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2015年9月

2015年9月27日 (日)

政府は内閣府試算や日本の経済の現状に関して重大な誤認があるのではないかという疑問に関する質問主意書と答弁書(No.188)

コメントは最後に書きました。

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平成27年9月10日提出
質問第420号

政府は内閣府試算や日本の経済の現状に関して重大な誤認があるのではないかという疑問に関する質問主意書
                      提出者 福田昭夫

実質GDPでマイナス成長になっても対策は必要ないのかという疑問に関する質問主意書に対する答弁書(答弁書第393号、以下答弁書という)や首相官邸のホームページに書かれている内容を読むと、内閣府試算や日本の経済の現状に関して重大な誤認が含まれているのではないかという疑問がある。
これに関して質問する。

1.答弁書の「2について」であるが、「デフレからの脱却と経済生成に向けた取組が進み、デフレ状況ではなくなる中、経済の好循環が着実に回り始めた結果、企業活動や雇用を含む幅広い分野で、およそ四半世紀ぶりとなる良好な経済状況がみられるようになった旨を記述しているところであり」という記述がどこにあるか分からない。「平成27年度年次経済財政報告」の6頁には「およそ四半世紀ぶりとなる良好な経済状況の出現」というタイトルで説明がある。この根拠として2015年1-3月期の名目GDP成長率が前年同期比年率9.4%となったことで、1994年以降最大の伸びとなったというのがタイトルの根拠になっている。しかし、これは速報値であり、確報値では9.0%と修正され2011年7-9月期の9.2%を下回るのでタイトルの記述は間違いではないか。しかもこれは原油価格の下落によってもたらされた数字であり、アベノミクスの成果ではない。アベノミクスの成果と言うなら4-6月期の実質成長率年率マイナス1.2%を引用すべきではないか。

2.答弁書の「3について」であるが、「年平均」で0.1パーセントポイント程度の差が出るとあるが、これは「4年間の合計」での間違いである。成長戦略シナリオにおいて4年間の合計は一体改革ありでは7.6%、一体改革なしでは7.7%である。差は合計で0.1%である。四捨五入した誤差を考えても差は0.2%を上回ることはないから、平均で0.1%という主張は間違いではないか。実際どうなのかは、もう一桁数字を出せば明らかになる。

3.答弁書の「3について」であるが、2つの試算で「駆け込み需要とその反動減」や「社会保障・税の一体改革の考慮」は両方共同じように考慮されているのではないか。試算の考え方や、前提となる経済状況等が異なるとは具体的に何を意味するか。

4.答弁書の「4について」であるが、「我が国の財政状況は、国・地方の債務残高がGDPの2倍程度に膨らみ、なおも更なる累増が見込まれるなど、極めて厳しい状況にある」となっている。しかしながら、平成27年7月22日に内閣府から発表された「中長期の経済財政に関する試算」の経済再生ケースでは債務残高の対GDP比は今後減り続けるとある。答弁書はこの試算が間違いだと主張するのか。

5.先日トルコのアンカラで開かれていた20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議で9月5日に発表されたコミュニケでは「われわれは、債務残高対GDP比を持続可能な道筋に乗せつつ、経済成長と雇用創出を支えるため、短期的な経済状況を勘案して機動的に財政政策を実施する。」とあり、われわれとは日本も含まれている。内閣府の発表した乗数でも、財政出動によって債務残高の対GDP比は下がることが示されているのだから、当然政府は財政出動によって経済成長と雇用創出を支えることを国際公約したことになるのではないか。

6.現在のように世界的な不況の局面においては、経常黒字で対外純資産が多い国は積極財政で世界の景気の牽引役になるべきではないか。その意味でも日本は補正予算を組んで景気対策をすべきなのではないか。

7.首相官邸のホームページに「アベノミクス「三本の矢」」というタイトルで国民向けに現在の経済状況を示したページ(以下官邸ホームページという)がある。それによると実質GDPは年率+2.4%成長(2015年1-3月期)とある。しかし、最新のデータマイナス1.2%成長(2015年4-6月期)をここは書くべきである。わざわざ古いデータを載せるということは、国民を騙そうとしている意図ではないか。

