« 2015年9月 | トップページ | 2016年2月 »

2016年1月

2016年1月27日 (水)

先日提出していた質問主意書に対する安倍総理の答弁書が返ってきた。(No.190)

答弁書では今の日本でハイパーインフレは起こらないと言っている。1月3日のTBSの時事放談にて石破茂地方創生担当大臣は「財政規律が緩んでしまったらハイパーインフレしかないと強く認識している」と発言した。質問主意書の答弁書は閣議決定を経ているのだから、石破さんは主張を変えたということか。

日本が貧乏になった(つまり一人当たりの名目GDPの国際順位が20位まで下がった)理由はデフレだと答弁書は言っている。

だったら、財政拡大をすべきという結論になるのではないだろうか。ハイパーインフレの恐れが無いなら、財政拡大を否定する材料はない。財政を拡大すればデフレ脱却ができることは誰もが知っていることだ。

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――

なぜ日本がここまで貧乏になってしまったのかという疑問に関する質問主意書

                       提出者 福田昭夫

内閣府は12月25日、2014年の国民一人当たりの名目GDPが3万6200ドルで、これはOECDに加盟する34か国のうち上から20番目で、統計が確認できる1970年以降、最も低い順位になったと発表した。なんとイスラエルにまで抜かれてしまった。失われた20年と言われている期間に、日本はここまで貧乏になってしまったのである。この期間において、財政規律を重んじすぎ緊縮財政でデフレを続けてしまったのが原因だと考える。円安・株高・原油安という日本経済にとって追い風を受けながら、デフレ脱却さえできていない。2年で2%のインフレ目標も、実質2%、名目3%のGDP成長率の達成にも失敗した。日本の経済成長率の低さは現在世界の中で際立っている。1月3日のTBSの時事放談にて石破茂地方創生担当大臣は「財政規律が緩んでしまったらハイパーインフレしかないと強く認識している」と発言し、アベノミクス三本の矢のうちの第二の矢を否定した。これに関して質問する。

1.内閣府経済社会総合研究所編の「国民経済計算報告-平成2年基準-(昭和30年~平成10年)によれば、1993年と1994年、日本の一人当たりの名目GDPは世界一であると書いてある。これらのデータは今でも変更はないか。

2.一人当たりの名目GDPは、その国の豊かさを表す経済指標である。その意味で日本は1993年、1994年、世界で最も豊かな(あるいはそれに準ずる)国であった。しかし、その後財政規律を重んじすぎて緊縮財政を続けデフレが続くことになり、20年以上の間、実質賃金が下がり、結果として貧乏な国になってしまったと考える。つまり経済政策の失敗が日本を貧乏にしたと考えるが同意するか。

3.もしも日本が貧乏になってしまったのが、上記の理由ではないと主張するのであれば、何が原因であると主張するのか。また、どのようにしてその流れを止めることができると考えるのか。

4.日本がここまで貧乏になった理由を円安では説明することはできない。1993年、1994年頃、1ドルは100円~110円程度であった。この頃、一人当たりのGDPを見ると、ルクセンブルグやスイスなどは日本と大差なかったが、現在ルクセンブルグは日本の3倍以上、スイスは日本の2.4倍になっており、とても円安では説明できないのは明かではないか。

5.増税は国民からお金を取り上げ、貧乏になった国民を更に貧乏にする。2017年4月からの消費税再増税は、国民の実質所得を下げ、国民に節約を強要し、消費を縮小させるから、世界の中で相対的に日本国民を更に貧乏にしてしまうと考えるが同意するか。

6.日本を貧乏にしてしまったら、国の借金の1000兆円は返せなくなるし、社会保障も貧弱なものになると考えるが同意するか。

7.財政規律をごく僅かでも緩めると、とたんにハーパーインフレになると考えているのか。財政赤字が何兆円を超えるとハイパーインフレになると考えているのか。

8.例えば財政規律を5兆円だけ緩めるとしよう。平成22年8月に内閣府計量分析室から発表された乗数によると、5兆円公共投資を増やした場合、1年目に実質GDPは1.06%増加、名目GDPは1.15%増加、消費者物価は0.07%上昇ということで、ハイパーインフレにはならず、可処分所得は0.94%増加、また公債残高のGDP比は1.65%PT減少するとなっており財政も健全化するわけで、日本経済にとってよい材料ばかりである。このような経済の好循環を引き起こすのは公共投資だけに限らない。日本が急速に貧乏になっていくのを防ぐためには、緊急に財政支出を拡大すべきだと考えるが同意するか。

