日本経済の没落は終わらない。話を複雑にしているのは、2014年度に増税をしマイナス成長に陥ったのだが、税収は大幅に増えていることだ。円安・株高で輸出企業の業績が回復していることが一因となっている。増税の影響は個人消費の伸び悩みだ。増税が無ければ、景気は間違いなく良くなっていただろうし、デフレから脱却できていただろうし、財政健全化へと進んでいただろう。

その他の答弁は「お茶を濁した」程度の意味しかない。これは一応答弁をしたという体裁を整えるだけの価値しかない。この質問主意書で政府が全面降伏をするわけはないのだから、上記の2点でこの質問主意書は意味があったとすべきで、更なる前進はこれ以降の質問主意書に期待することにする。

質問第234号
消費税増税による景気の急激な悪化に関する質問主意書
                            提出者 福田昭夫

2014年4月に消費税率が5%から8%に引き上げられて以来、国民は節約に走り、消費は落ち込み、実質GDP成長率は2013年度の2.1%から2014年度には一気にマイナス1.0%程度に落ち込んだものと思われる。民間シンクタンクによる今後の実質GDP成長率の予測は5社平均で2014年度はマイナス1.0%、2015年度1.8%、2016年度1.7%となっている。
ところで、政府は消費税増税による経済への影響は軽微だと国民に説明してきた。
1 平成24年1月24日に内閣府より発表された「経済財政の中長期試算」の12頁において、消費増税を行った場合(一体改革あり)と行わなかった場合(一体改革なし)の比較がグラフで示されており、両方の場合消費増税は実質GDP成長率にほとんど影響しない、4年間の成長率の合計でも差は僅か0.1%とされているがこれは現実と大きく異なる。
2 平成25年10月1日閣議決定で消費増税に対して経済対策が示されている。その規模について「来年度4~6月期に見込まれる反動減を大きく上回る5兆円規模とし、3%の消費税率引上げによる影響を大幅に緩和する」としている。これは例えば財務省のホームページの「消費税率及び地方消費税率の引上げとそれに伴う対応について」の6頁にある。甘利大臣も同日の記者会見で補正予算の規模について「来年度4~6月期に見込まれる反動減、4月に消費税を引き上げると駆け込み、そしてその後に反動減があるわけであります。その反動減を大きく上回る5兆円規模といたします。」と述べている。
これに関連して質問する。

1 消費増税の前には消費増税の影響は少ないと政府は説明していた。この説明は間違いであったことを認めるか。
2 消費増税の影響を過小評価した原因を徹底的に調べ、二度と間違いを繰り返さないよう努力すべきではないか。
3 消費増税を行わず税率が5%のままであれば、2014年度の成長率は高いレベルであったと考えられる。好景気は財政健全化に資するのではないか。
4 消費増税の影響は深刻だから消費増税は行うべきで無いと主張していた識者はいた。今後過ちを繰り返さないためにも、そういった識者の意見を優先して取り入れるべきではないか。
5 2017年度に消費税を10%に引上げれば、再びマイナス成長に陥るのでないか。
右質問する。

答弁書第234号

内閣衆質189第234号

  平成27年5月29日  内閣総理大臣 安倍晋三
  衆議院議長 大島理森殿
衆議院議員福田昭夫君提出消費税増税による景気の急激な悪化に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。

衆議院議員福田昭夫君提出消費税増税による景気の急激な悪化に関する質問に対する答弁書

1及び2について
 消費税率(国・地方)については、経済状況等を総合的に勘案した検討を行った結果、平成26年4月1日に5パーセントから8パーセントへ引き上げることとしたところである。これに合わせて、消費税率の引き上げによる駆け込み需要の反動減を緩和して景気の下振れリスクに対応するとともに、その後の経済の成長力の底上げと好循環の実現を図り持続的な経済成長につなげるため、5兆円規模の「好循環実現のための経済対策」(平成25年12月5日閣議決定)等の経済政策パッケージを講じたものである。
 政府としては、今後とも、ご指摘の「消費増税の影響」など過去の経済財政政策の影響も含め経済動向を総合的に検証・分析しつつ、経済財政運営に万全を期してまいりたい。

3について
 仮定を前提とした過去の経済状況についてお答えすることは差し控えるが、一般論としては、持続的な経済成長は、税収の増加を通じて財政健全化に資することとなる。なお、安倍内閣としては、経済再生と財政健全化の両立を目指しており、消費税率の8パーセントへの引き上げに当たっては、名目及び実質の経済成長率、物価動向等、種々の経済指標を確認し、経済状況等を総合的に勘案した上で、平成26年4月に予定通りこれを行ったものである。

4について
 お尋ねの「識者の意見を優先して取り入れるべき」の意味するとことが必ずしも明かでないが、社会保障制度を次世代に引き渡していく責任を果たすとともに、市場や国際社会における我が国の信認を確保するため、平成29年4月の消費税率の10パーセントへの引き上げは、確実に実施することとしている。同時に、今後の経済財政運営に当たっては、引き続き、大胆な金融政策、機動的な財政政策、民間投資を喚起する成長戦略の「三本の矢」からなる経済政策を一体的に推進することにより、経済の好循環を確かなものとし、経済再生と財政健全化の両立を目指してまいりたい。

5について
 4についてで述べたとおり、平成29年4月の消費税率10パーセントへの引き上げは、確実に実施することとしている。その上で、政府としては、経済動向を引き続き注視し、経済財政運営に万全を期してまいりたい。

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コメント

 今日は。higashiyamato1979です。福田氏の質問は大変的確なものです。それに対し政府側の答弁は・・・そもそも答えになっていないのではないかと考えるのは自分だけでしょうか? それでは決まり文句! お金が無ければ刷りなさい! 労働はロボットに!人間は貴族に!

投稿: higashiyamato1979 | 2015年6月 7日 (日) 11時03分

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