8.官邸ホームページには実質GDP累計+2.0%成長(2015年1-3月期/2012年10-12月期)とある。その前のデータ2.4%は年率であるが、ここは2年3か月の累計である。国民に誤解を与える表現をわざわざ行っているように見える。ここは前の表記に倣って2.0を2.25で割って年率を計算して表示すべきなのではないか。

9.官邸ホームページで夏季賞与:過去23年で最高水準とある。この数字の意味を内閣府に質問したら、厚生労働省に聞くように言われた。厚生労働省に質問すると、これは厚生労働省の数字ではないとの返事であった。しかし、これを裏付ける数字をどこか出されていないかを調べてくれた。そこで経団連の発表があると教えてくれた。しかし、経団連の数字は僅か140社のみの集計であり、しかも名目値である。厚生労働省は33000社を調べており、しかも実質値を計算してある。平成22年の平均を100とした場合
平成25年6月  137.7
平成26年6月  132.0
平成27年6月  128.1
となっており、下がり続けているわけで、過去23年で最高という表現は不適切ではないか。政府は厚生労働省のデータを信頼しないということか。

平成27年9月18日受領
答弁第420号

内閣衆質189第420号
  平成27年9月18日

                        内閣総理大臣 安倍晋三
  衆議院議長 大島理森 殿
衆議院議員福田昭夫君提出政府は内閣府試算や日本の経済の現状に関して重大な誤認があるのではないかという疑問に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。

議院議員福田昭夫君提出政府は内閣府試算や日本の経済の現状に関して重大な誤認があるのではないかという疑問に関する質問に対する答弁書

1について
 内閣府が平成27年8月14日の閣議に配布した「平成27年度年次経済財政報告」では、デフレからの脱却と経済再生に向けた取り組みが進み、デフレ状況ではなくなる中、経済の好循環が着実に回り始めた結果、2014年度の企業収益が過去最高水準になり、また、有効求人倍率が2015年4月には23年ぶりの高水準となるなど、企業活動や雇用を含む幅広い分野で、およそ四半世紀ぶりとなる良好な経済状況がみられるようになった旨を記述している。(注1)

2について
 「経済財政の中長期試算」(平成24年1月24日内閣府公表)では、社会保障・税一体改革を考慮した場合としない場合の平成25年度から平成28年度の実質GDP成長率について、「慎重シナリオ」においては、「一体改革あり」の場合は年平均で1.1%程度、「一体改革なし」の場合は年平均で1.2%程度との試算を、「成長戦略シナリオ」においては、「一体改革あり」の場合は年平均で1.8%程度、「一体改革なし」の場合は年平均で1.9%程度との試算をお示ししており、お尋ねの「年平均で0.1%PT程度の差」については、これらの差をお答えしたものである。(注2)

3について
 先の答弁書(平成27年9月4日内閣衆質189第393号)3についてで、「それぞれの試算においては、試算の考え方や、前提となる経済状況等が事案瑠ことから、ご指摘の計数をもって単純に比較することは困難である」とお答えしたのは、試算の対象とする期間が異なることや、試算時点の違いにより前提となる個人消費を取り巻く経済状況が異なる等によるものである。(注3)

4について
 お尋ねの「なおも更なる累増が見込まれる」に関しては、国・地方の債務残高の累増が見込まれる旨を述べたものであり、「中長期の経済財政に関する試算」(平成27年7月22日経済財政諮問会議提出)の「経済再生ケース」において国・地方の公債等残高が増加する試算結果となっていることと整合的なものとなっている。(注4)

5について
 一般論としては、国際会議におけるコミュニケは、法的拘束力がなく、記載された事項は、国際公約ではない。政府としては、ご指摘のコミュニケを踏まえつつ、「経済財政運営と改革の基本方針2015」(平成27年6月30日閣議決定)第3章に定めた「経済・財政再生計画」に沿って、引き続き、経済と財政双方の一体的な再生を目指してまいりたい。(注5)

6について
 政府としては、経済と財政双方の一体的な再生を目指しており、我が国の極めて厳しい財政状況を放置すれば、財政の持続可能に対する疑念の高まりが経済成長自体を阻害するおそれがあるという認識の下に、それぞれの国が置かれた状況を踏まえながら、適切な財政運営を行っていくことが重要であると考えており、積極財政を行うべきか否かについては、「経常黒字で対外純資産が多い」という理由で判断されるべきではないと考えている。なお、現時点で補正予算による経済対策を策定することは考えていない。(注6)