9.公共投資の増額を2年後以降も同様に続けた場合を考えると、債務が蓄積されるかのような錯覚を受けるかもしれない。しかし、毎年乗数は変わるのであり、2年後以降はその年に計算された新しい乗数で何が最良な財政政策であるかを検討すべきだと考えるが同意するか。

10.昨年の12月22日に甘利大臣は2017年4月に予定されている消費税率10%への引き上げ実施は「増税でデフレに戻ることがないのが条件」と述べた。もし、大部分のエコノミストが増税でデフレに戻ることを予想したら増税は延期されると考えて良いか。

右質問する。

内閣衆質190第39号
   平成28年1月22日
                        内閣総理大臣 安倍晋三
      衆議院議長 大島理森 殿

衆議院議員福田昭夫君提出なぜ日本がここまで貧乏になってしまったのかという疑問に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。

衆議院議員福田昭夫君提出なぜ日本がここまで貧乏になってしまったのかという疑問に関する質問に対する答弁書

1について
 お尋ねの日本の一人当たり名目GDPについて、平成6年につき「平成26年度国民経済計算確報(フロー編)」(平成27年12月25日内閣府公表)等、平成5年につき「支出系列簡易遡及平成17年基準」(平成26年1月20日内閣府公表)等を用いて計算すれば、米ドル換算で、それぞれ3万8844米ドル及び3万5504米ドルとなり、いずれも経済協力開発機構(以下「OECD」という。)加盟国中第3位となっている。

2から4までについて
 ご指摘の「貧乏」の定義が必ずしも明らかではないため、お答えすることは困難であるが、我が国の一人当たり名目GDPのOECD加盟国内の順位が低下した要因としては、世界経済が成長する中で、我が国経済はデフレ状態にあって、名目GDP成長率が相対的に低かったこと等があると考えている。
 政府としては、長引くデフレからの早期脱却と日本経済の再生のため、大胆な金融政策、機動的な財政政策、民間投資を喚起する成長戦略の三本の矢からなる経済政策を一体的に推進してきた。今後の経済財政運営に当たっては、アベノミクス第二ステージにおいて、名目GDP600兆円を平成32年頃に達成することを目標とし、これまでの三本の矢を束ねて一層強化した新たな第一の矢である希望を生み出す強い経済の推進に取り組むとともに、その果実を第二、第三の矢である夢をつむぐ子育て支援、安心につながる社会保障にもつなげることで、新・三本の矢が一体となって成長と分配の好循環を強固なものとしていく。

5及び10について
 社会保障制度を次世代に引き渡していく責任を果たすとともに、市場や国際社会における我が国の信認を確保するため、平成29年4月の消費税率の10%への引き揚げは、リーマンショックや大地震のような重大な事態が発生しない限り、確実に実施することとしている。その上で、政府としては、経済財政運営に万全を期してまいりたい。

6について
 ご指摘の「貧乏」の定義が必ずしも明かではないため、お答えすることは困難ではあるが、平成29年4月の消費税率の10%への引上げは、市場や国際社会における我が国の信頼を確保するとともに、社会保障制度を次世代に引き渡していくためのものである。その増収分は全額、社会保障の充実・安定化に充てることとしている。

7について
 ハイパーインフレ-ションは、戦争等を背景とした極端な物不足や、財政運営及び通貨に対する信認が完全に失われるなど、極めて特殊な状況下において発生するものであり、現在の我が国の経済・財政の状況において発生するとは考えていない。

