増税と歳出減では財政再建ができないのではないかという疑問に関する質問主意書とその答弁書(No.185)
質問主意書で期待する答弁を得るのは簡単ではありません。答弁に対して反論すべきか、あるいは新しい質問にすべきか、悩むところです。政府も思うような成長路線に乗せられないし、支持率も落ちるし困っているのでしょう。肝心なところから話題を逸らそうと苦労している様子が読み取れます。
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平成27年8月6日提出
質問第369号
増税と歳出減では財政再建ができないのではないかという疑問に関する質問主意書
提出者 福田昭夫
2012年12月に第二次安倍内閣が発足して以来、日本経済はあまり成長していない。実質成長率は2013年度2.1%、2014年度はマイナス0.9%だから平均すると年率0.6%の成長にすぎない。特に2014年度の消費増税の後、消費者心理は冷え込み景気回復の足取りが重くなった。デフレ脱却にも財政再建にも失敗している。国民は将来の生活への不安が増し内閣支持率も急落している。
これに関連して質問する。
1.7月22日に内閣府より「中長期の経済財政に関する試算」が出された。これによると2020年度の名目長期金利は3.9%である。一方量的・質的金融緩和により8月3日現在、マネタリ-ベースは322兆円、日銀当座預金残高は226兆円までに増加しており、さらに今後マネタリーベースは毎年80兆円増やすとのことである。つまり、2020年度には数百兆円あるいはそれ以上もの資金がほぼゼロ金利で眠っていることになり、そのようなときに、3.9%もの高金利の金融商品が出てくると、眠っている資金は一気に高金利の商品に大移動してしまう。その大移動により長期金利は下がってしまうのではないかと思われるので3.9%の長期金利はあり得ないと考えるが同意するか。
2.内閣府の発表する中長期の経済財政に関する試算は、毎回余りにも楽観的すぎて、現実離れしている。例えば2005年に7年後の2012年度にはGDPは645.2兆円に達すると予測し、約140兆円の増加を予測した。しかし、実際の2012年度のGDPは472.6兆円であったので約33兆円減少であった。驚いたことに内閣府は毎年このように現実とは大きくかけ離れた楽観的すぎる予測をしている。このことについて試算を行っている担当者に聞くと「3%成長を目標としている政府の下で試算を出している限りこれと異なる試算は出せない」と答えている。つまり政治的に歪められた試算であることを暴露したわけである。そういった事情を考慮すれば、この試算は単に「現実を無視したはかない政府の夢」にすぎないと言える。もっと現実の経済を正確に予測する試算を内閣府は国民に示すべきでは無いか。
3.内閣府発表の試算がことごとく外れたことに対して「リーマンショックは予測できなかった」ということが逃げ口上として使われることがある。しかし、世界経済は常に好況と不況を繰り返す。例えば現在失速しつつある中国経済により日本経済は深刻な影響が出る可能性があるのではないか。消費増税で失速し回復の遅れている日本経済はそのようなショックに耐えられるのか、このような状況で2017年度の消費税再引き上げは無謀だと思わないか。
4.「輪転機をぐるぐる回してお金を刷ればよい。1万円札を刷るのに20円しか掛からない。9980円は国の収入になる。」と安倍首相はよく言っておられた。「お金を刷る」というのは比喩的な表現ではあり、実際は政府が国債を増発し、日銀が国債を買うことを意味する政策であると考えられる。この政策は実行されないのか。
5.デフレ経済が続く現在の日本のGDPは1997年度のGDPよりも少ない。経済を成長させ、国の債務の対GDP比を下げることを、政府の目標にすべきではないか。
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平成27年8月14日受領
答弁第369号
内閣衆質189第369号
平成27年8月14日
内閣総理大臣 安倍晋三
衆議院議長 大島理森 殿
衆議院議員福田昭夫君提出増税と歳出減では財政再建が出来ないのではないかという疑問に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。
衆議院議員福田昭夫君提出増税と歳出減では財政再建が出来ないのではないかという疑問に関する質問に対する答弁書
1について
ご指摘の仮定を前提としたお尋ねにお答えすることは困難であるが、「中長期の経済財政に関する試算」(平成27年7月22日経済財政諮問会議提出)においては、名目長期金利は、均衡実質金利及び期待インフレ率並びにGDPギャップなどに基づいて試算された短期金利に一定のリスクプレミアムを加えることで試算した結果、2020年度までに経済成長等に伴って3.9%程度まで上昇する結果となっている。
2について
「中長期の経済財政に関する試算」は、政府のマクロ経済目標及び国・地方の財政健全化目標の進捗状況等を点検し、中長期的な経済と財政の姿を展望するため、経済・財政・社会保障を一体的にモデル化した内閣府の計量モデルに基づき試算している。試算においては、大胆な金融政策、機動的な財政政策、民間投資を喚起する成長戦略の「三本の矢」の効果が着実に発言する「経済再生ケース」をお示めしする一方で、経済が足下の潜在成長率並みで将来にわたって推移する「ベースラインケース」についてもお示ししているところである。
政府としては、中長期的に、実質GDP成長率2%程度、名目GDP成長率3%程度を上回る経済成長の実現を目指し、デフレ脱却と経済再生に取り組んでまいりたい。
3について
今後の日本経済については、「地方への好循環拡大に向けた緊急経済対策」(平成26年12月27日閣議決定)を具体化する平成26年度補正予算及び平成27年度予算の着実な実行や賃金上昇を定着させ投資を促進させるための環境整備の取り組み等により、雇用・所得環境が引き続き改善し、好循環が更に進展するとともに、交易条件も改善する中で、堅調な民需に支えられた景気回復が見込まれる。先行きのリスクとしては、中国経済を始めとした海外景気の下振れや金融資本・商品市場の動向等に留意する必要がある。
その上で、平成29年4月の消費税率の10%への引き上げについては、社会保障制度を次世代に引き渡していく責任を果たすとともに、市場や国際社会における我が国の信認を確保するため、経済環境を整える中で、実施することとしている。
4について
財政法(昭和22年法律第34号)第5条本文においては、「すべて、公債の発行については、日本銀行にこれを引き受けさせ、又、借入金の借り入れについては、日本銀行からこれを借り入れてはならない」とされており、これに抵触する日本銀行による公債の引受等については禁じられている。ただし、日本銀行が自らの判断により、金融政策の目的で、市場で流通している国債を買い入れることは、同条に抵触するものではなく、日本銀行において、その時々の経済・物価情勢や市場動向を踏まえつつ、適切におこなわれるものと考えている。
5について
「経済財政運営と改革の基本方針2015」(平成27年6月30日閣議決定)第3章に定めた「経済・財政再生計画」に、債務残高の対GDP比を中長期的に着実に引き下げていくことを定めている。
引き続き、政府としては、「経済再生なくして財政健全化なし」との基本方針の下、「デフレ脱却・経済再生」。「歳入改革」の3本柱の改革を一体として推進し、経済と財政双方の一体的な再生を目指してまいりたい。
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