7について
 ご指摘の「首相官邸ホームページ」は首相官邸ホームページに掲載されている広報ページ「アベノミクス「三本の矢」」を指していると考えられる。当該ホームページについては、本年5月に改訂したものであるが、本年6月30日に閣議決定された「「日本再興戦略」改訂2015」の内容を踏まえて現在改訂作業を行っているところである。なお、どのような指標を活用することが適切かについては広報の観点から検討を行うこととしている。(注7)

8について
 ご指摘の表記については、第2次安倍内閣発足以降の経済成長について分かりやすく示したものであり、国民に誤解を与える表記ではないと考えている。(注8)

9について
 ご指摘の「夏季賞与:過去23年間で最高水準」という記載は、厚生労働省が公表している「毎月勤労統計調査」を根拠としている。同調査では、事業所規模5人以上の事業所における夏季賞与の前年比について、平成26年は2.7%増と、平成3年の6.3%増以来の数値となっており、「過去23年間で最高水準」という表現は不適切ではないと認識している。(注9)

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コメント
注1 間違っています。報告書に書いてあるのは、6頁でGDPを根拠としています。
注2 どこまで嘘を言い続けるのでしょう。中長期試算には2種類の数字が書いてあります。4年間の累積と平均です。増税をした場合としない場合とで差を求めるとき、誤差が少ないのは累積での差を求めるときであることくらいは誰でも分かります。わざわざ、自分の都合の悪い数字には言及せず、都合のよい数字だけを言及したということ自体、国民を騙そうとする意図が表れています。
注3 個人消費を取り巻く経済状況が変わってきたのだから両試算を比較すべきではないとの答弁。でも、消費増税前の試算でも、消費増税をすれば消費落ちる(つまり消費環境が悪化する)ことは考慮しなければなりません。つまり個人消費を取り巻く経済状況が変わることを考慮して計算しなければならなかったのに、それをしなかったということは致命的な内閣府の試算の欠陥と言えるでしょう。というより、始めから国民を騙すための試算だったというべきでしょう。
注4 議論のすり替えがある。前回の答弁書には債務のGDP比について書いている。しかし、今回は債務の絶対値だったんだという。自分が言っていることが支離滅裂であることを承知で答弁書を書いている。
注5 国際会議のコミュニケは国際公約ではないが、国際会議での発言はすべて国際公約になるという論理は理解できない。消費増税を国際会議で話したら法的拘束力が生じるのだろうか。
注6 どういう国が積極財政が可能なのか。「経常黒字で対外純資産が多い」国は積極財政はすべきでなく「経常赤字が続き対外純債務が膨大」な国が積極財政をせよというのか。それこそ財政破綻を気にするなということではないか。それとも世界中の国は緊縮財政をせよというのか。それは世界大恐慌への道だ。
注7 首相官邸のホームページを作り直すと言った点は評価できる。二度とこのような欺瞞的なホームページを作らないよう期待する。ふざけたホームページをつくったら、また追求しますから。
注8 これこそ欺瞞的な表現である。まあ、作り直すと言ったのだから、どのようになるのか見ましょう。
注9 平成26年は夏季賞与が前年比で2.7%増えたと言っても、すべての商品には消費税3%分が上乗せされた時であり、しかも輸入物価の値上がりもあった。そんなときに賞与が僅か2.7%上がったと言われても、誰が喜びますか。平成26年度は実質では賞与が下がっていることも厚生労働省は発表している。なぜ消費増税でゲタをはかされた名目値を自慢して、マイナスとなった実質の値を隠すのか。

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2015年9月11日 (金)

欺瞞的な官邸ホームページ(No.187)

アベノミクス「三本の矢」で検索すると首相官邸のホームページに行く。

1871

そこには上記のようなアベノミクスの「成果」が並んでいる。景気の好循環が回っていると言いたいようだ。四半世紀ぶりの好景気だと言いたいのだろう。これらの数字について内閣府に電話してみた。

まず、実質GDP年率2.4%という数字。確かに随分前にこんな数字を出したようだ。よく見ると2015年1-3月期とある。しかし、多くの人の記憶に新しい衝撃的な数字は4-6月期の年率マイナス1.2%だ。これが最新なのだからこちらを出せと言っておいたが、官邸には無視された。国民を騙そうとしている。