8及び9について
 我が国の財政については、極めて厳しい状況にあり、デフレ脱却・経済再生を図りつつ、その持続可能性を確保することが重要である。政府としては、「経済財政運営と改革の基本方針2015」(平成27年6月30日閣議決定)に盛り込まれた「経済・財政再生計画」に基づき、平成32年度の経済健全化目標の達成に向けて、経済と財政双方の再生を目指す経済・財政一体改革に取り込むこととしている。

| | コメント (2) | トラックバック (0)

2016年1月22日 (金)

内閣府の試算が発表された。マスコミは、隠された真実を語らない。(No.189)

2016年1月21日、内閣府より『中長期の経済財政に関する試算』が発表された。同様な試算は2002年から毎年発表されており、これで15年目だ。内閣府が主張したいことは毎回同じで、今年の経済状態は悪いが、間もなく経済は絶好調になり、実質2%,名目3%成長が実現するだろうという。しかし実際はそのような成長率が実現したことは一度もなく、まさにオオカミ少年が嘘を繰り返しているのだが、政府もマスコミもすっかりこの試算に騙されている。狂った羅針盤として知られているこの試算の真の意味を正しく報道しない。

この結果をグラフにすると嘘が一目瞭然になる。黒い実線が名目GDPの推移でこの20年間増えていない。こんな国、世界中で日本だけであり、世界の中で日本がどんどん貧乏になっていくことを意味している。しかし、毎年発表される「予測」は、図のようにすべて右肩上がりであり、大本営発表と言うべき予測だ。

1891


どうしてこのように、政府・国民を騙し続けるのかと内閣府に電話して聞くと、国に雇われているから、政府目標である実質GDP成長率2%、名目成長率3%という数字を前提に試算を出さざるを得ないと言う。しかし、滑稽なのは、この試算レポートの最初のページに「成長率、物価及び金利などはモデルから試算されるものであり、あらかじめ設定したものではない」とわざわざ書いてあることだ。いくらそのような断り書きがあっても、政府の目標通りの試算結果しか出せないと担当者が言っているのだから、嘘を隠すのは無理だ。

年中行事になってしまったが、試算結果は「現在の経済状態は以前に予測したよりはるかに悪かったので今回は大幅下方修正する。だけどは今後急成長する。」という毎度の言い訳。例えば2014年度の実質GDP成長率の予測は
2014年1月発表  1.4%
2015年2月発表 -0.5%
2016年1月発表 -1.0%
と、ガタガタと落ちていく。この試算が全くデタラメだからこうなるし、毎回バカバカしいほど間違えていることに対し反省の言葉は聞かれない。政府がそう発表せよと強制しているのだから仕方ないだろうと居直る。

無知なマスコミは基礎的財政収支にしか報道しない。経済を理解できないからだ。ギリシャは基礎的財政収支を黒字かしたら破綻したことを知らないのだろうか。内閣府試算では基礎的財政収支も財政収支も今後赤字が続くと試算は予測する。しかし、誰も気付かないが、下図のように、大赤字でも国の借金のGDP比は減り続けると予測している。

1802


2024年度には国の債務は1212兆円になるという。これが多すぎるというなら、100分の1のデノミをやれば一瞬にして債務は12.12兆円にまでに縮小する。しかしGDPも減るではないかと反論されるだろう。つまり債務の数字そのものには意味がなく、GDP比のみ意味がある。だから、債務はいくら増えても良い。GDP比を減らせばよい。グラフでわかるように、現状でもGDP比は着実に減っていくので国の借金の問題はこのままでいつの間にか改善していく。ならば心配はいらない。景気をよくすることだけを考えればよいだけだ。

国債を増発して思い切った景気対策をすればどうなるかは、内閣府が2010年に行った乗数を見れば良い。国債増発は債務残高を増やすが、GDPも増える。債務残高の増加率よりGDPの増加率のほうが大きいから結果として債務のGDP比は減って財政は健全化する。そうすれば、日本経済は再び急成長を始め、財政も健全化するのだ。日本をかつてのように豊かな国にするには、財政拡大しかない。

| | コメント (5) | トラックバック (0)

« 2015年9月 | トップページ | 2016年2月 »