その次の累計2.0%という数字も国民を欺くもの。これを見れば、政府が目標としていた実質2.0%成長が実現したのかと錯覚してしまう。それが政府の狙いだろうが、小さな字で2015年1-3月期/2012年10-12月期と書いてある。つまり悪化した4-6月期はわざと除いてある。しかもこれは2年3か月の累計だ。その上に書いてある数字は年率なのだから、ここは2.25で割って年率0.9%とすべきだろう。

賃金引き上げでも「夏季賞与:過去23年で最高水準」とある。これも内閣府に聞いたが、これは厚生労働省の数字だからといって、内容を教えてくれない。仕方なく厚生労働省に聞いたら、厚生労働省ではこんな数字は出していないと言われた。しかし親切な担当者が、日本中を探し回れば、どこか出しているかもしれないと言って調べてくれた。しばらくして彼は見つけることが出来た。あった!経団連の数字だ。
http://www.keidanren.or.jp/policy/2015/071.pdf
2015年夏季   892,138円 前年比 2.81%増
とある。しかし、これはたった140社のみの集計、しかも名目値。なぜ厚生労働省の数字を使わないのか。厚生労働省は33000社のデータを集計しており、しかも実質値を出している。平成22年の平均を100とした場合

平成25年6月  137.7
平成26年6月  132.0
平成27年6月  128.1

これで分かるように夏季ボーナスも下がり続けている。好循環着実に回り四半世紀ぶりの良好な経済状況なんて大嘘だ。安倍さん、また財務省に騙されているよ。

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2015年9月 9日 (水)

実質GDPでマイナス成長になっても対策は必要ないのかという疑問に関する質問主意書(No.186)

質問主意書と答弁書が返ってきた、嘘だらけなのでまた質問しようと思う。
まずは、要点をまとめる。

【要点】
質問主意書とそれに対する答弁書 答弁第393号
             質問者 福田昭夫
【質問】マイナス成長でも景気対策は行わないのか
【答弁】景気は緩やかな回復基調が続いている。補正予算による経済対策を策定することは考えていない。
【質問】経済財政報告の「四半世紀ぶりの成果と再生する日本経済」という主張は不適当ではないか。
【答弁】経済の好循環が着実に回り始めており、不適当ではない。
【質問】昨年4月の消費増税前の試算では、消費増税の影響は極めて小さいとの予測を出していたが、経済財政報告ではGDPを1.2%押し下げたとなっていた。予測が大きくはずれたのはなぜか。
【答弁】前提となる経済状況が異なるから比較できない。
【質問】内閣府の試算は、大規模な量的緩和で出て行った大量の資金の流れを全く無視したずさんなものだ。無視できるなら誰も出口戦略など心配しない。
【答弁】出口戦略は日銀が適切な対応を行う。
【質問】日銀はETFを大量に購入しているが、株が暴落したとき破綻する恐れは無いか。
【答弁】日銀は銀行等の株式等の保有の制限等に関する法律(平成13年法律第131号)第3条第1項に規定する「銀行等及びその子会社等」に該当しないため、同項及び同条第2項の規定は適用されない。

【本文】
平成27年8月26日提出
質問第393号
実質GDPでマイナス成長になっても対策は必要ないのかという疑問に関する質問主意書
                          提出者 福田昭夫

8月17日、4~6月期の実質GDP速報値は、前期比0.4%減、年率換算で1.6%減と発表された。一方では「四半世紀ぶりの成果と再生する日本経済」と題した平成27年度年次経済財政報告(以下経済財政報告という)が内閣府より発表された。これらについて質問する。

1.実質GDPでマイナス成長になり、株価も下落し、実質賃金も下がり、その結果節約傾向が強まり消費も落ち込んでいる。また中国経済の減速の影響で輸出も減少傾向にある。このような状況下では、緊急に補正予算を組んで景気対策をすべきではないのか。

2.安倍内閣の目標は2年で2%のインフレ目標を達成すること、実質成長率2%、名目成長率3%を達成することであったが、いずれも達成できていない。原油が下がったからインフレ率が落ちたという主張はおかしい。原油価格の下落はGDPを押し上げるのだから、成長率は予想以上に高くなければならないはずだがそうなっていない。これらのことを考えると、経済財政白書の「四半世紀ぶりの成果と再生する日本経済」という主張は不適当なのではないか。

3.経済財政報告によれば、2014年度の消費増税はGDP全体を1.2%ポイント程度下げたとしている。実質GDP成長率は2013年度2.1%、2014年度はマイナス0.9%であり、その差は3%であるのだから、1.2%ポイントという数字はまだ小さすぎるのではないか。平成24年1月24日に内閣府で発表された「経済財政の中長期試算」の12頁では、影響はさらに小さいとされていて、成長率の4年間の合計で比べたとき、消費増税を行ったときと行わなかったときで僅か0.1%の違いしかないとしている。経済財政報告は、この予測が間違いであったことを認めたということか。平成24年の予測が大きく外れたわけだが、その理由は何か。

4.政府は「平成29年4月の消費税率の10%への引き上げについては、社会保障制度を次世代に引き渡していく責任を果たすとともに、市場や国際社会における我が国の信認を確保するため、経済環境を整える中で、実施すること」としている。しかしながら、失われた20年といわれるほどの世界でも例を見ない大不況の中で、消費税率を更に上げて実質所得を更に下げ、その結果国民が倹約志向を強めれば、消費は減退し、経済は縮小する。2012年10月から2014年12月の期間の年金積立金の運用益は35兆円もある。現在積立金は145兆円にまで膨れあがっていて、社会保障制度は破綻寸前という状態ではないし社会保障制度を守るために緊急に大増税をする必要はない。一方でデフレ脱却は緊急を要する。そう考えれば、平成29年4月の消費税率の10%への引き上げは中止すべきではないか。そうでないと、衰退を続ける日本経済を次世代に引き継がせることになってしまうのではないか。

5 政府は「「中長期の経済財政に関する試算」(平成27年7月22日経済財政諮問会議提出)においては、名目長期金利は、均衡実質金利及び期待インフレ率並びにGDPギャップなどに基づいて試算された短期金利に一定のリスクプレミアムを加えることで試算した結果、2020年度までに経済成長等に伴って3.9%程度まで上昇する結果となっている。」としている。つまり、異次元の量的緩和によって日銀から出て行った大量の資金の動きを完全に無視するということである。こんなずさんな計算でよいのなら出口戦略など全く心配しなくてよくなるのではないか。政府は危機対応に対する備えを怠っているのではないか。

6 日銀の営業旬報(2015/8/20時点)の資産側を見ると、
(以下、単位:千円)
金銭の信託(信託財産株式)    1,351,077,924,000円
金銭の信託(信託財産指数連動型上場投資信託)    5,882,038,708,000円
金銭の信託(信託財産不動産投資信託)    244,831,155,000円
以上、個別株、株式指数ETF、REIT計7.5兆円
となっているが、それに対して純資産(自己資本)が、2015/3/31時点の財務諸表の貸借対照表を見ると3.9兆円しかない。また、貸借対照表を見ると、個別株、株式指数ETF、REITについては、債券や外国為替のように損失引当金を積んでいない。日銀がこのような財政状態であるときに、仮に世界的な株式市場大暴落が起き、それにつれて日本市場でも大暴落がおきれば、個別株、株式指数 ETF、REIT計7.5兆円(簿価)が半分以下になれば財務諸表の「重要な会計方針」に従って減損処理を行う必要も出て来る可能性があると思われる。そうすると、損失額が純資産(=自己資本)を上回り、日銀が債務超過に陥る可能性があるように思われるが、そのようなリスクについて内閣は認識しているか。また、もしそのようになった場合はどのような対策をするつもりか。なお、この問いに関しては仮の話だから答えられないという回答は避けて頂きたい。仮の話だから答えられないという回答であれば、内閣は万が一の場合において無策であると認識するがそれでよいか。

またそもそも、一般の市中銀行は「銀行等の株式等の保有の制限等に関する法律」
第3条1項によって、自己資本に相当する金額を超える金額の株式等を保有できないことになっている。これは銀行が債務超過に陥ることを防ぐための法規であると考えられるが、この法律は日本銀行には適用されないと理解してよいか。
あるいは、同条2項において「銀行等及びその子会社等は、合併その他の政令で定めるやむを得ない理由がある場合には、前項の規定にかかわらず、あらかじめ主務大臣の承認を得て、株式等保有限度額を超える額の株式等を保有することができる」とあるが、この規定を適用して日銀が自己 資本を超えて株式等を保有することが認められているという認識でよいか。

右質問する。

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平成27年9月4日受領
答弁第393号
  内閣衆質189第393号
   平成27年9月4日
                    内閣総理大臣  安倍晋三
  衆議院議長 大島理森殿
衆議院議員福田昭夫君提出実質GDPでマイナス成長になっても対策は必要ないのかという疑問に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。

衆議院議員福田昭夫君提出実質GDPでマイナス成長になっても対策は必要ないのかという疑問に関する質問に対する答弁書

1について
 景気は、このところ改善テンポにばらつきもみられるが、穏やかな回復基調が続いているものと認識している。
 現時点で補正予算による経済対策を策定することは考えていない。政府としては、平成26年度補正予算や平成27年度予算に基づく施策を着実に実行するとともに、より力強い賃金上昇を促し、過去最高水準の企業収益からの投資を喚起することにより、経済の好循環を更に拡大・深化させていく。いずれにせよ、経済動向を引き続き注視し、経済財政運営に万全を期してまいりたい。

2について
 内閣府が平成27年8月14日の閣議に配布した「平成27年度年次経済財政報告」では、デフレからの脱却と経済生成に向けた取組が進み、デフレ状況ではなくなる中、経済の好循環が着実に回り始めた結果、企業活動や雇用を含む幅広い分野で、およそ四半世紀ぶりとなる良好な経済状況がみられるようになった旨を記述しているところであり、「不適当」とのご指摘は当たらないものと考えている。

3について
 「平成27年度年次経済財政報告」では、平成26年4月の消費税引き上げに伴う駆け込み需要の反動減が、平成26年度のGDP全体を前年度比1.2%PT程度押し下げたとの試算をお示ししている。
 他方、「経済財政の中長期試算」(平成24年1月24日内閣府公表)では、社会保障・税一体改革を考慮した場合としない場合の平成25年度から平成28年度の実質GDP成長率について、年平均で0.1%PT程度の差が出るとの試算をお示ししている。
 それぞれの試算においては、試算の考え方や、前提となる経済状況等が異なることから、ご指摘の計数をもって単純に比較することは困難である。

4について 
 我が国の財政状況は、国・地方の債務残高がGDPの2倍程度に膨らみ、なおも更なる累増が見込まれるなど、極めて厳しい状況にある。安倍内閣としては、経済と財政双方の一体的な再生を目指しており、「デフレ脱却・経済再生」、「歳出改革」、「歳入改革」、の3本柱の改革を1体として推進することとしている。平成29年4月の消費税率の10%への引き上げについては、社会保障制度を次世代に引き渡していく責任を果たすとともに、市場や国際社会における我が国の信認を確保するため、経済環境を整える中で、実施することとしている。引き続き、大胆な金融政策、機動的な財政政策、民間投資を喚起する成長戦略の「3本の矢」からなる経済政策を一体的に推進することにより、経済の好循環を確かなものとしてまいりたい。

5について
 「中長期の経済財政に関する試算」(平成27年7月22日経済財政諮問会議提出)は、経済・財政・社会保障を一体的にモデル化した内閣府の計量モデルに基づき試算を行ったものであることから、金利の上昇が経済に与える影響等も織り込まれており、「ずさんな計算」とのご指摘は当たらないものと考えている。
 なお、お尋ねの金融緩和の「出口戦略」について、日本銀行総裁は、平成27年7月15日の記者会見において、「出口について具体的に議論するのはやはり時期尚早であると思っています」と発言したと承知している。政府としては、日本銀行が、その時々の経済・物価情勢や市場動向を踏まえつつ、適切な対応を行うものと考えている。

6について
 お尋ねについては、仮定のご質問であること、また日本銀行の金融政策運営に関するものであり、同行の自主性は尊重されなければならないことから、お答えすることは差し控えたいが、一般論として申し上げれば、同行の財務の健全性については、まずは同行において関係法令の規定に則して適切な運営が図られるべきであるものであると考えている。
 また、同行は、銀行等の株式等の保有の制限等に関する法律(平成13年法律第131号)第3条第1項に規定する「銀行等及びその子会社等」に該当しないため、同項及び同条第2項の規定は適用されない。

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